収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その36

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その36

 

澪達が文字通り命がけで持ち帰ってくれたウロボロスとの交戦記録を司令部のモニターで全員で見ているのだが、誰も声が出なかった。ミトラスからウロボロスの強大さは聞いていた。それでも心のどこかで勝てると思っていたのだろう……だがウロボロスの強さは我々のそんな予想を一蹴するほどに凄まじい物だった……。

 

広範囲の昇天魔法でヒメネス、ウルフマン、ドーソンが死に、それに動揺している間にゼレーニンとキーマが電撃の雨の中に消えた。そしてなんらかの魔法で状態異常を付与され、マイクとスティードマンが死に、義経の攻撃で身体がバラバラにされたウロボロスが一瞬で再生し義経が消滅し、澪だけに狙いを定めた雷が澪を消し飛ばして、残された悪魔とマッキーとタイラーはその巨体を利用した衝撃破によって吹き飛ばされて死んだ……戦闘時間は1分にも満たない僅かな時間、それによって澪を初めとした先鋭部隊は全滅した。

 

(長久君達の言う通りにしていて良かった)

 

悪魔に変わってしまった調査隊のメンバーを身代わりにしていなければ澪達が生きてレッドスプライト号に戻る事が無かったと分かり、非道、外道と分かりながらも長久君達の提案を受け入れてよかったと思った。確かに仲間を犠牲にしたのは辛い事であり、生贄にする事が正しいとは思っていないが、それでもあの選択は正しかったと思う。

 

「……」

 

「まじか……」

 

「信じたくないわね……」

 

その映像記録を見ていたカトー達も信じられない、信じたくないというのがその表情が物語っていた。今までのセクターの支配者の悪魔も確かに強かった。だがウロボロスは他の支配者の悪魔を遥かに凌駕していた。

 

「大和兄さん。マイクさん達が死んだのは……なんなんでしょうか?」

 

「病気をトリガーにして発動する瀕死にする魔法だな。病気を司る悪魔が使う物だが……どの異常事態がトリガーかは分からんな」

 

その中で大和と長久君だけはウロボロスをどうやって突破するかを話し合っていた。そして直接ウロボロスと戦った澪達の心もまた折れていなかった。

 

「あれだ。ほれ、長久。あれだって……えっとテトラジャ! テトラジャストーンであいつのマハンマダインを防げないか?」

 

「防げるとは思いますよ? ただ連射されるとかなり困りますね」

 

「テトラジャストーンは作るのが手間だからな、テトラジャを使える悪魔を準備したほうが早いだろうな。それに仮にマハンマダインを防いだとしても……」

 

「あの厄祭の輪廻がある限りウロボロスには私達をいつでも殺す術がある」

 

「いや、それだけじゃないぞ? あいつの攻撃はどれも強力だ。直撃すれば消し飛んじまう。なにかこうもっと具体的な対策が必要だ」

 

搦め手に加えて純粋な火力もウロボロスは群を抜いている。特に電撃の威力が群を抜いて高い。

 

「電撃耐性の装備で固めるのはどうだろうか? 長久君」

 

「それも1つの手だと思うんですけど……澪がやられる前にウロボロスが使った何かが気になるんですよね」

 

そう言われると澪が死ぬ前にウロボロスは何かをしていたのを思い出した。

 

「デカジャではないのか?」

 

「いえ、デカジャではないと思いますゴア隊長。ウロボロスへの弱体化も同時に無効にされていましたから……それに加えてウロボロスの

圧力が一時的に倍増をしていた事を考えると恐らく……」

 

「コンセントレイトだな。澪」

 

「大和様、はい。私はコンセントレイトだと思っています。あの蒼い光はデクンダ、デカジャ、コンセントレイトの複合の可能性が高いです」

 

「それはとんでもないね、コンセントレイトは特に駄目だ。ウロボロスのジオダインとマハジオダインが止められなくなってしまう」

 

コンセントレイトがなんなのかは判らないが長久君達の話を聞いていれば魔法の威力を跳ね上げる何かというのは分かった。

 

「それに加えて自己再生に全回復魔法だろ?」

 

「デビルCO-OPで全包囲攻撃をしても全然聞いてなかったしな……」

 

「まるで隙がねえな……化けもんか? いや化物だな」

 

「ふざけてる場合じゃないわよヒメネス。まぁ気持ちは分かるけれど……」

 

攻撃・防御が非常に高い水準であり、それに加えて搦め手にも秀でている。デルファイナスのアスラと似た性質の悪魔だが、アスラよりも段違いに厄介な悪魔だ。

 

「まずはだがあいつの不死性のカラクリを破る必要がある。だがこれのカラクリについてはもう分かっている」

 

「流石ですね、大和兄さん。ではウロボロスの不死性の秘密は何なんですか?」

 

「龍脈だ。このエリダヌスは地球の龍脈と繋がっている。地球その物の生命力、それがウロボロスの不死性の秘密だ。つまり俺達の敵は地球その者と言っても良いだろう」

 

大和の言葉に司令部に嫌な沈黙が広がった。倒さなければならないのが地球……どう考えても人類の手でどうにか出来るとは思えない物が我々の敵だったのだ……。

 

 

 

龍脈の力を吸い上げていると大和に言われても俺には正直ピンと来なかった、何かとんでもなく大層な物と言うのは分かったが、それがどれだけやばいのか俺には全然理解出来なかった。

 

『ブラボーッ! 流石峰津院の双璧の片割れ、素晴しい分析能力だ』

 

「ジャック……こちらを盗聴していたのか?」

 

司令部に響いたジャックの声とノイズ交じりのジャックの姿がモニターに映し出され、ゴア隊長が睨みながらジャックに問いかけるとジャックは悪びれる様子も無く両手を上げた。

 

『ゴア。そう怒るなよ、君達の戦いは我々も観測していた。実に素晴しい戦いだったよ、ただ相手が相手が一枚上手だった事に対してはご同情を申し上げるよ。やはり分かっていたが異界の怪物達は一筋縄ではいかないね。我が隊も注意せねばならない』

 

べらべらと喋り出すジャックの言葉を遮るようにゴア隊長が踵を踏み鳴らすとジャックは肩を竦める素振りを見せた。

 

『分かったよ。本題を話す、君達の戦っている間にバニシング・ポイントへ向かって放たれる奇妙な存在を観測した。これは我々が提供したアプリを使えば観測出来るだろう。では頑張ってくれたまえ諸君』

 

ライトニング号からのハッキングが終わるとゴア隊長が声を上げた。

 

「アーサー! 今すぐにセキュリテイの強化だ。もう2度と司令部をハッキングさせるなッ!」

 

『イエス・サー、すぐに取り掛かります』

 

珍しくゴア隊長が声を荒げているのを横目にジャック達から提供されていたアプリを起動させるとウロボロスの要るポイントへ向かうエネルギーラインを観測する事が出来たのだが……。

 

「おいおいおい……マジかよ」

 

「多すぎじゃないか……これ戦力分散しないとどうしようもないぞ」

 

エリダヌスのほぼ全域にウロボロスに向かってエネルギーを供給しているポイントが合った。しかもその上1つ1つが大きく離れて点在していた。

 

「これはどうなのかしら? 大和。順番に倒していって最後にウロボロスって風に出来るのかしら?」

 

ウロボロスと戦うのならば総力戦が良い。先にエネルギーを供給している悪魔を倒しても大丈夫なのか? とゼレーニンが尋ねる。

 

「……正直に言うと分からない。このてのタイプの悪魔の事を考えると倒す順番、あるいは……」

 

「同時撃破ですね、大和兄さん」

 

「その通りだ。倒す順番か、同時撃破か、それともその両方か……対策を練るとしても1度はこのポイントの悪魔を討伐して貰う必要がある」

 

倒す必要があると言われれば倒す事は問題はないのだが……。

 

「同時撃破とか順番って言う条件があるんだろ? それにそのポイントを守ってる悪魔が強すぎたらどうにもならんぜ?」

 

「確かに、逆に各個撃破される心配があるわね」

 

ウロボロスにとってバニシングポイントにエネルギーを送る悪魔は生命線だ。そのポイントを守る悪魔は間違いなく強力な相手だろう。そんな強力な悪魔がエリダヌス全域にいるとなれば、戦うにしてもそれ相応の準備と調査が必要になる。

 

「カトー。まずはウロボロスと戦闘中のエネルギーの流れを調べなおしてくれ、次に長久君と大和は転移札をまた準備して欲しい」

 

「離脱のためですね、分かりました。すぐに準備をします、えっとそれと大和兄さんは式神をお願い出来ますか?」

 

「分かっている。俺も無策で送り出すつもりはない、悪魔を確認すればある程度は予測がつく、とりあえず機動班は一時休息。アーヴィンには電撃耐性を持つ装備の製作を頼むと言うことで良いか?」

 

「ああ。それで行こう、機動班はこれより召集が掛かるまで休息を取ってくれ」

 

召集が掛かるまで休息命令が下され、どうせ眠れないだろうと思いながらも仮眠所に向かった俺達はベッドに横たわった瞬間に深い眠りへと落ちていくのだった……。

 

 

 

仮眠室に向かった澪達が全員眠ったと様子を見に行ったゾイさんに言われて俺はやっぱりと呟いた。

 

「身代わりを使ったとしても1度死んだ事実は変わりませんからね、体力が回復していても精神力は違います。調査結果が出ても暫く寝かせておいてあげた方が良いと思います」

 

「勿論私もそのつもりだ。今回の作戦は連戦になる可能性が高いからな」

 

バニシングポイント……いやウロボロスにエネルギーを供給している悪魔を倒したとして、その悪魔が再生や復活、あるいは再召喚される可能性もある。そのポイントを制圧してすぐウロボロスとの戦いが控えている事を考えれば澪達には今休息を取っておいて貰う必要がある。

 

「厄祭の輪廻か。あれの対策をどうするかが問題だな」

 

「僕もそう思います。アムリタやアムリタシャワーで回復したとしても、それが効果を発揮する前に即死させられたら意味が無い」

 

マハジオダインやジオダインはある程度対策できるとしても、厄祭の輪廻からの病気を悪化させるコンボを防ぐ術が無い。

 

「普通の悪魔が使う状態異常ではないのだろう?」

 

「そうですね、カトーさん。即死に繋がるのは麻痺や毒、呪いではないと思います。マイクさん達が軽微の風邪の症状を訴えている事を考えると恐らくトリガーは風邪だと思います、いえ、そう思いこむのは危険ですけれど、可能性は高いと思います」

 

マイクさん達が死ぬ前に感じたのは発熱と鼻水と咳と倦怠感であり典型的な風邪の症状だった。

 

「確か澪達は麻痺や毒だと言っていたな?」

 

「ああ、恐らくランダムなのだろう。戦いの中で突如風邪や身体が痺れれば、それは致命的な隙になる。厄介な能力な事この上ないな」

 

風邪から即死に繋げる事が出来なくとも麻痺や毒でも十分な効果がある。どの状態異常になってもウロボロスには益があるのだ。

 

「インフルエンザのワクチンとかを接種するのは対策にはならないかしら?」

 

「どうなんでしょう……んー無いよりましだとは思いますけど、ゴア隊長良いですか?」

 

インフルエンザのワクチンで効果があるとは思えないが、ないよりマシかもしれないので澪達には1度インフルエンザのワクチンを摂取してもらったほうが良いかもしれない。

 

「必要ならば許可しよう。ワクチンが馴染むまでの間に調査と観測を終わらせれば良いからな」

 

ゴア隊長の許可を得て澪達が起きたらインフルエンザのワクチンを打つ事に決まった所で式神を操作していた大和兄さんに進展が合った。

 

「長久、エネルギーポイントにいる悪魔が捕捉出来たが……長久。これをどう見る?」

 

そう言われて式神の視点を映している司令部のモニターを見て俺は首を傾げた。

 

「なんだ? 随分と弱い悪魔じゃないか?」

 

「確かに……エリダヌスの悪魔じゃないわよね?」

 

カトーさん達のいう通り、ポイントを守っている悪魔は決して強いと呼べる悪魔ではなく、むしろ弱い部類の悪魔だった。

 

頭に花の生えた小人の姿をした「マンドレイク」

 

ボロボロの羽織を纏った骸骨の姿をした「カワンチャ」

 

一見女性に見えるが蛙のような光沢を持つ肌をした悪魔「ズェラロンズ」

 

黄色い鶏冠のある蛇のような悪魔「バジリスク」

 

一見弱い悪魔であり、何の統一性も無いように見えるが……何かが引っかかる。

 

「生と死」

 

マンドレイクはマンドラゴラの子供、そしてカワンチャは骸骨の見た目通りに死を意味している……? ズェラロンズとバジリスクは分からないが、マンドレイクとカワンチャによって何を意味しているのかが分かった。

 

「輪廻だ。ウロボロスは擬似的に輪廻を作り、それを利用して龍脈のエネルギーを吸い上げている。ウロボロスへのエネルギーの供給を断つのは恐らく順番による撃破だと俺は考える」

 

永劫と輪廻を司るウロボロスらしい配下の悪魔だと思ったが……。

 

「待て! 姿が変わっていくぞッ!?」

 

マンドレイクの頭の花が抜け落ち、ピンク色だった身体が茶色く染まり老婆のような姿の「マンドラゴラ」へと変化し……。

 

骨に肉がついていき骸骨だったカワンチャの姿が生き生きとした戦士へと変わった……悪魔である事は間違いないが俺にはその悪魔が何か分からなかったが、間違いなく神に準ずる何かなのは間違い無かった。

 

そしてズェラロンズはその姿が「カエル」「熊」「鷲」「ビーバー」「鳥」の特徴を持つ「キメラ」へと変化し……。

 

バジリスクは手足を失い、巨大な年老いたバジリスクへと変化した。

 

「まただ、まだ変わるぞ!? どうなってる!?」

 

そして変化したマンドラゴラタ達はまたマンドレイクへと変化し、終わりの無い変化を繰り返しながら踊りを舞っていた。

 

「大和兄さん、僕は慎重になるべきだと思います。変化のサイクルを調べて、それから変化の法則、その意味を調べる方が良いと思います」

 

この変化のサイクルを見破らない限りはウロボロスへのエネルギー供給を止める事が出来ないという確信にも似た予感があった。

 

「長期戦を覚悟しなければならないな、ゴアもそれで良いか?」

 

「構わない。バニシングポイントを確保する事は確かに優先事項だが、今脱出してもシュバルツバースを消し去る事は出来ない。ここはウロボロスの攻略を最優先に作戦を立てよう。さすがに合同本部も暴走することはないだろう」

 

合同本部の暴走の危険性はあるがセクターエリダヌスの支配者ウロボロスの余りの強さ、そしてその不死性によって俺達は完全に手詰まりに追い込まれてしまっていた。

 

「ゴア、言いにくいが本部の連中は馬鹿ばかりだ。エリダヌスにバニシングポイントがあると分かればジャック達だけ生きていれば良いと考えて何かしでかす可能性もあるぞ。定時連絡が可能になるまでの……12時間。それが実質的なタイムリミットであり、ライトニング号の反応が無くなればその瞬間にアウトだ」

 

ウロボロスへの対策も何も出来ていないのに、その上タイムリミットまで加わり、余りにも絶望的すぎる状況に俺は思わず天を仰ぐのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その37へ続く

 

 




ウロボロス魔改造によってウロボロスの子供も超パワーアップして、そう簡単にウロボロスへのエネルギー供給を止めれない形になりました。次回は子供戦その1、40からウロボロスへのリベンジを書いて行こうと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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