収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その14

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その14

 

大天使マンセマット、そしてマンセマットからゼレーニンが天使を受け取った事でクルーの間で不和が生まれてしまった。いや、不和というよりもこれは……信じたいのだろう、天使が手助けしてくれる。それは神がいるという証であり、神に守られているという安心感が欲しいのだろう。

 

「天使を授けてくれたって事はやっぱりマンセマットは我々の味方だろう!」

 

「馬鹿か! そんなんでころって天使を信じてどうするんだッ! アントリアで何があったか忘れたとは言わせねえぞ!」

 

「あ、あれはッ! あの天使が特殊だっただけだと」

 

「信じられないわッ! 天使を信じるくらいなら私は悪魔を信じるわッ! 彼らは対価を求めるけど、対応は誠実よッ」

 

澪達がマンセマットから授けられたと言うフォルマを元にオーカス用の武器をアーヴィンが作成している間は休息としたが、それで口論をしていては意味がない。仲裁に入ろうとした時アーサーが声を上げた。

 

『感情論での話し合いは時間の無駄です。この場は専門家の長久に聞くのが1番正しい選択ではないでしょうか?』

 

確かにその通りだが、この場合は完全に悪手だ。タイラー達とヒメネスの様子を見てからレッドスプライト号へ戻ったばかりの長久君に司

令部のクルー全員の視線が長久君に向けられた。

 

「若様は今忙しい、貴方達の私情に巻き込まれている時間はない」

 

澪が前に出てその視線を遮るように威圧する。何人かはそれにたじろいだが、それでもその視線は長久君に今だ向けられている。

 

「天使が悪か正義かですか……難しい問題ですね」

 

「天使は正義だろう?」

 

「いえ、正義と一言に言いますが、例えばですよ? 僕達を全員犠牲にすることでシュバルツバースを消せるとしましょう。その為に死んでくれと言われてカトーさんは死ねますか?」

 

その言葉にカトーは黙った。世界の為に死ぬ覚悟は出来ている。だがそれとこれとは話が別だ。

 

「でもそれで世界が平和に「天使の作る世界は完全なカースト社会ですよ? 天使にとって階級が全て、人間にもそれを強いるのは間違いないです。世界の為に死に、その後に作られる世界は天使と神を最上位とし、その命令に従わなければ生きていけない世界だとしたら?」……それは極論では?」

 

確かに長久君の話は極論に思えるが……長久君の顔を見て私は理解してしまった。

 

「峰津院の家に残されていたのかね?」

 

「まぁ似たようなものがとだけ、とは言え手元にないので僕の口からでまかせと疑う人も当然いるでしょうね。だから言わせて貰いますが、僕は天使を信仰しろともするなとも言いません。自分で考えてそれが正しいと思えばそうすれば良い」

 

長久君の言葉に思わず振り返り、その何の感情も感じさせない零の瞳を見て私は絶句した。何を見れば、どんな体験をすればこんな目が出来るのか想像もつかなかったからだ。

 

「僕が駄目と言ったから、僕がいいと言ったからと責任転嫁をされては困るんです。貴方達が天使が正しいと思うのならば、そうすれば良い。だけどそれはあくまで個人的にしてください。レッドスプライト号全体ではなく、貴方達だけで動けば良い。僕も自分で正しいと思う選択をしてきましたが、調査隊の皆さんが僕が必要ないというのなら僕は艦を降りますし、必要だというのなら残ります。人それぞれ自分の意見がある。だけどそれを全体の意見として押し付けるのはお門違いというものでしょう?」

 

長久君はそう言うと再び澪と一緒に悪魔の選別と交渉すべき悪魔のピックアップ作業を再開する。長久君の厳しい言葉に長久君を敵視するものもいるが、自分で何が正しいのか考え始めようとしている者もいる。

 

(情けない限りだ)

 

あんなに幼い長久君が自ら憎まれ役を買って出た。本来ならば私がやるべきだったのに長久君にやらせてしまったことに後悔していると長久君が突然立ち上がった。その勢いで座っていた椅子が引っくり返り、司令部に凄まじい音が響き渡った。

 

「わ、若様!? どうなさったのですか?」

 

澪が長久君に近寄りどうかしたのかと尋ねるが、長久君はそれに返事をせず信じられないと言わんばかりに目を見開き、外の様子を映しているモニターを見つめいていた。

 

「若様? 若様ッ!」

 

「あ。ああ、澪。ごめん……ちょっと信じられない事があって……多分見間違いだと思う。すいません、騒がしてしまって」

 

「いや、構わない。調子が悪いのならば休んでいてくれても構わない。再出撃までまだ時間がある」

 

アーヴィンの開発している武器がいつ完成するか分からないので休んでいても構わないと言うが長久君は首を左右に振った。

 

「いえ、大丈夫ですよ。それにオーカスとの戦いが控えているのに休んでられませんよ」

 

柔らかい笑みを浮かべる長久君だが、その顔には濃い疲労の色が浮かんでいる。だがそれをおくびにも見せず作業を続けているその姿を見て、私は頬を叩いて気合を入れた。

 

「動ける機動班は私に続け! レッドスプライト号周辺で悪魔と交渉し、仲魔を増やすッ! それが我々の生き残る道であるッ!」

 

「「「了解ッ!」」」

 

今やるべき事は少しでも多くの悪魔を仲魔にし、戦力を強化することだ。それが回り回って我々を救う事になる。

 

「ゴア隊長。デモニカに仲魔にして欲しい悪魔のリストを完成次第送ります。大変だと思いますがよろしくお願いします」

 

「ああ、任せてくれ、カトー。私がいない間指揮を頼むぞ」

 

カトーに指揮を任せ私は機動班を引き連れてレッドスプライト号の外へと降り立った。

 

「分かっていると思うが悪魔を仲魔にするのは勿論だが、重要なのは我々の錬度向上である。各員緊張感を持って行動せよ」

 

「「「了解ッ!」」」

 

仲魔の獲得、そして錬度上げを目的とした演習を開始した。だが当然ながら錬度の低い者が大半であり3つ目のセクターであるカリーナでの戦いは終始厳しい物であったが、機動班のクルーの多くの士気は高い事もありカリーナの悪魔とも集団戦闘になれば十分に戦う事が出来ていた。

 

「大分悪魔を仲魔に出来ましたね」

 

「うむ、フォルマもかなり確保出来たしな」

 

長久君が送って来たリストの悪魔は半分ほどしか仲魔に出来ていないが、錬度の向上とフォルマの収集という第二、第三目的は十分に達成出来た。もう少し悪魔との交渉を続けるかと考えているとデモニカに通信が入る。アーヴィンからの連絡でオーカスバスターが完成したと報告を受けた私は演習を切り上げ、レッドスプライト号への帰艦命令を下すのだった……。

 

 

 

 

 

 

アーヴィンが作成してくれたオーカスバスターを携え、私はスティードマン達に守られながらオーカスを監視しているヒメネスとタイラー達の元へ向かっていた。

 

「澪。お前は戦うなよ? これが俺達の任務だ」

 

「そういうこと。悔しいけど俺達じゃオーカスとは戦えない。なら戦える澪は力を温存しないとね」

 

「ありがとうございます。助かります」

 

MAGと体力、そして弾薬等を温存出来るのは非常にありがたいので素直にスティードマン達に頭を下げる。

 

「お前の所の若様に助けられたんだ。これくらいの恩返しはするさ」

 

「そうそう、司令部のクルーはちょっと考えるべきだよねー」

 

『あのーすいません、僕の式神を通じて会話が司令部に響いてるんですが?』

 

「だから言ってるんだよ~?」

 

にへらと笑うその姿は悪意や毒気が感じられないが……笑顔で毒を吐ける人種のようだ。

 

「安全な所で指示を出してる連中なんてそんなもんだ。現場の人間ほど長久、お前の価値が分かる」

 

『どうも?』

 

「あはは~照れてる? 可愛いね~」

 

けらけらと笑うフィンと小さく笑うスティードマンが銃を構え道を遮る悪魔の胴に風穴開けて道を作る。

 

「なんだろうな、前よりも強くなってる気がする」

 

「確かにね、どういうことかな?」

 

『あ、それは簡単です。デイビットとの戦いで魂の格が上がったんですよ。モラクスとミトラスと戦った澪やヒメネスさん程ではないですが、マイクさん達もかなり魂の格が上がってMAGを蓄えれるようになったんですよ』

 

若様の説明にスティードマンは納得したように頷いた。

 

「戦えば戦うほどに強くなるか、分かりやすくていい」

 

「調子に乗ってデイビットに殺されかけたみたいにならないように気をつけるね~」

 

スティードマンとフィンに守られながらオーカスの元へ向かっていると急に身体が重くなった。

 

「うっ……急になんですか……これは」

 

「な、なんだ……?」

 

「うわ、すごいしんど……長久君これなに~?」

 

体力には余裕があったのに急に凄まじい疲労を感じ、走る速度を緩め若様に何が起きているのかと問いかける。

 

『オーカスが周囲のMAGだけじゃなくて生命力も吸い上げてるんだと思います。時間を掛けるとどんどん衰弱していく事になると思います、オーカスバスターがどれくらい効果があるか分かりませんが急いでくださいッ! 取り返しの付かない事になる可能性がありますッ!』

 

生命力を吸われていると聞いて私もスティードマンもフィンも気合を入れて走る速度を無理矢理上げる。

 

「生命力はどれくらいの頻度で吸われるんだ?」

 

『そこまでは分かりませんが、長時間その区画にいればどんどん影響は大きくなりますし、範囲も広がると思います。多分エルブス号を吸収したことで得た能力だと思います。ただ今はまだ完全に同化していないですし、オーカスも力を使いこなせていない。今ならまだ勝機があります』

 

「それなら急がないとねぇ~オーカスがとんでもない事を言ってるのがここまで響いてきているし~」

 

カリーナ全体を震わせるようにオーカスの大声が響き、私達の進路を塞ごうとしていた悪魔が一瞬でMAGに分解されて消え去り、言葉に出来ない虚脱感が襲い掛かってきた。

 

【ブォーノッ! ブォーノッ! コノ鉄ノ船ハ美味ダッタッ! 人間ガハサマッテイタカラダッ! 地上ニ出レバモット食えるッ! 人間ドモヲタラフク食えるッ! 貴様ラヲ残サズ食ロウテ地上ダッ!地上ダッ! 地上ダッ! ブオオオオオォォーノッ!】

 

エルブス号とエルブス号のクルーを喰らった事を喜んでいるオーカスの声を聞いて、オーカスをこのままにしておけないと歯を食いしばり走り出す。

 

「み、澪かッ! ぶ、武器は出来たのか!?」

 

「い、急いで……マジでやばいよ、あいつッ!!」

 

オーカスを監視していたヒメネス達は私達よりも影響が大きいのか通路にもたれかかるようにぐったりしていた。だがヒメネスは私と私の持っているオーカスバスターを見ると目を爛々と輝かせ震える足で立ち上がった。

 

「とんでもない根性だな」

 

「そうだねえ」

 

ほかの機動班のクルーが動けないほどに衰弱しているのに立ち上がったヒメネスには若様も私も驚いた。

 

『ヒメネスさん、無理をしないほうが……』

 

「とっととオーカスを何とかしねえとやべえんだろッ! 今無理しないでいつ無理するんだよ長久ッ! 澪、長久ッ! 急ごうぜッ!」

 

若様の言葉を遮ったヒメネスだが、今回は全面的にヒメネスが正しい。オーカスをこのまま放置すれば生命力とMAGを吸い取られオーカスと戦うどころではない。マンセマットから受け取ったフォルマを使った武器であるオーカスバスターには僅かばかりの不安はあるが今はこれに頼るしかないのもまた事実だ。

 

「分かりました。スティードマン、フィン。動けない皆の護衛をお願いします、ヒメネス、若様。行きましょう」

 

おうっと返事を返すヒメネスと共にエルブス号を取り込んだオーカスの前に立った。

 

【ナンダー? マタ美味シソウナ人間ガ……オオオオ、神子ッ! 神子よォオオオオオッ!! ご馳走ガ自分カラッ!】

 

私の肩の上に留まっている若様の式神を見たオーカスが歓喜の声を上げ、地響きを上げながら突進してくる。

 

「澪ッ! この大食い野郎からのオーダーだッ! とびきりのご馳走を飽きるほど食わせてやれッ!! シェフ・澪の腕によりをかけたご馳走をお見舞いしてやれッ!!」

 

「ええ、言われなくともッ!!」

 

自ら突進してくるのだから狙う必要もない、反動に吹っ飛ばされないように足を開いてしっかりと地面を踏みしめて引き金に指をかける。

 

『やっちゃえ澪ッ!!』

 

「はい、お任せください若様ッ!!」

 

【ブ……ブォーノッ!? ブォォォォォォォォーノッ! ブォォォォォォォォーノッ!?!? 抜ケル……抜ケル……食ロウチカラガ……ヌケェェェェェェェェールッ!】

 

プラズマ装甲を前にすればどんな兵器も悪魔の能力も役に立たない。オーカスはそれを身を持って知っていたから防御もせずに突っ込んできた。勝利を確信していたオーカスは自分の身体から力が抜けていくのを感じ取り絶叫を上げる。

 

『良し、利いてるッ!』

 

「どんどんぶちかませ澪ッ!!」

 

「ええ、分かっていますッ!」

 

オーカスとエルブス号の繋がりを断ち切る為に再びオーカスバスターを構えようとした時。背後に突然強い気配が現れ、オーカスバスターの銃口をオーカスから背後に向ける。

 

【おっと、銃口を向ける相手はお間違えなく……敵は私ではなく、オーカスである筈。違いますか?】

 

そこにいたのはマンセマットだった。確かに武器が出来れば見に来ると言っていたが、マンセマットが現れたのは余りにもタイミングが悪かった。

 

『澪早くオーカスにッ!』

 

「ッ!」

 

若様の言葉に振り返りオーカスバスターの引き金を引いた。だが放たれた閃光はオーカスに命中せず、溶けるように消えていくオーカスを掠めるに留まってしまった。

 

「おい、てめえ邪魔しに来たのか!」

 

【いえいえ、そんなつもりは無かったのですが……間が悪かったようで申し訳ありません】

 

間が悪かった所ではない、オーカスは周囲のMAGと生命力を無尽蔵に吸い上げている。ダメージを与えた事で間違いなく、再び吸収活動を再開するに違いない。

 

『マンセマット。申し訳ないが貴方の謝罪も弁明の言葉も聞いている時間はありません。ヒメネスさん、澪。オーカスを追おう』

 

「たりめえだッ! 今度は邪魔するんじゃねえぞッ! 行こうぜ、澪」

 

「ええ。急ぎましょう」

 

【お待ちください、私も協力を……】

 

マンセマットの言葉に返事を返さず私達はオーカスをおって走り出した。

 

『ヒメネスさんのおかげで話を切り上げる事が出来ました。ありがとうございます』

 

「あんな見るからに胡散臭い奴の何処をどうしたら信じられるんだよ、馬鹿じゃねえのか?」

 

その言葉に同意する。マンセマットのような見るからに怪しい相手を信用するのは正直愚かとしか言い様がない。

 

『こちら観測班! オーカスの反応を感知! ポイントを送るッ!』

 

『こちらタイラーだッ! オーカスが食い散らかした悪魔の残骸を発見したッ! 観測班のデータとあわせて送信するッ!』

 

観測班とタイラーから送られて来たポイントは私とヒメネスの進行方向の先だった。後少しでポイントに辿り着くという所でゼレーニンが姿を見せる。

 

「こっちよ! この先ッ! 急いでッ!!」

 

『駄目だッ! ヒメネスさん、澪スピードを緩めて! すぐに跳んでッ!』

 

「ちゃんと説明をッ!? きゃあッ!」

 

ゼレーニンに急げと言われ走り速度を速めようとした時に若様に速度を緩めて跳べと言われ、私とヒメネスは即座に若様の指示に従い。ゼレーニンは若様に説明を求めようとし、その直後に発生した地響きにバランスを崩して転倒した。

 

「あいたたた……」

 

「説明を求める前に指示に従うべきでしたね、ゼレーニン」

 

「……そうみたいね」

 

倒れているゼレーニンに手を貸して立ち上がらせたが、ゼレーニンは鋭い視線を若様の式神へと向けている。

 

「長久を恨む前に自分の反射神経のなさを恨みな、それで長久。今の振動は何だ?」

 

『多分ですけどオーカスが現れた音だと思います。オーカスバスターの1発目を当てた直後にオーカスは消えた。暗がりの通路の事を考えると……いや、後にしましょう。オーカスが今近くにいる、オーカスバスターで倒せれば僕の考察も無駄になりますが、その方がいいですから』

 

「それもそうだな、行くぞ。澪、ゼレーニン。お前も手伝えよ」

 

「分かってるわ、澪。行きましょう」

 

「急ぎましょう。また逃げられると厄介ですから」

 

今度こそオーカスを仕留めて見せると気合を入れてオーカスの元へ向かう。私達の目の前ではオーカスが周囲のMAGを吸収していたが、生命力を吸収される感覚は無く、そして周囲のエネルギーを吸い込む力もかなり弱くなっているのが一目で分かる。

 

【ブォーノッ! ブォーノッ! マタ貴様ラカッ!】

 

私達に気付いてオーカスが攻撃の為に腕を振り上げる。だが最初のオーカスバスターのダメージがかなり尾を引いているのか、その動きはかなり緩慢な物だった。いやもしかするとさっきの地響きがオーカスの攻撃で力を消耗しているのかもしれない。

 

「動きが鈍い! 今がチャンスだぜ、澪ッ! ぶちかましてやれッ!」

 

「オーカスが回復する前に早くッ!!」

 

ヒメネスとゼレーニンに促されオーカスバスターを発射する。オーカスは何とか避けようとしていたが、エルブス号を取り込み巨大化していたオーカスに俊敏な動きなど出来るわけも無く、オーカスバスターの直撃を受けたオーカスはその身体から何かを落としながら先ほどと同じ様に溶けるように消え去った。

 

「若様。オーカスの落としたアイテムやフォルマは拾っておきますか?」

 

『強いMAGの気配がありますよ、ヒメネスさん。多分レアフォルマです』

 

「レアフォルマか……文字通り「ブタに真珠」だぜ。んで、どうする? 1度帰還するか?」

 

「それがいいと思うわよ、このレアフォルマを使えばオーカスを追跡する術が手に入るかもしれないわ。そうよね?」

 

『ええ。僕もそうした方がいいと思います。一度レッドスプライト号へ戻りましょう』

 

オーカスが落としたレアフォルマであるファインダイトを手に1度私達はレッドスプライト号へと帰還するのだった……。

 

 

 

 

オーカスが落としたレアフォルマ――「ファインダイト」のデータを元にアプリが作られている間俺達は僅かな休息を取っていた。俺も少しばかり仮眠を取っていると軽い足音が降車デッキに響き、俺はゆっくりと目を開いた。ほかのクルーなら無視するが、こんな軽い足音をしているのはレッドスプライト号の中では1人しかいない。しかも護衛である澪もいないとなれば無視するわけにもいかず俺は座っていたコンテナから立ち上がり長久の前に飛び降りた。

 

「わっ!?」

 

「ん? どうした長久。お前1人で出歩いてると過保護なお姉ちゃんに怒られるぜ?」

 

目の前に着地したことで驚いている長久の頭を撫で回しながら、降車デッキの出入り口に視線を向ける。何人かのクルーの姿があったが、俺と目が合うと背を向けて逃げて行った。

 

「ちょっとヒメネスさんに内緒の話がありまして」

 

「あん? 俺にか? なんだ。あのクソ豚を倒すための切り札か何か?」

 

俺がそう尋ねると長久はポケットから血のように紅い勾玉を取り出して俺に差し出してきた。

 

「こりゃなんだ? なんかのアイテムか?」

 

「地返しの玉と言います。死せる魂を現世に呼び戻す貴重な道具です」

 

「死せるって……死者蘇生かッ!?」

 

そんな希少な道具を簡単に差し出すなと思いながら指で摘まんでいたそれをしっかりと握り締める。

 

「模倣品なので人間には使えませんけどね。多分ヒメネスさんには必要な物だと思って」

 

「バガブーの為に……作ってくれたのか?」

 

「バガブーはヒメネスさんと仲が良かったですから、これで呼び戻せると良いんですけど」

 

そう笑う長久の手を見ると指先が絆創膏だらけになっていて、血が滲んでいるのに気付いた。だがそれを指摘するのはお門違いだと思い、喉元まで込み上げて来た言葉をグッと飲み込んだ。

 

「あんがとよ。長久」

 

そのかわりに長久の頭を撫でながら感謝の言葉を告げた。俺の為にやってくれたのに俺が叱るって言うのは筋が違う、感謝を告げる事が俺に出来る事だった。

 

「ヒメネス、アプリが完成しました。ラボへ来て……若様? どうしてこちらに?」

 

「うん、ちょっとヒメネスさんと話をしてたんだ。ね、ヒメネスさん」

 

「おう。ちょっとした世間話さ、大した話じゃねえよ」

 

澪が怪訝そうな視線を向けてくるが2人で話を合わせると澪は納得していない様子ではあるが頷いた。

 

「ヒメネス、アプリをインストールして出撃準備を、今度こそオーカスからエルブス号を奪還しますよ」

 

「おう! あの豚野郎に奪われたもんを全部取り返してやろうじゃねえかッ!」

 

気合の入っている俺を見て不思議そうに首を傾げている澪に背を向けて俺はラボへと走り出した。

 

(待ってろバガブーッ! 絶対お前を助けてやるからなッ!)

 

悪魔であるバガブーなのだが、初めて見た時から他人には思えなかった。まるで生き別れた兄弟に出会ったような不思議な親近感があった。悪魔だとか関係ない、あいつは俺の相棒なんだ。絶対に取り返すと気合を入れて俺はアーヴィンの元へ向かい。ファインダイトを元に作られたアプリ「アンロックB」をインストールし、降車デッキに戻ったのだが……。

 

「若様。また無茶をしましたね」

 

「いひゃいッ! いひゃいッ!!」

 

澪に頬を摘ままれてじたばたと暴れている長久を見て俺のせいだと思い止めに入ろうとしたのだが……ゴア隊長に止められた。

 

「自分の血を使ってオーカスバスターと殆ど同じ効果を持つ弓矢を精製したそうでな……重度の貧血状態なんだ。それでも動き回っているんから、澪に説教を頼んだんだ。ヒメネス、思う所はあると思うが黙っててくれ」

 

「……了解」

 

流石に子供で血を抜きすぎて貧血状態は余りにも不味い。とりあえず医務室に叩き込んでおくべきかと考え、俺は澪に折檻されている長久を見てすまんと心の中で手を合わせるのだった。

 

『こちら観測班……こちら観測班。全機動班クルーへ連絡します、エルブス号とおぼしき信号をキャッチ。現在、セクターコード「C」、カリーナ中層階にて停滞中。今から座標コードを送信します。各員デモニカへの書き込みを願います……澪、ヒメネス。君達の近くにオーカスはいる油断するなよ』

 

長久の血を元に作られた弓矢は全部で3本。俺と澪はオーカスバスターを、ゴア隊長、タイラー、スティードマンをそれぞれ隊長とする小隊がそれぞれ1本ずつ持ち、オーカスを追い回していたが、やっと俺と澪の出番が回ってきたようだ。

 

「うっし、行くぜ。澪」

 

「ええ、若様が身を削って作ってくれた武器を無駄にする訳には行きません」

 

オーカスバスターほど持続力が無いらしいので俺らの近くに逃げてきたのは本当に幸運だった。

 

「ゼレーニンがいたら天使の加護のおかげとか抜かすんだろうな?」

 

「でしょうね、でも私もあの天使は嫌いです」

 

「同感だ、さてと俺らの力であの豚やろうをぶっ飛ばしてやろうじゃねえかッ!」

 

アンロックのアプリの力で壁に擬態していた扉をこじ開け隣の部屋へと踏み込んだ。そこにはエルブス号と融合したオーカスの姿があったが息も絶え絶えで今にも死んでしまいそうなほどに弱体化したオーカスがいた。

 

【ブォーン……ブォーン……イカン体ガ重イ……遠クヘ飛ベナイ……コノママデハ……コノ便利ナ体モ朽チテシマウワ……食ロウテ……食ロウテ……元気ニ……モリモリニナロウゾ……ワレハ食ラウゾ……世界ノ……宇宙ノ……美味シモノ……人間ナゾニ……負ケテイラレルカ……ッ!……ブォーノッ!】

 

あそこまで弱っているのにまだ諦めていないというガッツだけは認めてやるが、それもここで終わりだ。

 

「これでトドメですッ!!」

 

「ぶちかませッ!」

 

放たれたオーカスバスターの閃光がオーカスの胸を貫き、貫かれた胸から大量のMAGが噴出する。

 

【ブオオオォォォッッッ……ッ!!ダメダ……コレハ……耐エラレヌ………ッ!! モハヤ……コノ体、捨テルシカ……ッ! 欲深イ人間メ……ッ! ソンナニコノ船ガ欲シイノカッ! 負ケルトハ……ッ! 奪イ合イデ人間ニ負ケルトハッ! 欲深サデ人間ニ負ケルトハッ!オノレ……オノレッ! オノレッ!! オノレッ!!!! コウナレバ身隠シ必ズヤ復讐シテクレヨウゾッ! ブォーノッ!!!!】

 

オーカスはそう叫ぶと消え去り、俺と澪の目の前にはエルブス号が鎮座していた。

 

「イヤッホーッ! 仕留めたぞッ!! 豚野郎め、ざまぁみやがれッ!!」

 

あの豚野郎には随分と苦しめられたので思わずガッツポーズを取り勝ち鬨を上げる。

 

「やったかッ!」

 

「おおッ! エルブス号だッ!」

 

「よっしッ!! やったな! ヒメネス、澪ッ!!」

 

オーカスの断末魔の悲鳴を聞いてゴア隊長達もオーカスが最後に潜んでいた隠れ部屋へと駆け込んでくる。

 

『こちらこちら、アーサー。オーカスの撃退を確認しました……エルブス号には損傷が見られますが、内部の状況はどうでしょうか? 機動班を中心に検証を行ってください』

 

「了解した。澪とヒメネスは休んでいてくれ、我々で調査をしてくる」

 

ゴア隊長を先頭にして機動班が次々とエルブス号へと踏み込んでいく姿を見つめながら、長久が作ってくれた地返しの玉を無意識に握り締めると俺の顔になにかの光が差し込んだ。

 

「なんだあの光は……? はッ!? もしかするとッ!? 悪い澪ッ! 出入り口の監視は任せるぜッ!」

 

澪の了承の声を聞く前に俺は光の元へと走る。そこには菱形の結晶が落ちていた、それを見た瞬間に俺はすぐに分かった。これがバガブーのデビルソースだと確信し、地返しの玉をデビルソースの上へと乗せる。すると凄まじいMAGがデビルソースから吹きだし、MAGが人型へと変わっていく……。

 

【バガブ?】

 

「はは……ははははははッ!! この馬鹿野郎ッ!! 勝手に突っ込んで行くんじゃねえよ馬鹿ッ!!」

 

【バガ!? バガブッ!?】

 

地返しの玉によって復活したバガブーにヘッドロックを決めながら俺は泣きながら笑い、ヘッドロックを外してバガブーを正面から抱き締める。

 

「心配したんだぜ。ったく、無茶すんなよ。馬鹿野郎」

 

【ブーブー……バガブ……】

 

俺が心配しているのが分かったのか頭を下げるバガブーの頭を撫で回す。

 

「良かったですねヒメネス」

 

「ああ、これであの豚野郎に奪われたもんは全部取り返せたぜ」

 

エルブス号からは捜し求めていた通信機が見つかったという報告が入ったし、エルブス号も稼動こそ出来ないが動力等は全部無事なのでレッドスプライト号の強化も出来る。そして俺はバガブーを取り戻した……オーカスに奪われたものを全てを取り返し、そして通信機を手に入れた事で上手くいけば地上とも連絡が取れる……やっと少しだが前に進めたという実感を得ることが出来たのだった……。

 

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その15へ続く

 

 




と言う訳でオーカス戦第一戦はこれにて終了となります、マンセマットとゼレーニンにヘイトが集まっていますが、まぁこれは当然と言う事で1つ後了承願いします。次回は地上との連絡とルイ様襲来でお送りしたいと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS


それと今回のオバロ版の飯を食えを卵掛けご飯という事で若干手を抜いてるかなあとか悩んでいると執筆しちゃいなよ!という内なる声が聞こえたので頑張ってダンまち版も書き上げることが出来ました。

21時にはオバロ版・ダンまち版の生きたければ飯を食えを更新しますので、21時の更新もどうかよろしくお願いします。
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