収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その2

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その2

 

降車デッキから澪達が無事にやって来たのを見て私はデモニカスーツのヘルメットの下で安堵の溜息を吐いた。万全を期したはずのシュバルツバースの調査だが、突入と同時に3機の僚艦の内ブルージェットとギガンティック号は通信すら繋がらず、エルプス号は救難要請を出していたが、そちらも消息不明。なんとか不時着したものの動力が破損し、指令とレッドスプライト号の制御を兼ねているアーサーも機能を停止し、前途多難等という言葉では片付けられない程に絶望的な状況だ。

 

「諸君集まったな! 早速だが現状を説明する。レッドスプライト号は現在全ての機能が停止状態にある。予備電力で必要最低限の生命維持装置は稼働しているが、恐らくそれも長くは持たない。それに加えて、ブルージェット号、エルプス号、ギガンティック号のいずれとも連絡が取れず、本艦は現在シュバルツバース内で孤立無援で遭難状態にある」

 

余りにも絶望的な状況に流石の各国のエリートである調査隊の面子にも動揺のざわめきが広がる。

 

「救援は期待できない。我々自身の手でこの危機を乗り越える必要があるが……その前に長久君。君に確認を取りたい事がある」

 

正体不明の何かに攻撃されてレッドスプライト号は墜落している……プラズマ層に生息できる生物など存在しない事を考えればおのずと答えは出る……。

 

「長久君。やはり知的生命体は存在しているのか?」

 

謎の知的生命体……通称悪魔の専門家として長久君は招集されている。最初はオカルトと馬鹿にしていた隊員ももう笑っていられないのか真剣な表情で長久君を見つめている。

 

「モニターで外を確認出来ないので……外にいるかどうかは分かりませんが……生体マグネタイトの気配はあります」

 

「生体……すまない、長久君。それらの情報は我々にはない、詳しく説明してくれないか?」

 

作戦司令部で日系アメリカ人のカトーが長久君へそう問いかける。

 

「……ゴア隊長。説明するのは可能ですが、今は止めておいた方が良いと思います」

 

「それは何故かね?」

 

「……悪魔を蛸とすれば、僕達は瓶に閉じ込められた蟹というのが現状です」

 

一瞬何をと思ったがすぐに長久君が何を言おうとしているのかが理解出来た。私はすぐに通信機のスイッチを入れた。

 

「動力班誰か応答してくれ、繰り返す動力班、誰か応答してくれッ!」

 

『聞こえていますゴア隊長!』

 

動力班のテリーから応答が入ったことに安堵するが、すぐに指示を出さなければならない状況だ。

 

「すまない、すぐに降車デッキに向かってサブ動力を起動してくれ、それとプラズマ装甲を展開出来ないか試してくれ」

 

『ゴ、ゴア隊長。今サブ動力を完全起動させる為に降車デッキに向かっていますが、プラズマ装甲までは時間が掛かりますよ。今はサブ動力を起動して……「テリー。我々は未知の敵性存在に攻撃され墜落しているんだ……悠長な事をしていれば我々は敵性存在に食われて死ぬ。そうだな? 長久君」

 

「はい、生体マグネタイトは悪魔の餌であり、悪魔そのものです。そして生体マグネタイトは強い感情によって発生します……喜び、悲しみ、怒りと恐怖……今こうしている間も生体マグネタイトは発生しています。そして生体マグネタイトを求めて悪魔は必ずレッドスプライト号に来ます」

 

「だ、だがな、それは君の「カトー。我々が攻撃を受けたと言う事実は動かないんだ。話は聞いていたな? テリー。早急に動力の再起動を試みてくれ、我々が生きるか死ぬかはテリー……君に掛かっている」

 

『い、イエッサーッ!! 降車デッキに向かい、動力の再起動を実行しますッ!』

 

私の真剣な声と長久君の言葉にテリーは焦りを伴った声で返事を返し、ONにしたままの通信装置からはテリーの走る音が聞こえて来る。何を馬鹿なと押し問答にならなかった事に安堵しながら私は再び口を開いた。

 

「皆思うことはあると思うが、私は長久君を信じる。プラズマ装甲を……「ゴア隊長ッ!」な、何かね?」

 

私の言葉を遮った長久君に司令部にいたクルー全員の視線が集まった。

 

「テリーさんを戻してくださいッ!」

 

「何を」

 

「ご、ゴア隊長! こ、降車デッキが外から開かれていきますッ!」

 

「悪魔が侵入してくるッ!! このままじゃテリーさんが死ぬッ!!」

 

鬼気迫る表情をしている長久君の表情を見て私は即座に指示を出した。

 

「機動班は至急降車デッキへ向かえッ! 澪! 君は長久君を守りながらついて来てくれッ!」

 

「し、しかし若様は「澪、時間がない。早くッ!」若様……はいッ! 失礼しますッ!!」

 

長久君を抱き抱えた澪と共に機動班と共に降車デッキへ向かった私達が見たのは信じられない光景だった……。

 

「ば、馬鹿な……」

 

開かれた降車デッキ、そして事切れているであろう動力班、整備班のクルーの死体の山……長久君に言われて降車デッキに来るまでの3分にも満たない時間で10人以上が犠牲となっていたのだ。

 

「うわああッ!?」

 

そして見えない何かに襲われ、血を噴出しているテリーの姿を見て、私は心のどこかで信じていなかった悪魔の存在を信じざるを得なかった。

 

「た、助けッ!! うわあああッ!! い、痛いッ!! ぎゃあああッ!!!」

 

助けを求めるテリーに向かって機動班が銃を構え、私も同様に銃を構えたが……私達の視界に映るのは苦しんでいるテリーの姿だけで敵の姿が見えないのだ。

 

「ど、どこだッ! 敵はどこにいるんだッ!!」

 

「分からないッ! 分からないわよッ!!」

 

このまま撃てばテリーを撃ち殺してしまう、だがこのままではテリーが殺されてしまう。一か八か銃を撃つべきなのかと葛藤していると澪に抱き抱えられている長久君が何かをテリーに向かって投げた。小さなビー玉のような何かはレッドスプライト号の床に当ると眩い光を周囲に放った。

 

【ギャアッ!?】

 

そして耳障りな何かの苦しむ鳴声と、何かを引き摺るような嫌な音が降車デッキに響き渡る。

 

「今の内にテリーさんをッ! 悪魔がまた集まってくる前に早くッ!!」

 

「テリーの救出を! 周囲の警戒もだッ! 敵に囲まれていると見て間違いない、円の陣形を組めッ!」

 

長久君の声に私は我に帰りクルーへ指示を飛ばす。恥かしい話だが、今我々の中で1番状況を理解し、皆に指示を出していたのは1番幼い長久君なのだった……。

 

 

 

 

ゴア隊長と澪を初めとしたレッドスプライト号の隊員と悪魔との戦いはかなりの長丁場にもつれ込もうとしていた……。

 

「ゴア隊長! もっと右ッ! 澪はもっと下ッ! カトーさん駄目だッ! 後ろに飛んでッ!!」

 

戦況を見ながら皆に指示を出しながら俺は眉を顰めた。ゴア隊長達は各国から選ばれた選りすぐりのエリート……楽に悪魔を退治して負傷者の手当てが出来ると思っていたが、俺の目論見は簡単に崩れ去っていた。

 

「本当に見えないんですかッ!?」

 

「すまないッ! まるで見えないッ! 長久君私達の銃弾は本当に悪魔に当っているのかッ!?」

 

ゴア隊長達は悪魔を全く視認する事が出来なかったのだ。着ているデモニカスーツが問題なのか、単純に素質が無いのかは定かでは無いが、悪魔を見えないと言うのは大きなハンデだった。悪魔はこちらを見えているので攻撃し放題なのに対して、ゴア隊長達は俺の指示を聞かなければ動けない、どうしても一挙動遅れる。

 

「うっ、ごほッ!」

 

「テリー! テリーが目を覚ましたわッ!」

 

1番最初に襲われていた動力班のテリーさんが目を覚ましたと聞いて俺はレッドスプライト号の降車デッキの壁や床を這いずり回っている悪魔――スライムを睨みつけながらテリーさんに向かって叫んだ。

 

「サブ動力を起動してくださいッ! 降車デッキの入り口を閉めないといつまでも悪魔が入り込んでくるッ! ゴア隊長ッ! 天井のえっと14時の方向ッ! 火炎弾を使ってくださいッ!」

 

「了解したッ!!」

 

ゴア隊長の放った火炎弾をスライムは回避するが、着弾と同時に広がった炎に飲まれてスライムは苦悶の声を上げて天井から落下してくる。

 

「掃射ッ!!」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

落下による音を頼りにした一か八かの一斉射撃が功を制し、スライムは穴だらけになってMAGの光と共に消滅する。

 

「誰でも良い! テリーに手を貸して動力室へ向かえッ! 長久君悪魔は近づいて来ているかッ!?」

 

ゴア隊長の言葉に目を凝らすと新手のスライムが近づいてきているのが見えるが、スライムにはない翼や尻尾という器官が見えた所でふっと身体の力が抜けた。

 

「長久君ッ!? どうしたのッ!!」

 

「若様ッ!?」

 

俺の異変に気付いたゾイさんが声をあげ、その声に気づいた澪が振り返り駆け寄って来ようとするのを手で制す。澪が下がれば陣形が崩れて全滅するかもしれない、俺は歯を食いしばってもう1度立ち上がり近づいてくる悪魔の数を震える声で叫んだ。

 

「新手は4ッ! でもまだ出入り口まで距離があります。距離は約……8m」

 

今はまだ戦いの最中だ。俺に気を取られて皆が全滅するなんて受け入れられる訳が無い、いま自分がやるべき事をなんとしても成し遂げる……歯を食いしばって、震える足を殴りつけて根性で立ち上がる。

 

「皆ッ! 長久君がここまで頑張っているんだッ! 泣き言を言わず皆ベストを尽くせッ!!」

 

「「「サーイエッサーッ!!」」

 

「くっ……私には悪魔が見えない、悪魔の移動速度を教えてくれ」

 

「凄く遅いです、後……3分……いや、5分は猶予があると思います。でもその後に悪魔が更に10体……侵入されたら終わりです」

 

俺の言葉に弾を使い切った機動班が倒れているテリーさんの元へ走る。

 

「悪いが休んでる暇はねえぞッ!」

 

「俺達の命運はお前に掛かってるんだからなテリーッ!! それにあの坊主があれだけ頑張ってるんだ大人のてめえがダウンなんてしねえよなあッ!!」

 

「大人の意地を見せろッ! さっさと立ち上がれテリーッ!!」

 

「ぐっ、任せろッ! 坊主ッ! すぐにハッチを閉めるッ! もう少し頑張ってくれッ!」

 

2人に担がれて動力室に入っていくテリーさんの姿がぼやける。いやそれだけじゃなくて眼と頭が痛い……。

 

(くそ……MAGを使いすぎた……)

 

前と同じ感覚でMAGを使っていたのが不味かったのか、それとも緊急用の生命維持装置の限界が近いのか、どっちにせよ、限界が近かった。このままだと全滅すると思ったその時だった機動班の1人が声を上げたのだ。

 

「な、なんだ。敵が、敵が見えるぞッ! ぼんやりとしているが輪郭が見えるッ!! おいッ! 皆目を凝らせッ! 動いてる影が見えるぞッ!」

 

「ほ、本当だッ! み、見えるッ! これなら当てられるッ!!」

 

「私も見えるわッ!」

 

次々に悪魔が見えると皆が声を上げ始める中……俺の目は掃射攻撃で倒れたスライムから溢れたMAGをデモニカスーツが取り込んでいる光景が見えていた。

 

(なんだ……何が起きて……?)

 

何が起きているのかは分からないが、ゴア隊長達が悪魔が見えるようになったのは確かなようだ。

 

「デモニカに何か送られて……悪魔召喚プログラム……!? 何なんだ、これッ!?」

 

その中で機動班のクルーが叫んだ悪魔召喚プログラムの名前に俺は目を見開いた。それはある意味俺の全ての始り……原点だったからだ。

 

(あんたもいるのか……STEVEN……)

 

悪魔召喚プログラムのお蔭か悪魔が見えるようになった澪達は俺の指示がなくてもスライムと戦う事が出来ていた。その事に安堵し、俺は床に座りこんだ。

 

「大丈夫か?」

 

「え、ええ……何とか大丈夫です、カトーさん。でも……ちょっと息苦しいです」

 

この感じは体力とMAGを使い切っただけではない、恐らく生命維持装置に異常が出たのだろう。それか蓄えている酸素を使いきってしまった可能性もある。息苦しくて目の前がチカチカするので後者の可能性がかなり高いと思う。

 

「テリー急げッ! 長久の限界が近いッ! ハッチよりも先に酸素供給だッ!!」

 

「急いでッ!!」

 

俺の様子がおかしい事に気付き慌しくテリーさんに通信を繋げる整備班のクルーの声が遠くに聞こえる。

 

(やばい……マジで体力の限界か……?)

 

詳しい年齢は判らないが10歳にも満たないこの身体には悪魔との戦いはやはり厳しかったのだろう。倒されてMAGへと分解されていくスライムと閉ざされたハッチ、そして駆け寄ってくる澪の姿を見ても俺はへたりこんだまま動く事が出来ないのだった……。

 

 

 

 

悪魔の襲撃を何とか切り抜けた私達は司令部ですぐに作戦会議を行う事になったのだが……私は正直気が気じゃなかった。

 

「若様、無理をして会議に参加しなくても良いのですよ?」

 

「……良い、大丈夫。これでも専門家として参加してるんだよ、澪。それに僕は何もしてないのに疲れたなんて言ってられない」

 

血の気が引いた顔をしている若様を休ませようとゴア隊長達も便宜を量ってくれたのだが、若様が頑なに会議に参加すると言うのだ。

 

「……分かった。君の意志を尊重しよう、その代り会議が終わったら大人しく医療室で療養するのだぞ?」

 

ゴア隊長の妥協案に若様が頷き、今後の方針を固める為の作戦会議が始まった。

 

「電力は回復したようだな……これで出来る事が増える筈だ。状況が好転した訳では無いが、皆パニックにならずに行動して欲しい」

 

「「「イエッサーッ!」」」

 

私達の返事を聞いたゴア隊長は満足そうに頷き、カトーとウィリアムズに視線を向ける。

 

「カトーはアーサーの再起動を急げ、ウィリアムズはプラズマ装甲の稼働を行ってくれ」

 

レッドスプライト号の指令コマンドであるアーサーの復旧、そして悪魔の襲撃を防ぐ為のプラズマ装甲の稼働は急務であり、私達がシュバルツバースで生き残るための最優先課題だ。

 

「よし、機動班諸君。よく悪魔を退けてくれた、皆素晴らしい戦いだった。だが……その事に安心する事は出来ない、我々は当初敵を認識する事が出来ず長久君の指示があって初めて戦えていた。それがこの悪魔召喚プログラムによって見えるようになり戦えるようになったが……このプログラムに関しては謎のままだ。少なくとも突入前のブリーフィング及びデモニカスーツのセッティングの際には存在しなかった。そうだな? タイラー」

 

ゴア隊長の問いかけに同じ機動班のタイラーが敬礼と共に返事を返す。

 

「はい、それは間違いありません。悪魔召喚プログラムは全員のデモニカに送られたようで、私も受け取っています。しかし……これをそのまま使用して良いものなのでしょうか? 長久君、専門家である君の意見を聞きたい。悪魔召喚プログラムをこのまま使用しても問題はないだろうか?」

 

タイラーの問いかけに若様は考え込むような素振りを見せる。するとあちこちから若様を攻めるような視線が向けられるのをみて、その視線に耐えかねて私は声を上げた。

 

「タイラー。若様は悪魔の専門家ですが、プログラムはお門違いだと思うのですが?」

 

「む……だが彼は悪魔の専門家なのだろう? 悪魔召喚プログラムについても何か知っているのではないのか?」

 

私とタイラーの意見が真っ向からぶつかる。確かに若様は悪魔の専門家としてレッドスプライト号に搭乗している、だが電子機器の専門家と言う訳ではないのだ。悪魔に対しての質問は答えれても、悪魔召喚プログラムに対する問いかけは答えれるわけが無い。

 

「悪魔召喚プログラムについてはアーサーが再起動してから解析させる。長久君、先に悪魔について聞かせて欲しい。あの個体デモニカにインストールされた悪魔召喚プログラムにはスライムと登録されたが……あのスライムという悪魔は強い悪魔なのか?」

 

ゴア隊長が私とタイラーの仲裁に入り、私達が凄まじい数の負傷者を出しながらやっとの思いで倒したスライムの個体としての強さを若様に問いかける。

 

「スライムはその……出来こそない、なりそこないの悪魔になりますので……悪魔で考えれば最弱の個体になります」

 

「なっ!? う、嘘だろッ!? あ、あれが最弱の個体だってッ!?」

 

「俺達の中で死人も出ているというのに……ッ」

 

スライムが最弱の個体と聞いて司令部に動揺が走るが、ゴア隊長が手を叩き、自身へと注目を集める。

 

「動揺するなと言うのが無理な話なのは分かっている。だが我々が恐怖すれば悪魔を呼び寄せる……そうだね? 長久君」

 

「はい、悪魔は生体マグネタイトを狙ってきます。怒りや恐怖は取り分け悪魔にとってご馳走です……難しいと思いますが、その冷静に動揺しないで貰えると生存率が上がると思います」

 

若様に向かってクルーの鋭い視線が向けられるので、1歩前に出て若様に向けられる視線から若様を覆い隠す。

 

「もう1度言いますが、若様に当るのはお門違いです。若様は疲労を我慢して会議に参加してくれているという事を忘れないでください」

 

「彼には休息が必要よ、私達よりも1回りも2回りも幼い彼に八つ当たりをするような恥知らずな真似はしないで頂戴」

 

私の言葉に続くように司令部の女性クルーも若様を庇う言葉を口にし、機動班のクルーはバツが悪そうな顔をして若様に向かって頭を下げた。

 

「すまない、動揺していた」

 

「八つ当たりのように怒鳴って申し訳無い」

 

「あ、いえ、その僕も少し説明が足りませんでしたから……スライムは確かに最弱の個体ですがレッドスプライト号を襲った固体は別個体となります」

 

謎掛けのような若様の言葉に思わず首を傾げ、少し考えてから私は小さく呟いた。

 

「出来損ないと成り損ないというのが関係しているのですか若様?」

 

「うん、澪。その通りだよ、悪魔は生体マグネタイトで身体を構築する。だけど生体マグネタイト……MAGって言うんだけど、これは存在しているだけで常に消耗するんだ、つまり……」

 

「あのスライムは身体を構築出来ないほどにMAGを消耗した別の悪魔の成れの果てということか……?」

 

若様の言葉を聞いたゴア隊長がハッとした表情をし、そう呟くと若様は我が意を得たりと言わんばかりに笑みを浮かべた。

 

「これは僕の考えになりますけど……シュバルツバース突入の際にレッドスプライト号とかを墜落させた悪魔がMAGを失ってスライムになったんじゃないかと僕は考えてます。スライムを見えるようになった後に尾とか、腕とか、羽のあるスライムがいませんでしたか?」

 

そう言われてみると確かにスライムは崩れかけた肉体と骨が見えていたし、その身体には似つかわしくない羽や腕のあるスライムがいたのを思い出した。

 

「つまりレッドスプライト号を墜落させれるような強力な悪魔が変貌したスライムだったから、他の個体よりも強かったと?」

 

「じゃあ本来のスライムはあそこまで強くないの?」

 

若様の説明を聞いて、より詳しい説明を求める機動班のクルーに若様が返事を返そうとした時、アーサーを起動させようとしていたカトーが声を上げた。

 

「ゴア隊長! 悪魔召喚プログラムですが、アーサーを介入して我々のデモニカに送られて来たようです! 通信ログがありますッ!」

 

「通信ログがある……!? 発進元が分かるか、カトーッ!?」

 

悪魔召喚プログラムを送ってきた何者かの情報が分かるかもしれないと、カトーへと視線が向けられる。

 

「待ってください、メッセージもあるのでそれも合せて再生します」

 

カトーがコンソールを操作するとメインモニターに漢字とカタカナの混じったメッセージが表示された。

 

『人間タチヨ。父トシテ 子トシテ 友トシテ……我ラハチカラヲ送ッタ。 君タチハ 人類ノ宿業ニ因ッテ コノ悪魔ガ支配スル地ニ 至ッタ。 ダガ有ルノハ 絶望ダケデハ無イ。 恐怖ノ 中ニ 希望モ マタ有ルノダ。 悪魔ハ敵デハアルガ……味方……仲魔デモアルノダ……我々ハ……カツテ……悪魔ト……』

 

「駄目ですね。ここで通信が途絶えてますね、ゴア隊長。悪魔召喚プログラムは……」

 

「全クルーに通達する。悪魔召喚プログラムの使用を許可する、このメッセージを送った相手は不明だがこのメッセージを見る限りでは友好的だ。今はこのメッセージの送り主を信じて見たいと思う。もしも異常動作やデモニカに異常が発生した場合は早急に報告するように良いな! では作戦会議を『こ、こちら医療室ッ! き、緊急事態発生ッ! た、助けッ!!』……医療班、医療班! ゾイ応答しろッ!! くっ! 機動班は私に続けッ! カトー、お前達は司令部を死守しろ!」

 

医療室からの救助要請に司令部が一気に慌しくなる。私はすぐにしゃがみ込んで若様に視線を合せる。

 

「若様は司令部で待機をしてください」

 

顔色が大分改善されているがまだ無理が出来る状態じゃない若様に司令部に残るようにお願いするが、若様は首を左右に振った。

 

「まだデモニカには悪魔の情報が少ない、スライムが見えるようになったのもスライムを倒してからだった。医療室の悪魔が見えない可能性があるんだ。僕も行くよ」

 

「ですが……ッ!」

 

「澪! 長久君の護衛は君に任せるッ! 長久君、アドバイザーとして同行してくれッ!!」

 

「り、了解ッ! 若様、申し訳無いですが背中におぶさってもらえますか?」

 

「分かった、行こう。澪」

 

抱っこしてしまうと両腕が使えなくなるので私は若様に背中におぶさってもらい、医療班の救出の為に医療室へと走る。

 

「坊主! 強力な悪魔っつうのはどんなのが考えられる! 警戒するべき攻撃とかがあったら教えてくれッ!」

 

「えっと炎、電撃、氷、風とかの魔法と、それとえっとえっと強力な物理に広範囲攻撃とかですッ!! でも1番やばいのは昇天と呪殺の即死魔法ですッ! 抵抗出来ないと本当に一瞬で死にますッ!」

 

「泣けるぜ……いつからファンタジーの世界に俺達は足を踏み入れたんだッ!?」

 

「嘆いてる場合じゃないでしょ! 医療室がやられたら終わりなのよ! 急がないとッ!」

 

「その通りだッ!! 急ぐぞ、皆ッ!!」

 

「「「イエッサーッ!!」」」

 

まだ悪魔について完全に理解出来ている訳ではなく、そして悪魔召喚プログラムに対する疑いもある。だが私達に足を止めている時間は無く、仲間を救う為再び悪魔との戦いに身を投じるのだった……。

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その3へ続く

 

 




ブルージェットまで行きたかったですが、今回もまだチュートリアル続行中です。原作との相違点ですが、悪魔の専門家と言う事で長久の同行、それと僅かですがシュバルツバース以外にも悪魔の出現事例でありと言う事で少しだけ悪魔に対する理解度があるという感じですね。次回はチュートリアル終了までは行きたいと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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