何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様) 作:カルデアの廃課金マスター
本来なら1人辺り2,000文字程度で3人で1話を想定してた。
・リーリャ視点
思い出すのは一番幸せだった頃の記憶。
王宮メイドの職を追われ、職を探していた私を拾ったのはパウロだった。
拾ったと言うのは語弊がありました。私の実家がやっている道場に居た弟弟子。彼からハジメテを奪われた事をネタに職に就こうと考えていた私を快く迎えて下さった奥様。
ブエナ村に着いた私の仕事は奥様の身の回りのお世話が主だったない様だった。そもそも仕事を募集した理由が奥様の妊娠がきっかけなのだから当然だ。
双子と言う事で出産は大変でしたが、王宮に務める際に一通りの知識を教わっているので問題はありませんでした。
あるとすれば人手が足りなかったことでしょうか。王宮では複数人の女医に助産師がかかりつけになりましたが、ここでは私と村に一人居る老婆のみ。
パウ…旦那様は全くの役立たずでした。男性には仕方のない事でしょう。
生まれた双子は男女で、先に産まれた男の子をルーデウス。後に産まれた女の子をオーシノルと名付けられた。
双子の世話は大変でした。
ルーデウス坊ちゃまは赤子らしかねる目線を向けて来る。正直言って気味が悪い。
夜中に悪霊を追い払う儀式を行いましたが、全く効果がありませんでした。
逆にオーシノルお嬢様は全く普通の子でした。
ルーデウス坊ちゃまが気味が悪いのは確かですが、世話の半分以上をお嬢様に向けていればいいのは助かると思っていました。
が、双子の成長と共にその期待は裏切られる。
ルーデウス坊ちゃまは動ける様になるとどこにでも移動した。
文字通り何処へでも。唯一助かったと思うのは、家の外へは決して出ない事だったが、そもそも赤ん坊がドアを一人で開けられる事は無い。
外に出る時は奥様と共に十分注意もしていたので、双子が勝手に家の外に出る事は無いのです。
逆にオーシノルお嬢様はルーデウス坊ちゃまよりも数か月発達が遅れた。
まず、夜泣きはするものの中々声を発しない。
ルーデウス坊ちゃまとは違い、一日中寝転がったままなのも記憶に新しい。
旦那様と奥様はとても心配なさっておりましたが、私はそこまで不安には思っていなかった。
赤ん坊の成長速度には個人差がある。そう習っていたからだ。
そもそもルーデウス坊ちゃまは平均的な成長速度よりも早すぎて、オーシノルお嬢様は平均よりも少し遅い程度。
各々だけを見ればそこまで心配する必要は無いが、ルーデウス坊ちゃまとオーシノルお嬢様を比べたら差は歴然と映る。
実の親である旦那様と奥様がたいそう心配するのも理解できる。
なので私くらいは冷静に見守ろうではないか。
そう毎日見守った。
ルーデウス坊ちゃまから遅れる事数か月後、オーシノルお嬢様が遂に自力で動ける様になりました。
旦那様と奥様はそれはもう喜んだ。
その日の食卓は豪華になるほど。
ルーデウス坊ちゃまも双子の妹が動ける様になったのが嬉しいのか、オーシノルお嬢様の頭を撫でたり家を案内するかのようにハイハイで先導するようになった。
微笑ましい限りだが、私は少しだけ気味が悪いと思うようになりました。
1年が経ちルーデウス坊ちゃまの行動がパターン化されてもオーシノルお嬢様は変わらなかった。
運動のつもりか偶に動いては直ぐに辞める。
動いて、休む。
動きはするがルーデウス坊ちゃまよりはやんちゃではなく、必ずと言っていいほど私か奥様の目の届く範囲から外れない。
こちらとしては有り難い事ですが、赤ん坊にしては少々可笑しい行動だ。
お世話を行う人間の苦労を分かっているかのようにしか考えられない。
しかし、ルーデウス坊ちゃまは文字を理解しているかの如く本を漁る前例がある為、一概にも可笑しいは言えない。
傍目には真逆に見えるこの双子ですが、二人共賢さの鱗片を現していたと数年経った頃には思えてきました。
更に1年が経過した。
ルーデウス坊ちゃまから数か月遅れでオーシノルお嬢様も言葉を発する事が出来る様になりました。
早めに言葉を発し始めたルーデウス坊ちゃまは家にある数少ない本を常に持ち歩き、文字の勉強を一人で行っています。
逆にオーシノルお嬢様は旦那様に読み聞かせを強請っている場面が多く、大人を頼りつつ文字を覚えるつもりなのか。
それとも、単に甘えたいだけなのか。
ともあれ危ない事はしないし、自ら文字を覚えようとする姿勢は褒めるべき事だ。
ルーデウス坊ちゃまが自力で魔法を使ったらしい。
まだ5歳にも届かない年なのに凄い事だ。
私は魔法についてそこまで詳しくないですが、治癒術師である奥様が「天才天才」と連呼していたので、親のひいき目を無しで見ても十分に才能があるのだろう。
旦那様は剣士に育てたかったようですが、私の一言で両方とも学ばせる事になりました。
家庭教師が家に来るまでの間、オーシノルお嬢様とルーデウス坊ちゃまは仲良さげに遊んでいた。
オーシノルお嬢様は魔法がたいそう気に入ったらしく、ルーデウス坊ちゃまに強請って簡単な物をみせてもらっているのをよく見かける。
奥様から許可を得たとは言え、大人が見てない場所で何かが起きたらすまない。
監督役として私が見守る事になった。
微笑ましい双子の馴れ合い。
オーシノルお嬢様がルーデウス坊ちゃまに触発されたのか「私も魔法使う!」と言い出した。
ルーデウス坊ちゃまの真似をしてポーズを取っているが、中々魔法は発動できない。
この年で魔法を扱えるルーデウス坊ちゃまが以上なので、オーシノルお嬢様には落胆しないでコツコツと頑張って欲しいと思います。
オーシノルお嬢様の魔法への熱はそれはもう凄まじいものでした。
次の日には奥様に「魔法を習いたい」と相談してしまう程に。
奥様も女の子であるオーシノルお嬢様には魔法を習わすつもりだったらしく、簡単に了承しました。
旦那様……頑張って稼いでください。
チラッと金銭面から私が解雇されるのは?と思いましたが、奥様は「そんなことしないわ」と言って下さったのでホッとした。
家庭教師は魔族の少女でした。
髪の毛の色が緑色でしたので一瞬身構えましたが、額に宝石の様な物はありませんでしたのでスペルド族では無かったようです。
落ち着いて観察すれば、光の当たり具合で緑色に見えるだけで本来は青色でした。
これは失礼な勘違いをしてしまいました。
ルーデウス坊ちゃまは初日から家庭教師のロキシー先生の度肝を抜き、次の日から色々と新しい技術を学んでいました。
対してオーシノルお嬢様は文字のお勉強からです。
読み聞かせや自ら本を開いて勉強していても、流石に魔法を勉強するまでには至っていなかった模様。
その日から毎日頑張るお嬢様を奥様と一緒に眺めるのが日刊になりつつありました。
微笑ましいですね。
ロキシー先生が家に到着して数日後。
恐ろしく早い事にオーシノルお嬢様はもう文字を覚えてしまった。
既に下地が出来上がっていたとは言え、たった数日でマスター出来る様なものではない。
現に冒険者に限らず平民の中では一生文字を読めない者もいるくらいだ。
覚える機会が無いと言えばそこまでですが、自ら学んで覚えようとする姿勢は素晴らしいものです。
ルーデウス坊ちゃまには届かないにしても、オーシノルお嬢様も天才と呼べる才能を持っていると私は思った。
ルーデウス坊ちゃまとは違い、可笑しな行動をしないのも私的にポイントが高い。
文字を覚えた次の日からオーシノルお嬢様の魔術への道のりが始まった。
魔術は専門外ですが、詠唱を唱えるだけで発動するだけの簡単な物では無い事は知っています。
ルーデウス坊ちゃまは唱えただけで発動出来たからこその天才。
オーシノルお嬢様は覚えたての文字を一生懸命読み解き、拙い声を上げて魔術を唱える。
平均的な話だと、初級を習得するまで数か月から数年かかると耳にした事があるので、ロキシー先生の任期が終わるまでに習得出来たら良い方だろうと私は勝手ながら思っていた。
奥様は中級魔術も少し習得して欲しいと仰っていましたが、天才のルーデウス坊ちゃまの双子の妹であり、自身も才能があるオーシノルお嬢様なら習得出来るかもしれない。
初めの頃はそう考えていました。
数日後にオーシノルお嬢様が魔術を発動する事が出来るようになり、コントロールを学び始めたと夕食の席で嬉しそうに述べた時は奥様共々卒倒しそうになりましたが、ルーデウス坊ちゃまと言う異例な天才がいなければ危なかったかもしれません。
とは言え、3歳児が数日で文字を覚えて魔術の足掛かりにまで辿り着いたのは純粋に凄いと思います。
オーシノルお嬢様は「その後の調整が難しい」と嘆いていましたが、私は時間の問題だと思いました。
ルーデウス坊ちゃまは毎日家で魔術の練習ばかりしています。
教育本では学べない事を学んでいるのが楽しいのか、日々庭や部屋で魔術を扱っているのを目撃する。
一日中家で魔術の鍛錬を繰り返し行う姿は、子供らしくなく少しだけ怖いと思ってしまう。
対してオーシノルお嬢様はロキシー先生と一緒に村へ出かけて来る。
魔術の補修やそれ以外にも色々な事を教えて貰っているらしい。
二人共学んでいるには変わりないですが、真逆のアプローチなのが双子らしいと言えばらしいです。
ロキシー先生と外で何をしているのか気になりますが、本人が秘密にしているのでわざわざ聞き出す事も無いでしょう。
そういえば、ルーデウス坊ちゃまの剣術の鍛錬が始まりましたが、そこでひと悶着起きました。
オーシノルお嬢様が「私も剣を使いたい」と言いだしたのです。
元々男の子なら剣術を習わせる予定で、ルーデウス坊ちゃまは魔術の才能があったので両方とも習う事になりましたが、オーシノルお嬢様は魔術だけの予定。
これに旦那様も奥様も困った様子でした。
結局、旦那様に言いくるめられたオーシノルお嬢様が折れる形で話は終わった。
かのように思えた。
数週間後が経った頃、お嬢様が相談を投げかけて来た。
「ねぇリーリャ、私も剣術を習いたいんだけど、どうやったらお父さんは頷いてくれるかな?」
ある日の昼下がり。
旦那様は警備隊のお仕事に向かい、奥様も診療所に向かった後です。
家にはルーデウス坊ちゃまが部屋で魔術の鍛錬を個人的に行っているだけ。
ロキシー先生も既に村へと向かった後の様です。オーシノルお嬢様は本日は別行動のご様子。
「お嬢様はまだ諦めていなかったのですね」
「うん。やっぱりルーデウスだけズルいよ。私もやってみたいの。一度やってみて才能がからっきしだったら諦めるけど、一度もしないままで終わるのは許せないの」
「そうですか……。どういたしましょうか」
旦那様の気持ちも分からなくもない。
お嬢様の容姿は贔屓目に見ないでも非常に整っている。
旦那様は物凄い整っているとは言えないが、それでも貴族の血筋が残している最低限の顔立ち、奥様は言わずもがなミリスの大貴族らしくとてもお綺麗だ。
そんな二人の容姿を双子も継いでいる。
双子だが男女の性別の差があるのか、丸っきしそっくりとまでは揃っていないが、それでも単なる兄妹とは言い切れないくらい似ている。
大きな違いと言えば、伸ばしている髪の毛の長さくらいだろうか?
将来は奥様に似て大変美しく育つこと間違いない。
できる限り自由に育てる方針とは言え、この様な可愛い娘に剣を持たせたくない旦那様の気持ちも分かるというもの。
私は悩んだ。
「…………」
「……ダメ?」
「空き時間で宜しければ私が軽くお教えする事も出来ますが……」
「本当!? やったー。何時から? 明日だったら大丈夫??」
気が付いたら了承していた。
……なんてことだ。
理性があったのは断るべきか、それとも何か打開策が無いか考えているまで。
オーシノルお嬢様がこてんと首を傾げておねだりされると、反射的に断る選択肢を消していた。
この可愛い子の願いを断れるはず人はよっぽどのひねくれものなのでしょう。
しかし、喜びを全身で表現しているオーシノルお嬢様を目にすると、この後の苦労なんてどうだって良い。
「はい、出来れば明日からお願いします。それと、奥様には伝えさせていただきます」
「えーママに言っちゃうの?」
「勝手に行ったと知られれば、怒られるのは私ですから……。ですが、奥様でしたらきっと分かってくれるはずですよ」
「そう? 分かった! じゃあ私もお願いしてくる!!」
オーシノルお嬢様はそう言うと、元気よく奥様の元へと走って行った。
せっかちで好奇心旺盛。
パウロが親で間違いないと感じさせる。
その後、オーシノルお嬢様がたどたどしく奥様を説得しているのをほんの少し手伝うと、奥様から剣を習う事を了承する事に成功。
その夜に奥様から「どうするつもり?」と質問されたが「軽く体力作りを行うだけです。本格的なのは旦那様が頷いてからでないと」と私がオーシノルお嬢様に課そうと予定していた事をそのまま話した。
奥様も護身くらいは出来る様になっていた方が良いとお考えだったようで、あっさりと承諾を頂いた。
奥様自身も冒険者で、魔法だけ使えても役に立たないと身をもって経験していたらしい。
ルーデウス坊ちゃまほどでは無くとも、魔法の才能が最低限はあるのだから剣術の才能が無くたって構わない。
護身術まで行かなくても、ある程度動ける様になっていた方がこの世界では有利に動く。
そう考えて、軽い気持ちでオーシノルお嬢様の剣術を引き受けた私でした。
やるからにはスパルタで厳しめに。
中途半端な鍛錬は変な増長を生んでしまう為に敢えて。
と思ってったのだが、難なくとも行かずとも食らいつき、いよいよ剣を握ればかなり昔に辞めてしまった私にでも分かる才能があり、遠目で見るだけでもルーデウス坊ちゃまよりも剣の才能が眠っている事に気付くまで数か月。
この時の判断はきっと正しかった。
でなければオーシノルお嬢様は生きて戻る事が出来なかったのではないか?と、転移事件発生6年後オーシノルお嬢様が私達家族の下へ戻れた時に切実に思うのであった。
次回は1人辺りの内容を軽くしたい。