収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その42

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その42

 

子供達を通じて私に流れ込んできたMAGの供給が止まったのは感じていた。私に仕え、私の為に死んだ子供達の死は辛くはある。だがそれに悲しむことは許されない、この地を守る為に、この地の守護者となる為に己の子供を改造した私に悲しむ権利はないからだ。

 

【愚かですね、神子よ。自ら戦場に立つとは何を考えているのです?】

 

目を開き人間達と共にいる神子へとそう言葉を投げかける。子供達を失ったことで私の不死性には僅かな亀裂が入った、だが私は永劫を意味する蛇。この地の恩恵を受けられなくとも不死であると言う私の能力を奪うことは出来ない。

 

「僕は僕のやるべき事をやる為にここにいるんだよ。ウロボロス。君を倒し、道を作る。愚かなんかじゃない、道を作り指し示し。希望を灯す。それが僕のやるべき、為す事だ」

 

神子の返事に違和感を覚えた。私の問いかけに返事を返しているようで神子は返事を返していないのが分かった。

 

(何を見ているのです?)

 

その水晶のように澄んだ瞳の中に燃える覚悟の炎。母が地球を救う為にこの異界を作り出すと覚悟を決めたのと同じ決して揺らがぬ燃え盛る決意の炎に何か無性に嫌な予感を感じた。

 

【神子、そして神子に従う人間達よ。我らに従いなさい、従えば我らの創生した世界での生活を認めましょう。力は我らの節理、力ある者にはそれ相応の褒章を与えましょう】

 

独断である。人間を殺せと母に命じられてはいる……だがここで戦えばなにか取り返しの付かないことになるのを直感で私は感じ取ったのだ。

 

「そんな必要はない。我々人間の世界は人間で作る。悪魔も神の力も必要ない」

 

【大いなる庇護を捨てて人間が生きていけると?】

 

「出来るよ。人間は確かに争いもするし、裏切りもする。だけど手を取り合うことも出来るんだ。だから僕は人間を信じる」

 

人間の言葉に続き人間を信じるという神子の言葉。分かっていた、何をしても戦いになると言う事はそれでも戦いを避けるようなことを口にしたのは私のエゴだ。地母神の側面を僅かに与えられているからこそ表に出た母としての側面が戦いを無意識に拒んでしまったのだ。だがそれは母も、そして子供達にも、そして人間達にとっても裏切りでしかない。

 

【それが貴方達の結論ということですね。勝てないと分かっていても戦うというのですね。ならば望み通り貴方達の肉体も、魂もその全てを打ち砕いてさし上げましょう!】

 

【電撃ブースタ】【電撃ハイブースタ】【マハジオダイン】

 

このセクターの支配者として、地球の怒りの代弁者として、私は全力を持って人間とそして神子と戦う事を決め、宣戦布告の意を込めて電撃の嵐を人間達へ向かって打ち出すのだった……。

 

 

 

 

降り注いだ凄まじい雷は私にとっては2度めの光景だった。1回目のウロボロスとの戦いで私を消し飛ばしたマハジオダインはたしかに強烈だったが、なんとか耐える事が出来たが、身体が痺れてすぐに次の行動にはでれなかった。

 

【貴重なフォルマを使っているようですが、その程度で私の魔法は防げませんよ】

 

【ハマ貫通】【マハンマダイン】

 

「ドーソンさん! ウルフマンさん! テトラジャストーンを!」

 

「了解!」

 

「わかってるぜ!」

 

長久達が投げたテトラジャストーンが結界を作り出し、ウロボロスが放った強烈な昇天魔法はテトラジャストーンによって相殺された。

 

「早く立て! 陣形を崩すな!」

 

「耐性を貫通される可能性は分かっていただろう」

 

「おおおおッ!!!」

 

タイラーとアレックスに立つ様に怒鳴られ、痺れる足に活を入れてなんとか立ち上がる。

 

(これが上位悪魔の力)

 

ミトラスから提供されたフォルマで作ったチオチモベストは火炎と氷結に弱くなる変わりに電撃・疾風に耐性、そして光を無効化出来る強力な装備だったが、ウロボロスの放つマハンマダインはその耐性を容易く貫通した。これが長久の言っていた貫通系スキルであり、ウロボロスはハマ貫通を持っている事が分かったが、それならば電撃貫通の方が良かった。ダメージが大きくとも仲間がいれば立てなおせるマハジオダインと違ってマハンマダインは即死、テトラジャストーンが間に合わなければその瞬間に全滅する可能性もあるのだから電撃貫通の方が良かったと思うのは当然の事だ。

 

【くっ! 人間にしてはやりますね】

 

「お褒めに預かり光栄だッ!!」

 

再びウロボロスが動き出す前にゴア隊長が西洋剣を振りかぶりウロボロスへと切りかかった。龍殺しの特性を持つ西洋剣はウロボロスにも有効打を与える事を期待されていたのだが、期待していたよりも効果は無かったが、ウロボロスの注意を一瞬逸らしてくれただけで十分だった。

 

「臨兵闘者皆陣烈在前ッ!」

 

長久が凄まじい速さで指で印を結び、そこから放たれた光が私達を包み込んだ。

 

「これで少しは病気に耐性が出来たと思います! でも慢心しないでくださいね!」

 

「分かってらッ! バガブー! 行くぞぉッ!」

 

【バガブー!!】

 

ヒメネスとバガブーが突撃し、それに澪達も続くが私はそれに続かず長久の元へ下がった。

 

「本当に補助魔法無しで行くの?」

 

私達を強化するカジャ系。そして相手を弱体化させるンダ系を使わないと言う長久の作戦は今も続行かと尋ねる。

 

「続行です。静寂の祈りを使われるわけには行きません」

 

静寂の祈り……澪を消し飛ばしたデカジャ・デクンダ・コンセントレイトの複合の恐ろしいスキル。それを使わせないためにカジャとンダ系を使わないというのは理に叶っているのだがウロボロスの圧倒的な力を前に補助魔法なしはやはり厳しい物があると思う。

 

【ふむ。バリアですか……ならばまずはそれを剥がすとしましょう】

 

【災厄の輪廻】

 

「うぐ……ッ!」

 

「し、痺れ……ッ!」

 

「動けるものは前に出ろ! 追撃を許すなッ!!」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

ウロボロスから黒いオーラが放たれ前線にいた澪達を飲み込んだ。長久の術は耐性を与えるが、それは万能ではない。スティードマンとタイラーが毒と麻痺で動きが鈍り、それをフォローする為にゴア隊長達が前に出る。

 

「ゼレーニン行くよ!」

 

「ええ、分かってるわッ!」

 

そして私はドーソンと一緒に状態異常に陥った仲間の治療とアイテムによる支援を行いなんとか戦線を維持出来る様に尽力していたが、少しずつ、少しずつだが戦況はウロボロスへと傾き始めているのを嫌でも感じているのだった……。

 

 

 

 

出し惜しみをしている余裕が無いのはウロボロスと戦い始めてすぐに思い知らされた。確かに再生能力は大分弱くなっていたが、ウロボロスは弱体化した回復能力を維持するのではなく、攻撃の為に使い始めた。

 

【これは神罰、いや地球の怒りと知りなさい】

 

【豪雷】

 

マハジオダインほどの威力はないが連射出来る広範囲の雷が私達を薙ぎ払った。

 

【ミオ! ゴアッ!!】

 

バガブーが投げてくれた魔石によってすぐに動き出すだけの体力が戻った。

 

「ちっ! やっぱり補助魔法無しだときついな」

 

「あの蒼い光が放たれたら全滅だ、我慢しろッ!」

 

静寂の祈りを使われ、コンセントレイトとデカジャ・デクンダが一手で使用出来る。コンセントレイトからのマハジオダインに耐えるのは不可能であり、静寂の祈りを誘発しない為に補助魔法なしで戦っていた。最初は互角であっても体力と集中力が失われてくれば動きは鈍り、ウロボロスの猛攻撃を防げ無くなる。

 

「じゃあくフロスト前へッ!」

 

【任せるホー!】

 

【仲魔を盾にしたとて耐えれる物ではありませんよ】

 

【冥界波】

 

ウロボロスが巨体を叩きつけて放った冥界波はじゃあくフロストの巨体をすり抜けウルフマン達を打ちすえる。

 

「いってえッ! フェニックスファイヤブレスッ!」

 

【キュウアアアア!】

 

「バガブー! ぶちかませッ!」

 

【ブウ!】

 

【ファイヤブレス】【怨念の業火】

 

チオチモベストに物理耐性は無いが、純粋に頑丈なので冥界波のダメージを軽減できていて、すぐにヒメネス達の指示でバガブーたちが動き出し放たれた火炎がウロボロスを捉えてデビルCO-OPが発動する。

 

【この程度ですか、この程度では私は倒れませんよ】

 

【ディアラマ】

 

ウロボロスがディアラマを唱えて傷を回復させるのを見て思わず舌打ちする。ダメージが圧倒的に足りていない、常時発動している自己再生に加えて回復魔法がある。その回復速度を上回る必要があるのだが、ウロボロスは全体攻撃に加えて手数が多い、そこに状態異常をばら撒く災厄の輪廻を挟んでくるのでどうしても挙動が遅れる。

 

「アモン! まだいけるか!」

 

【無論問題なく】

 

【メギドフレイム】

 

それでも戦線が維持で来ているのはアレックスの悪魔のお蔭だが、あのレベルの悪魔を使役しようとすればMAGの消費は言うまでも無く激しいのでいつまでもアレックスの悪魔が共に戦ってくれるわけではない、戦線が維持出来ている内に押し込まなければ我々は負ける。

我々が負ければ若様が捕らえられる……それはなんとしても避けなければならない。

 

「出し惜しみをしているばあいではないですね」

 

錬気刀の鍔を縛っている紐を解き、錬気刀を抜き放った。調査隊としてではなく、葛葉の人間として戦わなければ勝機はなく、葛葉の先祖の恨みが襲ってくると身構えたのだが……。

 

(何故……いや、現れないのならば好都合)

 

葛葉の亡霊が現れないのならばそれに越した事はない。余計な心配や警戒をすることなくウロボロスとの戦いに集中出来る。

 

「じゃあくフロスト! アギダインをこっちへ!」

 

【わ、分かったホーッ!!】

 

【アギダイン】

 

じゃあくフロストの放ったアギダインを錬気刀で受け止め、炎の力を宿した紅蓮真剣を発動させ、私は地面を蹴ってウロボロスへと駆け出した。

 

【……若様】

 

【若さまだ】

 

【おお、おおおおおッ!!】

 

「そう……貴方達は覚えているんだね。ならば言おう、澪は僕の味方だ。つまらない嫌がらせは止めて、彼女に力を貸すんだ。良いね」

 

【【【御意】】】

 

澪を呪い殺そうとする葛葉の怨念が現れなかったのは澪よりも優先すべき長久の存在があったからであり、澪を蝕む呪いは長久の言葉によって反転し、澪を後押しする力へと変わっていた。

 

 

 

 

地面を削りながら着地し、そのまま地面を蹴って再度ウロボロスへと突撃する。

 

「良い加減にくたばりやがれッ! このクソ蛇ッ!!!」

 

【全くその通りだな! 行くぜヒメネスッ!!」

 

【「うおりゃああああああッ!!!」】

 

義経と渾身の気合と共に振り下ろした刀の一閃がウロボロスの胴に×の字の傷を刻み付け、デビルCO-OPの追撃がウロボロスを打ち据える。

 

「バガブー! 次だ!」

 

【ブウッ!!】

 

【怨念の業火】

 

バガブーの放った炎を倶利伽羅の剣で受け止め、赤黒い炎が宿った倶利伽羅の剣を構える。

 

「じゃあくフロスト! こっちもだ!」

 

「アモン!」

 

【【アギダイン】】

 

アギダインの炎を受け止めたゴア隊長とアレックスも紅く燃える刀を手にウロボロスへと突貫する。

 

「ちょっとは下がりなさいよ! 死ぬわよ!?」

 

「うるせえ! もう下がったら立て直す余裕はねぇッ! 突っ込むしかねぇッ!」

 

ウロボロスとの戦いは数時間に及んでいる。体力もMAGも限界寸前で、長久も消耗が激しい。つまりこれ以上の長期戦は不可能に近い、ならば無理にでも突貫して少しでもダメージを稼ぐしかない。

 

【ぬうう! しつこいですね、ですが私の命に終わりはない】

 

ウロボロスから白い光が溢れ出し、回復魔法が発動しようとした瞬間だった。紅く輝く光がウロボロスへと直撃した。

 

「金剛縛りの術。これ以上回復はさせない」

 

【マカジャマ】

 

【やってくれますね、神子ッ! ですがそれでも私の治癒能力は健在です】

 

長久が何かをしてウロボロスの回復を防いでくれたようだ。こんな事が出来るならもっと早くと言おうとした時倒れる音とゼレーニン達の悲鳴が聞こえてきた。

 

「手が! お前なんて無茶をッ! 魔石だ! 魔石を持って来い!」

 

「魔石はもうないです! 傷薬しかッ!」

 

「くそ! それでも良い! あと清潔な布だッ! 急げッ!」

 

後ろから聞こえてくる怒号にまた長久が無茶をしたのだとわかり、俺は固く、強く倶利伽羅の剣の柄を握り締めた。

 

「長久にここまでやらせたんだ。勝てませんでしたじゃねえぞッ!」

 

「それはこっちの台詞ですよ。私達がやる事はただ1つ」

 

「突貫あるのみッ!」

 

これ以上は俺達も長久も持たない、ウロボロスの回復を封じれている間に、長久の命が尽きるまでにあのクソ蛇を倒す必要がある。

 

「これが最後だ。一気に片をつけるぞ」

 

【ラスタキャンデイ】【ヒートライザ】

 

ウロボロスの静寂の祈りを誘発するということで使っていなかった補助魔法も使い、前だけを見て走り出すのだった……。

 

 

 

 

 

桁違いに強力なウロボロスとの戦いは最初から劣勢だった。強力すぎる全体攻撃、機動班を纏めて行動不能にする状態異常、そしてウロボロス自身の回復能力の高さ。最初から耐久は不利だと分かっていたが、早期決戦は尚無理だった。僅かでも良い、少しでも良い、ウロボロスの回復力を上回るダメージを何とか与え続けて、好機を見て一気に畳み掛けることだけがウロボロスとの戦いでの私達の勝機だった。

 

「引くなッ! 突貫しろッ!!」

 

「「「「おおおおおおおッ!!」」」

 

ウロボロスに近接戦闘を仕掛けれるのは最早私と澪とアレックス、そしてヒメネスとマッキー、タイラーの6名だけだ。支援してくれていた悪魔も、補助に回っていた仲間達もそのリソースを使い切った。長久君が命を掛けて作ってくれたこの機会を逃せば次はないのだ。

 

【命を燃やそうと、その魂を掛けようと、私には届かない】

 

【電撃ブースタ】【電撃ハイブースタ】【マハジオダイン】

 

ウロボロスがマハジオダインを放とうとした瞬間タイラーが地面を蹴って飛んだ。

 

「雷の防ぎ方は身を持って知ってるんだよッ!!」

 

自らを避雷針としたタイラーにマハジオダインが直撃し、悲鳴を上げる事すら出来ずにタイラーが吹っ飛んだ。

 

「義経ぇ!!」

 

「アモンッ!!」

 

【ちい! 完全全開とはいかねえが……トドメは任せるぜッ!】

 

【これしかあるまいよ】

 

【物理ブースタ】【物理ハイブースタ】【武道の素質】【八艘飛び】

 

【マカカジャ】【メギドフレイム】

 

アモンの放った煉獄の炎がウロボロスを飲み込み、デビルCO-OPの不可視の打撃と無数の斬撃がウロボロスへと襲い掛かる。

 

【ぐうう……ま、まだですよ!】

 

【食いしばり】【小治癒】【豪雷】

 

だがそれでもまだウロボロスは死んでいなかった。複数の光がウロボロスを包み込み、消滅寸前の身体を無理やりウロボロスは維持した。

 

「ぐ、ぐおおおおおおおッ!!!」

 

「が、がああああああああッ!!」

 

豪雷の雷に焼かれながらヒメネスとマッキーがウロボロスへと肉薄し、左右から振るわれた一閃がウロボロスの胴体を断ち切った。

 

【あ、あああああああッ!!】

 

【ヒートウェイブ】

 

体の半分を失ってもまだウロボロスは戦いを諦めない、残された頭部と僅かな上半身を使って放たれた衝撃破が私達を打ち据える。だが冥界波よりも威力の劣る一撃は歯を食いしばれば耐えることが出来た。

 

「はぁぁああああああああッ!!!」

 

名もなき英霊から託された龍殺しの剣。それを大きく振りかぶりながら跳躍する。

 

【そう簡単にッ!】

 

【ジオンガ】

 

「ぐうう……うがあああああああッ!!」

 

ウロボロスの口から吐き出された電撃に焼かれ、筋肉が痙攣し、目の前が暗くなっても握り締めた剣は決して放さず力が抜けた分、デモニカスーツの固さを信じて刀身に肩を押し付け振り下ろすというよりも、剣ごと体当たりするような感じでウロボロスの首の付け根に刃を押し当てる。

 

「う、うああああああああっ!」

 

【させない、そうはさせないッ!】

 

力を込めて首を切り落とされまいと耐えるウロボロスと首を断ち切らんと気合を入れる私の絶叫が周囲に響き、重く鈍い音と共にウロボロスの胴体から首が切り落とされ、ウロボロスと首と共に落下する私の視界に影が落ちた。

 

「決めろ! 澪! アレックスッ!!」

 

「魔を祓え……赤口葛葉ッ!!」

 

「魔を滅せよ……降魔葛葉ッ!!」

 

白と赤の一閃がウロボロスの頭部を両断するのを見届けたのはいい物の、受身を取る体力など残されていない私はそのまま地面に叩きつけられ、大の字に転がった。

 

「終わった……これで「そう、これで貴方達の仕事は終わりましたね。ゴア」……ジャックッ!」

 

ウロボロスの撃退を成し遂げ、バニシングポイントの奪取に成功した。だがそれを喜ぶ間もなく、私達の成果を奪う為に万全のジャック達がこのフロアへとその姿を現すのだった。

 

 

 

 

体力・MAG、そして悪魔を使い切ったゴア達を見て私は満足そうに笑った。

 

「素晴しい、貴方達の強さに心からの賞賛を送りましょう! ブラボーッ!!」

 

挑発染みた言葉になったが、それは私の嘘偽りの無い言葉だった。私は優秀な者が好きだ、強い者が好きだ。その全てを満たしているゴア達は私達のスポンサーである葛葉、南条、桐条よりも素晴しい存在だった。

 

「さて、一応ですが聞いておきましょうか。ゴア、そして調査隊の皆様。私の部下に成るつもりはありませんか?」

 

返事は当然分かっている。禄に動けない状態で武器を構えようとするゴア達を見て、右手を上げようとしたがそれよりも早く澄んだ音が響き、ゴア達の前に光り輝く壁が現れた。

 

「おや、おやおやおやおやぁッ!! ノータイムで、触媒もなしに結界を! 素晴しい、ファンタスティック!」

 

「お褒めに預かり光栄かな、ジャック大佐」

 

ゴア達を結界の中で守り、1人だけ外に出ている峰津院長久の背中に結界の中のゴア達が何かを叫んでいるが、結界に阻まれてその声は全く聞こえなかったが、それは逆に好都合だった。

 

「峰津院長久君。私は君を高く評価している、その勇敢な魂、精神、そしてその技術に! 我々と共に来ないか、君が来てくれるなら彼らは見逃しても良い」

 

峰津院長久1人とゴアを含めた調査隊では、その価値は長久に軍配が上がる。長久がこちらに来るのならばゴア達を見逃してもよかった。

 

「断るよ。それに貴方に見逃されなくてもゴア隊長達は無事にレッドスプライト号へ帰れる」

 

「ほう? それは何故?」

 

「この結界はトラエストとトラフーリの複合結界でね。トラエストは拠点へと帰る物、トラフーリは逃亡呪文。つまり結界の中のゴア隊長達は無事に帰れる。まぁ多少時間は掛かるけれど」

 

「では結界の外の君は「帰れないね、僕はココに残るよ、この結界の悪い所は術者が中にいられないことだ」

 

肩を竦める長久を見て、右手を上げて部下達に長久を囲ませる。

 

「君は囮になるつもりかね?」

 

「ジャック大佐。貴方は生きる意味を考えたことはありますか?」

 

「は?」

 

質問に質問を返され、思わず間抜けな返事を返すと長久は楽しそうに、でも冷酷な笑みを口元に浮かべた。

 

「人は皆、未来を目指して前へ進む。それが生きる事です。でもね、僕の生はずっと後なんだ。前に進むことは許されない。僕の生に未来はない。僕の生はいつだって終わりしかない。僕の生は死ぬことだ。死ぬ為だけに生きている。だから自分を簡単に切り捨てることが出来た。僕の人生にはいつも終わりが決まっている……ほら、この通り」

 

思わず武器を構えたは私だけではない、私の部下も、そしてゴア達も武器を構えていた。それほどまでに不気味な足音が聞こえたのだ。

 

「僕はこれを死神と呼んでいる。道を示し、僅かな希望を与え、そして地獄へ送り出し、勝手に死ぬ。僕はきっと死神に魅入られているのだろうね」

 

「……これをずっと?」

 

「僕はずっと死を知っている。僕の生は死ぬ為の生、そして今、生命の終わりがまた来た。だけどただでは僕は死なない、僕には希望がある。きっと皆なら世界を、地球を救ってくれると信じている。だから僕は悲しむ事も、嘆く事も無く全てを託し、この命を終える事が出来る」

 

「止めろ!」

 

長久の手に短刀が握られていることに気付き、短刀を取り上げろと叫ぶがそれよりも早く長久が自らの胸へ短刀を突き立てた。結界の中のゴア達が叫ぶ姿が見えたのか、長久は血を吐き出しながらも笑みを浮かべて血を吐きながら呪文を唱え始めた。

 

「……門を開こう……我が命と引き換えに……来たれ……我が写し身、我が分身、もう1人の我……ペ……ル……ソ……ナ……」

 

長久の身体から凄まじいMAGの光が溢れ出し、その光は少しずつぼんやりと人影を映し出した。その超常の光景に私は完全に目を奪われた。

 

「美しい」

 

命の炎を燃やし尽くすその姿に、何の対価も求めない無償の愛を見せる長久の美しさに魅了された。

 

【我は汝、汝は我、数多の姿を持ち、数多の顔を持つ者……■■■なり……来たれ……我が運命の欠片……】

 

黒い靄が現れ、黒い光が眩い光を放つと2つの影が現れていた。

 

【我は汝、汝は我、我汝と共に永劫の時を歩む者……創造神……ズルワーンなり……】

 

【我は汝、汝は我、我汝と共に永劫の時を歩む者……帝都守護者……ライドウなり】

 

「幽子……千代子……ああ……覚えてる、覚えていたんだ……命の終わり、その時にだけ……思い出せていたんだ……僕はもうじき死ぬ……ただでは死なないよ……ジャック……僕の大事な者に手を出した……それ相応の罰を受けてもらう……」

 

今にも消えそうな儚い命の炎を燃やし、爛々と輝く双眸に息を呑んだ。

 

「子供1人制圧するなど分けない、君を制圧して治療をするとしよう」

 

「大佐?」

 

「命令だ。彼を制圧して治療する」

 

王だと、彼こそが王だと思ったのだ。宙ぶらりんで、ただ目先の益だけを求めて生きてきたが、今私は初めて自分が仕えるべき王の姿を見た。

 

「残念……僕は死ぬ、だけどただでは……死なない」

 

「いいや、君には生きて貰う。死神などは蹴散らして、君には生きてもらうとしよう」

 

だって君は私の王なのだからねとの言葉をグッと飲み込み、私は悪魔人間としての力を解放した。だが長久の力は私を遥かに上回り、そしてその力を見せつけ私を魅了したままにこの世から去ってしまうのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その43へ続く

 

 




覚醒モードの長久に魅了されるジャックでした。王の姿、強き、孤高の王の姿に、死を恐れないその姿にジャックは魅了されました。
次回は覚醒長久の戦いと、戦う長久を見て曇るゴア隊長などを書いて行こうと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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