収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その4

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その4

 

レッドスプライト号の仲間を無事に救出し、負傷者こそ居るが全員無事に帰還出来た事に安堵し、外の捜索に若様が同行せず安全な所にいてくれたのが私が冷静にミッションに参加出来ていた理由だと思う。私は若様がいれば、若様を優先する。仲間も見捨てるし、盾にだってする。私にとっては若様を守る事が全てなのだ、それを成し遂げるためならば誰を犠牲にしたって、誰を裏切ったって私は何も感じない。

 

(だってそれが私だから……)

 

若様を守るためだけに育てられたのだから、周りの人間なんてどうでも良い……それが私の嘘偽りのない気持ちなのだ。

 

「おかえりなさい! 皆無事で良かったです」

 

司令部に入り若様の姿と私達の無事を喜ぶ若様の声に凍り付いていた心が溶け出すのを感じた。

 

「長久君も良くやってくれた。君の支援のお蔭で楽に戦えた……本当にありがとう」

 

「君がいなかったら悪魔を仲間にしようなんて思わなかったわ」

 

「ああ、悪魔が協力してくれたから無事に切り抜ける事が出来たんだ。感謝してるぜ、坊主ッ!」

 

子供の若様を蔑む視線も侮る視線もない、悪魔との戦いを経て若様の本来の力が認められたのだと思うと鼻高々だった。若様を侮っていた連中が若様に救われ、若様に感謝する。その光景を見るだけで溜飲が下がるのを感じながら私は若様の元へ向かう。

 

「若様、ただいま帰りました」

 

「おかえり澪。お疲れ様」

 

労いの言葉を頂けるだけで心が満たされるのを感じる。これだけで私は悪魔との戦いにも恐れずに立ち向かえるのだ。

 

「ゴア隊長。戻ったばかりで申し訳ないのですが、緊急報告があります」

 

険しい声色のカトーに私を含めた機動班のクルーの視線が集まる。休む事無く悪魔と戦い続けたのに、まだ戦えと言うのかと視線で訴えるとカトーが呻き声を上げて後ずさり、若様に視線を向ける。

 

「えっとですね。あの皆さん疲れているのは承知しているのですが、レッドスプライト号と同型機の反応を感知したそうです」

 

……あの野郎、自分が責められていると気付いて若様に説明させるとは……。

 

(絶対殺……しはしないけど、〆る)

 

若様を盾にするなんて万死に値する……本当なら殺してやりたいが、今そんな事をすれば若様を危険に晒す危険性が在るのでぐっと堪え、カトーを睨みつけるに留まる。

 

「同型機……!? 連絡は取れたのかカトーッ!」

 

「い、いえ応答はありませんが今も通信は続けています。そうだな、ウィリアムズッ!」

 

カトーが私の視線に耐えかけて声を上擦らせながらウィリアムズに尋ねるが、ウィリアムズは返事を返さずダイヤルを操作してチューニングを合わそうとしている。

 

「……繋がったッ! ゴア隊長! 救助要請を感知しましたッ!」

 

「なんだと!? デモニカに回せるか!?」

 

「はい! 大丈夫です! 交信回線に回しますッ!」

 

ウィリアムズがコンソールを操作し、全員のデモニカと司令部のスピーカーから男の怒号が響いた。

 

『誰か! 誰か生きてる奴はいないのか! 生きてるなら応答しろッ!!! 誰でも良い!! 生きてるなら応答してくれッ!!!』

 

鬼気迫るその声にただ事ではないとゴア隊長がデモニカの通信装置ではなく、レッドスプライト号の通信機を手に取った。

 

「こちらレッドスプライト号、隊長のゴアだッ! 聞こえるかッ!? 君の通信は捕らえている! 冷静に状況を報告してくれッ!!」

 

『レッドスプライトだと!? ブルージェット号じゃないのかッ!?』

 

「ブルージェット号のクルーか!? 君の名前と所属は……いや、ブルージェット号に何があったんだ!」

 

『俺は機動班のヒメネスだッ! 救助を要請するッ! 繰り返すッ! こちらブルージェット号機動班のヒメネスだッ! レッドスプライト号に救助を要請するッ!!』

 

シュバルツバースに突入する前にデモニカスーツの説明をし、偉そうな事を言っていたヒメネスが助けを求めている。これが普通の戦場ならば自業自得だと笑うが、超常の力を持つ悪魔の闊歩するシュバルツバースの調査を続けるのならばヒメネスの戦闘能力は惜しい。

 

「分かった。すぐに救助に向かうッ! ダガその前にブルージェット号はどうなった!? ブルージェット号は無事なのか、乗組員はどうなっているッ!」

 

『ブルージェットは終わりだッ! 姿の見えねぇ化物に皆やられたッ! くそッ! またやつらかッ!! 化け物共めッ!! うおおおおおおッ!!!』

 

ヒメネスの怒号と凄まじい銃声を最後にヒメネスとの通信は途絶えるが、完全に通信が途絶える前に司令部に響いた悪魔の咆哮に一刻の猶予もないのは誰の目から見ても明らかだった。

 

「位置は確認出来たか!?」

 

「レーダーと質量の位置までしか、詳しい場所は特定できていません!」

 

「それでも構わん! ブルージェット号の大よその位置予測を機動班全員のデモニカに送信してくれッ! 諸君休む間もなく出撃で申し訳無いが次のミッションだ! ブルージェット号の捜索及びヒメネス隊員の救出だッ! 仲間の救出は勿論、ブルージェット号に何が起きたのかそれを知る為にも彼をなんとしても助け出したい! 疲れはあると思うが全力を尽くして欲しい、行くぞッ!!」

 

「「「イエッサーッ!!!」」」

 

「これ、全員持っていってください! お守りですッ! それと僕も出来る限りサポートしますから! 皆さん気をつけてくださいねッ!!」

 

ゴア隊長の言葉に敬礼と共に返事を返し、若様の手製のお守りをデモニカの収納スペースに入れ応援の言葉を聞きながら私達は再び降車デッキへと走り出すのだった……。

 

 

 

 

再び出撃して行ったゴア隊長達から連絡が来るまでの間。俺は司令部のクルーに頼んでレッドスプライト号の情報を頭に叩き込んでいた。

 

(……マジで天才だったんだな)

 

峰津院長久の天才さに改めて驚かされる。俺からすればレッドスプライト号は未知のオーバーテクノロジーなのだが、それを完全に理解出来ている……それだけ峰津院長久の能力が高かったのだと心底驚かされると共に俺は現状の不味さに顔を歪める事になった。

 

「どうした? 何かゴア隊長達に不都合な事でもあるのか?」

 

「カトーさん……軽くレッドスプライト号のカタログスペックに目を通したんですけど、他の艦もレッドスプライト号と同じプラズマ装甲を持っているんですか?」

 

「……ああ。本艦は旗艦だから他の艦のような局地的な武装には特化していないが、基本的な部分は皆同じだ。それがどうかしたか?」

 

「……凄く言いにくいですし、言うべきではない事なんですけど……」

 

折角受け入れ始めてくれているのにそれを無碍にするような発言と言う事は分かっている。だがヒメネスが言っていたブルージェットは終わりという言葉から予測できる事態は2つ、1つはアーサーのような指令プログラムが機能停止し、復旧出来る技能を持つ技師が負傷していた。もう1つはプラズマ装甲を物ともせず破壊したの2つだ。

 

「なんだ? 何が言いたい? 悪魔に関して我々は門外漢だ。分かりやすく説明してくれ」

 

前者なら良い、プラズマ装甲を展開しているレッドスプライト号は安全だ。だが後者なら最悪の結果に繋がる可能性が極めて高く口ごもるとカトーさんが詳しく説明してくれと促すので意を決して口を開いた。

 

「……悪魔の中には電撃を吸収する個体もいれば、電撃を反射する者もいます。プラズマって要は電気ですよね?」

 

「ああ……まさかッ!?」

 

「プラズマ装甲の電圧を吸収して自分を強化してる可能性があると思うんです。守りはプラズマ装甲に頼ってますけど、それがかえって僕達を危険に晒してるかもしれません。だって電撃を吸収して自分を強化したとすれば……」

 

「同じプラズマ装甲を持つ本艦を狙うかもしれないと……ゴア隊長達に緊急通信を繋げろッ!」

 

「了解ッ!!」

 

何かに気付いたカトーさんが指示を出し、2コールほどでゴア隊長が通信に答えた。

 

『どうした? 何かトラブルか』

 

「ゴア隊長、現在地はどこですか!?」

 

『現在地はブルージェット号の元へ続く道を封じている巨大な岩の前だ。C4爆弾の使用を検討している所だが……』

 

ゴア隊長の言葉を聞いた俺はカトーさんの手にしていた通信機を引ったくりゴア隊長に向かって叫んだ。

 

「C4爆弾の使用は絶対に止めて下さい」

 

『だが人力ではこの岩を動かす事が……』

 

「ゴア隊長。話を聞いてください、悪魔の中には電撃を吸収、あるいは反射する個体がいます。ブルージェット号を破壊した悪魔が前者ならば、恐らくブルージェット号を破壊した悪魔はその岩の向こう側で餌を求めてうろついている筈です。C4なんか使えば……」

 

『派手なモーニングコールになる訳か、了解した。だがブルージェットはこの先だ、C4以外の手立てはあるのか?』

 

デモニカのカメラから写る岩は確かに巨大で人間の力では動かせそうに無い……なら「人間」の力を使わなければ良いだけの話。

 

「澪、それとえっと……ルーさんでしたっけ?」

 

『ん? 私を呼んだかね?』

 

『若様、何をすれば良いのですか?』

 

「ノッカーと契約してたよね? ノッカーは地霊、それも鉱山に生息する悪魔なんだ。彼らなら別の道を見つけてくれるかもしれない、召喚してくれないかな?」

 

2人にそう頼むとボロボロの布切れを羽織った小さな悪魔が2体姿を見せる。

 

「こんにちは。僕の声が聞こえるかな?」

 

『聞こえるよ、なーに?』

 

「うん、この先に行きたいんだけど、強い悪魔が居るかもしれないんだ。人間が通れるような道を作ったり出来ないかな?」

 

『出来るけど何かくれないとやだ!』

 

『甘いのが欲しい! 甘いの!!』

 

ノッカーは悪魔だが、その性質は妖精。残忍で冷酷でもあるが比較的中立の悪魔だ、生贄ではなく甘いお菓子をくれと言う辺りに本質的な善良さが見えている。

 

「分かった。その先に通してくれたら甘いお菓子を沢山用意するよ。それで通してくれないかな?」

 

2匹のノッカーは額を合わせて小声で会話し、OKサインを作った。

 

『『交渉成立ッ!』』

 

「ありがとう、じゃあお菓子を沢山用意して待ってるよ」

 

ノッカーが手にした槌で岩や壁を叩いて何かを調査しているのを見ているカトーさんに俺は何をしてるんですか? と思わず尋ねてしまった。

 

「いや、どうやって道を作るのかと」

 

「あのお菓子用意してくれないと大変な事になるんですけど、一応契約って形なので、それを反故にすると後が怖いですよ」

 

ノッカーがどれくらいの量で満足してくれるかは分からないが、戻った時にお菓子が無ければノッカーの怒りを買うと説明するとカトーさんは通信機でアーヴィンさんにお菓子を作るようにと頼んでいる。

 

『道が出来たぞ、1人ずつしか通れそうにないが……安全に通れそうだ』

 

「良かった。ゆっくり移動してください、あと出来ればカメラは起動したままでお願いします。もしかしたら悪魔の正体が分かるかもしれません」

 

ノッカーの力を借りて出来た隙間をゴア隊長達が慎重に潜り抜け、周囲を警戒していると澪のカメラに悪魔の姿が一瞬映った。その悪魔は下半身が蛇の馬に乗った両腕が蛇の悪魔がなにかを探すようにゆっくりと移動している。その姿を見たゴア隊長達も声を押し殺し、岩の陰に隠れる。

 

【シャアア】

 

【フシュルルルル……】

 

両腕の蛇が舌先をチロチロと動かす。腕とは言え蛇は蛇だ……ピット器官か何かでゴア隊長達が見つかるんじゃないかとひやひやしたが、悪魔は滑るように洞窟の奥へと消えた。

 

「……不味い」

 

「そんなに強力な悪魔なのか!?」

 

「……多分、あれ。堕天使です……ソロモン72柱の悪魔の一角の更に劣化コピーだと思いますけど……めちゃくちゃやばいです」

 

禄に悪魔も見えない、悪魔にまともに有効打を与えられず、周辺にいる悪魔は妖精や地霊と弱い悪魔ばかり……MAGの内包量がかなり少ない点からオリジナルからは比べ物にならない劣化コピーではあるが、今の戦力で勝つのは不可能に近い強力な悪魔だ。

 

「な!? 専門家だろう!? 何か策はないのか!?」

 

策はないのかと言われても、こんな状況で堕天使と戦うなんて想像もしていなかった……。

 

(考えろ、考えろ……何か、何か……)

 

選択を誤れば全員が、ベターな選択では誰かが死ぬ……全員が無事に生き残るには……必死に頭を巡らせて思いついた方法は1つしか無かった。

 

「ゴア隊長。貴方がレッドスプライト号のクルーの中で1番強い、そして悪魔を倒せる素質が1番高い。出発前に渡したお守りを絶対身に付けてください」

 

『……了解した。私が先陣を切ろう』

 

素質という面では全員似たり寄ったりだが、ゴア隊長だけが頭1つ抜けている。あの堕天使に勝てる可能性があるとすれば……それは現段階ではゴア隊長しかいない。

 

「ゴア隊長は指揮官だぞ!? 分かって言ったのか!?」

 

「普通は全滅するんですよッ! それだけ強い悪魔なんですッ! 勝てる可能性はどう考えたってこれしかないッ! 僕は専門家として考えろと言われたから考えたッ! 出来る事もやったッ!! 文句ばっかり言わないでくださいッ!」

 

他の方法があるのならそうしてる。悪魔の知識があっても戦えない、戦う力を持たない今の俺には精々アドバイスをすることしか出来ないのだ。

 

「……すまない」

 

カトーさんだけではない司令部のクルーからの謝罪の言葉にハッとし、すみませんと俺も頭を下げる。

 

「今出来る最善策はゴア隊長を主軸にすることだけです。あの悪魔もかなり弱体化してる……後は全員の無事を祈るしか出来る事はありません」

 

即興で用意したお守りには生存率を上げる為になけなしの精神力を使ってラスタキャンディを付与した。ただ絶対的に俺のMAGが少ない、俺はラスタキャンディを使ったつもりだが……タルカジャ・ラクカジャ・スクカジャの全てか、あるいは2つ、最悪1つしか効力を発揮しないかもしれない……試す時間もないぶっつけ本番だ。

 

『人間は皆殺しだああッ!!』

 

『各員奮起せよッ!!』

 

ブルージェット号の残骸の前で堕天使オリアス達とゴア隊長達の戦いが始まるが、俺の危惧したとおりラスタキャンデイはその効力を完全に発揮してはくれなかった。ブルージェット号の乗組員を殺しMAGを吸収しているオリアスだが、内包しているMAGが圧倒的に少ないのかかなり弱体化しているのが分かる。

 

(全員無事に帰ってきて欲しい)

 

これなら勝てるかもしれない、全員無事に帰ってきて欲しいと祈る俺の目の前のモニターにはゴア隊長が左腕を切り飛ばされながらもオリアスに組み付き、その口の中にC4爆弾を捻じ込む姿があった。

 

『地獄に落ちろッ!! 今だ起爆しろッ!!』

 

オリアスの身体を蹴りつけてゴア隊長が離れると同時にC4が起爆し、オリアスの上半身が消し飛び、その身体をMAGへと変えていく。

 

『止血だッ! 止血を急げッ!!』

 

『今から帰還するッ!! オペの準備を急いでくれッ!!』

 

司令部に慌しく響く機動班達の絶叫と必死のゴア隊長の延命措置を見て、俺はまた選択を間違えたのだと悟り、その場に崩れ落ちるのだった……。

 

 

 

 

レッドスプライト号に保護された俺は許可も得ずに艦内を歩き回っていた。シュバルツバース突入から半日も経たずブルージェット号は破壊、他の2隻は連絡が取れず、レッドスプライト号隊長のゴアも左腕を失い再起不能……余りにも絶望的な状況だ。

 

(ゴア隊長がおきたら作戦会議って言ってたけど、もう決まりだろ)

 

シュバルツバースの突入は失敗だったのだ。腕を失ったゴア隊長も目覚めれば脱出すると言う筈だ。

 

(……クソが)

 

悪魔……ブルージェットを破壊し、乗組員を虐殺したのは悪魔だ。伝説や御伽噺に出るような化け物が住む世界に俺達はいるのだと思うと身体が震える。勝てる訳が無い、シュバルツバースを破壊出来る訳が無い。お偉いさん方は安全圏でわーわー言ってるだけだが、この世界に触れた者ならば全員が言う筈だ。この作戦は失敗……。

 

「っと……すまん、考え事を……ゴア隊長!? あんたもう動けるのか!?」

 

ぶつかった相手に反射的に謝罪の言葉を口にし顔を上げると杖を手にしたゴア隊長がそこにいて驚きに目を見開いた。

 

「ああ、鎮痛剤のおかげでな。彼を休ませる為に澪を探しているんだが見てないか?」

 

ゴア隊長の背中に小さな子供がいるのを見て俺は眉を顰めた。

 

「あんたはそのガキの所為で腕を失ったのに面倒を見てやるって言うのかよ」

 

レッドスプライト号に搭乗している超常の専門家と言う肩書きのガキ峰津院長久を背負っているゴア隊長が信じられなくてそう言うと、凄まじい殺気を叩きつけられ、俺は思わず後ずさった。

 

「我々は彼が居たから助かったんだ。ヒメネス、君もだ。悪魔の専門家で、対処法を知る長久君がいたから救われたのだ。そのような言い方は止してもらおうか」

 

「情報を共有しなかったクソガキだろうが! 悪魔が居るって知ってたら「悪魔が居ると彼が訴えてそれを信じたのか? 悪魔を見ずに」

 

その言葉に俺は言葉に詰まった。悪魔が居ると言われてもこの目にしなければ、ブルージェットが破壊されなければ信じる事は無かっただろう……情報を共有しなかったのではない、信じてくれないとこいつは最初から諦めていたのだ。

 

「我々とてそうだ。悪魔を目の前にするまで彼の話を信じなかった。疑いの眼差しで見ていた、だが彼は我々を救う為に尽力してくれた……疑いと疑惑の視線に耐え、我々全員が生き残る為にこの幼い身体に鞭を打って今までずっと戦ってくれていたのだ。そんな彼を蔑むような事を言わないで貰おうか」

 

ゴア隊長の言葉に舌打ちし、形だけの謝罪をする。ゴア隊長は俺が謝っていないと分かっているのだろう……険しい表情を向けてくるがしょうがないと言わんばかりに首を左右に振った。

 

「私はこの様だ。ヒメネス、君にはレッドスプライト号の機動班に所属して貰いたい」

 

「はぁ!? あんた、この状況を見ても作戦を続行すると言うのか!? 正気か!?」

 

機動班に所属しろと言うゴア隊長の言葉に思わず怒鳴り返すと反対側の通路から誰かが走ってくる音がした。

 

「ゴア隊長! お目覚めになられたのですか!」

 

通路の先から現れたのはやたら胸のでかい女だった。確か……レッドスプライト号の機動班の……澪だったかと考えていると澪はゴア隊長が背負っている長久を見て若様と呼んで血相を掛けて駆け寄ってきた。

 

「澪。良かった、君を探していたんだ。長久君を頼む、彼の作戦で私は腕を失った。この異常事態では彼に責任追及する者も居るかもしれない。澪、君は次の作戦では待機にする。長久君を守ってやってくれ」

 

「了解です。ああ……若様、こんなに泣き跡を残して……辛かったのですね」

 

「自分の所為で私の腕を奪ってしまったと彼はずっと泣いていた。腕一本で命を拾えたんだ、私としては御の字だが……司令部の人間はそうは思わなかったのだろう。とにかく、彼に危害を加える者が居るかもしれない。彼を守ってやってくれ」

 

その言葉に頷き、澪は長久を胸の中に抱えて早足に歩き去って行った。

 

「もう良いか?」

 

「ああ。すまないな。ヒメネス。君の言う事も分かる……現状シュバルツバースの捜索および調査は不可能と言わざるを得ないだろう」

 

ならと声を上げかけた俺だが、ゴア隊長の顔を見て開きかけた口を閉じた。

 

「何かあるのか?」

 

「……我々は墜落してセクターアントリアに墜落した。アーサーが再起動しなければ詳しい事は分からないが……恐らく脱出する為の道筋も分からん。任務を続行するにしても、脱出するにしてもシュバルツバースの捜索を続けなければならない可能性が極めて高い」

 

「嘘……だろ?」

 

この悪魔が闊歩し、人間の命が容易く吹き飛ぶような地獄の捜索を続けなければならないと聞いて、自分の声とは思えないか細い声が出た。

 

「機動班に所属するかどうかの返事は会議に参加し、現状を把握した後で構わない。とりあえず今はこのシュバルツバースにいる人間として会議に参加してくれれば良い、澪達も医療室からにはなるが参加してくれる予定だ」

 

知りたくも無い情報を話してくれるゴア隊長から逃げるように司令部に向かって歩き出した俺の背中にゴア隊長の言葉が投げかけられた。

 

「10にも満たない子供が必死に戦っているんだ。大人である君は逃げないだろう? ヒメネス」

 

「ッ!」

 

挑発染みた言葉に俺が足を止めた隙に司令部に歩き出すゴア隊長の後を追って歩き出し、再起動したアーサーから告げられたのはゴア隊長と同じ現段階では脱出できないという事と、脱出する為にはシュバルツバースの調査を続けれなければならないと再確認するだけの無駄な時間だった。

 

「ゴア隊長」

 

「なんだね? ヒメネス」

 

「手が足りねえんだろ。脱出手段が見つかるまでだ、それまでなら機動班として協力する」

 

何もかもゴア隊長の思いとおりっていうのは気に食わないが、10歳にもならないガキにも劣ると言われて笑っていられるほどプライドがない訳ではない、分かっていると言わんばかりの笑みを浮かべるゴア隊長にも腹が立ったが、俺はレッドスプライト号の機動班に仮所属をすると告げ、渡されたIDカードを手にする。

 

「見てろ、あのガキよりも役に立つって所を見せてやるぜ」

 

「ああ。期待しているよ、ヒメネス」

 

見てろと告げて俺も司令部を出る。周りの機動班からの視線は冷たいが、俺にとっては何時もの事だと割り切り降車デッキへ向かうのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その5へ続く

 

 




と言う訳でなんやかんやでゴア隊長生存ルートに入りましたが、ホワイトメンには洗脳でもしてもらうことにしようと思います。

腕が無いのでとりあえずリタイアって形になりますし、ゴア隊長居ないとショタ長久の立ち位置最悪ですし、これは必要な生存と言う事でそれでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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