収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その19

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その19

 

カリーナを埋め尽くしている商品棚を上手く使いながら俺とバガブーは極力戦闘を避けつつ、長久を救う為に必要なアイテムを探していた。

 

【バガブ】

 

「良し、頼むぜ、バガブー。お前と俺の恩人の為だ、ちゃっちゃっと見つけてやろうじゃねえか」

 

【バガッ!】

 

ガッツポーズを取るバガブーに微笑みかけながらも、俺の意識は今まで1番と言って良いほどに研ぎ澄まされているのを感じていた。単独行動は危険だと分かっているが、それでも俺は1人で捜索すると言ってマイク達とは別行動を取っていた。オーカスの野郎が死んだ事でカリーナの悪魔は活性化している。オーカスは食欲だけの馬鹿だと思っていた……だがそれなりに統率していたらしく悪魔は凶暴化しているが、オーカスが死んだ事で警備……いや縄張りが変わったのか悪魔がいない場所が僅かにあり、それをバガブーに探してもらいそこを素早く駆け抜け、全然違う方向にアギラオストーンを投げて悪魔をそちらへ誘導する。

 

【バガブ、バガ、ブーブー】

 

4つ這いで地面の匂いを嗅いで俺を誘導してくれるバガブーが俺が1人で行動すると言った理由だ。

 

(司令部の連中とゼレーニンは信用出来ねぇからな)

 

やれ悪魔を召喚するな、やれ天使を使え、安全策をとるべきだとあーだこーだとやかましい事この上ない。それに……。

 

「司令部のやつらが本気で長久を助けようと思ってるなんて思うほど俺は純真じゃないんでね」

 

【ブーブーッ!!】

 

「はは、お前もそう思うか? バガブー】

 

【バガブーッ!!】

 

俺の呟きに反応したのかバガブーが握り拳を作り、1・2のような動きを繰り返す。その動きを見るだけでバガブーも司令部の奴らには思う事があると言うのが伝わってくる。

 

(司令部の連中よりも、ゼレーニンよりも先にアイテムを確保しないとな)

 

意図的に壊されでもしたらたまったもんじゃない、司令部の連中ならそれを事故と言い張るかも知れねぇ。自分達が手を下さなくとも長久が死ぬのだ。どう考えたって足を引っ張るとしか思えない、だから澪もさっさと単独行動に出たに違いない。

 

(とりあえずタイラーとマッキーが司令部チームについてるから最悪は回避出来る。澪は心配ねぇ、マイク達は長久に助けられてるから裏切る訳がねぇからな)

 

機動班の連中は長久に助けられているから裏切る心配が無いだけに、司令部の連中とゼレーニンには疑いしかない。レッドスプライト号にはゴア隊長が残ってるから長久の安全は約束されたような物、後はベリアルが集めて来いと言ったアイテムを回収するだけだ。

 

(不安要素はあるが、これが一番確実だ)

 

長久を治療する為のアイテムは悪魔も欲する貴重品らしい、高確率で先に悪魔に確保されていると見て間違いない。

 

「行くぜ、バガブー。頼りにしてるからな?」

 

俺も司令部の連中には嫌われているからフレンドリファイヤもありえる。バガブーという頼れる相棒とカリーナで仲魔にした悪魔、そしてアーヴィンが新しく作ってくれた武器を携えながらバガブーに声を掛ける。

 

【ブ、ブーッ!】

 

勇ましく鳴いて返事を返すバガブーに先導され、俺はカリーナの奥へ、奥へと足を踏み入れて……そこで金色の宝箱の前に立つ紅い鎧の男と鉢合わせた。

 

【よぉ、お前が欲しいのはこれか?】

 

鎧の男は手にしていた像……如来像を見せ付けるように金色の宝箱の中に納め、足で蓋を閉め俺へと向き直った。

 

【なんだよ、隙を見せてやったのに掛かってこねえのか?】

 

「よく言うぜ……あの瞬間に切りかかっていたら俺の上半身と下半身はおさらばしてるぜ」

 

直感で分かるこの男は尋常じゃ無く強い、そして……人間に見えるが悪魔だと確信していた。

 

「お前は何だ? 悪魔なのか?」

 

【俺か? 俺はそうだな……とある英雄の写し身、破壊を持って救済を成す者……アナザー・カオスヒーローとでも名乗るかね】

 

カオスヒーローと名乗った悪魔は腰に挿している刀を抜き放ち、わずかに見える口元に笑みを浮かべた。

 

【俺は力を求め悪魔と融合した悪魔人間のコピー、その模倣だ。こんな出来の悪いコピーに負けてくれるなよ? 人間】

 

空気が爆発したような音が響き、一瞬で間合いを詰めてきたカオスヒーローの刀を咄嗟にナイフで受け止める。

 

【良い反応と言ってやりたいが、落第点だな】

 

「がぼッ!?」

 

空中に浮かんだままの回し蹴りが叩き込まれ、俺はカリーナの壁に背中から叩きつけられる。

 

【おら、どうした。立てよ、それともここで終わりか? そんなら「うるせえな、べらべらとッ!!」……ははッ! 良いぜ、人間】

 

起き上がり様に発射した銃弾を簡単に切り落とされるが、体勢を立て直すだけの時間は得れた。

 

「俺はてめえをぶちのめして、そこの像を持って帰る」

 

【出来るとでも?】

 

「出来ないと思ってんのか? 出来損ないのコピーさんよ」

 

【……クハッ! クハハハハハハッ! 上等だ!! そこまで吼えたんだ、楽には死なせてやらねえぞッ!!】

 

「うるせえ! ぶっ殺してやらぁッ! 行くぜバガブー!」

 

【バガブッ!!】

 

俺はナイフを構え、バガブーと共にアナザー・カオスヒーローへと向かって走りだすのだった……。

 

 

 

 

カリーナをずんずんと進んでいくタイラーとマッキーを必死に追いかけるが、ずっと私の息は上がったままだ。

 

【婦人が苦しんでいるのにそれを無視して進むのが男のやる行いですか?】

 

「天使パワーよ。本来は俺とマッキーのコンビだけで回収に行く予定だったのを司令部のクルーとゼレーニンは自分の意思で付いて来る事を選んだのだ」

 

「私達には時間が無い、無理だと思うのならば他の司令部のクルーと同様にさっさとレッドスプライト号へ帰れば良い。レッドスプライト号へ入れるとは思えないがな」

 

タイラーとマッキーの鋭い視線が私とパワーへと向けられる。敵意さえ感じさせるその瞳に身震いしながらも、私はきっぱりと自分の言葉で返事を返した。

 

「大丈夫……私はちゃんと着いて行くわ」

 

【ゼレーニン。しかし】

 

「良いの、私が選んだの、泣き言は言わないわ」

 

司令部のクルーに暴行を受けて意識を失ったままの長久を回復させる為に必要なアイテムを回収するのに同行すると決めたのは私自身だ。だから疲れたとか苦しいとか泣き言を言うつもりはない。

 

「ならペースを上げるぞ、後3時間55分しかない、1分1秒を無駄にする訳には行かない」

 

「無理だと思うのならばさっさとリタイアしろ。良いな」

 

そう言ってペースを上げるマッキーとタイラーには強い怒りが感じられるが、それも当然だ。

 

(……あの人達は長久を救おうとは思っていなかった)

 

司令部クルーは何も出来なかった。銃で支援することも、ゴア隊長が使えといって提供した悪魔を召喚する事も、道具で自らの傷を癒す事も無かった。そして戦ってもいないのに休憩を何度も求めた、それはどう考えても与えられた5時間を浪費させようとしているようにしか思えなかった。マッキー達が怒るのも当然の話だ、そして私も失望した。ここまで来て長久を死なせようとする司令部のクルーに心底落胆した。

 

「ショートカットだ」

 

「……正気ですか?」

 

「当たり前だ。悪魔を召喚すれば十分に降下出来る高さだ。先に行く」

 

悪魔を召喚し飛び降りるマッキー、それに少し遅れてタイラーが飛び降り……。

 

【ゼレーニン。無理をしなくとも】

 

「ううん、行くわ。パワー……フォローをお願いね】

 

【……分かりました】

 

パワーに手助けされながら私も棚から飛び降り、下へ、下へと降下し……そこで白い法衣を纏った人間と、その前に置かれている金色の箱を見た。

 

【ようこそ、貴方達が求めているのはこれですね? きんたん。ですが……これをそう簡単に渡すわけには行きません】

 

そう言うと白い法衣を着た青年は手にしていたきんたんを金色の箱の中へ納めた。

 

【さてとでは改めまして、私はとある英雄の写し身……天使と融合し、慈悲を持って世界を救おうとした者の模倣……アナザー・ロウヒーローと申します】

 

にこりと笑う青年だが、その目は全く笑っておらず。その射抜くような視線に思わず背筋が伸びる。

 

【天使と融合? 何を【黙りなさい、パワー。貴方に発言を許可していませんよ? 勿論……貴方を通じてみている者にもね】……ッ】

 

パワーが膝をついて頭を垂れて動かなくなる。私が声を掛けてもパワーは全く動いてはくれない……。

 

「何をしたの!?」

 

【何をと言われましても、私の方が彼よりも、そしてその天使を貴女に授けた天使よりもずっと高位という訳です。模倣品とは言え私は大天使と融合せし者ですから】

 

ロウヒーローはそう笑うと背中に背負っている大剣を抜き放ち、白と金の鎧を身に纏った2体の天使を召喚する。

 

「ヒーローだの何だの言っておいて、俺達の敵か?」

 

「これだから天使って奴は」

 

タイラーとマッキーも悪魔を召喚し戦いへと備える。だがロウヒーローは肩を竦め、敵意も殺意も見せずむしろ私達を試すそうな視線を向けてくる。

 

【私は天使ではないのですが……まぁそれは詮無きこと、人間達よ。これは試練です、これから戦うであろうより強力な悪魔に抗えるかと言う試練なのです。ああ、ご安心ください。私は蘇生魔法も回復魔法も使えますから私達を全て倒すまで何度でも蘇らせてあげましょう】

 

「そんな嬉しくない言葉は聞きたくないな」

 

「だが長久を救う為だ。お前を倒してきんたんを貰うぞ」

 

【どうぞ、私を倒せたのならば持っていってください。では始めましょうか】

 

天使、そしてロウヒーローが翳した片手から放たれる電撃に白く染め上げられる……それが私が覚えている最後の光景だった……。

 

 

 

 

 

マッキーとタイラーは信用出来るが司令部クルーとゼレーニンと一緒に行動するなんて死んでもごめんだった。ヒメネスは若様の事を気に掛けてくれているので何をしてもアイテムを持ち帰ってくれると信じていたし、マイク達も若様に助けられたので若様を助けると気合を入れていたのでマイク達も心配ないと判断し、私は単独行動で若様を治療する為のアイテムを求めてカリーナを進んでいた。

 

(……こっちですね)

 

手の上に乗せている針が浮かび上がり針の先が指した方向へと進み、ダークゾーンの中へ足を踏み入れる。深い闇の中……それは一種の死を感じさせ、慣れ親しんだその感覚に己が研ぎ澄まされていくのを感じた。

 

【シャ……あ?】

 

ダークゾーンの闇を利用して飛びかかって来た悪魔に視線を向ける事無く両断し、ダークゾーンを抜け手にしている刀についているMAGの残滓を振り払う。

 

「見られるわけには行きませんからね」

 

若様にもシュバツルバース調査隊の仲間にも見せる訳には行かないのだ、■■の名を捨て神代澪となった時に大和様、都様、そして美鶴様とした契約は私を守る物であると同時に縛る物であった。

 

「……裏切ってはいませんよ、私は私の道を決めただけ」

 

【……裏切り者め】

 

黒尽くめの書生服の影が襲ってくるが、その一撃を回避し手にした刀……錬気刀にMAGを宿し、逆にその首を刎ねる。

 

「ライドウは間違えた、いえ、ライドウだけではなく葛葉は間違えたのです」

 

【……神子は……滅さなければならない】

 

【神子がいれば世が乱れる】

 

「分かりませんね、どうせ世は乱れに乱れている。若様を殺す事に何の意味がございましょう?」

 

襲ってくる影を切り、銃で撃ち、仲魔の魔法で消滅させる。淡々と、心を揺らすことも無く機械的に襲ってくる敵を消滅させる。

 

【ねー、澪。これなに?】

 

「私を憎くて憎くてしょうがない、成仏も出来ない憐れな自縛霊ですよ。気にする事はありません】

 

【ま、貴女の事情はどうでも良いけど、サマナーを死なせる訳には行かないんだから急ぎましょうよ】

 

【イソゲイソゲ!!】

 

「分かっていますよ。リャナンシー、マカラ」

 

カリーナの悪魔に憑依でもされたら面倒な事になるので若様が作ってくれた札を貼り付け、若様の葛葉の自縛霊を完全に消滅させてからカリーナの通路を走り出す。

 

(時間が無いのは若様も、私も同じ)

 

葛葉澪に戻れば自動的に葛葉の呪いが私を襲う。だが葛葉澪でなければ若様を救えない……それが分かってるからこそ、まだ切るつもりの無かった切り札を切ったのだ。これを使った以上失敗は許されない、なんとしても若様を救う……それだけを考えてカリーナの奥、エルプス号があった隠し場に足を踏み入れた私の前に少女の影が立ち塞がった。

 

【こんにちは、これが欲しいのでしょ?】

 

にこやかに笑いながら少女は手にしている反魂香を私に見せつけ、自身の足元の金色の箱の中へと隠した。

 

「貴女は……ドッペルゲンガーね?」

 

【正解、私はとある英雄の写し身、善にも、悪にもよらず、中立の道を行き、人の世を作った救世主の模倣品。とりあえず……アナザー・ヒーローとでも名乗ろうかな】

 

対峙した者の姿を真似る悪魔であるドッペルゲンガーの変異した姿であろうアナザー・ヒーローは腕の機械を操作し、自分の周りに悪魔を召喚する。

 

【ヒホホー頑張るホー♪】

 

【あんまり騒がしくしない事、良いわね。フロスト君?】

 

【分かってるホー♪】

 

【オイラも頑張るホー♪】

 

【ん、フロスト君と喧嘩しない事、良いわねランタン君?】

 

召喚されたのはピクシー、ジャックフロスト、ジャックランタンの妖精悪魔3種……だが通常の個体と比べて余りにも気配が違いすぎるのに一目で気づいた。

 

(これも変異個体ですか)

 

ドッペルゲンガーが変異しているのと同様にピクシー達も変異個体、あるいは進化する手前の個体なのか凄まじいMAGを放っている。

 

【頑張って私達を倒してね、そうすれば反魂香をあげるよ】

 

「それがベリアル達の命令ですか?」

 

変異個体がこれだけ自然発生するわけが無い、今回の事は間違いなくベリアル達の仕業だと私は召喚された悪魔を見て確信した。

 

【んーどうだろうねー? でもさ、仮にベリアル達が手を引いていたとしたらなんなのさ? 結局の所どんなに崇高な想いも強い力の前に踏み潰される。抗うなら、世界を救うと言うのなら……ううん、長久を救うっていうならその力を示してみなよッ!】

 

「言われなくてもッ!」

 

若様を救うためにはアナザー・ヒーローを倒さなければならない。それにどんな想いも強い力に潰されると言うのは私もその通りだと思う。だから……ッ。

 

「そこをどけッ! 影風情が人間の邪魔をするなッ!」

 

【言ったね、人間風情が偉そうに言うなよッ!!】

 

私とアナザー・ヒーローの振るった剣が同時にぶつかり火花を散らし、私は後退しながら銃を発射し、アナザー・ヒーローはジャックランタンにマハラギを使うように指示を出し、着地と同時に私とアナザー・ヒーローは再び地面を蹴って走り出すのだった……。

 

「神子が死に掛けているのは想定外ですの……んーどうしましょうか」

 

澪とアナザー・ヒーローの戦いを見下ろしながら1人の女神は頭を抱え……。

 

「……今度こそ、澪をこの手で殺す」

 

【バディ。これが2度目のチャンスだ、ここで澪を殺し、澪のデモニカを奪いレッドスプライト号へ侵入し、長久を連れ出す。これにしくじれば次は本当にギリギリになるぞ】

 

「分かってる。同じしくじりは2度はしないッ」

 

憎悪の目で澪を睨みつける未来から来た少女は澪を確実に殺すために、その牙を解き放つ時を慎重に見極めているのだった……。

 

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その20へ続く

 

 




ヒメネスはカオスヒーローもどき、ゼレーニン+タイラー&マッキーはロウヒーローもどき&天使×2、そして澪はアナザー・ヒーローと変異ピクシー、フロスト、ランタンとボスバトルです。強さ的には長久が死んだタイミング、新宿前後の強さの翔子達のコピーとなりますのでカリーナで戦うにはかなり強いボスとなりますね。次回は戦闘メインで頑張りたいと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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