収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その37

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その37

 

ウロボロスへのエネルギー供給をどうやって止めるかの話し合いは一時中断されることになった。流石の俺もあれほど変異を繰り返す悪魔の謎を掴むのは1時間や2時間では不可能であり、様々な考察をする為にも1度危険を承知で悪魔と戦い情報を集める必要があると言う結論となった。澪達の体力とMAGが回復するまで待ち、その間にアーヴィンに装備を作らせている間。俺は長久と2人きりで話す時間をやっと手にする事が出来た。

 

「たこ焼きは食べたか?」

 

「はい、澪と一緒に食べました。美味しかったです」

 

「そうか、それは良かった。チョコレートはどうだ? 紅茶もあるぞ?」

 

たこ焼きが美味しかったと笑う長久にチョコレートと紅茶にミルクと砂糖を添えて差し出すと長久はそれを受け取り小さく微笑んだ。

 

「大和兄さんは僕に何か言いたい事があるんですよね?」

 

情けない、自分から切り出せず、自分の葛藤を長久に見抜かれた事に俺は目を見開き、少しの躊躇いの後に口を開いた。

 

「あの手紙は何だ。俺と都宛のあの手紙は」

 

遺書を何故送ったと問いただしたいのに、長久に縛られているからその言葉を発する事が出来ない。その上周りに他人がいれば手紙についても話せない、そこまで何故念入りに呪を掛けたのかと長久へと問いただす。

 

「……時間の無駄はしないほうが良いからです。僕の結末は覆せない、その覆せない結末を覆すために労力を割くのならば地球を救う為に労力を向けたほうが良い」

 

「時間の無駄だと、何故時間の無駄だと言える。俺がここにいる、お前の結末だって「覆せません。これはそういうものなんです」

 

俺の言葉を遮り覆せないという長久の言葉に俺は何故だとどうしてだと詰め寄りたかった。だが長久の諦め、いや、己の死を受け入れているその顔に何も言えなくなってしまった。

 

「……いつからだ」

 

その顔は昨日、今日己の死を知った顔ではない、そうでなければこんな澄んだ瞳で動揺もせず己の死について言えるわけが無い。いつから知っていたんだと問うと長久は俺の言葉に返事を返さず、座っていた椅子から立ち上がり俺の前に立った。

 

「大和兄さん。少し頭を下げてください」

 

「……分かった」

 

困惑しながらも長久のいう通りに頭を下げると長久は俺の頬に両手を沿え、自分の額を俺の額に当てた。長久の熱を感じる前に脳裏に、いや魂に響いて来る恐ろしい音が俺を縛り付けた。

 

(なんだ……なんだこれはッ)

 

言葉に出来ない恐怖が身体を縛った。どこか遠くから足音が聞こえる。それは一定の速度で確実に自分の元へと近づいて来ている。全身の血が凍るような、心臓が動く事を拒否するような、絶対の死の足音が長久から聞こえてきた。

 

「ずっとです。僕はずっとこの足音を聞いていた。ああ、この足音が止まった時に死ぬのだと何の理由もなく受け入れました」

 

「何故、何故今になってそれを伝える」

 

ずっとこんな恐ろしい音を長久が聞いていたのだと、もっと早くに教えてくれても良かったじゃないかという言葉は喉元まで来たが、その言葉は発する事無く俺は飲み込んだ。余りにも透き通った、悟りを得たような表情をしている長久に何も言えなくなってしまった。

 

「僕はいなくなる。あの手紙を出せば大和兄さんか都姉さんが来てくれると思ったんです。残酷な事だと、無責任な事だと分かっています。だけど調査隊の皆には悪魔の専門家の知識が必要なんです……でも、それはきっとこじつけの理由です。最後まで時間が無いと分かっていても、しっかりと大和兄さんか都姉さんと言葉を交わしたかった。貴方達を苦しめると知っても」

 

小さな小さな長久の身体を抱きしめる。また死神の足音が聞こえてくるが、それに恐怖すること無く長久を抱きしめた。

 

「無責任、苦しめる等と言うな。お前はずっとこの苦しみに、恐怖に耐えてきた。それに気付く事の出来なかった愚かな兄を許してくれ」

 

「そんな事はないですよ。大和兄さんはずっと僕を守ってくれたじゃないですか、それに大和兄さんなら皆と一緒にきっと平和な世界を作ってくれる。僕はそう信じています」

 

守れたことなんてない、兄弟なのに僅かな時間しか共に入れなかった。あのクソ共に長久が苦しめられている事を知っても、俺と都に出来る事なんて微々たる物だった。それでも長久は俺達を慕ってくれている。このただ1人の弟すら救う術のない弱い男を信じてくれている。

 

「約束する。俺達は必ず地球を救う。お前が願った平和な世界を作る」

 

それが避けられない死の恐怖にずっと耐えて来た長久の願いならば、俺は俺の全てを掛けて地球を救ってみせる。俺は長久を抱きしめそう心に誓うのだった……。

 

 

 

5時間の睡眠をとった後に司令部に呼び出された私達は長久と大和からこれからの話を聞かされた。

 

「変異を繰り返す悪魔達と戦い、可能なら離脱せよ……か」

 

「すいません。かなり無茶な事を言っているのは分かっています」

 

ヒメネスの言葉に長久が謝るとヒメネスはその頭をわしゃわしゃと撫で回した。

 

「気にすんな、事前情報が無い戦いなんて嫌って程やって来てる。まぁ多少は厳しいが、なんとかしてやるさ。なぁ?」

 

ヒメネスが振り返りながら言うとマッキー達も力瘤を作りながら微笑んだ。

 

「心配するな、意地でも生きて帰ってくるさ」

 

「戦うのは俺達の仕事。それを分析するのは長久達の仕事だ」

 

ヒメネス達のいう通りだ。機動班と司令部の関係性としてはこれが1番正しいあり方だ。

 

「大丈夫ですよ若様。皆無事に戻ってきますから」

 

澪が長久に微笑みかけながら言うと長久も笑みを浮かべながら頷いた。

 

「時間が無い簡潔に説明するぞ、まずマンドレイク、ズェエランズ、バジリスク、カワンチャの4体の悪魔がそれぞれマンドラゴラ、キメラ、強く進化したと思われるバジリスク、そして英傑、もしくは英霊に分類される悪魔へとカワンチャが変異する。対策が取れるマンドラゴラ、キメラについては作戦仕様書にレポートがある。1度目を通してくれ」

 

大和から配られた資料には悪魔についての詳しい説明と予測される攻撃方法が記されていた。

 

マンドレイク 火炎弱点・氷吸収・光闇無効 バインドボイスによる麻痺、回復魔法あり。

 

マンドラゴラ 火炎弱点・氷反射・光闇吸収 マハムドオンに警戒せよ

 

ズェランズ 火炎反射・氷結弱点・光闇無効 ファイヤブレスによる広範囲への炎およびマハムドオンに警戒せよ。

 

インデイアンズ・キメラ 火炎・疾風・電撃・氷結・物理 弱・耐性・反射・無効・吸収のいずれか。 アギラオ、ガルーラ、ジオンガ、ブフーラ、冥界波・脳天割り

 

「大和様。インデイアンズ・キメラについてですが」

 

「ああ。その悪魔は身体に複数の動物の顔を持つ、その顔が主な攻撃手段と耐性になる。カエルが氷結、熊が物理、鷲が疾風、ビーバーが電撃、鳥が火炎だ。使われた攻撃に対応して弱点を予測してくれ、こちらからもアナライズは常に使用するが戦っているお前達のほうが早い可能性が高い、極めて柔軟に臨機応変に対応してくれ」

 

こちら任せだが、これだけ耐性が変化されれば対策なんか立てる術があるわけも無い、事前に攻撃方法が分かっただけでも御の字と思うべきだろう。

 

バジリスク 氷結弱点・疾風弱点・電撃吸収・光闇無効 石化の蛇眼・石化ブレス・石化ひっかき・かみつき 石状態にするスキルを多用してくるので軽減装備で対策及び、回復悪魔であるカラドリウス・フェニックスを連れて行く必要あり。

 

バジリスク 氷結弱点・疾風弱点と思われる。攻撃手段も前のバジリスクと同じだが段違いに火力及び、攻撃範囲が上昇している事が予測される。

 

カワンチャ 電撃弱点・疾風反射・光闇無効 毒ガスブレス 他の悪魔よりも弱い、恐らく変異後が本命である

変異後 詳細不明

 

骸骨の姿をしているカワンチャだけが一切詳細が分からないというのが明確な不安になる。

 

「カワンチャには澪とヒメネスの2人に当ってもらう。私はウロボロス戦に備えて待機せよと言われているが、危険だと思ったら連絡を入れてくれ救援に向かう」

 

ゴア隊長はウロボロスに備えて温存、私達だけでウロボロスにエネルギーを供給している悪魔と戦えという指示に頷いた。

 

「良し、転移札は一応用意してあるがこれが最後だ。ウロボロスに備えて温存したいが、危険だと思ったら使え」

 

「こちらもレッドスプライト号から支援を行います。皆頑張ってください」

 

ウロボロスを退け、バニシングポイントを確保する。その為に先ずはウロボロスにエネルギーを供給している悪魔をなんとかするのが最優先だ。

 

「ゼレーニンはマイクそれと俺とブレアと組んでもらう。タイラーはウルフマンとスティードマン。ドーソン、キーマ、ダニエル、スコット、ウルフは5人で行動してくれ、澪とヒメネスは2人でだ」

 

チームの編成をマッキーが素早く決め、私達はウロボロスへのエネルギー供給を止める為にそれぞれで悪魔の元へと向かった。

 

 

【私はベイビー、赤んぼう。始まりのカタチ……君達は忘れてしまったでしょうけどね。ウロボロス様にエナジーを送る、それが私の終わらない生き方なの。キミはその生きかたを奪い去ろうというのね? そうはいかないわ! 君はここで、チリヂリになるのッ!】

 

【【【バインドボイス】】】

 

3体のマンドレイクが同時に叫び声を上げるが、事前の調査によって麻痺に耐性を持つ装備を身につけていた私達はバインドボイスを完全に凌ぎきった。

 

「掃射ッ!!」

 

マッキーの言葉と共に火炎弾の一斉射撃がマンドレイクを捉えデビルCO-OPの不可視の打撃がマンドレイクを打ち据えその身体を吹き飛ばした。

 

「……随分と歯応えが無いな」

 

「警戒を緩めるな、変異が始ま……ゼレーニンッ!」

 

マッキーの怒号に腰のポーチからテトラジャストーンを取り出して投げ炎の中から放たれたマハムドオンの呪詛を辛うじて防ぐ。

 

【私は終わり、終わりだけど始まり、私は終わらない、また何度でも始まるの】

 

炎の中から現れたマンドレイクの身体は桃色から茶色へと変わり老婆のような姿になっていた。

 

【生まれて、育てて、また零になって始まる】

 

【それが私達】

 

【私達は終わらない】

 

【【【だってそれが命だから】】】

 

マンドラゴラへと変化したマンドレイクの身体がビデオの巻き戻しのようにマンドレイクになった。

 

「やっぱりただ倒すだけじゃ駄目なのね」

 

「あいつらの言葉が何かのヒントだと思うが……マッキーどうする?」

 

「マンドラゴラに変化した所をたたく、それで反応が無ければ炎に包まれている間に撤退するぞ」

 

私達の意思疎通を遮るように再び響いたバインドボイス。それはエリダヌスの壁に当って幾重にも反射を繰り返した。

 

「音だけでも鬱陶しいな」

 

「ブレア冷静になれよ、効かないのは向こうも分かってる。それなのに使ってきてる意味を考えるだ」

 

「その通りだ。とにかく今は少しでも情報を引き出す、後は大和達に任せるためにもな」

 

倒しても再生を繰り返す不死の化物を前に冷静に慣れと言うのは難しいが、それでも自分達の成すべき事を成す為に再びマンドラゴラへと変化を始めるマンドレイクに照準を合わせ放たれた火炎弾がマンドレイクを包み込むのだった……。

 

 

 

 

凄まじい速度で振り下ろされた熊の右腕を辛うじて回避するが、叩き付けられた箇所から発生した衝撃破に俺を含めて全員が打ち据えられた。

 

「ラクカジャが無ければアウトだったな。全員無事かッ!」

 

「問題ないッ!」

 

「俺も大丈夫だッ!」

 

大丈夫だと返事を返すウルフマンとスティードマンによしと返事を返し、唸り声を上げて俺達を睨んでいるインデイアンズ・キメラを睨み返す。

 

(永遠に焼かれ、無限にエネルギーを生み出す者……)

 

インデイアンズ・キメラになる前のズェランズの言葉を思い返す。

 

【……あたしはカエル。永遠に焼かれ、無限の力を生むカエルだよ。あたしが浄化したエナジーがウロボロス様の力となるのさ! ウロボロス様の邪魔する者は……墓場にカエルッ!】

 

言葉の意味は分からないが何か意味はある。永遠に焼かれ、そして無限を生む物……。

 

【ゴルヤアアアアッ!】

 

「ちい! 少しは考えさせろッ! タケミナカタッ!」

 

【任された!】

 

タケミナカタがインデイアンズ・キメラへ飛び掛り、強烈な一撃を叩き込むがインデイアンズ・キメラはビクともせず、その胴体の鳥が顔もたげる。

 

【アギラオ】

 

【ぐううッ!?】

 

業火にタケミナカタが飲まれるが、アスラの攻撃よりは温いのかインデイアンズ・キメラの前に仁王立ちし、その動きを束縛してくれている。

 

「合わせろッ!」

 

「「了解ッ!!」」

 

炎を使ったという事は氷結が弱点だと判断し、氷結弾を3方向から打ち込んだ。

 

【ギィイイッ!?】

 

インデイアンズ・キメラの呻き声とデビルCO-OPの不可視の打撃が発動するのを見てしっかりと弱点をつくことが出来たのだが、俺の目は信じられない物を見た。傷の下の筋肉がダメージを受ける前よりも強靭になっていた。

 

「見たか、ウルフマンッ!?」

 

「見たッ! なんだ、今の回復魔法とかじゃないぞっ!?」

 

回復魔法や自己再生の類ではない、何かもっと別の能力だ。

 

【アアアア……いったでしょう? あたしは永遠に焼かれ、無限の力を生む者。人間なんかにやられはしないよ】

 

【火炎ブースタ】【火炎ハイブースタ】【ファイヤブレス】

 

「な、うおおおおおッ!?!?」

 

インデイアンズ・キメラに変異する前に使われたファイヤブレスとは比べ物にならない業火に俺達は一瞬の内に飲み込まれた。

 

「うぐっ……」

 

「使えッ!!」

 

1番近くにいたウルフマンのダメージが深刻だったので咄嗟に傷薬の蓋を開けてウルフマンにぶちまけつつ、じゃあくフロストを召喚する。

 

【また盾かホー?】

 

「悪い、帰ったら菓子をやる。少し耐えてくれ」

 

【しょうがないホー】

 

今のファイヤブレスを連発されては死んでしまうと判断し、じゃあくフロストに盾を頼み。じゃあくフロストがファイヤブレスを防いでいる間に俺達は熱気に焼かれながら必死にズェランズから逃げ出すのだった……。

 

【逃げられないぞ、どこへ逃げても我は必ず見つけ出すぞ】

 

マッキー達が撤退している頃ドーソン達も必死にバジリスクから逃亡しようとしていた。

 

「くそッ! デイビットよりしつこいぞ」

 

「どうする、悪魔は全部石になっちまった……」

 

ドーソン、キーマ、ダニエル、スコット、ウルフの5人が使役していた悪魔は石化ブレスで石になってしまった。

 

「うぐぐ……」

 

「だ、駄目だ。やっぱり動かない」

 

「無理すんな! 砕け散るぞッ!」

 

ドーソンとキーマは石化ブレスの余波を喰らい、身体が石になってしまっている。デイス・ストーンでも即座に回復とまではいかず、ダニエル、スコット、ウルフの3人は悪魔を失い、仲間2人も思うように動けない状況に陥ってしまっていた。

 

「……転移札を使う。このままだと全滅だ」

 

「しかたねえな。使うなら急げ、バジリスクは近いぞ」

 

ずりずりっと重い者が近づいてくる音にウルフマンは僅かな躊躇いを見せながら転移札を破いてバジリスクから逃げ押せた。

 

【トラポートか……まぁ良いさ、僕はドラゴン。誰にも負けない最強のドラゴンなのさ】

 

蛇の姿から手足のある黄色いトカゲの姿へ戻ったバジリスクは鼻歌と共に自身が守るべきエネルギーの供給ポイントへ引き返した。ウロボロスへの無尽蔵のエネルギーを供給するポイントの攻略に梃子摺る中、澪とヒメネスは確かな手掛かりを手にする事に成功していた。

 

【来たか、滅びに抗うものよ、あの邪龍を倒す術を教える】

 

「おいおい、俺達がそれを信じるとでも?」

 

【信じろ。俺はあいつに負けてあいつの傀儡になった。この本来の姿の時しか自我は持たんのだ】

 

「貴方は何者ですか?」

 

【名も無い龍殺しだ。倒すべき邪龍に負けた情けない男だが、それでもあいつを倒す為の手掛かりを渡すことは出来る】

 

知性と理性を感じさせる悪魔は名も無き龍殺しだと名乗り、ウロボロスの呪縛に抗いながら澪とヒメネスにウロボロスを打倒する為の手掛かりを与えるのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その38へ続く

 

 




次回は謎解きを書いて行こうと思います。子供達の魔改造される中、英霊っぽいのは味方だった漢字にして見ました。
次回は英霊との話を書いて、子供をどう攻略するのか書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。
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