収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

64 / 114
4周目の世界 滅びを求める地球意思 その35

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その35

 

ミトラスと長久とのやりとりには肝を冷やしたが、ミトラスとの交渉で非常に有意義な情報を得れたのもまた事実。悪魔と契約することの危険性を知る長久が自ら契約しただけあってミトラスは契約を重んじる悪魔であり、それを反故にする様子も無かった。

 

「ミトラスは元はかなり高位の神だと僕は考えているんですが、大和兄さんはどう思いますか?」

 

「俺も同意見だ。シュバルツバースの支配者と呼ばれる悪魔全てが元はかなり高位の神だろうな」

 

モラクス、ミトラス、オーカス、アスラ、そしてウロボロス……先のセクターに進むにつれ神に近い個体が出ているのも元はミトラス達が高位の神であるという証拠だと俺は考えていた。

 

「元は高位の神とはどういう意味なんだ?」

 

俺と長久の話を聞いていたカトーがどういう意味なのかと尋ねて来た。正直少し面倒だが、これからの事を考えれば知識の共有をしておくべきかと思い俺はカトーの問いかけに返事を返した。

 

「悪魔や堕天使の多くはキリスト教によって悪であると定義された者が多い。宗教の形態や風習によっては現在の人間にとっては到底受け入れられるものではなく、キリスト教はそれらの宗教の多くを悪魔によるものとし、神の尊厳を貶めたのだ」

 

「簡単な例えでいうとマヤ文明とか古代カナン地方とかの神様ですね。あの当時は神として崇められていましたが、キリスト教によって悪魔と定義された事で神としての地位を剥奪された者……モラクス達もかつては神と崇められていた可能性があるわけです」

 

俺の話を長久が捕捉し、俺達の話を聞いたカトーはなるほどと呟いて頷いた。

 

「悪魔というのはかなり複雑なんですね」

 

「ああ。悪魔と一言で言えるが、それだけで分かった気になるのは危険ということか」

 

他の司令部クルー達も俺達の話を聞いて頷いているのを見て、調査隊に選ばれただけあって民度はそれなりに良いようだなと頷いた。

 

「天使に深く洗脳されている連中を捨て駒として送り出すのが1番俺は堅実だと思うのだがな」

 

「……それは最終手段にしましょうよ。大和兄さん」

 

「天使に完全に洗脳された連中は元には戻らん。ゴアも長久も、希望は捨て受け入れろ。あいつらはもう人の形をした悪魔だとな」

 

キリスト教の信徒ならまだしも、元々メシア教だった連中の天使が行なう洗脳の侵食は爆発的だ。姿形は人間でも、アナライズをすれば分かる。種族が人間からメシアンになっていればもう手の施しようが無く、隔離されている調査隊は全員が種族が人間からメシアンへと変わっていた。

 

「もう本当にどうにもならないのか?」

 

「どうにかなるならしている。お前達の気持ちは分かるが、どうしようもならない事と言うのは多々ある。それがメシアンに変わってしまったあいつらだ。あいつらを生かしておけば天使を誘き寄せる、そして人間に接触すれば洗脳を広げようとする。隊長だというのなら非情な決断を下すことも必要だぞ」

 

メシアンは生かしておいてなんの益もない、死んだメシアンだけが良いメシアンなんだと言うとゴアは深く溜め息を吐き、葛藤する素振りを見せた後に口を開いた。

 

「大和。君の案を採用する。最悪の場合は……な」

 

ゴアが重々しく告げた言葉を責める司令部クルーはいない、確かに思う事はあるだろうがその非常な決断も必要な物だと覚悟している者が多い。

 

「大和兄さん、やっぱり実行するんですか?」

 

「する。これが一番確実だ」

 

澪達には札を持たしており、隔離しているメシアン達にも札を持たしている。危険だと判断すれば札を利用した転移で澪達とメシアンの場所を入れ替えることでウロボロスと交戦データを得つつ、澪達を無事に回収し、邪魔になるメシアンを纏めて駆除する。確かに外道、非道の類だがこれが現段階では最も冴えた正しい選択であると俺は考えていた。

 

「それだけウロボロスは危険だ。1級の戦闘班を失うわけには行かないんだ。分かっているな、長久」

 

「……はい、分かっています」

 

元葛葉の澪は勿論だが、ヒメネス、マッキー、タイラーといった貴重な戦力を失う事は我々の死を意味する。非道、外道と罵られても澪達を無事を帰還させる必要があるのだ。

 

『こちら澪、こちら澪。レッドスプライト号応答してください』

 

「は、はい! こちらレッドスプライト号です! 澪さん、なにかありましたか?」

 

ジャック部隊の悪魔が封鎖していた転送装置を利用しエリダヌスを上へ上と昇っていた澪達機動班からの通信に司令部の女性オペレーターが返事をする。

 

『凄まじいMAGの反応を感知したと澪が言うんだが、俺達のデモニカに反応が無い。そちらで観測出来るだろうか?』

 

『多分悪魔使いの技量によるものだろうが、俺達には分からん。よろしく頼む』

 

マッキーとタイラーからの観測依頼を聞いて長久が顔を上げたが、その頭に手を置いて無理矢理下げさせる。

 

「痛いです」

 

「式神は飛ばすな、フィードバックがあるぞ」

 

「でも……」

 

「でもはない、良いな。ウロボロス級の悪魔の攻撃ともなるとフィードバックでも危険だ。お前は大人しくしていろ」

 

式神が破壊されれば当然長久にもダメージが行く、ウロボロスという悪魔がいると分かっている中で式神を飛ばす事を許可など出来るわけが無い。大人しく観測を待てと言って長久を窘めているとカトーが大声を上げた。

 

「……ッ!? 何だコレはッ!? アーサー今すぐ観測してくれッ! バニシング・ポイント推定地点に異常反応だッ! 強烈なエネルギーパターンを検知ッ! 今までに無い反応だ。澪達は一時進軍を停止! 俺達の報告を待ってくれッ!」

 

カトーの怒声に司令部に緊張が走り、メインモニターを見ていた俺達も顔を上げた。

 

「どうも近いみたいですね、ゴア隊長、大和兄さん」

 

「ああ。このミッションでの最大の山場だな」

 

「……ウロボロス、その力がいかようなものか……この目で確かめさせてもらうとするか」

 

エリダヌスの支配者であるウロボロスが近いからこそのこの高エネルギー反応であり、今まで戦ってきたどの支配者悪魔よりも強い事が予測されるウロボロスとの戦いを控え、司令部には異様な緊張が広がり始めているのだった……。

 

 

 

 

レッドスプライト号から観測結果が来るまで待機している事になった俺達はさっきのノイズ交じりの通信について話をしていた。

 

「恐れを知れと言っていたな」

 

「恐れ……恐れね、悪魔を恐れろって訳じゃないよな。流石に」

 

マリー、ホーク、ユート、カイル、ルナの声を突如デモニカスーツが受信したのはジャック部隊のライアンからゲートサーチCを手に入れてすぐの事だった。

 

『災いの星の者達と手を組んだか……』

 

『澪よ、お前達はその選択を悔いるだろう。災い星と協力してもお前達がこの地を逃れる事は出来ない』

 

『「ママ」は目を醒ました』

 

『お前達に裁きを下す為に……私は、私達は、それを見ていよう』

 

『病魔たる人間の、1つの終わりを………』

 

途切れ途切れのマリー達の声は不気味で、1つの嫌悪感を抱かせた。

 

「災い星か……分からないわけでもないな」

 

「さっきのライアン達を見ればな」

 

悪魔を実験動物と言って乱獲し、金のなる木があちこちにあると下卑た笑い声を上げていたライアン達の姿を思えば間違いなく災い星はあいつらだと分かる。

 

「問題は地球意思があいつらを見てしまった事ね」

 

「本当に余計な事しかしないわね、あいつらはッ」

 

長久の言う地球の意思の考えを変えさせると言う計画は最初から頓挫してしまった訳だ。

 

「とにかく今はバニシングポイントを確保しようぜ、地球意思に関してはそれからどうすれば良いかみんなで考えればいい」

 

ジャック部隊の事は気になるが、まずはバニシングポイントの確保が今必要なことだ。

 

「そうだな、ヒメネスの言う通りだ。全員札は身体に貼り付けているな? それが俺達の生命線だ。しっかりと確認しろよ」

 

俺の意見に同意したタイラーに言われてデモニカスーツに貼り付けてある札を再確認する。

 

「……これを使う事になるのね」

 

「しょうがねえ、あいつらはもう人間じゃねえんだ。人の姿をした悪魔って思うしかねえだろ」

 

隔離していた司令部クルーはメシアンという悪魔に近い存在になっていた。長久や大和がどうにもできないと言って俺達の身代わりにする事を考えた事に表情を曇らせるゼレーニンだが、あいつらを生かしておけばそれだけ俺達が危険だとなれば、少しでも俺達の役に立ってもらい、殉職して貰うしかないだろう。

 

『こちらレッドスプライト号の長久です。その先に恐らくウロボロスがいます、ですが勝てる可能性は限りなくゼロです。今回のアタック

ではウロボロスの行動パターンを把握することを最優先にしてください』

 

「了解しました若様、皆準備は出来ていますね?」

 

装備の確認、身代わりの札と脱出札の確認をしてから頷き、俺達はバニシングポイントがあるであろう扉の先へと足を踏み入れた。

 

「で、でけえ……」

 

「まじか……」

 

バニシングポイントと思わしき場所の前に陣取っているのは今まで見たこともない巨大な蛇の悪魔だった。

 

【ああ……悪しき予感は的中です。この地を人間に乱されようとは……私の心を騒がした報いを……貴方達は受けなくてはなりません】

 

その外見からは信じられない穏やかな声で話しかけてくるウロボロスだが、その言葉には今まで戦って来たどの悪魔よりも強い悪意と敵意が合った。

 

【このウロボロス・マイアが支配する聖殿に……質量の虜たる人間が行く必要もなければ、行く事も出来ないッ! 貴方達に虚空の無限を解く事は許されてないのですからね。限りある命、限りある力の人間が……我ら悪魔を統べる事が出来る訳などあるわけもない、そして我ら悪魔の無限の力に勝てる訳もない、生命の水が地上で生んでしまった嘆くべき過ち……人間よ。この場で、この虚空を流れ巡るだけの粒子に還してあげましょう……いざ、分解されよッ! 罪科の物質よッ!】

 

【マハンマダイン】

 

ウロボロスの強い一喝と共に放たれた光の洪水……それが俺がウロボロスとの初戦で見た最後の光景であり、俺とウルフマン、そしてドーソンの3人はこの初撃のマハンマダインによって肉体から魂が引き剥がされる凄まじい激痛と共にその命を終え、身代わりの札と転移の札によってレッドスプライト号へ強制帰還されるのだった……。

 

 

 

 

マハンマダインの光の中にヒメネスとウルフマンとドーソンが消えた事に動揺したゼレーニンとキーマがジオダインの直撃に飲まれて消えた。戦闘開始から15秒……それだけで5人が戦死級のダメージを受けレッドスプライト号に隔離されたメシアンと入れ代わりになった。

 

【己の罪を自覚するのです】

 

【厄災の輪廻】

 

どす黒い光がウロボロスを中心にして放たれ、急に身体が重くなった。

 

「うっ!? な、なんだ体が……動かない」

 

「う、うああああああッ!?」

 

麻痺した様子のタイラーと発狂しているマッキーを見て、私も何らかの状態異常を喰らったのだと分かった。慌ててアムリタシャワーの入った瓶を地面に叩きつけ状態異常から回復するが、離れていたマイクとスティードマンにはアムリタシャワーは届いていなかった……。

 

『ごえ……げぽ……おえッ』

 

『げほ、げほげほっ! こ、これ……か、風邪か……?』

 

激しく咳き込むその様子は風邪の症状に見えた。だが態々風邪を付与させる理由はなんだと困惑している私達の前でウロボロスの次なる一手が放たれた。

 

【苦しみの中で己の罪を知り息絶えなさい】

 

【悪化】

 

ウロボロスから放たれた光は私やマッキー、タイラーには何の影響も無かったが、激しく咳き込んでいたマイクとスティードマンの2人が糸の切れた人形のように崩れ落ち、その場から消え去り変わりに息絶えたメシアンの死体がその場に転がり、ウロボロスの放った閃光の中へ消えた。

 

「な、何が、何がどうなっている!?」

 

「落ち着いてマッキー! 相手が強いのは分かっていた筈です!」

 

瞬く間に倒れていく仲間に動揺しているマッキーに落ち着くように叫びながらタイラーと共に火炎弾をウロボロスへ撃ちこみながら先の光景を分析する。

 

(状態異常をトリガーにして発動する即死効果)

 

ドルミナーによる睡眠からの永眠の誘いや石化からの衝撃魔法による即死。状態異常になっているのが条件の特殊スキルだと私は予測した。

 

【その程度で私を倒せるとお思いですか? 可愛いですね】

 

デビルCO-OPは確かに発動し不可視の衝撃がウロボロスを打ち据えているがダメージがまるで通っているようには見えない。

 

【人間に組する悪魔は死になさい】

 

【豪雷】

 

【ひ、ヒホオオオオオッ!?】

 

【ギャんッ!?】

 

【うっく……すまん澪! 我はここまでだッ】

 

じゃあくフロスト、フェニックス、大国主の3体がウロボロスの放った強烈な電撃の前に消し飛んだ。慌ててデモニカスーツに回収したが、少し遅れていたら完全にロストしていたと思うと正直ゾッとする。

 

【調子に乗るなよ、このクソ蛇ッ!!】

 

【物理ブースタ】【物理ハイブースタ】【武道の心得】【チャージ】【八艘飛び】

 

若様と大和様のMAGを得て完全な姿になった義経の放った8連続の斬撃がウロボロスを8分割にした。

 

「やったか!」

 

「よっし!」

 

誰が見ても8分割にされたウロボロスは死んだと思うだろう。だが勝ったと、ウロボロスが死んだと判断するには早すぎた。

 

(MAGが溢れてこない?)

 

ウロボロスが死んだのならば身体に溜め込んでいるMAGがあふれ出すはずなのに、それが無い事に気付いたのは私だけだった。

 

【ま、ざっとこんなもんよ】

 

義経も勝利を確信し、刀を鞘に収めようとした瞬間。切り落とされたウロボロスの首が義経の胴体へ喰らいついた

 

【がっ!? て、てめえッ!?】

 

【この程度で永遠を司る私が死ぬとでも? その慢心私が正してさし上げましょう】

 

【食いしばり】【ディアラハン】【ジオダイン】

 

切り落とされたウロボロスの胴体が一瞬で首と合体し、その口から放たれた雷が義経を胴体から両断した。

 

【がぼ……ッ!?】

 

「義経ッ!!」

 

今私達の最大戦力を失い訳には行かないと慌てて封魔筒を取り出し義経を帰還させる事に成功したが、私の足元が暗く染まった。

 

【貴女ですね。人間の中で1番強いのは】

 

激しい怒りと悲しみと憎悪と哀れみを感じさせる複雑な瞳で私を睨みつけてくるウロボロス。その圧倒的な眼力に私は蛇に睨まれた蛙のように呼吸さえ忘れてその場に立ち尽くした。

 

「澪逃げろッ! フェニックスッ!」

 

「じゃあくフロスト! 頼んだッ!」

 

マッキーとタイラーが動かない私に気付いてフェニックスとじゃあくフロストへ攻撃を命じ、フェニックスとじゃあくフロストは私を救う為に動いてくれた。

 

【キュアアアアッ!】

 

【ファイヤブレス】

 

【これでも喰らうホーッ!!】

 

【アギダイン】

 

ウロボロスの巨体を炎が包み込み、デビルCO-OPが発動するのを私は至近距離で見ていた。そして目の前で絶望的な現実に直面した。焼け爛れた身体がビデオの巻き戻しのように元に戻っていたのだ。

 

【私にはやらねばならないことがある。消え去りなさい、人間よ】

 

【静寂の祈り改(コンセントレイト)】

 

【電撃ブースタ】【電撃ハイブースタ】【コンセントレイト】【ジオダイン】

 

私達とウロボロスを青い光が包み込み、身体がドッと重くなった。状態異常などではなく、強化状態を無効化するデカジャの効果がある何かが使われた事を理解した次の瞬間空から降り注いだ雷に飲み込まれ、気がついた時には私達はレッドスプライト号の医務室で寝かされていた。バニシングポイントを守護するセクター主のウロボロスとの初戦はなんの言い訳の仕様もない完全敗北なのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その36へ続く

 

 




ウロボロスは超魔改造してみました。厄災の輪廻のランダム状態異常に風邪の追加、悪化の追加、電撃・電撃ハイブースタ、マハンマがマハンマダインへ、そしてボスが覚えてちゃいけないディアラハンと自己再生効果のバージョンアップと食いしばりの追加と1でふんばりディアラハンで全回復するクソボスにバージョンアップしました。この強化・ウロボロスとどのようにして戦うのかを次回は書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。