収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4週目の世界 後日譚その4

4週目の世界 後日譚その4

 

旅立っていくレッドスプライト号を大統領府の一室から見送る。シュバルツバースの旅路も厳しい物であったが、過去と未来へ繋がるアカラナ回廊の旅路は間違いなくシュバルツバースでの旅路よりも遥かに厳しいものであるだろう。

 

「澪達の旅は厳しいものになりそうだね、ゴア大統領」

 

私1人しかいない部屋に響いた少女の声に私は驚いて振り返った。

 

「都君。どうやってこの部屋へ、この区画は既に封鎖したはずだが」

 

「霊脈渡りで俺と都は来た。俺達は再び旅立たなければならない、そうだろう?」

 

「ああ。その通りだ。大和」

 

シュバルツバース発生の予兆がある。そう遠くない内にシュバルツバースは発生する。

 

「大分誤魔化したけど、欲深い人間相手だと駄目だね」

 

「時間の問題というのは私達も分かっていたさ。澪達をアラカナ回廊へ送り出す為にはアーサーの知識を借りる必要があったからな」

 

レッドスプライトのAIとして作られたアーサーは最早AIとは呼べない存在へと進化をしていた。

 

「長久と地球の力が奇跡を起したんだね」

 

「死して尚俺達の力になろうしてくれたのだ」

 

「彼がいなければ我々はこうして無事に地球へ再び戻る事は出来なかった。そしてマリー達にも我々は救われたのだ」

 

マリー、ホーク、ユート、カイル、ルナ……シュバルツバースの旅の中で死んだ数多くの調査隊の仲間達の中でメムアレフに見出され、超超進化形態、ユーバー・ゲシュタルトへと進化した5人は我々と敵対していた。だがウロボロスの死によって彼らを操っていた糸が切られた事で彼らはシュバルツバースを彷徨い、シュバルツバースの力に触れた。その力は凄まじく、彼らと戦っていれば間違いなく私達は死んでいた。だがマリー達は調査隊としての責務を果したのだ。人間は滅びるべく、そしてそうでなければ地球は救えないとしつつも、私達ならば地球を救えると力を、未来を託してくれた。

 

「彼らは勇敢だった。自らが消え去る恐怖と抗い、それでも俺達に知恵を託してくれた」

 

ユーバー・ゲシュタルトの力は人間が受け止めることが出来る力ではなかった。その力を使えば遺体も残さず消え去ると知りつつも、シュバルツバースを消し去る為に必要な事を教えてくれ、そして長久君の知識を得ていたアーサーに力を託し、アーサーは超常の存在へと至った。

 

「調査隊に裏切り者がいたとは思えないし、本当に何処から情報が漏れたんだろうね」

 

澪の力、魔人になったヒメネス、天使の力を得たゼレーニン、そして神の力を得たアーサー。シュバルツバースを消し去った功績で大統領の地位に着いた私は全力を尽くし地球を変えようとした。だが上手く行ったのはたった1年と半年だった……もう少しで2年目というところで澪達の事がバレ、アーサーの事も知られた。そこから一気に地球の情勢は悪化した。アーサーの力を得て神の力を得ようと考える者達、澪達の力を継いだ子供を作ろうと考え、澪達を追う者……私達を邪魔者とし、調査隊の隊員をバラバラにし、我々が協力しあえないようにした。そして私が大統領に就任して3年目……南極に再びシュバルツバース発生の予兆をアーサーが感じ取った。

 

「大和と都君がいなければ我々は再び集まれなかった。君達には感謝している」

 

「私は私に出来る事をしただけですよ」

 

「俺もだ。長久が願った平和な未来を3年足らずで破壊されるなんて俺には耐えられなかっただけだ」

 

大和と澪の龍脈を使った瞬間移動で世界各地に散らばっていた調査隊のメンバーを少しずつ集め、そして回収され隠されてしまったレッドスプライト号もまた発見することが出来た。

 

「さて、再び地上へ別れを告げる時が来た訳だが、未練はあるか?」

 

「あるに決まっている。平和を維持出来なかった。未来を作れなかった……」

 

ああすればよかった。こうすればよかった……数え切れないほどの後悔と未練がある。だが再びシュバルツバースを地上に発生させるわけには行かない、悪魔の力を悪用しようとする者を、シュバルツバースをただの資材のありかだと思っている者達がいる以上。第二、第三のジャックは間違いなく現れる。シュバツルバースが大きく広がる前に、他の人間に気付かれる前にシュバルツバースを消し去る為に決死の覚悟で私達は最後の万能艦ノアにてシュバルツバースへ再び足を踏み入れたのだのだが……。

 

【ようこそゴア、そしてシュバルツバースを1度は消し去った勇士達よ。こちらへ、母メフアレフがお待ちしております】

 

完全武装している私達を出迎えたのはドレスとタキシードで着飾った悪魔達で、敵対の意志を一切感じさせない悪魔達に案内され、ほぼ1本道のシュバルツバースを進んだ先には人間大の大きさになったメムアレフ、そしてルイ・サイファーと車椅子に乗った紅いスーツ姿の男はにこやかに微笑みながら私達に向かって小さく頭を下げた。

 

「初めましてシュバルツバース調査隊の諸君。私はSTEVEN……悪魔召喚プログラムを作った者だ。だが君達にはこう名乗ったほうが良いかもしれないね、長久君に死ねない呪われた生を与えた張本人だ」

 

長久君の呪われた命、それを与えた張本人だと名乗るSTEVENに私含めて、この場にいた全員から激しい殺気がSTEVENへ叩き付けられたが、それでもSTEVENは柔和な笑みを崩す事はなく、この紳士に見える男もまたメムアレフやルイ・サイファーに準ずる超常の存在であるという事が嫌でも分かった。

 

「お前の目的はなんだSTEVEN」

 

「私の目的は世界を救うことだ。そしてその為に長久君の存在が必要であり、そして君達シュバツルバース調査隊の力が必要なのだよ」

 

どこまでも胡散臭い笑みを浮かべるSTEVENを警戒しながら話だけは聞こうと返事をするのだった。

 

 

 

 

 

シュバルツバースの発生の予兆を感じ取ればシュバルツバース調査隊は動くと考えていたが、思った以上に調査隊の動きは早く、私達にとって都合が非常に良かった。

 

「俺達を呼び寄せた理由はなんだ。ルイ・サイファー」

 

「事と次第によっては死ぬと分かっていても私と大和はお前に戦いを挑むよ」

 

殺気を叩きつけてくる大和と都の2人に向かって私は微笑んだ。確かにこの世界ではこの2人は最上位の悪魔使いではあるが、私達の世界から見れば中の上程度の強さの悪魔使いだ。絶対に負けると分かっていても敵意を隠そうとしない2人の強さは私から見ても好感が持てる物だった。

 

「君達にも長久君を追って欲しい。その為にシュバツルバースを作り出した」

 

「……なに? どういう意味だ」

 

「私とルイは世界を全て消滅させようとしている者と戦う為に世界を巡っている。そして長久君もその1人だ。彼ならば世界を変える事が出来る。だが世界を変えたとしてもそれだけでは私達の敵には勝てない。縁を集め、力をつける必要がある」

 

縁を集めると言っても1つの世界では限界がある。力をつけるといっても1つの世界には限界がある。だからこそ長久君には様々な世界を渡り歩いて貰っているのだとゴア達に説明する。

 

「その為に長久君を何度も殺しているのか」

 

「必要な事だった。無論全てが終われば彼の報復は受け入れるつもりではあるよ」

 

それだけの事をしているという自覚はある。だから全てが終われば私達に振り回された長久君の怒りを受け止めるつもりではあるが、今はその時ではない。

 

「このメムアレフもまた私達の敵によって存在を狂わされた1人ではあるが、今の彼女は元の地母神だ。シュバツルバースで遭遇した個体とは違うと思ってくれたまえ」

 

【……人類には申し訳ないことをしたとは思っているが、私を目覚めさせたのもまた人類だ。だから私は謝らないぞ】

 

「まぁこんな言いぶりではあるが君達の味方であると思ってくれて構わない」

 

元々目覚めたくない者を目覚めさせたのだから不機嫌なのは分かるが、メムアレフの力もまたこれから必要になる。

 

「メムアレフと協力して何をしろというんだ」

 

「君達が戦ったジャック部隊と同じ事をしてもらう。私達の動きを敵に掴まれた、このままでは長久君の世界を巡る旅は今まで以上に困難を極めるだろう」

 

シュバツルバースの悪魔が強くなっていたのも、私達の敵の妨害であり、そして南条や桐条といった本来この世界線に存在しない物が現れたのもまた同じ理由だと私達は考えている、

 

「レッドスプライト号と同じ君達の新しい舟を用いて異界を作り出し、長久君達の拠点を準備して貰いたいと思っている。だが、私達も今長久君がどこにいるのかは皆目見当も付かない」

 

「つまり世界を巡って長久を見つけ出せという事か」

 

「その通りだ。メムアレフがガイドを務めてくれる。先に長久を探して旅立った者達とは別ルートで長久を探して欲しい」

 

「君達の世界の地球は現状どうにも出来ない状況だ。勝手なことと思うかも知れないけれど、一度滅びる寸前まで行かなければ君達の世界の住人は何も理解しない筈だ。思うことはあるだろうが、旅立ってくれ。長久君が君の為に作ったその左腕、それが君達の旅路を照らすはずだ」

 

どの道彼らがいたところで彼らの世界の地球の滅亡への道は確定している。どの道シュバツルバースの発生を感知してこの世界に来たのだから、彼らも地球と地上は半分諦めているような物という実感はある筈だ。

 

「……お前達の思い通りになっているようで面白くは無いが、良いだろう。長久君を助けることに繋がるのならな」

 

「そう言ってくれると思ったよ。我々も機会を見て君達のサポートに来る。世界を救う為、そして長久君を救う為に共に頑張ろうじゃないか」

 

ゴア達はどの口でと私達を睨んでいるが、これが1番正しく、そして長久君の助けになれる方法だ。

 

「では我々は時間切れだ。またどこかで会おう」

 

世界の修正力によって私とルイはゴア達のいる世界を追い出され、私とルイも長久君を探す為に再び世界の狭間を歩み始めるのだった……。

 

「……この左腕が長久君への道を……うおっ!?」

 

ゴアの左腕の義手が光り輝き、MAGで出来た道を作り出す。どこまで続いているか分からない、その光の道に咲きに長久がいる……それは何よりもゴア達の心に火を灯すことにつながった。

 

「この先に長久がいるのか……」

 

「なら進むしかないよね!」

 

「ああ、勿論だ! 全員ノアへ乗り込め! 世界を救う旅へ再び向かうぞ!!」

 

「「「イエッサーッ!!」」」

 

 

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その1へ続く

 

 




ゴア隊長達はゲームで言えば仲間の入れ替えや装備を買い揃えたり、悪魔合体やペルソナ合成を行う拠点になってもらうルートです。
こういう場所が無いとこれから増える仲間の問題とかもありますし、シナリオの都合と言う事でこういうのもありかなって思って頂けると幸いです。次回からは偽りの千年王国と言う事で真Ⅱの世界に入りますが、ここもかなり大胆に改変して行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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