収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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5週目の世界 偽りの千年王国 その21

5週目の世界 偽りの千年王国 その21

 

ベテルギウスの奇襲を受けた長久さんの治療と共にパスカルと共に駆け寄った時長久さんは意識を取り戻していた。だがそれを見て不味いと私は即座に理解した。

 

「いっつつう……ぐふ……ッ……な、なに……げぶっ」

 

胸部のボデイアーマーによって命が救われているが、砕けたボディアーマーの破片が胸に突き刺さり、更に胸部が陥没していてどす黒い血液を吐いた事で折れた肋骨が臓器を傷つけているのが一目で分かった。

 

「喋らないで! 今治療をします!」

 

赤黒い血を吐きながら何があったのかと尋ねようとしてくる長久さんに喋らないでと怒鳴り、胸に手を当ててディアラマを唱える。最初はリーナさんの為に演技をしたかと思ったが、そうではなかったようだ。5分ほどディアラマを続ける事で長久さんの陥没していた胸部が盛り上がり、呼吸が整って来た。

 

「つううう……アオイ……何があった?」

 

「地下から出て来たベテルギウスの一撃を受けたんです。大丈夫ですか? 指は何本に見えますか?」

 

指を2本を立てると長久さんは2本と即座に返事を返し、頭を振りながら立ち上がるがよろめくのをみて咄嗟に身体を支える。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だ……ああ、クソ……完全に油断してたな……。今はどうなってる」

 

「リーナさん達がなんとかベテルギウスを押さえ込んでいますが、厳しい状況です」

 

リーナさん達が弱いわけでは無いがベテルギウスが余りにも強すぎる。堕天使は強力な悪魔だが、私の想定よりもベテルギウスが強すぎた。奮闘しているが、道具や誰か1人でもMAGを使い切れば一瞬で戦線は崩れてしまうだろう。

 

「パスカル。ベテルギウスの匂いは他にするか?」

 

「ワン!」

 

地下に頭を向けて吼えるパスカルにまさかとベテルギウスの胴体が伸びて来ている深い穴の底へ視線を向ける。

 

「本体はまさか地下に!?」

 

「本体とは限らないぞ、とにかく地下に行くぞ」

 

言うが早く地下へと飛び降りる長久さんを見て私も慌てて地下へと飛び降りる。

 

「ハッハ! ハハッ!」

 

私よりも早く駆け下りていくパスカルに驚きながら地下を降りていくと、途中でなんで気付かなかったのだと思うレベルの濃密なMAGが噴出していた。

 

「急ぐぞ、リーナ達が危ない、パスカル、先頭を頼む」

 

「ワンッ!」

 

パスカルが炎を吐きながら駆け下りて行き、その炎を頼りに深い縦穴を駆け下りていくと、その地下で私は信じられない物を見ることになった。

 

「……ここまで、ここまでするのですかセンターは!?」

 

私もセンターの闇は知っていた。僅かな人間を生かすためにセンターに従がう振りをして様々な悪行を黙認して来た……だがそんな事が子供の遊びに見えるほどに悪逆がこの深い地の底で行なわれていた……。

 

「あ……あああ……」

 

「……う……うあああ……」

 

「じで……ごろじ……で……」

 

黒いテンプルナイトの衣装に身を包んだ複数の男女……だがその誰もが五体満足ではなかった。

 

「死に掛けの所を機械による治療を行い、MAGを捻出しベテルギウスへ供給し続ける……なんとも悪辣な事だ」

 

死にたいと思っても死ねず、死の間際に噴出す膨大なMAGをベテルギウスへと供給し続ける10人のテンプルナイト。ベテルギウスを召喚し、デミナンディを暴走させた犯人であるのは明らかだがそれでも憐れと思わずにはいられなかった……。

 

 

 

 

 

ベテルギウスは堕天使ではあるが、堕天使の中ではソロモンの悪魔に分類されず他の堕天使よりも格落ちする。そんな格落する堕天使に致命傷を受けたというのは俺としては不思議だったが、目の前の光景を見れば納得出来た。

 

(呪い……いや、人の業……葛葉の暗部か)

 

葛葉は確かに護国の刃ではある。だが表立って戦わず陰で戦う者もいた……いうなれば呪いなどによる暗殺だ。

 

「アオイ近づくな。死ぬぞ」

 

「え……」

 

介錯しようと近づいたアオイに近づくなと警告しながら俺も助けてくれと呻いているテンプルナイトから離れた。

 

「葛葉の呪だ。こいつらは人を呪い殺す媒介にされている、下手に近づけば俺達でも死ぬ」

 

逆を言えば高いMAGを持つからこそ致命傷になりえる。だからこそ近づく訳には行かないのだ。

 

「パスカル。頼む」

 

「わん!」

 

俺の指示に従がい炎を吐き出すパスカルによって黒いテンプルナイトは断末魔の声をも上げずに炎に巻かれて燃え尽きていく、その姿を俺は片時も逸らさずに見つめ……間合いを見て赤口葛葉を抜き放ち炎の中へ突き入れた。

 

【ギイヤアアアアアアアああッ!?】

 

おぞましい幾重にも重なった男達の悲鳴と共に赤口葛葉を引き抜き、炎の中に隠れていた悪魔を引きずり出す。それは人の形をしていなかった、人の手が幾重にも重なり合い、人型へとなった化け物としか言えない物だった。

 

【お、おおお……おおおおおおッ! 若様、若様だ!】

 

【ああ、ああああああ――ッ!】

 

【若様、若様ッ!!】

 

俺の事をこの亡霊達は若様と呼んだ、まさかと思いジッと見つめるとその化物の中に見知った顔を見た。

 

「……藤原?」

 

【おお、おおおおおッ!! 若様、若様! この爺を覚えてくださってか!?】

 

葛葉の指南役の1人だったと思う……悪魔を召喚出来ない俺に様々な術を教えてくれた爺さんだ。

 

「何故あんたがこんな所にいる」

 

【葛葉の呪を悪用されぬように押さえ込んでおったのです。天使共はこの無差別の呪いをばら撒こうとしておりましたゆえ】

 

道理で被害が少ない筈だ。本来ならばこの呪いでファクトリーエリアは壊滅してもおかしく無かった。それほどまでに強力で悪辣な呪だった。

 

「成仏せずに呪いの中にいたのか」

 

【それが葛葉の使命でありますぞ、護国の刃が罪なきものを殺めてはなりませぬ】

 

葛葉としての使命を果すために己の存在を消してまで呪いを封じていた。

 

「藤原。大義であった。良くここまで耐えた。眠って良いぞ」

 

【は、ははははははッ! この爺には過ぎた褒美でございますな!! はははは、ははははははッ! 爺は参ります、どうか、この呪いの核を壊してください。若様】

 

その言葉と共に亡霊は消え去り、漆黒の宝石が赤口葛葉に貫かれていた。

 

「……どうもこういうのも回収しないと不味そうだ」

 

「なんなんですか? 長久さん」

 

「葛葉の呪物だ。葛葉を滅ぼした時にセンターが回収したんだろう……よっ!」

 

赤口葛葉を振り上げ切っ先から抜けた宝石を赤口葛葉で両断すると漆黒のMAGが噴出し、数秒で霧散し消え去った。

 

「これで大丈夫だと思うが……アオイ、前に渡したお守りは持ってるか?」

 

「は、はい、持ってますけど……」

 

「暫くの間肌身離さず持っててくれ、この呪いは強すぎる」

 

呪いの元と念は払ったと思うが完全ではない可能性もある。最悪に備えてお守りを持っているようにアオイに言いながら一応周囲を調べてみるが、葛葉由来の呪物はなさそうだ。

 

(考えられるのは制御不能でここに封印して、ベテルギウスを召喚させると共に証拠隠滅って所か)

 

元々天使もメシア教も禄でもないと知っているが、本当にあいつらは禄でもないことばかりをするな。

 

「ベテルギウスへの魔力の供給は止まった筈だ。行くぞ、アオイ」

 

「はい!」

 

ベテルギウスの体力を無尽蔵に回復させていた黒いテンプルナイトは始末した、それに葛葉の呪いも打ち消した。それでもベテルギウスに与えられたMAGまで無くなる訳ではない、リーナ達だけでは苦戦する筈だからすぐに合流しなければと俺とアオイ、そしてパスカルは下り降りた岸壁を駆け上がってリーナ達の下へと向かうのだった……。

 

 

長久達の姿が無くなり静寂に満たされた深い穴の底で黒いMAGが集まり人型となった。

 

「どうやらまだ目覚めてはいないようだ」

 

「おかしいな。鼓動を感じたんだけどねえ……」

 

黒い人影はどこか落胆した様子で喋り出す。その声は幾重にもエコーが掛かっていたがその声から男性ということだけが分った。

 

「まだ焦る時じゃない、そうだろう? ルシファーも、ヤハウェも押さえた。我々の勝ちは決まっているような物だからな」

 

「まぁ良いけど、おっかしいよね? 確かに鼓動を感じたんだけどなぁ」

 

「焦る事はない、時が来れば全てが終わる。それで良いだろう?」

 

「大丈夫さ、あいつは僕達の親友なんだからね」

 

壊された機械から零れる僅かな光、それに照らされる人影の顔は幽子や、千代子、翔子や澪に酷似した物なのであったが、皆青年や少年と呼べる顔付きをしているのだった……。

 

 

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その22へ続く

 

 




今回は少し短めで今後のフラグを少し盛り込んでみました。ルイ様達が勝てないと言う相手の片鱗を少しだけ出してみましたが、多分勘の良いメガテニストなら敵が誰か分ると思いますが、お口にチャックでお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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