何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様) 作:カルデアの廃課金マスター
7月章日
森の入り口付近に拠点を構えて早数日が経った。
何の下準備も行わずに砂漠横断に挑むほど無謀じゃないので、食料や水を集めたり貯めたりしていた。
入れ物は土魔法で作った。
ルーデウスの真似事だけど、ないよりましだろう。
陶器のように表面がザラザラしてるけど、崩れて水に入ってないからセーフ。
問題があるとしたら、耐久性能は高くないからガラス程じゃないけど慎重に扱わないと壊れるってところかな?
戦闘時とか大丈夫だろうか?
水は魔法で何とかなるから、壊れやすい入れ物と考えたら……。
でもこれ、作り出すのに時間と集中力が結構必要なんだよね。
ともあれ、準備は整ったはず。
これ以上は何も打開策を思いつかないまま、森の入り口付近で過ごして時間が過ぎるしかないと思った。
家族も心配しているはずだ。
さっさと帰って連絡を取ろう。
m月A日
舐めてた。
砂漠横断舐めてたよ。
日中は真夏よりも熱く、夜は真冬かってくらい寒い。
貯めていた果物は3日も持たずに食べきった。
出なきゃ腐ってた。
水の消費も馬鹿みたいに多い。
魔物の強さも馬鹿にならなかった。
かなり強い。
というか、1対1体と戦うだけで体力をかなり持っていかれる。
森に居た魔物と比べものにならない。
1体なら決死の覚悟でなんとかなる。
でも複数いたら怪我は絶対に負ってしまう。
逃げ一手だ。
森に帰りたいけど、既に帰り道が分からない。
真っ直ぐ進んでるかも分からないけど、とりあえず進むしかない。
D月A日
この剣が無かったら既に何回も死んでいた。
この剣ヤバすぎ。
こんな業物が落ちてた(あの女の人が落としていったと考えるのが自然)のは不幸中の幸いだと思う。
言っちゃ悪いけど、パパウロから貰った剣だと砂漠に住んでいる魔物には歯が立たなかったはず。
武器の性能に振り回されてる感があるけど、まずは生き残るのが最優先だから有難く使わせてもらう。
2月5日
危ないし気持ち悪いしなんなの?
今日は巨大ミミズに遭遇した。
地中から急に出てくるとか、少しでも回避が遅れたら食べれちゃう。
予備動作も分かりにくいから危ない。
私の勘が冴えわたっていなきゃ死んでたと思う。
日月K日
何週間経ったのか。
生きてるのが不思議だ。
巨大ミミズは相変わらず危険だし、サソリは硬いし、コウモリなんかも飛んでるし、なんか臭い臭いがする時もあった。
無人でも良いからオアシスが欲しい。
A月I日
蜃気楼って本当に存在してたんだ……。
オアシスだと思って進んでたら何もなかった。
ここ一番の絶望感を味わった。
M月A日
食べ物が無くなった。
魔物の肉は飽きてきた……。
K月U日
サボテンだと思ってたら木の魔物だった。
何て言うんだったっけ?
トレンド?
D月A日
人と会った。
相変わらず言葉は通じない。
でも、人が良いのか一緒に行動する事が出来るようになった。
言語が通じないながらも身振り手振りで色々頑張ってくれている。
ありがたい。
L月A日
複数人での行動は物凄く楽だ。
警戒は色んな方向に出来るし、食料や消耗品と言った物も分けて貰えた。
ベガ何とか大陸に飛ばされてから、人の悪意にしか触れていなかった私には物凄く心に沁みる。
戦闘で役に立って恩を返さねば。
S月I日
数日前、恩を返すと意気込んたのがアホらしい。
チームワークを乱してお荷物だ。
そりゃそうだよね。
今まで魔物と戦った事もない雑魚村娘一人が、数日間砂漠を歩けたからと言ってベテラン冒険者になったわけじゃない。
正直、人に会えた事で調子に乗ってました。
N月N日
お荷物の私にも役に立った事が2つありました。
水魔法と直感の2つだ。
ギリギリ中級が使えなく、無詠唱を扱えない初級魔術師の私でも、水魔法が扱えるのは物凄く重宝された。
砂漠では水はとても貴重で命にかかわる。
魔術師は居ても魔力量はルーデウスよりも遥かに劣っていると思う。
そこへ戦闘にはならないが、十分な飲み水を出せる剣士が現れたらそりゃあ喜ぶ。
会話が出来ないから正確な意見はわからないけど、反応を見る感じこんな感じだと思う。
馬鹿みたいに使えないけど、ある程度の余裕を持って水魔法を使って役に立とう。
もう一つは直感。
そうとしか言いようがない。
事の発端はこの人達と合ってから何回目かの接敵の時だった。
何となく嫌な予感がしてその場を離れると、数秒後にはミミズが砂漠の下から飛び出していた。
勘に従って飛びのいていなければ死んでいた。
1回や2回なら運が良かったとスルー出来る。
3回、4回程度なら勘が良いと思えて来る。
そして、10回目に差し掛かる頃にはただの勘とは言いにくく、手振りで他の人に伝えると従ってくれるまでになった。
可笑しいと思えるけど、とりあえずは生き残る事が最優先。
急に謎の力に目覚めようと、生き残れて家族の元に帰れたらそれでいい。
謎解きはその時でも良いじゃないか。
私が頭を悩ませるよりもルーデウスに話したらあっという間に答えを見つけてくれるかもしれない。
とにかく、この二つで砂漠越えの役に立とう。
ナ月ウ日
時折危うい場面が出て来るが、順調に進んでいる。
後どのくらいで街に着くのだろうか?
言語が分からないから聞けないし、聞いても理解出来ない。
こればっかりは身振り手振りでどうにもならないからなあ……。
イ月・日
身振り手振りで無理なら絵を書けば良いじゃない!!?
久しぶりに良い案が閃いて嬉しかった。
早速試そう。
ミ月ク日
結果だけ言えば失敗した。
砂漠ではサラサラした砂で絵が書けない。
硬い場所で試しても、微笑まれて終わった。
何故だ……。
ト月ラ日
私以外全滅した。
あっさりとした終わりだった。
ティラノサウルスみたいな恐竜に頭を食いちぎられて、ミミズに丸吞み、スフィンクスに胴体を切断されて。
辺りは真っ赤。
全部血。
私はどうやって助かったのか覚えていない。
がむしゃらに剣を振って足を動かしてた気がする。
ン月功日
また一人ぼっちの旅。
数日の付き合いだったけど、目の前で人が死ぬのは悲しい。
悲しいけど、立ち止まってはいられない。
私は家に帰らなくちゃならない。
道は分からないけど、あの人たちが進んでいたと思う方向に進む。
略月し日
この砂漠にも慣れたものだ。
既に1週間以上は経ってるはず。
もしかしたら1ヶ月かも。
歩きにくく、戦闘でバランスを崩して危なかった砂漠も慣れてきた。
今ではそれなりに戦えている。はずだ。
大怪我を負わずに魔物から逃げきれている。
または、1体だけならギリギリ倒せる。
疲労困憊で数時間の休憩は必要だけど……。
まだ人に出会えないの?
た月が日
限界。
もう限界かもしれない。
飲料水は水魔術で生み出した水、食べ物は襲ってきた魔物を運よく倒せたら。
衣服はボロボロ。
成長期なのか栄養不足なのに少しずつ成長して着れなくなりそう。
偶に水で手洗いしてるとは言え、返り血がこびりついた服。
なんかの拍子に破けて着れなくなりそう。
こんなことなら、亡くなった冒険者から着れそうな大きさの服を貰えば良かった。
死者のものには触らない方針で、全部燃やしたのはダメだったか……。
後月編日
フラフラ。
ふらふら。
木陰で休みたい。
は月2日
数回目の生理で動けない。
危ないけど、比較的日陰な場所まで這って進んで休んだ。
運が良かった。
敵襲は1回だけ。
5月日日
岩場で休んだ。
そうだ、生理の回数でどれだけ日数が経ったのかある程度数えられてたはず。
もう既に遅い。
最低でも5回はあったはずだから、最低でも半年はこのベガ何とか大陸で迷子だ。
5ヶ月も行方不明だと、とても心配してるはず。
早く帰らなきゃ。
だ月と日
一番辛い日は過ぎた。
それでもまだ万全ではないので、今日も休憩する事にした。
そんな日に限って魔物が襲ってきた。
ギリギリ敗走した。
治癒魔術を扱えなかったらかなり危なかったかもしれない。
治療優先で明日も動かないでおこう。
思月い日
ようやく動ける様になった。
1週間程時間を無駄にしてしまったけど、ここまで来たら慎重に帰るに限る。
ま月す日
何日か経った。
もうベテランと言ってもいいかもしれない。
複数の魔物が相手でもそれなりに余裕を持って逃げる事が出来る様になったし、ミミズの回避もお手の物だ。
……幾ら魔物を倒せたって、家に帰れなきゃ意味ないよ。
。月福日
物凄く遠くに建物が見えた気がする。
見つけたのが夕方で、日が沈む直前だったので見間違いかもしれない。
期待はしないぞ。
蜃気楼だった時の落胆で心が折れるかもしれないからね。
…………。
でも、本当に町だったら良いな。
新しい服を新調したいし、お腹一杯ご飯食べたい。
魔物に怯えずに眠りたい。
袋月は日
夢じゃなかったッ!!
ようやく町にたどり着けた。
先ずはまともなご飯食べたい
メ月リ日
悲報:言語が通じない上に通貨すらも見たことがない奴だった。
昨日も野宿して夜を過ごした。
お金……どうしよう?
ュ月ジ日
町に到着して数日。
何と無くこの町のルールを理解した。
まず、宿が殆どないと思われる。
その辺の地面に雑魚寝状態がデフォルトだった。
中には所有権を主張して敷物を敷いたり、テントを建ててその中に寝たりしていた。
これはありがたい。
私も人が周囲に居ない場所まで移動して寝ている。
二つ目、通貨は見たことない物だったけど、物々交換もオーケーみたいだった。
しかし、私に交換出来るものなんてない。
お肉とか食料は食べるために売れないし、衣服だって今来ているのが一張羅。
折れたパパウロの剣は、少なくとも家族の元に帰るまでは手放すつもりはない。
何もない。
ルール的なのはここまで。
次に希望だ。
9割の人は良く分からない現地語を話していたけど、本当に時々だけど私にも意味が分かる単語が聞こえてくる時があった。
私みたいにこのベガ何とか大陸に飛ばされた人なのか、冒険者でこの大陸に遠征しに来たのかは判断判断付かなかったけど、言葉が通じるかもしれない人がこの町にも存在している事が分かった。
明日は調査して接触を図ろうと思う。
思えば、数か月ぶりに会話が出来る……かもしれない。
上手く話せるか緊張してきた。
ー月ヌ日
と意気込んだはいいものの。
そうそう運良く言葉が通じる人が見つかるはずも無かった。
数日町をうろついてようやく一人チラッと聞こえて来ただけだから、確率はかなり低いと分かっていた。
地道に頑張ろう。
そういえば、持っていた魔物の肉がなくなったからお腹すいた。
物々交換か、近場で狩って食べか……。
で月し日
言葉が通じないなりに身振り手振りで物々交換したい事を伝えてみた。
が、手持ちで交換出来そうなのは貰った剣だけだった。
当然断った。
この剣とパパウロの折れた剣だけは幾らお金を積まれようと売らないと決めていた。
この剣が物凄い業物なのは何と無く分かる。
でも、これがないと家族の元には帰れない。
道中の魔物を倒したり、賊を追い払ったりするのに絶対に無ければ困る。
食料や服に困ってるんだからこの剣を売って大金を他に入れた後、値落ちした剣でもいいじゃないか?とも思ったことがある。
だけど、この剣を手放したら終わる気がしてならない。
もう二度と手に入らない程の業物って欲もあるんだろうけど、8割以上がただの勘だった。
このベガ何とか大陸に飛ばされてから、私の勘は馬鹿にならないというのを思い知っている。
だから手放せないでいる。
何だろう。
あの人が置いて行ったからと深く考えずにいたけど、本当はもっと深い意味があるじゃないだろうか?
時間は幾らでもあるから、空いた時間に考えてみよう。
た月。日
このままだとお腹空いて倒れそうなので、町が見えるギリギリまで砂漠に出歩いて魔物を狩った。
サソリかティラノサウルスが良い。
コウモリは微妙だった。
ミミズは以ての外。
バーベキューみたく火魔法でお肉を焼きながら私は考えた。
昨日の続きだ。
朧げな意識を今でも覚えている。
あの綺麗な人は確かに「遅くなってごめん」と言った。
と言う事は、幸運でも群然でもなく、私を助ける事が目的だったはずだ。
私が意識を取り戻した時に姿が消えていたのは離れなきゃならない理由があったのだろう。
でなきゃ謝られる必要性が感じられない。
剣を置いて行ったのは離れても私を守れるように……って考えすぎかな?
でも、この剣がなければ砂漠を横断出来ていなかったはずだ。
中級になったばかりの10歳剣士に名刀なんか必要ない。
パパウロは普通の剣をプレゼントしてくれていたはず。
普通の剣なら消耗して剣が折れるのも納得がいく。
納得しているが未練が無いわけじゃない。
砂漠越えか、もしかしたらその先の困難を払う為にこの剣を残してくれたのかもしれない。
とりあえず。
この剣のお陰で今の私がある。
何が起こっても手放さないようにしよう。