収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その41

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その41

 

協力・連携とは程遠いスタンドプレイの積み重なりだったが、最終的には目的が一緒なので辛うじて連携もどきになり英霊に刃を届ける事が出来た。だが間違いなくこんな奇跡は2度は続かない、なんとか2人の考え方を変えたいところではあるのだが……。

 

(無理……か)

 

何を言っても、どんな行動をしても澪とアレックスの間の溝を埋める事は出来ない。それほどまでに2人の間には大きな亀裂が存在する、

 

【もう少し協力して戦う事を覚えるが良い、ウロボロスはその僅かな隙を見逃さないぞ】

 

「協力? 知らない言葉ですね」

 

「こいつと協力し合うなら自ら死を選ぶ」

 

一瞬の静寂の後殺気を剥き出しにして睨みあう澪とアレックスの間に割ってはいる。

 

「今はそんな事をしてる場合じゃない、我々には時間が無いのだぞ」

 

倒した悪魔が復活し、ウロボロスにエネルギーを供給しないとは言い切れない。長久君と大和に渡された結界を配置し、ジャック達に捕捉される前にレッドスプライト号へ戻らなければならない中で喧嘩していル場合かというが澪とアレックスの間の険悪な雰囲気はますます強くなる一方だった。

 

「ゴア隊長。上下関係をしっかりさせるのは大事なことですよ」

 

「ああ、その通りだ。私が上で、お前が下だ」

 

アレックスの挑発によって鬼の形相を浮かべ刀を抜こうとする澪と掛かって来いと言わんばかりに手招きしてるアレックスに私は小さく溜息を吐いた後に2人にとっての切り札を口にした。

 

「長久君が聞いたらどんな顔をすることか」

 

澪とアレックスの肩がぴくっと動き、2人の間の険悪な雰囲気は表向きは消え、私と同じ様に結界の準備をやっと始めてくれた。

 

(仲良くなれとは言わないが、もう少し何とかならない物か)

 

今の調査隊の戦力で澪とアレックスは間違いなく上位に来るが、顔を見合せば罵りあい、口論を始める2人を組ませるのは当人達にも回りにもやはり問題がある。なんとか解決手段はないかと考えているとジョージが私のデモニカに通信をつなげてきた。

 

【ゴア。倒した英霊が手招きしているぞ】

 

「む? すまないジョージ」

 

【構わない、アレックスと澪は水と油だ。もめるのは分かりきっている】

 

水と油……確かに澪とアレックスの関係を説明するならこれほど相応しい言葉はないだろうなと苦笑しながら倒れている英霊へと歩み寄る。

 

【お前の剣に力を貸してやろう。消え去る前の残滓程度だが何かの助けにはなるだろう】

 

腰に下げたままの錬気刀に英霊が触れると英霊の姿は消え去り、腰に下げていた錬気刀は英霊が手にしていた西洋剣へと変化していた。

 

「これが錬気刀の力か……」

 

かつて悪魔使いの主力武器だったと聞いていたが、このような力があるのなら主力武器として使われるのも納得だ。正直刀は扱いなれていないので重さで叩ききる西洋剣を手に出来たのは嬉しい誤算だった。

 

「他の隊も作戦完了したようだ。我々も帰還する」

 

「了解です」

 

「分かった」

 

とりあえずこちらの命令に従ってくれる澪とアレックスではあったが、ウロボロスとの戦いを考えるとこの2人を起用するのは不安が残るが、それでもこの2人を起用しなければならないというジレンマ。

 

(再出撃までに僅かに時間はあるが……焼け石に水だろうな)

 

ウロボロスと戦う前に少しでも澪とアレックスの関係を改善出来れば良いがと思いながらも、それは不可能だと分かっている私は溜息を吐きながら腰のホルスターに収めていた銃を抜き放った。

 

「こそこそと嗅ぎまわる癖は変わらないなジャック」

 

カメラを取り付けられていた悪魔に向かって引き金を引き、悪魔がMAGの粒子となって砕け散ったのを確認し今また口論を始めそうになっている澪とアレックスに強い口調で帰還するぞと命令し、ジャックの手の内の悪魔に警戒しながら我々はレッドスプライト号への帰路に着くのだった……。

 

 

 

 

映像が途絶えノイズと砂嵐だけを映し出しモニターを消せとライアンに命令してから振り返る。

 

「貴方方の技術はどれもこれも全く役に立たないですね」

 

南条・桐条・葛葉……かつて日本の守人だったという悪魔使いの生き残り。真なる護国の為にという大層立派な肩書きを掲げているが、正直役に立たないのも程があるというのが私の嘘偽りの無い評価だった。

 

「悪魔人間は成功し、戦力は格段にUPしたはずだが?」

 

「その悪魔人間は10人中3人を残して死にましたけどね」

 

悪魔と融合しその力を上げるという悪魔合体。確かに能力は上がっており、魔法を使えるようになったり、悪魔の体術を使えるようになったりと戦力は格段に上昇した……のだが、10人中7人が死んでいて、残りの3人も重傷を負っている。

 

「悪魔を合体すれば悪魔の弱点も引き継ぐと説明した筈だ。我々の落ち度ではない」

 

「その悪魔の弱点が無いはずの悪魔を使ったはずなんでけどね、それでも落ち度はないと?」

 

中々稀少な弱点の無い高位の悪魔を使用したのに何故弱点をつかれて袋叩きにあうのです? と問いかける。

 

「素材になった人間の影響だろう。悪魔には問題はない」

 

「ああ、素材の人間の問題だ。そこまでは我々の管轄ではない」

 

……本当にこいつらは責任転嫁にばかり秀でていてうんざりする。確かに我々にはない知識を持ってはいるが、役に立つか立たないかで言えば役に立たないと言わざるを得ない。

 

「ではそろそろその悪魔使いの知識を実戦で見せていただきたいですね」

 

「それは出来ない。我々には我々でやらなければならない事がある」

 

「異界の準備などもある。それに我々は戦場には立つような下賤なものではない」

 

これだ。偉そうな事を言うわりには及び腰、私達より性能の良いデモニカスーツを使っている癖にこれでは宝の持ち腐れだ。

 

(やはり欲しいな)

 

峰津院長久。子供でありながら自らシュバツルバースへと踏み入り、ゴア達と共に戦っている勇敢な子供。勇敢がどうかは置いておいても、その知識と実戦にも耐えうる能力は喉から手が出る程に欲しい。

 

「分かりましたよ。ですが急いでくださいよ、我々にも余裕がある訳ではないのですからね」

 

「案ずるな必要なデータは揃った次の悪魔人間には弱点など無い完璧な物となることを約束しよう」

 

期待していると返事を返した物のただのリップサービスだ。こいつらの作る物に全幅の信頼を寄せることはまず無いと断言出来る。

 

(さてさて、どうしたものか)

 

悪魔人間を作る為のデータと機械の動かし方は大体分かって来たのでこれは私達でも動かせる。だが結界と異界を作る事に関しては我々に一切の情報を流してこない、あの馬鹿達も自分達の生命線と分かっているからこそ隠しているでしょうが、いつまでもあいつらと行動していると精神衛生上よろしくない。

 

「となればやる事は決まりですね」

 

長久は悪魔使いでは無いが、神子と呼ばれ極めて重要な存在であると言うことは私も把握している。そもそも私達よりも遥かに厳しい条件であった筈のゴア達がここまで進んでこれたのは間違いなく長久の存在があったからだ。

 

「出撃準備です。ゴア達がウロボロスに仕掛けたタイミングで我々も動きますよ」

 

「イエッサーッ!」

 

ゴア達がウロボロスに勝とうが負けようがどうでもいい、もっと言えば長久が生きていても死んでいてもそれもどちらでも良いのだ。

 

「邪教の館……確かに、ふふ、これは邪教ですね」

 

人間と悪魔を合体させる装置、悪魔を分解しフォルマと武器に作り変える装置……そして死んだ人間の魂を機械に組み込む装置。そのどれもが非人道的だが、だがだからこそ良いのだ。ゴア達が死んでいたら悪魔と合体させて仲魔にしてしまえば良いし、長久を機械に組み込みその魂を機械へと移せば必要な知識は手に入るので葛葉達も必要なくなる。だが直接戦うには些か不安があるのも事実だが、ウロボロスと戦い疲弊しているときならば楽に事を進める事が出来る。

 

「私だって足踏みしているだけではないのですよ、ゴア」

 

ゴアは私の手の内を知り警戒しているだろうが、ゴアが悪魔と戦う術を手に入れたように私だってゴアの知らない力を手にしているのだ。

ライトニング号の光に照らされた私の影は人間とは似ても似つかない物となっていて、私はそれを見て笑う。

 

「強くなったのはあなただけではないのですよ、ゴア。全てを手に入れるのは私達だ」

 

シュバルツバースの莫大な富も、神子の力も、その全てを手に入れるのは私達であり、私達こそが新たな世界の支配者となるべきなのだ。

その為には先ずは……。

 

「邪魔者の排除と神子を手に入れる事にしますかね」

 

シュバルツバース調査隊を排除する、それが全ての始まりだと私は笑い、強襲を仕掛ける為の出撃準備を始めるのだった……。

 

 

 

 

 

澪達が無事にウロボロスの子供達を倒して帰還した。それ自体はとても喜ばしい事であり、ウロボロスと戦う準備が整ったことを意味するが、俺にとってはもう1つ重大な意味を持つ瞬間でもあった。

 

「……約束する。必ず俺は、いや俺達は地球を救う」

 

「はい。大和兄さんと皆なら出来ると僕は信じます」

 

呪い染みた言葉を大和兄さんへと残し、何も知らない澪達の目の前で死ぬ。何度経験しても、いや何度も経験したからこそ苦しい瞬間がもうすぐそばに来ている。

 

「……もう行きますね」

 

ウロボロスとの戦いに同行させて欲しいと懇願し続け、ゴア隊長達が折れた形で俺は同行を許された。どちらにいても俺が死ぬのは同じだが、レッドスプライト号が破壊されてしまえばすべてが終わる。だから俺はウロボロスとの戦いに同行することを望んだ。

 

「また会えるだろうか?」

 

「僕じゃない僕ならばどこかでまた会えるかもしれません」

 

峰津院長久でいる時間はもう終わる。次はどうなるか判らないが、それでも俺の生はまだ続くと確信があった。

 

「どこにいても俺はお前を見つけ出す。澪と共に、だからさよならは言わん。また会おう」

 

「……はい、またどこかで」

 

別れではなく再会の約束というのは悪い物じゃないなと思いながら降車デッキへと向かう。1歩歩むごとに死神の足音が近くなる。俺はいま自分が死に向かっているというのに動揺することなく落ち着いていることに気付いた。

 

(……どっか俺も壊れて来てるんだろうか)

 

何度も死に、何度も生まれ変わる。そんな人間がまともな人間性をいつまでも保てるとは……。

 

「いや、君は人間だよ。長久君」

 

「……ルイさん。いたんですか」

 

背後から聞こえて来た声に振り返るとやはりそこにはルイさんがいて、楽しそうに笑いながら俺を見ていた。

 

「いたとも、君の終わりを見届けに来たんだよ。まぁそれはおいておいて、君は人間だ。だから卑下する事無く、絶望する事無く、諦める事無く、人間として最後まで足掻いてくると良い」

 

人間として……か。俺自身の人間らしさなんて当の昔に無くしてしまったと正直に言えば思っていたし、人間らしいといってくれたルイさん自身が大悪魔なのだが、何故かルイさんの人間だよっと言う言葉はやけに胸に響いた。

 

「じゃあ、行って来ます。あ、あとルイさん。マガタマを間違えても配らないでくださいよ?」

 

「ふふ、それは彼ら次第だよ。彼らが望むなら私はそれを授けるだろうね」

 

出来れば止めて欲しいところではあるが、ヒメネスさん達がそれを望ということは俺が原因であるのは間違いない。とはいえ、もう避けられない死が目前に迫っている俺に止める手立ては無く、無理矢理は止めて下さいと付け加えるのがやっとだった。

 

「考えておくよ、いってらっしゃい」

 

「いって来ます」

 

調査隊にも俺にも残されている時間は殆どない、これ以上無駄話をしている時間が無いのは俺もルイさんも分かりきっていて、ルイさんの見送りの言葉に行って来ますと返事を返し、降車デッキへ向かう。

 

(……辛いなあ)

 

俺に出来るのは何時だって死地へ送り出すことだけだ。俺が死んだ後どれだけ悲しむ人間が、苦しむ人間がいるのかと想像すると胸が苦しく、辛い。何故俺がこんな目にあっているのかと思わないわけでは無いが……俺は自分で決めたのだ。前に進み続けると立ち止まらないと決めたのだ。なら俺は前に進み続けなければならない、それが俺が忘れてきた人達に対する誠意だ。

 

「お待たせしました」

 

胸の内の苦しみも悲しみも隠し、全てを出し切る覚悟をした俺は笑みを浮かべながら出撃準備をしている澪達の元へ向かう。最後の一瞬まで全力で駆け抜ける事を誓って……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その42へ続く

 

 




ウロボロス戦開始の予定でしたが、ここで少し間を挟む事にしました。ウロボロス戦をまるまる1つで1万文字くらい、次に長久の死と次の世界、そして後日談を2つくらいで5週目の世界に入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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