5週目の世界 偽りの千年王国 その1
本能的に帰ってきた岡本ジムだったが、そこで幼い容姿の少女におかえりと言われた瞬間に意識がハッキリし出した時の頭痛を遥かに越える頭痛が襲ってきて俺は意識を失ってしまった。それだけ今までの世界よりも多くの情報を叩き込まれたからだと思うが……今も少し頭が重い。
「……とりあえず起き……」
粗末なベッドから身体を起こそうとして妙に下半身が重いのに気付いて布団を捲る。
「おはよう」
「何してる!?」
幼い容姿の割には胸が大きく、腰もくびれていて幼い容姿と色気に溢れたスタイルと危ない色気を持つ少女。リーナはにこりと笑った。
「岡本が胸を長久の下半身に押し付ければ喜ぶと教えてくれたので実行しようかと」
真顔でとんでもない事を言うリーナを押しのけ、ベッドから飛び起き扉を蹴り開けてジムの中を走り出す。
「なんだ長久お楽しみは「死ねこのくそ禿エロ爺ッ!!」
「げぶろッ!?」
軽高の用務員と同一人物にしか見えない岡本に向かって俺は全力で飛び膝蹴りを叩き込むのだった……。
「おーいてえ……」
「あんたは子供に何を教えてるんだ!?」
「何ってナニだろ? ぐふっ!?「殴るぞ」もう殴ってるじゃねえかよぉ……」
無垢な子供に邪な事を覚えている禿の顔面に拳を叩き込み、俺は椅子に腰を下ろして深く溜め息を吐いた。
「なんでえ、リーナはお前さんの事が好きっていつも言ってるじゃねえか、受け入れてやれよ」
「余計なお世話だ。それにリーナの好きは家族愛とか兄妹愛みたいなもんだろうが」
そう思ってるのはお前だけだと思うけどなと笑う岡本さんの姿にもう1度溜息を吐きながら、与えられたこの世界の事を整理する。
(ここはTOKYOミレニアム……ミレニアムってなんよ? というか……ここは俺の知ってる東京だよな?)
うろ覚えだが3人と旅をした東京と同じMAGがこの世界にはある。多分だが俺は何回目かの周回の世界の未来に来たのだと思う。だがここが何年後、いや何百年後の未来か分からないし、俺の記憶と「俺」の齟齬もある。大きな動きが始まる前に情報収集するべきだと思い座っていた椅子から立ち上がる。
「岡本さん、ちょっと出てくる」
「あん? リーナをまたねえのか?」
「ヴァルハラダウンタウンのVBにまで付き添わなくて大丈夫でしょう? 夜までには戻ります」
荷物を纏めてあるバッグを背負い、護身用のスライサーを腰の鞘に収めて岡本さんに背を向ける。
「羽田のところに行くのか? 移籍しねえよな?」
「しませんよ、あんたには迷惑を掛けられてるけどそれ以上にでかい借りがある。その借りを返すまでは移籍なんかしませんよ。じゃ」
気をつけてなと声を掛けてくる岡本さんに後手で手を振りながら岡本ジムを出る。
(まずは……酒場か)
情報収集は先ずは酒場に行くのが一番だ。それにちょっと考えを纏めたかった。リーナは俺がいると雛鳥のように付いて回るので考え事所じゃないらしい……し。
「よう! 長久。元気そうだな」
「おはよう長久! あんまり無茶をしたら駄目よ」
ヴァルハラダウンタウンを歩いているとあちこちから声を掛けられる。どうもこの世界の俺はこのヴァルハラダウンタウンの警備をしているデビルバスターという奴らしい。このダウンタウンに侵入してくる悪魔と戦い住民を守る事を仕事にしていたようだ。
(んで俺が岡本さんにあるでかい借りはテンプルナイトをぶん殴ったと)
センターと呼ばれる治安が良い街の警備をしていて、メシア教に所属しているテンプルナイトがリーナを初めとした若い少女に手を出そうとしてそれを俺がぶちのめしたせいで岡本さんに多大な迷惑を掛けたから俺はまだ岡本ジムにいるらしい。
(だれだったか……こんな事をしてるやついたような)
権力を持って自分が偉いと勘違いしてる馬鹿がいたような気がするが、思い出せないのでここでもそんな馬鹿がいるとだけ覚えておく。
(本当なら俺はコロシアムに出てセンターの住民件を得るはずだったが、テンプルナイトともめたので参加資格を失い、リーナが変わりに
コロシアムに参加していて、羽田さんの所のレッドベアーと決勝戦を控えていると……かなり立て込んでいるな)
んで岡本さんはカジノで借金塗れ、俺がそれを返済しているのだが返済の一環で羽田さんの所のレッドベアーを鍛えてるとかなんだそれ馬鹿か? と思う状況だ。
(とりあえず酒場に行く為と借金の返済の為に詰め所に行くか)
羽田さんの所まで倒した悪魔の素材を詰め所で売却して収入を得たらそこから酒場に向かうかと思いながら俺は詰め所の扉を開いた。
「よう長久! また2つ名悪魔を討伐したんだって? やるじゃねえか!」
「これでテンプルナイトともめてなきゃセンター市民だったのにな。惜しいぜ」
「俺は別に良い暮らしをしたいわけじゃないからな。センターの市民権なんてそう興味もない」
「岡本の野郎とリーナがいるからだろ? 手のかかるのが2人もいると大変だな」
「別にそうでもないぜ。それなりに楽しく過ごしてるよ、これ換金よろしく」
悪魔の素材が入った袋を机の上におくとデビルバスターの詰め所の受付の男が口笛を吹いた。
「流石長久だ。今回も上物ばかり。少し色を付けておいてやるよ、お前の所のリーナが決勝らしいからな」
「助かる。装備も買ってやらんといかんからな」
「これだ。嫁なのか、娘なのか、それとも妹なのか、少しはハッキリしてやれよ?」
岡本さんと同じようなことを言うデビルバスターの仲間にうるさいと怒鳴り、素材と交換で得た6500マッカを詰め所を出る。6500マッカがあるが、借金の返済が近い武器と防具の店に返済すると700マッカくらいしか残らないかと溜息を吐きながら歩き出そうとし。
「そんなに溜息を吐くと幸せが逃げるわよ。長久」
背後から聞こえて来た声に俺は足を止め、まさかと思いながら振り返る。そこにいたのはスーツ姿の黒髪の美しい女……いや、人間に擬態したリリスの姿だった。
「百合子……?」
「お久しぶり、200年ぶりかしらね。少し付き合ってくれる? 貴方が欲しい情報を上げるわよ長久」
付き合ってくれるといいつつ、断る事をは許さないと言わんばかりに目を光らせている百合子に俺は両手を上げた。
「OK。付き合うよ。だからその物騒な気配を消してくれ」
「ふふ、錆び付いてない様で何よりよ。場所は酒場でいいかしら?」
「あんたに任せるよ」
どの道情報が欲しいし、百合子から話も聞きたい俺は何処でも良いと返事を返し、先を歩き出す百合子の後を追って歩き出すのだった……。
私と長久が酒場に入ると一瞬酒場がざわめき、店主らしい男が笑みを浮かべた。
「偉い別嬪さんを連れてきたな、長久」
「そんなんじゃねえよ。俺が昔世話になった人だ。俺なんかよりずっと歳……「ごめんあそばせ?」あだっ!?」
年齢の事を言おうとした長久の靴を思いっきりヒールで踏みつける。人間じゃないとしても女性の年齢に軽はずみに触れて良いものではないと身を持って知った長久はいてえっと呻きながらカウンターの上に500マッカを乗せる。
「個室を頼む、酒は軽いので良い」
「ん、了解。こっちだ」
カウンターを空けて奥の個室へ続く道を開けてくれた店主に頭を下げて狭い個室に腰を下ろす。
「雰囲気が変わってなくて安心だわ。性格が悪くなっていたらどうしようかなとか色々思ってたのよ?」
「俺は俺だよ。何処の世界でも、どの周回でもな」
これだけ転生か憑依を繰り返してもらしさを残している長久は正直に言えば異常だが、あえてそれは口にしない。それを口にすることで長久の何かが変わってしまうことは避けなければならないからだ。あの子が長久と再会した時の記憶の長久と違うというのは余りにも不憫だしね。
「どこまで覚えてる?」
「殆ど何も、3人と一緒に旅をしてたくらいだ。だけどどんな旅をしたのかとか、その3人がどんな顔や性格をしてたとかは全然覚えてない。あんたの事は覚えてるんだけどな」
やっぱり長久は翔子、武、俊樹の3人の事をまるで覚えていなかったようだ。
(覚えられていたら都合が悪いって所かしらね)
長久の性格からすれば前の世界で絆を紡いだ相手の事を覚えていればそれを引き摺ってしまう。再び縁を結ぶ為に記憶を消すのはある意味間違いではないと思うけど、忘れてるっていう認識があるのは余りよくないように思える。
「ペルソナに目覚めてるみたいだけど多用しないほうが良いわよ。多分今の貴方じゃ死に掛けてる状態じゃないと制御出来ないわ」
ペルソナ。困難に立ち向かう人格の鎧……悪魔とも戦えるだけの力ではあるが、今の長久では使用しないほうが良い。
「やっぱり駄目か?」
「駄目ね。貴方は変則的なワイルドのペルソナ能力者よ。絆、縁がなければ、しかもそれを相当に高めないと貴方の力は使えない」
ペルソナを自在に付け替えることが出来るペルソナ能力者の中でも極めて希少な能力だが、その能力は絆と縁に直結する。何もかも繋がりを失っている今の長久ではペルソナ能力を使うのは余りにも危険すぎる。
「もしもあいつらの事を覚えていれば使えたか?」
「使えるでしょうね。それだけの縁と絆もあった。だけど私から聞いてもそれは真の縁にはなりえないわよ?」
人に聞いた話で縁と絆を結べるなんて上手い話はない、少しずつ時間を掛けて再び絆と縁を結んでいく以外長久がペルソナを制御出来るようにはならない。
「元から聞くつもりはないよ。気持ちの整理が着くまではな……だってここは俺が前に旅した世界なんだろ? 思い出す切っ掛けなんていくらでもあると思うしな」
「正確には貴方が旅をした何百年も先の未来だけどね」
同じ世界ではあるが、全然違う世界でもあると言うと長久は搾り出すようにそうかと呟いた。
「とりあえず今の情勢は?」
「天使が幅を利かしてるわね。あの子達が貴方を追って行ったから抑止力が無くなってしまった感じよ」
あの子達がいれば天使も慎重になったが、そうでなければ大人しくしている理由が無い。あの子達が旅立ってからあっというまに地上は制圧されてしまったと話すと長久は眉を細めた。
「じゃあTOKYOミレニアムっていうのは……いや、テンプルナイトは天使の尖兵か?」
「上の階級のテンプルナイトは天使の命令で動いてるわ。貴方が喧嘩したテンプルナイトは下っ端も下っ端ね」
私の言葉に長久はそんな事も知ってるのかよと小さく呻き、深い溜息を吐いた。
「俺はセンターへは行かないほうが良いか?」
「別に行っても良いと思うわよ? 揉め事を起さなければね。後はそうね、これ上げるわ」
ポケットから取り出したメダリオンを長久に向かって投げる。
「これは?」
「回収できた貴方の魂の欠片を封じてあるわ。よくもまぁマタドールとタイマンなんかしたわね? 私でもそんな無茶はしないわよ?」
マタドールだけではなく、魔人に殺された物の魂は霧散してしまう。長久が死んだと聞いたときには既に大分霧散してしまっていて、あの子達が旅立つ前に回収出来たのは1割にも満たない量だった。それから少しずつ回収して来たが、それでも魂の総容量の4割ほどが限界だった。
「これをどうすれば?」
「持っていればその内今の貴方の魂と同調して力が戻るわ。暫くは目立たないほうが良いから少しずつ戻るほうが都合が良いでしょ? 後はまだあちこちに散らばってると思うから鍛えながら魂の欠片を集めて回ると良いと思うわよ」
「確かに、急に強くなっても身体の感覚とズレるからな。この世界を見て回りながら俺の魂の欠片とやらを探してみるよ」
「ん。じゃあとりあえずだけど、貴方の所の子がコロシアムに勝ったら彼女と同行してマダムの所に行きなさい」
「マダム?」
「このヴェルハラエリアの管理人よ。彼女に会えば暫くの方針は固まるわ。とりあえず今はこのTOKYOミレニアムを旅しなさい、その
中で自分がやるべき事がわかるはずよ」
全てを教える事は出来る。だがそれをすれば長久の短い寿命を更に縮めることになる。まずは長久が自分の目で、自分の耳で得た物を元に行動指針を決めて欲しい。
「分かった。あんたがそういうならそうしよう」
「ええ、私も時々様子は見に来るわ。あの子もだけど、貴方も心配だからね」
私の言葉に長久が苦笑すると個室の扉がノックされ、小さなボトルとグラスが2つ、それと僅かなつまみが運び込まれてくる。
「何に乾杯する?」
「再会にかしらね?」
長久とこうして酒を酌み交わせるというのは私としてはかなり嬉しい事だ。
(出来ればここに貴女もいて欲しかったわね、翔子)
翔子も共にいてくれれば更に良かったのにと思いながら安酒を注いだグラスを持ち上げる。
「「再会に」」
再び出会えた事に喜びと感謝をしつつ、グラスを軽くぶつけ合い私と長久は同時にグラスを呷った。それは確かに安酒だったが、今この一時だけはどんな至高の美酒をも上回る最高の酒だと私は思うのだった……。
おまけ
異邦者 長久
物理耐性 光・闇無効
パッシブ
悪魔召喚プログラム解析者 仲間による交渉の成功率10%UP 悪魔合体時に合体後の悪魔のステータスに1~5の間でランダムでステータスUP 弱点をついた場合のダメージ3%UP
葛葉流悪魔使い 戦闘開始時に確率でアナライズ 命乞い会話によるアイテムの入手率UP 致命傷になる攻撃を15%の確率で回避 弱点、もしくはダウン中の悪魔を攻撃した場合MPとMAG小回復 戦闘終了時の獲得MAG5%UP
峰津院の神子 戦闘開始時に5%の確立でタルカジャ・ラクカジャ・スクカジャのいずれかが発動。更に2%の効果で最初に発動した魔法と別の魔法が発動。自身以外がハマ・ムドの対象になった場合30%の確立で無効 味方が弱点、またはCTを出した場合追撃を行なう。※追撃のダメージは弱点またはCTを出した仲間の攻撃力・魔力の数値から計算される
ペルソナ能力者 ワイルドに準ずるペルソナ使いではあるが、現在は使用不能
悪魔召喚師の才能 極めて高い悪魔召喚師の才能を持つが現在は能力が封印中
死神の足音 死期が遠ければ遠いほどステータスダウン 死期が近づくほどステータスUP 魔人とのエンカウント率UP 死期を迎えた時HPが0になっても戦闘続行可能+ステータス大幅アップ&スキルが最大レベルになリ、覚醒状態になる 戦闘終了時に蘇生不可の死亡状態になる
ランダマイザ ラスタキャンデイ スラッシュ ヒートウェイブ マハラギ マハジオ マハブフ マハザン メディア リカーム 食いしばり
5週目の世界 偽りの千年王国 その2へ続く
と言う訳でいきなり百合子と再会しましたが、情報提供と長久の魂の欠片を入手となりました。メガテン2ではまずは長久の魂を集めつつ、ストーリーを追って行こうと思います。次回は少し飛びますが、コロシアムでの話を書いてみようと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。