何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様)   作:カルデアの廃課金マスター

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いつもよりも短いですがキリが良かったので投げます。
1週間遅くなりましたが、1周年ありがとうございます。


14冊目

・シルフィエット視点

 

 ボクが初めて彼女を見たのはまだルディにも出会って居なかった頃だった。

 ルディに出会う前のボクは卑屈で自分に自信が全く持てないでいて、家の外に出て同じくらいの人に会うと何時も虐められてた。

 

 その日は偶々休みだったお母さんと一緒にお外を散歩していた。

 おかあさんと一緒なら虐めに合わないで済むけど、それでも何時誰が見ているか不安で一杯だった。

 一人だと家に引きこもってばかりなボクを心配して連れ出してくれたお母さんの好意を断れなくて、ほんの少しだけのつもりで村を歩いている最中。

 

 前から私と同じくらいの女の子が二人歩いてきた。

 緑の様な青色の髪の女の子と茶髪の女の子だ。

 二人は手をつないでいて大変仲がよろしい…。

 どっちかと言うと、お姉さんであろう青色の髪を持った魔術師風の女の子が、茶髪の女の子が迷子にならないように繋いでる風。

 ボクとお母さんと同じ。

 

 女の子とは言え二人共ボクの知らない人に変わりはない。

 お母さんの身体に隠れるようにして通り過ぎようとしたんだけど、ボクとお母さんに気づいた二人が声をかけてくる。

 

 

「こんにちは。この度グレイラット家の家庭教師としてやって来たロキシー・ミグルドです。短くない間この村に滞在すると思いますのでよろしくお願いします」

 

「まぁ! ご丁寧にありがとうございます」

 

 

 お母さんはそう言って頭を下げて自己紹介を返した。

 よく分からなかったけど、村の外から誰かの家にカテイキョウシとやらをしに来たらしい。

 

 私がお母さんの後ろで二人を観察していると、ロキシーと名乗った人がとなりの茶髪の女の子の背中を押した。

 

 

「ほら、挨拶出来ますよね?」

 

「はい先生ッ!! オーシノル・グレイラットですッ! よろしくお願いします」

 

「グレイラット……パウロさんの所の娘さんね。よろしくねー」

 

 

 彼女は元気よく声を出して挨拶をしてきた。

 お母さんはどの家の子なのか分かったらしく、彼女の頭をくしゃくしゃに撫でていた。

 ボクと同じくらいの年かな?

 それなのにボクとは大違いだ。

 

 その後、ボクはお母さんに促されて自己紹介をしたが、緊張と不安からハキハキと言えなかった。

 これがルディの妹との初対面。

 この頃から彼女は元気だった。

 

 

 自己紹介をお互いにしたものの、ボクが家からあまり出ないせいで会う事は無かった。

 お母さんやお父さんの話だと村の子と遊んでいるみたいだった。

 やっぱりボクとは正反対の子で、少しだけ羨ましかった。

 

 

 次に出会ったのは2年後、虐められてた所をルディに助けられて遊ぶようになった頃だった。

 その日は急に雨が降ってルディの家に非難したのだ。

 そこでルディに無理矢理服を脱がされて泣いていたボクを慰めてくれたのが彼女だった。

 

 

 

 そこからまた数日空いた。

 少しの間ルディとギクシャクしていたけど仲直りした翌日。

 

 

「ほへー、貴女が噂のシルフ君ちゃんね……。あ、この前は自己紹介できなくてごめんね?」

 

 開口一番、彼女はそう言って自己紹介を始めた。

 数年前に一度会っているのを忘れてるっぽかった。

 少しショックだ。

 ボクは覚えていたのに……でも、たった一言言葉を交わしただけの繋がりだったのだからしょうがないのかな?

 

 

 そこから彼女は偶にルディに着いて来るようになった。

 ボクとルディが魔法の練習をしているのを興味深そうに眺めたり、時には割って入って一緒に練習したりする。

 彼女もルディと同じお師匠さまから魔法を習っていたらしいけど、ルディと違って詠唱を唱えないと魔法を扱えないらしい。

 正直に言って、ルディから魔法を習っているボクの方が魔法の扱いは上だった。

 それほどまでにルディの説明は分かりやすかったけど、ルディ曰く「オシィよりもシルフィの方が才能があっただけだよ。オシィだって同年代に比べては良くやっているって先生や母様が言っていたんだ」とのこと。

 

 ボクにも勝るものがあるんだ、と思うと同時に彼女にも誇れるはずの才能があった。

 剣術だ。

 偶にルディと一緒に来る時に絶対に手に持っているのは木剣。

 魔法の練習に飽きた時は必ずと言っていいほど素振りをしていた。

 ルディが言うには、ルディよりも遅く習い始めたにもかかわらずルディよりも強く、ルディよりも才能があるらしい。

 女の子なのに凄いと思う。

 一度だけ彼女に剣を振る理由を聞いてみた事がある。

 

 

 

「ねえ、どうして剣術をやろうと思ったの?」

 

「ハッ、ヤっ! 剣を習い始めた理由かー」

 

 

 ボクが素振りしていた彼女に問いかけると、彼女は木剣を置いて柄に顎を乗せて悩み始めた。

 そんなに考えるものなのかな?

 

 

「ルーデウスがだけが剣を習えるってのが羨ましかったっていうのや魔法がダメダメなら逆に剣ならって気持ちもあるし……」

 

「オシィは勢いで生きているからね。気にする必要は無いと思うよシルフィ。後オシィ、行儀が悪いし危ないのでやめなさい」

 

「失礼な! それじゃあ私は考え無しの猛突進猪だと言いたいの? よし分かった。明日の打ち合いでは覚えておきなさいよ」

 

「それで!? 他には理由は無いの?」

 

 

 仲が良いのか悪いのか、ルディの言葉に彼女は声を荒げて否定した。

 そんな直ぐに手を出す様な姿勢が猛突進と言うわれる印象を与えると思うんだけど……。

 喧嘩はダメなのでボクは急いで言いかけてた言葉の続きを促す。

 

 

「むぅ……。えーっと、剣を振るうのは楽しいし、剣を持っていると懐かしい気持ちになるんだよね。何だろう…こう、背中に衝撃を受けたようなビビッて感覚」

 

「何ですかそれ。でも、オシィに才能があるのは本当だと思うよ」

 

 

 どうやら彼女にも理由は分からないらしい。

 ボクと違って助けられたから憧れたなんて理由じゃないのは確かだ。

 

 そうやって日々は過ぎて行った。

 ルディがロアの街に家庭教師にお金稼ぎに行った後も関係は変わらなかった。

 友達の妹、兄の友達。

 とボクは思っているけど、向こうはどうだったんだろうか?

 

 ルディが家庭教師に行ってからボクはより一層の努力を重ねた。

 将来ルディの隣には胸張って立てるようになる為だ。

 その一環でルディの家にお邪魔して色々と学ばせてもらう様になった。

 そうすると数日おきだったのが毎日会う事になる。

 自然と会話が弾むのも必然だったがある日、彼女がボクに頼み事をして来た。

 

 

「魔法を教えて欲しい? えーっとオシィも魔法使えるんだったよね? 何で?」

 

「もっと使える様になりたいの。一人でも鍛錬してみたけど、中級魔法で行き詰っているから……。ほら、ルーデウスに教わったシルフィ君なら何か状況を打破できるんじゃないかって思ったの」

 

 そう上手く行くかな?と思ったけど、物は試しでやってみる事になった。

 ボクも一人だとつまらないし、こうやって同い年の子と切磋琢磨するのに憧れていた。

 ルディはほら、師匠みたいな感じだし、そもそもボクがルディに教えてあげる事なんて何もないはずだ。

 対して妹であるオーシノルは剣の腕はルディでも勝てないくらい強いらしいが、魔法ではルディに劣る。

 色んな事が出来るルディと違って出来る事と出来ない事がはっきりしているオーシノルは親近感が湧くのかもしれない。

 

 その後、ルディに教わった魔法の知識を自分なりに噛み砕いて説明してみたけど、あまり理解出来ていない様子。

 うーん、理解はしてるっぽいけど、結果に繋がらないって感じ?

 ルディならもっと詳しく分かるかもしれないけど、今は会えないからしょうがない。

 魔法はあまり出来ない分、彼女には剣の才能があるとボクは思う。

 一度、パウロさんと鍛錬しているのを見学させてもらったけど、ボクでは絶対に動けない速度で動いて剣を振るっていた。

 どうやったらあんなにも動けるのだろう? 日々の努力なのかな?

 

 

 

 関係は進展を見せないまま終わった。

 ルディと彼女が10歳を迎えた少し後、色んな人の人生を滅茶苦茶にした転移事件が起きた。

 ボクはアスラ王国の王城の上空に転移してしまい、成り行きでアリエル様の護衛として雇用されることになり、アリエル様とルークと共に暗殺者を退けてラノア魔法大学へ留学し、ルディと再会して結婚。

 

 色々あってようやく一息付けた頃、パウロさんから手紙が届いた。

 内容はルディの妹であるノルンちゃんとアイシャちゃんをルディの下に送ったと言う事だった。

 二人共面識はある。小さかったから覚えていないかもしれないけど覚えられているかもしれない。

 その日の夜、ルディと彼女の話題になった。

 

「そう言えば、オシィはノルンちゃんとアイシャちゃんの事沢山可愛がってなぁ。ルディは10歳の誕生日に会ってたんだよね?」

 

「うん、急でびっくりした。パーティーの次の日は何故かエリスと打ち合っていたけど、かなり剣の腕を上げてたなぁ。今だと剣聖くらいあるんじゃないか?」

 

「どうだろう。チラッと聞いた話しだと色々と伸び悩んでるっぽかったし……。でも、転移先で上手くやれてるなら冒険者として活躍してるかもね」

 

「そうだけどいいけど……。でも、冒険者として上手く行ってるならボク達かパウロさんに連絡をしないのは何故だろう」

 

「確かに……。…………」

 

 ルディは少し考えると悩みを振り切る様に言った。

 

「きっと大丈夫だ。エリナリーゼさんの話だとベガリット大陸で生きているらしいし、父様だって向かっているなら安心出来る」

 

「……そうだね。剣の腕もあるし、魔法だって初級なら問題なく扱えるし、何よりも度胸があるから図太く生きているはずだね」

 

 大丈夫。大丈夫。

 ボクとルディは何度もそう口にする。

 まるでそう言っていなければ不安で押し潰されるかのような感じだった。

 

 

 そして、その悪い予感はノルンちゃんとアイシャちゃんがシャリーアにやって来て、数か月経った頃にやってきた手紙で当たることになる。

 

 




本当は2人纏めたかったけど、思った以上に長くなったのでシルフィだけに。
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