収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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5週目の世界 偽りの千年王国 その16

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その16

 

ゴトウ達がセンターと戦っている時の遺産を隠している場所がヴァルハラエリアの近くにある。その場所へ案内してくれるゴトウの後を長久と歩き、暫くするとその目的地がどこか分かった。

 

「マダムの館?」

 

【その通りだ。あの館は私達の拠点を隠すために建築されたのだよ】

 

「灯台下暗しか、良くやるな」

 

【はっはっは! センターが視察に来るらしいが、もう何百年も隠し通せているよ、大体視察に来るテンプルナイトは俗物だからご馳走と酒で誤魔化せるそうだ】

 

馬鹿なんじゃないだろうか? いや、馬鹿か、何百年も見つけられないとか馬鹿を通り越して無能だ。遠目にマダムの館が見えたのだが、門の所に1人の女性……いやマダムが立っているのが見えた。

 

「ゴトウ陸佐、長久さん。お待ちしてました」

 

「戦装束……お前も来る気か?」

 

「勿論。ただ随分と鈍っているので役に立てるとは思いませんけどね」

 

そう笑うマダムは軽鎧に腰に剣と銃を下げ、白いマントを羽織っていた。

 

「金髪よりそっちの黒が良い」

 

【うむ、大和撫子はやはり黒髪こそだ】

 

金髪を黒く染めているマダムを褒めている長久の上着の裾を引く。

 

「私も黒髪だけど」

 

「ん、ああ。リーナにも良く似合ってる」

 

「雑」

 

もっと丁寧に褒めてくれれば良いのにと睨むが長久は私の視線を完全に無視していた。

 

「パスカル。長久が酷い」

 

「わふう?」

 

パスカルをモフモフするが、パスカルは首を傾げるだけで、なんともいえない空しさが合った。

 

「こちらです。ただ装備の保管庫は異界、それも上位の悪魔の巣窟となっているので気をつけてください」

 

「錆落としと思う事にするさ、アオイとリーナは無理をするなよ。良し、行こうぜ。ゴトウさんよ」

 

【うむ。参ろうか!】

 

長久とゴトウ、そしてパスカルを前衛において、私とアオイが並び、サポーターであるハイピクシーを召喚し、マダムの館の地下へと足を踏み入れた……。

 

【我が槍の冴えを見ろッ!!】

 

【刹那五月雨撃】

 

黒い鎧と白いマントを羽織った悪魔……妖精タムリン。

 

【グルル、グギャアアアアアッ!!!】

 

【マハラギダイン】

 

8つの頭を持つ巨大な蛇……龍王ヤマタノオロチ。

 

【キュルル、クアアアアアアッ!!】

 

ライオンの胴体にワシの頭と翼を持つ魔獣……グリフォン。

 

【はっはは! 久しぶりの客人だ! 歓迎するぞ!】

 

【戦え! 天使……いや、神への反逆だッ!!】

 

胸に豹の顔を持つ筋骨隆々の悪魔……堕天使フラロウスと豹の頭を持ち、両手に剣を持った……堕天使オセ。

 

「良く封印出来てた」

 

「この異界を作るのに協力してくれたのが魔王級悪魔でしたから」

 

マダムの館の地下の悪魔の1匹でも外の世界に出ればヴァルハラエリアが壊滅すると確信するほどに強力な物がひしめきあっていた。

 

「こんな化物ばっかりなんて聞いてねぇぜ! 狸爺!」

 

【はっはっは! 私も想定外!】

 

「馬鹿じゃねえのか!? お前も、アオイも!? もっと色々と考えろよッ!!」

 

【はっはっは! 私も今心からそう思っているッ!!】

 

私とマダムでは支援しか出来ないほどに強力な悪魔の群れをゴトウと口論しながらも次々と撃破している長久を見て、少しは強くなったと思ったけどまだまだ私と長久の力の差が大きいという事を思い知らされた。だけど私は長久の強さを見て、もっと強くなりたいとそう思うのだった……。

 

 

 

 

ベリアルとネビロスに協力して貰って作り出した異界はベリアルとネビロスのMAGに惹かれたのか、それとも隠している物資のMAGに惹かれたのか桁違いに強力な悪魔の巣窟になっていた。

 

【確かにお前の槍は素晴しく、お前の鍛錬と努力が伝わってくる! だがそれでも私が強い!】

 

【良く吼えた。ならば次で仕舞いだ。全力で来い!】

 

【無論そのつもりだ!!】

 

タムリンとゴトウ陸佐の咆哮と共に繰り出されたモータルジハードの一撃がタムリンの槍をその半身ごと砕き、ゴトウ陸佐の頬に鋭い切り傷を残す。

 

【良い死合いだった。楽しかったぞ人間】

 

【うむ、私も心踊る善き戦いだったよ】

 

互いに賞賛し、タムリンがMAGの光となって消滅する。

 

「パスカル! 来い!」

 

「わんわん!!」

 

パスカルの放ったアギダインを赤口葛葉で受け止めて燃え盛る紅いMAGを纏った長久さんは地面を蹴って跳躍する。

 

「うおおおおおおッ!!」

 

【極大紅蓮忠義斬】

 

全てを焼き払う一撃が私達を取り囲んでいた悪魔を飲み込み、私達の回りをMAGの光が照らし出す。長久さんとパスカルはその場にへたり込み、それを見た私は背負い袋から水のペットボトルを取り出し、リーナさんはタオルを持って長久さんに駆け寄った。

 

「お疲れ様です。長久さん」

 

「……マジで疲れた……本当勘弁しろよ、アオイ」

 

「きゅーん」

 

水を飲み、残りをパスカルに飲ませて額の汗を拭いながら文句を言ってくる長久さんに頭を下げる。

 

「すいません、私もまさかここまでとは……」

 

【魔王級と堕天使は想定していなかったからな!】

 

魔獣や龍王までは考えていたが、それを越える魔王級までが住み着くとは私達は勿論、ベリアル達も考えていなかった。これほどまでに強力な悪魔がいるのなら無理は禁物と遠回りを繰り返し、極力戦闘を避け、どうしても戦闘になる場合は出し惜しみなしの速攻とバックアタックを防ぐ為の結界と連戦を防ぐ為の煙玉と想定していた時間の4倍近い時間をかけ、私達はやっと目的地へとたどり着いた。しかし持って来ていたアイテムは全て使い切っていた。

 

「一応聞いておくが、トラフーリは」

 

「使えません」

 

【警備の都合上使えん! デスマラソンがこの後に待ってるぞ!】

 

「お前ら本当に馬鹿だな!?」

 

長久さんのシンプルな罵倒に返す事も無かった私の服の裾をリーナが引っ張り、不思議そうな表情で問いかけて来た。

 

「……悪魔がいなくなったのは何故?」

 

「ここが最深部だからですよ、リーナさん」

 

悪魔が住み着いていた迷宮も、罠も何もかも、この地下を守り通す為だった。

 

「そこまでしてなにをしようとしていたのか……見させてもらうとするか」

 

【驚くぞ、私達の努力の成果だ】

 

ゴトウ陸佐がそう笑い道を譲り、長久さんが異界の最深部の小さな小部屋の扉を開ける。

 

「……こりゃ驚いた」

 

【はははは! そうだろうそうだろう! これは全部センターから、そして天津神と国津神が残した武具の数々だッ!】

 

天使を退ける為に嫌々ながら協力していた天津神と国津神だったが、最終的には天使の謀略によって元からあった亀裂が修整不可能なほどに広がってしまった。

 

「それが敗北の理由か」

 

「元から劣勢でしたからね」

 

天津神が封印され、国津神によって霊的国防兵器と呼ばれる英雄、英傑はみな封印された。このような状況では私とゴトウ陸佐に協力してくれていたデビルバスターも天使へと下り始めてしまった。このままでは勝てない、皆やられる。だから私は嫌だったが、天使へと下ることを選び、センターに下るまでの間に様々な物資をベリアルとネビロスに協力して貰い隠した。

 

「レーザーガンにレーザーソード……」

 

「やめておけ、今のお前にはこれは使いこなせない」

 

天使の科学力によって作られた武器は基本的に人間が使うように考えられていない。天使の羽を埋め込まれたメシアンが使う前提なので普通の人間が使うこなすにはかなりの時間が掛かる。

 

「これは私が使います。武器頼りは嫌ですけど、今はそんな事を言ってる余裕はありませんから」

 

つまり長久さん達の中では天使の羽を埋め込まれ、純粋な人間では無くなった私専用の武器ということだ。

 

【他にも色々とあるが十分なMAGが無ければ使えないぞ】

 

「だろうな、それで「今」は使えない道具ばかりの場所に俺を案内した理由はなんだ? ゴトウさんよ」

 

長久さんは使えるが、リーナさん達は使えない武器や防具ばかりだ。長久さんからすれば無駄足だと思うだろうが、それでも長久さんをここに案内したのはちゃんとした理由がある。

 

「ルイ・サイファーさんに協力して作った物があるんです。長久さんじゃないと使えない物がここに保管されているんです」

 

長久さんが何度も生まれ変わり、何度も旅をする。その事を考えて作って貰った物をコンテナの中から取り出す。

 

「鞄? これがそんなに貴重なのか?」

 

私が差し出した鞄を不思議そうに見つめる長久さんだが、この鞄はこの中にあるどんなものよりも希少で価値のある物だと断言出来る。

 

【中が異界になっているから道具をいくらでも収納出来る。騙されたと思って収納してみてくれ】

 

ゴトウ陸佐に言われた長久さんはこの小部屋の中の道具を鞄へと詰め始める。最初は疑い気味、だが徐々にその顔は驚きの物へと変わった。

 

「これは確かに凄いな」

 

【だろう! 大事にしたまえ、これからの旅に必要になる筈だ】

 

長久さんの旅はこれで終わりではないかもしれない、だがこれは魂に作用する概念的なものらしいので、長久さんの旅路の強い味方となってくれる筈だ。

 

「これだけの為にここまで苦労したの?」

 

「違います。ここは天使の監視が届かない、これから何をするべきなのか、それを話す為に来たのです」

 

外の世界はほぼ全てが天使に監視されていると言っても過言ではない、無論すべてを天使とセンターが把握しているわけではないが、それでも天使に聞かれては都合が悪い話もある。だから長久さんに物資を託すと同時にこれからの話をする為に私とゴトウ陸佐はここまで長久さんを案内して来たのだから……。

 

 

 

 

天使に聞かれたくない話をする為に態々異界にまでやって来たというアオイとゴトウ。これからの目的というのは確かに俺もしっかりとそれを把握しておく必要が合った。

 

「俺達はこれから何をすれば良い、センターと天使と戦うのは分かっているがそれをする為にどうすれば良い」

 

戦う事に異論はない、敵も分かっている。だがそれだけではない何かがあるのだ。

 

【何度も言っているが君達は地下に向かわなければならない。その為にはまずセンターを欺き、出し抜く必要がある】

 

この世界を支配し、コントロールしている天使を出し抜くのは並大抵の事ではない。だがやらなければならない、何故なら俺は前へ進むと決めたからだ。

 

「その為には先ずはセンターを利用しましょう」

 

「表向きは従ってる振りをして?」

 

【その通りだ。リーナ君。天使は確かに恐ろしく狡猾だが、それと同時に愚かでもある。危険な物は封じれば、隠してしまえば無力になると思っている】

 

「それが地下の東京か」

 

かつて俺が過ごした東京。このミレニアムの地下にある生まれた場所……そこを目指すのが天使と戦う為に必要なことらしい。

 

「大きな敵を倒すためにはまず小さい部分からですよ」

 

「分かってる、異論はない、どうせだ。マッカをしっかりと取り立ててやるよ」

 

ヴァルハラに戻る前に司祭が何かを言っていたからヴァルハラヘ戻れば恐らくセンターからの何らかのアプローチがある筈だ。それでまたマッカをせしめて装備をしっかり整えてやる。センターから貰ったマッカでセンターを叩くというのは良い皮肉だと思う。

 

【次だ。封印されている天津神と暴走している国津神を正気へ戻すのだ。その為には金剛神界に向かわなければならない】

 

まさかまた金剛神界の名前を聞くとは思っていなかったが、俺に道を示してくれた 役小角に会うのも悪く無いと思った。

 

「それと目加田です。花田は暴走しましたが、目加田はセンターの思惑に気付き、私に協力すると約束してくれました。彼を見つけだせばほかにも分かることがあると思います」

 

「OK。分かった、センターに従がう振りをして情報を集め、地下へ向かう方法を探し、目加田を見つける。簡単すぎて泣けてくる」

 

どれもこれも無理難題ではあるが、それでもやらなければならない。ならば泣き事を言うつもりも、諦めるつもりも無い。だが多少の嫌味は許されても良いと思う。

 

【良し、それでこそだ。リーナ君は我々の話を聞いてどう思う?】

 

「どうでも良い、長久がそれをするなら私も手伝う。それだけ」

 

リーナの言葉にアオイとゴトウも渋い顔をする。俺だって分かっている、リーナにはリーナの問題があり、それを解決する事もまた俺が成し遂げなくてはならない事だ。

 

「っと、地震……な訳はないか、異界が閉じようとしているのか?」

 

【その通りだ外へ出よう。ここの異界はもう閉じる、巻き込まれて消滅するわけには行かないからな】

 

「当たり前だ。リーナ、パスカル。急ごう、ここで俺達は終わる訳には行かない」

 

「急ぎましょう長久さん、リーナさん」

 

「わん!」

 

来た道を引き返す。口にするのは簡単だが、ここまで来るのに戦った悪魔の強さを考えればそれは決して簡単な道のりではない、だがそれでもやらなければならない。進むと、前に進むと決めた、立ち止まらないと決めたのだ。どんな険しい道であれ駆け抜ける以外の選択肢は俺にはないのだから……。

 

「はぁはぁ……し、死ぬかと思いました」

 

「ほ、本当だね……マダム」

 

「確かにな……最後の最後でとんでもない地獄だった」

 

悪魔達もこの異界から脱出しようと出口に向かっていて、少し進めば悪魔とかち合う。しかも悪魔同士が共食いしてキメラになっていたりと収縮を続ける異界で戦うには余りにも厳しい悪魔との連戦を切り抜けた俺達はマダムの館の庭でぐったりと横たわっていた。

 

【良く頑張った。この私の役目も終わった、後は他の私に託すとしよう。道は厳しいが頑張ってくれ、君達ならきっと成し遂げられる筈だ】

 

ゴトウはそう言うとMAGの粒子となって砕け散り、ゴトウが立っていた場所にはカスタムされたコルトパイソンが落ちていた。

 

「礼くらい言わせろよ。ったく」

 

葛葉流単砲術はコルトパイソンなどのマグナムを前提としている。今の銃ではその威力を十分に引き出すことが出来ていなかったが、これによって葛葉流単砲術の威力を十全に扱えるようになった。

 

「長久。早く連絡して帰ろう……疲れた」

 

「私の館で休んでくれても良いですよ?」

 

「迎えに来てくれるから連絡をくれって言われてるからそれはまた今度にする」

 

アオイの館で休んでも良いが、俺達の連絡を待っている岡本さん達を待たせるのも悪いと断るとアオイはせめて食料だけでも持って言ってくれと大量の食材を用意してくれ、俺とリーナはその食材の山に埋もれながら岡本さんに連絡を取った。

 

「岡本さん。終わったから迎えに来てくれ、場所はマダムの館だ」

 

『おう、すぐに向かうぜ。それとセンターからこっちのデビルバスターの本部にお前とリーナを名指しで依頼が来てるぜ』

 

予想通りにセンターが動いたが、まずは休みたい俺とリーナは後で聞くと搾り出すように呟き、岡本さんが迎えに来るまでの間。食材の入った袋の山に埋もれたまま眠りに落ちるのだった……。

 

 

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その17へ続く

 

 




武器と道具袋の入手イベントでした、次回はファクトリーへと向かう話を書いて行こうと思います。武器は装備出来るけど適性レベルではないので威力を十分に引き出せない、道具袋はメダリオンと同じく他の周回にも持ち越せるアイテムですね。それと戦っている悪魔で分かると思いますが、褌マンと長久とパスカルのステータスは30を越えているのとHPも700くらいあるのでリーナ達とはレベルが2周りほど上となっておりますのであしからず、次回からは登場人物も増えますしちゃんとベースシナリオもあるのでボリュームもUPして行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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