収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その21

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その21

 

アナザー・ヒーローと名乗ったドッペルゲンガーは私の想定を遥かに上回る強力な悪魔使いであり、その悪魔もまた私の理解を遥かに越える恐ろしい力を秘めた悪魔達だった。

 

【行くホーッ!】

 

【火炎ブースタ】【火炎ハイブースタ】【準火炎貫通】【アギラオ】

 

【グ、グオオオオッ!?】

 

アギラオに貫かれモラクスがMAGの粒子となって消滅し始めるのを慌ててデモニカスーツに回収する。

 

【ランタン君やるうっ!】

 

【ヒッホホー♪】

 

アナザー・ヒーローに褒められ、アナザー・ヒーローの周りを飛ぶジャックランタンは見た目こそ妖精だが、魔王級に匹敵する強力な悪魔だった。

 

【ムム、オイラだって出来るホーッ!】

 

【氷結ブースタ】【氷結ハイブースタ】【氷結アクセラ】【マハブフ×2】

 

指を回転させ放たれたのは紛れも無くマハブフ。だがその威力はマハブフダインに匹敵するものであり、咄嗟に頭を抱えて地面を蹴って前転しマハブフを回避し、立ち上がろうとし2射目がもう眼前に迫っているのを見てぎょっとし再び前転に入るが……。

 

「くっ!?」

 

完全に避けきれずマハブフで発生した氷に背中を切裂かれる。

 

【澪!? 今治すわ!】

 

【ディアラマ】

 

ハイピクシーがディアラマを使ってくれたことで傷は塞がったが、失った体力までは戻ってこない。

 

(モラクスを失ったのが余りにも痛い)

 

私の手持ちの仲間で現段階で1番強かったのがモラクスだ。しかもどういうカラクリかは分からないが、モラクスの火炎反射をジャックランタンのアギラオは「貫通」した。完全に貫通した訳では無いが、耐性を貫いてモラクスが消滅するほどのダメージを叩きこんできた。恐らくだが、ジャックフロストもジャックランタンと同様に恐らく耐性を貫通してくる。強力な攻撃能力を持った悪魔が2体に加えて、アナザー・ヒーローも恐ろしいほどに強い。

 

【いっくよーッ!!】

 

【物理ブースタ】【武道の心得】【スラッシュ】

 

恐ろしい速度の踏み込みと共に片手で振るわれた剣撃を両手で握り締めた剣で受け止める。

 

「ぐっ!?」

 

その細腕からは信じられない力で足が地面にめり込むのを感じた。それでも歯を食いしばり、力を込めて無理矢理錬気刀を振るいアナザー・ヒーローを弾き飛ばす。

 

【ざーんねん♪ そんなのじゃ私は止まらないよ】

 

空中から乱射される銃弾は私ではなく、マカラとリャナンシーを襲う。

 

【ギャンッ!?】

 

【きゃあッ!?】

 

マカラの苦悶の声とリャナンシーの悲鳴に前を向いたまま宝玉を2人に投げ、2人の傷を回復させると共に地面を蹴る。

 

【火炎ブースタ】【アギ】

 

【氷結ブースタ】【ブフ】

 

【【外したホーッ!!】

 

ブフとアギとは思えない巨大な火柱と氷柱を辛うじて回避し、傷薬をデモニカスーツの上からぶちまけて体力を回復させ、私はアナザー・ヒーローへと問いかけた。

 

「……なぜ葛葉の剣術を使える」

 

アナザー・ヒーローの剣術も射撃術も私が捨てた葛葉の里の物……何故それを使えるのかと問いかける。

 

【もう分かってるんじゃないの? それとも私から聞かないと納得出来ない?】

 

私の問いかけにアナザー・ヒーローはくすくすと笑いながら逆に問いかけてきた。そう……分かっていた。アナザー・ヒーローの言う事が真実ならば、その答えはとっくの昔に出ていた。

 

「……若様の前世は葛葉だった」

 

【正解。まぁ私のオリジナルに会う前だと思うけど、長にいは紛れも無く葛葉だった。それが私が葛葉の技を使える理由……そして、これが貴女が捨て去った力……ランタン君ッ!】

 

【やるホーッ!!】

 

【物理ブースタ】【火炎ブースタ】【大紅蓮忠義斬】

 

【はぁあああああッ!!】

 

ジャックランタンの放った炎がアナザー・ヒーローの手にする刀に向かって放たれ、凄まじいMAGの光と炎を放つのを見て咄嗟に召喚していた悪魔を帰還させ、迫り来るMAGと炎が混ざり合った剣撃に向かって一か八か自ら飛び込んだ。だが錆び付いた私の葛葉式回避術で葛葉の、悪魔と共に放つ最大級の奥義である大紅蓮忠義斬を防ぎきれる訳も無く、その劫火に焼かれ悲鳴すら出ない痛みに意識を失いかけたその時だった……。

 

【貴方に死なれたら困ると言ったでしょう? 仕方ありません、助太刀してあげましょう。ハーベストですわッ!】

 

【エレウシスの実り】

 

金色の光が私を包みこみ、紅蓮忠義斬で受けた傷を瞬く間に回復させ、倒れ掛けていた私の手を小さな手が掴み、一瞬の浮遊感を感じる。

 

「女神……デメテル」

 

【お久しぶりですの】

 

アレックスに殺された私を現世に戻した悪魔……女神デメテルは私に向かって悪戯っぽく微笑みかけた。

 

【全くどうすればあんな化物に狙われるんですの?】

 

「若様を救う為だ。あいつの持ってるアイテムが欲しい」

 

【若様……ああ、神子ですか。ならやっぱり助太刀するしかありませんわね……でも私は見てのとおりか弱い女神。戦力として数えられるのは少し、いえ、大分困りますわ】

 

「分かってる。もう出し惜しみをしてる場合じゃない」

 

デモニカスーツのポーチから2本の銀色の筒――「封魔筒」を取り出す。

 

【分かりましたの、今の貴女ではMAGが足りないでしょうから私が少し分けてあげますの】

 

デメテルが私の胸に手を当て、そこから全身にMAGが満たされる。葛葉を裏切ってから満たされる事の無かった空虚感が一瞬で埋められた。

 

「私に若様を救う力を」

 

固く閉ざされた封魔筒の蓋が緩み、MAGの光と共に2体の悪魔が私の横に召喚される。

 

【はっはーッ! 久しぶりだな、澪ッ!】

 

好戦的な光をその目に宿した紅い甲冑に身を包んだ若武者「義経」

 

【事情はこちらも分かっておる。葛葉を裏切った事に思う事はあれど、幼子を殺そうとした葛葉に大義無し。故に不問としよう】

 

理知的な光をその目に宿した白い甲冑に身を包んだ神「大国主」

 

シュバルツバースで仲魔にした悪魔を遥かに上回る力を秘めた2体の仲魔、そして女神デメテルと共に私は再びアナザー・ヒーローへと駆け出すのだった……。

 

 

 

 

膨大なMAGが壁になり、私は追撃に動く事が出来なかった……というよりも……。

 

(いやいや、女神デメテルは駄目だって)

 

私のフロスト君やランタン君は確かに強力なスキルを有しているが毎回使えるわけではない。ランダムで覚えているパッシブのスキルが発動するわけで……。

 

【ブフ】

 

【外れホーッ!?】

 

一切のパッシブが発動しなかったヒーホー君が絶叫している間に恐ろしい速度で踏み込んできた義経がヒーホー君の懐を取ろうとする。

 

【ピクシーッ!】

 

【オッケ!】

 

【万能ブースタ】【メギド】

 

ランダムスキルの発動しては上々と言った所、義経と大国主の間で炸裂した虹色の輝きが義経と大国主を後退させる。

 

【甘い、その程度で足を止めると思うたか?】

 

【タルカジャ】【スクカジャ】

 

【これもおまけですわッ!】

 

【ランダマイザ】

 

大国主の補助魔法を盾に突っ込んでくる澪とデメテルの使った弱体化で動きが鈍い私達に近接を仕掛けるのは間違って無いけれど……。

 

【その程度じゃ駄目駄目だね】

 

【獣の眼光】【デクンダ】【ラスタキャンデイ】

 

デクンダで即座に弱体化を解除、ラスタキャンデイで全体強化を行い突っ込んできた澪の一撃を受け止める。

 

【つうっ!?】

 

だが受け止めきれず弾かれ、澪の手にしている錬気刀を見て舌打ちする。

 

【何それ卑怯!】

 

錬気刀の刃が氷に変わっている。大紅蓮忠義斬程では無いが、葛葉の奥義の1つ……仲魔のMAGで武器を作りかえる技術、銀氷真剣で斬りかかってきた澪から距離を取る。

 

「これは流石に防げないでしょう」

 

【あたりッ! 私はコピーだからねッ!!」

 

ドッペルゲンガーだから物理には強いが、その物理に属性を乗せられると流石に不味い。飛びのいて距離を取ろうとし……しまったと思ったときには遅かった。

 

「はっ!」

 

【ヒ、ヒホ~ッ!?】

 

澪はあっさりと追撃を断念し、銀氷真剣でジャックランタンへ斬りかかった。ジャックランタンは氷結弱点、銀氷真剣で斬られたジャックランタンは氷漬けの氷像になってしまった。

 

【はぁッ!!】

 

【怪力乱神】

 

大国主の唐竹割の一撃を凍りついたジャックランタンが防げる訳も無く、悲鳴すら上げる事が出来ずにジャックランタンは砕け散りMAGの粒子となって消滅した。

 

(しくじったッ)

 

私は繰り返すが「コピー」なのだ。悪魔の身体に人間の意識、その人間の意識が無意識に己を守る事を優先した。ダメージは追うが消滅するほどの威力ではないそれから逃げてしまった。

 

【行くぜ行くぜ行くぜッ!!!】

 

【チャージ】【物理ブースタ】【武道の心得】【八艘飛び】

 

【ヒ、ヒホオ~ごめんほ~ッ!!】

 

そこまでやるか? と言いたくなるような補助をかけた義経の八艘飛びをブフーラで作り出した氷柱で防ごうとしたジャックフロストだったが、チャージが掛けられた一撃を防げる訳も無く膾切りされ、私への謝罪と共に消滅した。だが消えようとしているのはジャックフロストだけではなかった。

 

【あーくそ、澪。お前が何年も封印してるからだぜ? 今度からはもう少し俺を使うんだな】

 

「考えとく」

 

【そこは使うって言えよッ! まぁ良いけどよ!】

 

長い間封印されていたのを召喚し、その上で負担の掛かるスキルを連続使用した義経もダウンし、封魔筒へと消える。

 

【時間切れか】

 

「ありがとう、大国主」

 

【それは構わぬ、どう使われようが文句は言わぬ。だが戦局を見誤る事なかれ、己の素性を隠したいのは分かるがそれで大事な者を失えばなんの意味も無いぞ】

 

「肝に銘じるよ」

 

軽い会話の後に大国主も封魔筒へと消え、残ったのは私とピクシー、そして澪とデメテルの2人だけだ。私と澪は同時に弾かれたように動き出し、最後のぶつかり合いに身を投じるのだった……。

 

 

 

振るわれる刀を紙一重で回避し、攻勢に出ようとするがそれよりも早くピクシーが補助魔法を掛けてアナザー・ヒーローを加速させる。

 

【頑張れ! ヒーロー!】

 

【タルカジャ】【スクカジャ】【ラクカジャ】

 

【勿論ッ!!】

 

「デメテル!」

 

【女神使いが荒いですわよッ!】

 

【ラスタキャンデイ】

 

弾丸のような勢いで突っ込んでくるアナザー・ヒーローと切り結ぶ。だがやはりラスタキャンディで底上げされてもアナザー・ヒーローの方が強く押されるが、そのまま押される勢いで倒れこみアナザー・ヒーローの腹に足を当てて投げ飛ばす。

 

【っとと!?】

 

「そこッ!!」

 

着地した所に銃を撃ちこむとアナザー・ヒーローの肩に風穴が開いた。即座にMAGで傷が塞がったが、アナザー・ヒーローの額には大粒の汗が浮かんでいる。

 

【大丈夫?】

 

【大丈夫。まだ負けない、まだ負けてあげない】

 

ピクシーの大丈夫だと笑い、私を睨みつけるアナザー・ヒーローの眼光は凄まじく、思わず気圧される。

 

【はぁッ!!】

 

【物理ブースタ】【武道の心得】【スラッシュ】

 

私が威圧されたのをアナザー・ヒーローは見逃さず、渾身の気合と共に全力の一撃を叩き込んでくる。

 

「がっ……ぐうっ! まだッ!!」

 

ラスタキャンディがかけられて無ければ今の一撃で絶命していたであろう一撃を食いしばり、逆袈裟で下から切り上げる。

 

【くうっ!?】

 

MAGを噴出しながら後退するアナザー・ヒーローは獣その物の目で私を睨みつける。

 

【私はね、作り物、コピーだよ。だけどね、与えられた思いでも、これは私の物だ】

 

「なにを……」

 

【私はッ! 長にいを傷つけた、悲しませたッ! 苦しませたッ! 優しいあの人を傷つけたッ!!】

 

血涙を流しながらアナザー・ヒーローは感情を向き出しにして叫ぶ、それは悪魔ではない人間の生きた叫びだった。

 

【守られて、助けられて、それでも私はあの人を傷つけた。悔やませたまま逝かせたッ! 私は私自身が嫌いだッ! それでも、それでもッ! 恥知らずにまた会いたい、また名前を呼んで欲しいんだッ! 私に、私のオリジナルにとって! あの人が全てだ。それなのにお前達はあの人を傷つけた、殺そうとした、それをどうして許せるッ!】

 

【チャージ】【物理ブースタ】【物理ハイブースタ】【武道の心得】

 

【あの人は優しいから許してくれる。私も、お前達も許してくれる。だけどその先にあるにはまた避けられない死なんだ、それなら裏切られて、憎まれて、恐れられて孤独の中で死ぬのならッ! こんな世界滅びてしまえば良いッ! 例え仮初でも、あの人が望まないとしても、それでも! 僅かでも穏やかな時を過ごして欲しいと願うのは間違いかッ!】

 

アナザー・ヒーローの言葉は真実だろう、ここで若様を救ってもシュバルツバース調査隊の不和は消えない。また何れ若様に害なす者は必ず現れる……。

 

「そう……ですか、貴女は私なんですね」

 

何もか失って、それでも求めて、どうすれば救えるのか、それだけを考える。アナザー・ヒーローのオリジナルの人物はきっと私と良く似た人物なのだろう。

 

「若様を救う術が目の前にある。貴女と貴女のオリジナルが何を思っていたとしても私には関係が無い……押し通らせてもらう」

 

【やってみなよッ!!】

 

瞳を紅く光らせて突進してくるアナザー・ヒーローの動きは人間に見切れるものではない……。

 

【!?】

 

だが逆袈裟で斬られ、肩を撃ちぬかれたアナザー・ヒーローはMAGの大多数を失っていた。これだけの大技を決めれる訳が無く、バランスを崩し、明後日の方向に攻撃を放ったアナザー・ヒーローの背後を取る。

 

「さよなら」

 

全力で錬気刀を突き刺し、そこからMAGを放出する事でアナザー・ヒーローの身体はバラバラに崩れ落ちた。

 

【お疲れ様ですの、ささ、早く神子を治すアイテムをとって帰りましょうか】

 

「そうですね、時間がありませんから」

 

マッキー達とヒメネスならちゃんとアイテムを回収してくれているはず……私もアイテムを回収してレッドスプライト号へ帰ろうと思いながら黄金の宝箱に手を伸ばそうとし……そのまま地面を蹴って大きく後退した。

 

「避けたか、苦しまずに殺してやろうという慈悲のつもりだったんだがな、バデイ。お前のせいだぞ」

 

『すまないな、バデイ。私のミスだ、これからは作戦行動に口を出さない。君に任せよう」

 

「最初からそうしていろ、バデイ。神代澪……今度こそ貴様を殺す」

 

黒いデモニカスーツを纏ったアレックスから叩きつけられる冷たい殺気に背筋に冷たい汗が流れ落ちる。

 

「アレックス……」

 

「私の名を軽々しく呼ぶなッ!」

 

アナザー・ヒーローとの戦いのすぐ後のアレックスとの戦い……どう考えても絶望的だが、私は若様を救う為に立ち止まっている時間など無く、震える手で再び錬気刀の柄を強く握り締めるのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その22へ続く

 

 




アナザー・ヒーロー撃破後、続けてアレックスという鬼畜連続バトル開幕です。助っ人枠のデメテルがいますが、これはかなり厳しい戦いとなるでしょうね。なおアナザー・ヒーローの仲間はランダムスキル、○○ブースタなどのパッシブがランダム発動するのでダメージ乱数がめちゃくちゃ激しく、HP管理がほぼ出来ないというこちらもまた鬼畜使用のボスでした。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。
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