4周目の世界 滅びを求める地球意思 その10
敗北を認めたミトラスは改めて会談を私達に申し出てきたのだが……当然ながらクルーの中で意見が真っ二つに分かれることになった。
「あの悪魔を協力者と認めるなんて正気ですかゴア隊長ッ!? 私は見たんですッ! あの悪魔の配下がエルプス号のクルーに拷問を加えて実験台にしたのをッ! あの悪魔との会談なんて罠としか思えませんッ!!」
「敗北を認めたのならば殺すべきでしょうゴア隊長」
「そうね。いつ寝首を掻かれるか分かりませんし、姿を消せる悪魔も居る以上いつ暗殺されるか分かりません。ここはやはり機動班の全勢力をつぎ込んでミトラスを討伐するべきではないでしょうか?」
ゼレーニンを筆頭にしてミトラスを協力者と認めない、殺すべきだと主張するクルーに対してミトラスと戦ってきた澪達は全く違う違憲を口にする。
「そりゃあいつは悪魔だがよ。俺達はもうボロボロだった……帰還しようとした時に殺そうと思えば殺せたんだ。それをしなかったって事は本気で話し合いをするつもりがあるんじゃねえのか? ミッキー。あんたはどう思う?」
「……直接戦ったから分かるが現段階では機動班の勢力を集結したとしても勝てるとは思えない。無駄に死傷者・負傷者を出すくらいならば向こうが敗北を認め和平を要求するのならばそれを受け入れても良いだろう。澪、君はどう思う?」
「嫌味を言うつもりはありませんが……若様を害する相手よりもミトラスの方が好感が持てる……とだけは言わせていただきましょうか」
長久君を基準にする澪の意見は何の役にも立たないが、ヒメネスとミッキーの話は十分に参考資料にするだけの価値があったと思える。
「長久君。君はどう思う?」
「そうですね、ゼレーニンさん達には悪いと思いますが……ミトラスとの話し合い、協力の申し出は十分に益があると思います。正直に言わせてもらいますが……ゼレーニンさん達のは極端な偏見ですから」
極端な偏見と言われゼレーニンとゼレーニンに賛同していたクルーが長久君を睨みつけ、澪がその視線を遮るように前に出る。
「私は見たのよ。悪魔の非道を」
「でしょうね。でも人間も非道をする……違いますか?」
「……人間と悪魔とは違うわ」
「それはそうでしょう? 人間だって1人1人考え方が違う。僕の事を排除しようとしていたり、裏切り者というクルーがいるように、僕を味方だと思ってくれているゴア隊長や、ヒメネスさんもいる。人それぞれ考え方が違って当然ですよ」
長久君がそう言いながら手を上げると何処かから飛来した白い鳥が長久君の手の上に停まり、嘴を開いた。
『あの長久って奴はやっぱり信用ならねぇ。悪魔に俺達の情報を流してるんじゃねえか?』
『私はそう思ってるわよ。あいつを殺さないと私達はずっと危険に晒されるんじゃないかしら?』
『ゴア隊長達はあいつの術で操られてるんだ。あんなガキの話をゴア隊長達が信じるほうがおかしいぜ』
『澪達がいない間にあいつを殺すべきなんじゃないのか?』
『そうね、それがいいと思うわ。でも直接手を下すとばれるから……やっぱり毒物かしら?』
白い鳥の声はゼレーニンに賛同していたクルー達の声……即ち司令部詰めのクルーの声だった。
「ち、違う! そんなのはそいつのでっちあげだッ!!」
「そんな術を使う奴の言う事を信用するんですか! ゴア隊長ッ!!」
私が何も言う前に声を荒げて違うと叫ぶ司令部のクルー達を機動班のクルー達は冷めた目で睨みつける。
「僕は何とも思っていませんよ。ゴア隊長の判断にお任せします、まあ自分が怪しいのは自覚していますしね」
悪魔に関しては口を出すが、それ以外に関しては私に任せるというスタンスの長久君の言葉を聞いて、私は少し考えた後に長久君の暗殺を考えていたクルー5名の処罰を告げた。
「機動班クルーに命じる。司令部クルー、ユウト、マリー、ゴルード、チェン、そしてリューの5名を拘束せよ」
「「「了解ッ!!!」」」
機動班のクルーにあっという間に制圧され、引き摺られていく司令部クルー達は長久君を罵倒する叫びを上げる。
「ゼレーニンさん」
「な、なに、私も拘束するつもりかしら……力で意見を捻じ伏せるのが正しいと思ってるのかしら?」
ゼレーニンは後ずさり、そんなゼレーニンを追うように澪が1歩前に出る。
「澪」
「はい、取り押さえますか?」
「いや、良いよ。ゼレーニンさん、確かに悪魔は恐ろしい、ですがこのシュバルツバースにおいては頼もしい味方にもなりえるんです」
「それは貴方が悪魔の非道を見ていないからよ。あのマンセマットという天使の方が信用が出来ると私は思うわ」
天使……確かに熱心なキリスト教のゼレーニンならば悪魔より天使と思うかも知れないが、我々の意見は違っていた。
「セクターアントリアにて天使の手でクルーが4名殺害されている」
「え? いえ、でもそれは」
「この地を滅ぼす為に我々に逆らう人間は殺すとさ、生きたまま心臓を抉り出されて俺の目の前で死んだぞ」
「首が翼で切り落とされたわ。彼女のロザリオが紅く染まったのは今も忘れられないわよ」
天使の暴虐を見ていたクルーの言葉にゼレーニンは信じられないと言う表情を浮かべ、私に視線を向ける。
「事実だ。私が天使との交渉を命じ、そしてクルーが死んだのは紛れもない事実だ」
「そんな……天使が何で」
「天使だからですかね。このシュバルツバースに出現する天使は厳密に言うと多分キリスト教の天使じゃないんです。アントリアは戦争、ボーティーズは遊び、人間の側面が抽出された作られた世界と考えると天使もまた人間のイメージが大きく左右してるんじゃないかなって」
長久君の推測にヒメネスが手を上げ、私達の視線を集めた。
「てってことかあれか、天使は正義の味方、弱者の味方っていうイメージが極端になりすぎてあれになったと?」
「多分が付きますけどね、天使の基準でなにが善か悪かは僕にも分かりませんし、キリスト教を否定するつもりもありませんが、この世界の天使とキリスト教の天使は同一視しないほうがいいって事だけは言わせてください、ゼレーニンさんは悪魔の一側面を見ましたが、それだけが全てじゃないって事を分かっていただければ幸いです」
長久君の言葉に返事を返さす、ゼレーニンはフラフラと歩き出し司令部を出て行った。
「ゴア隊長。よろしいのですか? ゼレーニン隊員も一時的に拘束すべきでは」
「少し様子を見よう、彼女は聡明だ。我々と悪魔との関係性を見れば少しは考えが変わるかも知れん」
司令部クルーは最初から長久君を見ているのに彼を排除しようとしたので救いが無いが、ゼレーニンはまだ長久君を見ていない。このまま考えが凝り固まってしまうのか、それとも……。
「おい、長久。その白い鳥なんだ?」
「これですか? これは式神って言うまぁ簡単に言うと日本式魔法です」
「日本式の魔法!? そんなのが、いや、そんなのが使えるならなんでもっと前に「1回死んで三途の川に行った時に思い出したんですよ」……は?」
「……長久君、1回心肺停止してました。1分くらいでしたけど……」
「わ、わわわわ……だ、だだだあッ!?」
「澪が壊れたぞッ!?」
私の背後で大騒ぎになっているのに苦笑し、私は振り返って手を叩き、視線を集める。
「落ち着け、まずは改めてミトラスとの話し合いだ。澪、ミトラスはなんと言っていた?」
「……私とゴア隊長と若様を指定しております」
「私はともかく長久君もか……「僕は構いませんよ。それにミトラスに聞きたいこともあるんですよ、ちょっと欲しい物がありまして」……欲しいもの?」
ミトラスに頼んでまで欲しがる物があると言う長久君に私がそう問いかけると長久君は私の揺れる袖を指差した。
「ゴア隊長の腕。取り戻せるかもしれません」
「……何? どういうことだッ!?」
オリアスとの戦いで失った左腕を取り戻せるかもしれないと言われ思わず声を荒げる。
「式神を応用すれば義手が作れると思うんですよ。でも並大抵の金属や材料じゃ駄目なんで、ミトラスからゴア隊長の左腕の材料に相応しいものを譲ってくれるように交渉しようと思ってます」
「マジか!? そんな事まで出来るのかよ!?」
「かもが付きます、上手くいくかどうか自信はありませんが……やってみる価値はあると思うんですがどうでしょう?」
もう戦えないと思っていた……それがまた戦えるかもしれないと言うのならば……私の返事は決まっていた。
「勿論YESだ。澪、疲れていると思うが会談に向かう。長久君を頼むぞ」
「了解です。参りましょう、若様」
ミトラスとの会談……これが我々シュバルツバース調査隊の命運を分ける大きな転換期になる。敬礼し見送ってくるカトー達に敬礼を返し、レッドスプライト号を出ると悪魔が引く馬車が待っていた。
【どうぞ、お乗りください。ミトラス様がお待ちです】
簡易デモニカを身にまとっている長久君が頷き、私達はその馬車へ乗り込みミトラスの宮殿へと向かうのだった……。
ミトラスの宮殿の1Fに用意されていた豪奢なフロアで俺とゴア隊長と澪はミトラスと対峙したが、ミトラスを見て俺は確信した。
(勝てなかったな)
契約で縛りミトラスの手の内を封じたが、そうでなければミトラスには勝てなかったと一目で理解すると同時にミトラスがこの世界では人間に比較的友好的な悪魔というのも確信した。
「人間とは不便よのお、馳走を用意したのに食えぬとは」
「申し訳ないミトラス。人間にはこの空間の空気は毒なんだ。持ち帰って食べさせて貰うよ」
人間でも食べれる食事を用意してくれていたミトラスに頭を下げるとミトラスは手にした扇子を広げて笑った。
「うむ、そうするが良い。神子よ」
「……なんでそれを」
「ほっほほ。神子のMAGは純度が高く清らかだ。神子がいるのならば母を裏切るの吝かではないぞ? お主についたほうがアタシは強くなれるからな」
打算はやっぱりあったか……神子のMAGによる神化。それを狙ってミトラスは俺達に付いてくれたようだ……ならば。
「契約だ。僕のMAGを渡すのは良い、だが僕達を裏切るのは許さない」
「ほほ、よかろう。契約だ、互いにMAGの文字で良かろう。契約書を持てッ!」
ミトラスの指示で悪魔が契約書を持ってくるのでMAGを込めた文字で名前を書き、俺とミトラスと互いに縛り付ける。
「用心深いな、童の割りにはな」
「1度裏切ったら2度裏切る、警戒するのは当然ではないだろうか?」
俺の言葉に澪とゴア隊長はひやひやしている様子だが、ミトラスは愉快そうに声を上げて笑った。
「豪胆、真に良い。モラクスも愚かよのお……」
くっくっくと喉を鳴らすミトラスは前のセクターの支配者であるモラクスを馬鹿にしていた。
(若様、モラクスは私が使役しているのですが)
(……別固体なんだと思う。モラクスはモラクスだけど仲間のモラクスじゃないって言いたいんだよ)
モラクスを使役している澪だが、そのモラクスは悪魔合体で作り出したもので中身は別物なのだ。こちらにつけばもっと強くなれただろうにとミトラスはモラクスを馬鹿にしているのだと説明する。
「ミトラス。母とはどんな悪魔なのだ」
「ゴアか。母とはこのシュバルツバースを支配する3柱の悪魔、そしてその上に大母がいる。この滅びの地をどうにかするには4人の母を倒さねばならぬだろう」
4体もの強力な悪魔が居るという言葉に立ち眩みを覚える。モラクス、ミトラスも強力だが、そのミトラスよりも強力な悪魔となれば……。
「配慮感謝する。ミトラス」
「ほっほっほ、気にするではないぞ。じゃが少しばかりほかの人間にも知恵を授けるべきじゃな」
俺とミトラスのやり取りが分からない様子のゴア隊長に今何が起きているのかを説明する。
「母と呼ばれる悪魔は恐ろしく強力な悪魔です。下手にその名を口にすればなんらかの報復があるはずです、ボーティーズを消し飛ばすほ
どの何かが間違いなく放たれます」
「……ッ!? すまない、ミトラス。私の浅慮だ」
「ほほほ、素直に謝れるは美徳ぞ?」
自分の身を危険に晒してもミトラスは俺達にシュバルツバースの支配者の情報を齎してくれたのだ。
「1つ聞いても?」
「答えれる範囲で頼むぞ。アタシはもう警戒されておるからな」
……母の数を答えたのはかなりグレーゾーンだった訳か、笑ってはいるが状況は良くないと見た。
「孤立した悪魔か、それとも分霊か、どっちかな」
「……分霊じゃな、これ以上は言えん」
「ありがとう、感謝する」
分霊という事は複数の神格を持った神が恐らく大母で、その神格から分かれた人格が支配者たる母になっていると予測がついた。
「ミトラス、ゴア隊長の腕を治すにのに良い材料を探してるんだ。何かないだろうか?」
「あるにはあるが只ではやれんぞ?」
「僕のMAGを出す。それと交換してくれまいか?」
式神を使えても精々出来て情報収集、切り札は1度こっきり、やはり戦えないと言うのは変わらないので身を削るのは当然だ。ゴア隊長と澪が駄目だと視線で訴えるが、これからを考えると必要な物も多くなるので
「構わぬぞ、どれ」
ミトラスが手を叩くと様々な物が運ばれてくる。
「……なんと」
「私でも分かりますね、これは凄い」
「うん、確かに凄い」
ボーティーズでは手に入らないような上質なフォルマに、悪魔の身体の一部と思える大量の材料が山のように運ばれてくる。
「ここから好きに選ぶが良い、だがMAGと交換と忘れるなよ? きっちり取り立てるからの」
「……分かった。ゴア隊長、澪。色々と調べるから待ってて欲しい」
確かにミトラスは人間には協力的だが、俺から命に関わるギリギリまでMAGを取り立てるつもりなのはその反応で分かった。あれやこれやと選んでいくとそれこそ数日寝込む事になりかねないので俺は良く吟味してゴア隊長の義手の材料を選び始め、その中の1つに俺は手を止めた。それは砕けた槍片だが、内包しているMAGがとんでもない。恐らく高位の悪魔の武器の欠片だろうがこれならば申し分ない」
「そいつは高いぞ? なんせ稀少品だ」
「そうだろうね、でもこれがいい、これを貰おう」
「良かろう、では手を、MAGと交換じゃ」
ミトラスの手に俺の手を重ねると凄まじい量のMAGが吸い上げられる。
「これくらいじゃな」
「……思ったよりも安いな」
葛葉流の技を2つか3つ続けて使ったくらいの疲労感ならもう少し資材を貰っておいても良いかも知れない。
「戯け、神子よ。お前のMAGが規格外なだけじゃ」
あきれたという様子でミトラスは笑うが、俺はもう少し貰うと言って資材の吟味を再開し、俺のMAGの半分と引きかけに幻魔の槍片、妖鬼の青板、悪霊の墳炎等のボーティーズでは入手できないフォルマを大量にミトラスから譲り受けた後にミトラスとの話し合いを再開するのだった……。
アーヴィンと長久が作った義手が完成し、ゴア隊長が熟練訓練をすると言うので俺もその様子を見に来ていたのだが……。
【バガブ! ブーブーッ!!】
「ははッ! お前人懐っこいな」
【ブーブー♪】
バガブーが長久に随分馴れてしまい、撫でろ撫でろと頭を長久にこすり付けている。
「悪いな、長久。バガブーの奴、随分とお前が好きみたいだ」
「そうみたいですね。基本的に人懐っこい悪魔なんじゃないでしょうか? はい、バガブー。チャクラドロップ食べる?」
【バガブ、バガブーブー♪】
長久から貰ったチャクラドロップを美味そうに頬張るバガブーを見てやれやれと肩を竦めながら、俺はこれはこれで好都合かと考えていた。
(バガブーはそれなりに強いし、まぁこれで長久も安全だろうよ)
ゴア隊長の訓練を見学しに来ている連中の中にも長久を面白くないと思ってる連中は居る。だがバガブーが居れば危害を加えようとする馬鹿は居ないだろうと長久にバガブーを預ける。
「ヒメネス。ちゃんと様子を見てくれないと困る」
「澪、見ろよ。あんだけじゃれついてるんだ。心配ねえよ」
犬か何かのように長久にじゃれてる姿を見れば心配するのが馬鹿になってくるってもんだと言うが、澪は納得してない様子ではらはらとした様子だ。
「あんまり構うと嫌われるぞ」
ちょっとした冗談のつもりでそう言ったのだが澪は膝から崩れ落ちてしまった。
「き、嫌われ……?」
「じょ、冗談、冗談だ! そんな真剣な顔すんなよ!?」
なんかこのまま自殺しそうな澪に長久の事でからかうべきじゃねえなと反省し、澪に手を貸して立ち上がらせる。
「ちゃんと見とけよ。俺達が出てる間、長久を守ってくれるのはゴア隊長くらいなもんだ、お前の御眼鏡に掛かるかちゃんと見とけ」
「……うん、分かった」
こいつ本当やりにくいな、最初は姉弟かと思ったがどうも違うみたいだし……余りに複雑な関係っぽいので深入りしないほうが良いだろうと思いゴア隊長に視線を向ける。
(本当に左腕があるんだな、それも普通の腕だ)
武装を内蔵した腕とかではなく本当に普通の義手に見えるが、俺の知る義手と違って滑らかに指が動いている。
「データ取りの準備が出来たぜよ。始めてください、ゴア隊長」
「了解した」
アーヴィンのGOサインが出るとゴア隊長は左拳を握りこみ、サンドバッグに振り被った左拳を叩き込み、その一撃でサンドバッグが破裂した
「ヒュー♪ こいつはすげえ」
「確かに凄いな、驚きだ」
悪魔由来の素材を使っているので身体能力の向上があるとは聞いていたが……凄いパワーだ。一応あのサンドバッグデモニカスーツの鍛錬用なのでかなり頑丈な筈なんだけどな……。
「どうですか?」
「……まるで自分の腕のようだ、少しばかり力が強い気がするが……実に馴染む」
握り拳を作るゴア隊長は満足そうに頷き、支給品のマシンガンを手にしようとし……それを握り潰した。
「む……しまった。力加減が難しいな」
「そうみたいですね。ゴア隊長、今度はこちらを使ってみてください」
資材班のチェンが見た目は普通のマシンガンを差し出すが、こうやって差し出したという事は俺達が使うアラバスターSのような悪魔の素材を使った銃器なのだろう。
「ゴア隊長。気をつけてくださいよ、そいつはかなり強力ですからの」
「分かった。離れていてくれ」
左腕でリボルバーを構え引き金を引くと凄まじい轟音と共にゴア隊長の身体が後へ向かって弾かれ、地面に2本線が刻まれる。
「とんでもねえ反動だな、腕が吹っ飛ぶぞ」
「相当しっかり構えないと駄目だろうな……しかし凄まじい威力だ」
「ああ。これが外にあったら大惨事だな」
回収したブルージェットの装甲版が拉げている。凄まじい破壊力を秘めた片手銃に戦慄を覚える。
「かなりの代物だな。だが左腕じゃなければ撃てそうにない」
「でしょうな、最初からその前提でつくっとる」
ゴア隊長専用武器って事かしかしまぁ悪魔の素材で作るとこうも破壊力が高まるものか……でも良く考えればアラバスターSも外の世界では使えないほどに反動の強い銃の筈だが今は片手でも使えている。
「ウルフ、復帰するならしっかり身体を鍛えておけよ。じゃねえと死ぬぞ」
「見りゃ分かるッ! これは普通のリハビリじゃ駄目そうだな……」
デモニカスーツの自動拡張能力の凄まじさを体験していたが、その凄まじさを目の当たりにするのとそうじゃないのでは全然違う風に見えるなと思いながらゴア隊長の義手の訓練を見ているとデモニカスーツにSOSが届いた。
『こ……こち……はマイ……だ……袋……に……魔……を……る悪魔……て……る……きゅ……を……る』
ノイズ交じりでよく聞こえなかったが、悪魔に襲われているクルーからのSOSシグナルだった。
「総員集合! SOSシグナルで分かっていると思うが陽動部隊で未帰還のマイクからのSOSだ。至急隊を組んで救出へ向かうッ!」
「待ってくださいッ!!」
ゴア隊長の指示を遮って長久が声を上げた。集まっていた機動班のクルーの視線が長久に向けられる。
「長久、君はマイク達の救出に反対なのか?」
「違いますタイラーさん。マイクさん達を襲ってる悪魔が桁外れに強い危険性があります。ノイズ交じりでしたがバイオリンの音色が聞こえました」
バイオリン……確かに通信の中に音楽のようなものが聞こえたような気がするな。
「それがなにか関係あるのか?」
「魔人と言う極めて強力な種族の悪魔が居ます。絶対の死の権限、不吉の象徴……それが魔人で、バイオリンを所有する魔人がいるんです……名前をデイビット、下手をすればミトラスよりも強いかもしれない悪魔です」
ミトラスよりも強い悪魔にマイクたちが襲われていると聞いて流石に俺達の顔が引き攣る。
「若様、ではマイクたちを見捨てるのですか?」
「見捨てない、でも無策で突入して戦える悪魔じゃない。マイクさん達を危険に晒すことになるのは重々承知ですが……十分に準備を整えてから救出に向かうべきだと思います」
無策で突入すればミイラ取りがミイラになりかねないって事か。俺としては長久の意見に賛成だが……ゴア隊長はなんと言うだろうか。
「分かった。アーヴィン! チェン! 消耗品の準備をしてくれッ! それと式神で偵察は出来るだろうか?」
「出来ます。それに補給物資も運べます」
「良しッ! これから30分後にマイク達の救出作戦を発令するッ! 各員は準備を急げッ!」
「「「了解ッ!!」」」
と返事をした物の……ミトラスよりも強いという魔人と言う種族の悪魔の存在が示唆され、しかもそれが副数体存在すると言う地獄みたいな情報に俺は深く溜め息を吐きながら出撃のための装備を整え始めるのだった……。
ミトラスの宮殿の近くの入り組んだ一本道に澪達の突入を支援していた陽動班の機動班クルー達は居た。
「♪~♪~」
「ま、まただ……またバイオリンの音が聞こえるッ! もう頭がおかしくなりそうだッ!!」
「静かにしなドーソンッ! あんたの声が悪魔を誘き寄せるんだよッ!!」
頭を抱えて絶叫するドーソンを気の強い女性クルーキーマが窘めるが、キーマの顔にも色濃い疲労の色が浮かんでいる。
「今一瞬SOSが発信出来た、まだ諦めるに早いッ」
「OKマイク。あんたの前向きな言葉を信じるよ……でもあたしたちも運が悪いね、全く」
陽動作戦は2小隊12人が6名ずつバギーに乗り込み用いて行なわれ、陽動を終えて帰還している最中にデイビットに襲われマイク、ドーソン、キーマ、ダニエル、スコット、スティードマンの6人だけが生き残った。
「SOSが出せたなら望みはありますね」
「ああ。ゴア隊長ならきっと助けてくれる……ッ」
装備は僅か、全員が大なり小なり負傷し、仲魔の悪魔は全員死亡……その絶望的な中でSOSを発信で来たと言うのはマイク達にとっての希望だった。
『希望に目を輝かせ、そしてその希望の前で絶望させ心を折る……その時の人間の絶望の声は実に素晴らしい』
だがその希望もまたデイビットによる与えられた仮初の希望である事をマイク達は知らない。
『仲間を助けるんだと言う勇気ある人間の鼓動、そして仲間も助けられず、己もまた死ぬと悟ったとの死と絶望が奏でる音色……此度の歌劇は素晴らしい物になりそうだ』
ストラディバリを奏でながらデイビットはそのがらんどうの瞳を輝かせ、ほんの僅かな希望に縋るマイク達を見てほくそ笑むのだった……。
4周目の世界 滅びを求める地球意思 その11 へ続く
ミトラスがMAGをフォルマと交換してるポジにチェンジ、左腕を失ったゴア隊長の復活と来て、次はEXミッションの脱出作戦です。
これは個人的に好きなのと死兆石が今後のイベントで使いたいのでEXミッションの脱出作戦をシナリオに組み込んで見る事にしました。
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。