何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様)   作:カルデアの廃課金マスター

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急に開催された箱イベと奏章Iで時間を取られたので初投稿です。1700箱気持ちえー。


15冊目

・ノルン視点

 

 私にはお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるらしい。

 そのことを自覚したのはお母さんと離れ離れになって大分経ってから。

 きっかけはお父さんが毎晩寝る前に話してくれる家族の話。

 

 お父さんの話では兄は魔法の天才でそれ以外の事もそつなくこなせるらしい。

 幼い頃の私は分からなかったが、ある程度分別が付くようになった頃にはそんな完璧人なんて居ない事に気が付いた。

 お父さんは誇張して話しているのだと何となく思っていた。

 お父さんに嫌われるのが嫌だったから目に見えて不機嫌になる様な事にはならなかった……はずだけど、記憶にない兄について語られても正直面白くなかった。

 

 兄の事を覚えていないのは、街へお金を稼ぐために家庭教師をしに行ったのだとお父さんは言っていた。

 大人でもないのに家庭教師とやらでお金を稼げる程度には優秀な兄ならしい。

 でも、そんな記憶にない兄なんかどうだって良い。

 

 殆ど……朧気ですらない兄よりも鮮明に残っているのは兄の双子の妹とだというお姉ちゃんだった。

 同じ日に産まれた私の妹、妾であるリーリャから産まれたアイシャ。

 私よりも出来が良い妹は何でも私よりも早く習得して褒められる。

 勿論お父さんもお母さんも私にも「頑張れ」と励ましてくれるし、出来た時は「頑張ったな」と褒めてくれる。

 でも、なんだってアイシャの方が早く出来て早く褒められる。

 それが私はとても嫌だった。

 

 しかし、アイシャよりも先ず私を優先してくれたのがお姉ちゃんだった。

 アイシャよりも私を贔屓してくれた。

 とは言っても、アイシャを邪険に扱っていた訳じゃない。

 

 昔の私には全く分からなかったけど、お姉ちゃんは努力家だ。

 毎日剣を振るっていたとお父さんは言っていた。

 剣だけじゃなくて魔法だって平均的な魔術師に劣らない程度には扱えるとも言っていた。

 お姉ちゃんは凄い人だ。

 毎日鍛錬で忙しいはずなのに、毎日私に構ってくれた。

 

 そんなお姉ちゃんはベガリット大陸の何処かに居ると言う。

 お父さんが探しても見つからなかったのは、魔大陸の次に過酷な大陸だったかららしい。

 その朗報を持ってきたのはお姉ちゃんと兄の魔法の先生だと言う人だった。

 お母さんもベガリット大陸に居ると言う。

 となると捜索の拠点をミリス大陸からベガリット大陸に移さなくてはならなくなった。

 ベガリット大陸はミリス大陸に比べて遥かに危険な大陸だから、私とアイシャは兄が住んでいると言うシャーリアに向かわなくてはならなくなった。

 当初はとても嫌だった。

 記憶にも無く誰もが手放しに褒め称えるいけ好かない兄の下に、大好きなお父さんと離れて向かわなければならない事に私は大反対した。

 記憶に無い兄の下にと言うだけでも良い感じがしないのに、

 結局、ルイジェルドさんが護衛を引き受ける事で私は留飲を下げた。

 

 

 道中の事。

 アイシャが口出しをして変なことになったが、結果的にかなり早いペースでシャーリアへと向かう事が出来ている。

 ルイジェルドさんの迷惑になるから変な事をするのは辞めたらいいのにと思わずには居られなかったけど、ルイジェルドさんは快くアイシャの提案を受け入れて結果的に通常よりも早いペースで進んでいるのは気に食わない。

 分かってはいる。

 私一人が我儘言っている状況ではない事くらい。

 分かっていても感情を抑えることが出来ない。

 ダメだ、ダメダメ。

 

 お姉ちゃんならどうしただろう?

 

 ふと思ったのはお姉ちゃんの事。

 思いついたら即行動していたらしいお姉ちゃんなら、うじうじ悩んでいないで行動に移していたはずだ。

 そんな事を考えていると、ルイジェルドさんが心配して声をかけてくれた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「? えーっと大丈夫って何がですか?」

 

「何か思い詰めている顔をしている気がしてな……。不安があるなら言葉にしてくれ。オレに出来る事なら何だって排除しよう」

 

 久しぶりに商隊を経由しないで行動している最中。

 夕食中にルイジェルドさんがそう言ってくれた。

 怖い表情をしている時が多いけど、本当は心優しい人だって私は知っている。

 今も、沈んでいた私を気遣っての発言なのだろう。

 

「いや、その……。ルイジェルドさんに言う程の事じゃ……」

 

「言ってみろ。解決にならなくても吐き出すだけでも少しは楽になるかもしれん」

 

「でも……」

 

 ルイジェルドさんに迷惑をかけたくない。

 ただでさえ頼りきっているのに、これ以上どう困らせればいいのだろう。

 ルイジェルドさんはそう言うけど、本当にこの人に言っても意味のある事なのだろうか?

 悩む、悩む、悩む。

 

 黙ったまま、言葉に出すのを控えていると、私の気持ち何て一つも理解してくれない、出来ない妹のアイシャが怒鳴ってきた。

 

「あぁもうッ! ルイジェルドさんがこう言っているんだから、ノルン姉はそれに甘えたらいいんだよ。むしろ言わない方が気になって仕方がないから邪魔になるんだよ」

 

 アイシャに言われてハッとした。

 確かにそうだ。

 アイシャの言う通り、私がうじうじしてるだけで迷惑をかけてしまうのなら、ちゃんと吐き出した方がいいのかもしれない。

 うん、ルイジェルドさんもそれを望んでいるのならそうするべき、なはずだ。

 

「じゃ、じゃあ聞いてくれますか?」

 

「あぁ。不満があるなら遠慮なく言ってくれ」

 

 不満じゃないですけど…と私は言いながら考えている事をぶちまけた。

 お姉ちゃんが心配だ。お姉ちゃんならこの状況でどうしただろうか?

 ただそれだけのことなのに言葉にするとなると物凄く時間がかかった。

 アイシャは急かしてきたけど、ルイジェルドさんは最後まで何も言わずにしっかりと聞いてくれた。

 

 最後まで話した後、ルイジェルドさんは「これはルーデウスから聞いた話だが…」と語り始めた。

 

 

「ルーデウスが言うにはオーシノルは器用貧乏だったらしい。魔法を学べば同じ年頃の子よりも多くを吸収し、努力で実を結ぶ。何度も何度も諦めずに挑戦して成功させる。ルーデウスが知ってるだけでも、全ての属性の初級を習得し一部属性では中級すら操れると聞いている。ルーデウスに比べるとそれだけかと思うかもしれんが、魔法を扱えぬ者又は魔法に身近な者にとっては十分に才能ある者だ」

 

「私も、ミリスの学校でも習いました。でも、中々上手く出来ませんでした……。アイシャは出来る様になったみたいだけど……」

 

「あのねッ!! 精々初級が何とか発動するだけだよ。そりゃあ、あたし達は学校でちょろっと習っただけで、お兄ちゃんとお姉ちゃんは水聖級魔術師から直々に習ったって言うアドバンテージがあるけど? それでも中級魔法っていうのは才能が無ければ扱えないの」

 

 学校で習ったでしょ…と呆れながら行って来るアイシャに私は少しだけムスっとした。

 確かに学校で先生がそんな事を言っていた様な気がする。

 でも、ミリスに居た時の私に授業の内容を何時までも覚えていられる様な余裕は無かった。

 お母さんやお姉ちゃんが無事でいてくれますようにと、毎日祈っていた。

 ベガリット大陸に居ると知る前だったらから、今よりもずっとずーっと気が気ではなかった。

 私はアイシャみたいに頭が良く無いし、実技だって怒られてばかり。

 何でも出来るアイシャに言われたくない。

 

 そんなアイシャは私の気持ち何て知らないとばかりに続ける。

 

「しかも! お兄ちゃんと同じで全属性の魔法を扱えるんだよ。これがどれだけ凄い事か……ルイジェルドさんなら分かりますか?」

 

「すまんが魔法はさっぱりだ。しかし、オーシノルは魔法よりも剣の方が得意だと聞いたぞ。俺が出会ったばかりのエリスに食らいついていける程であるとか言っていたな。歳の差を考えれば十分な方だろう」

 

 もっとも、ルーデウスから聞いた話ばかりで実際に剣筋を見ていないので正確には分からんが……、とルイジェルドさんは言った。

 ルイジェルドさん程の人がそう言うのなら、お姉ちゃんは無事で居てくれているはずなのだろう。

 エリスという人が誰だか分からないけど……ミリスで兄とあった時に居た赤毛の女の人だろうか……年上にも張り合えるお姉ちゃんはやっぱり凄い。

 お父さんだって毎日のように褒めていた。

 

「ノルン姉、これで分かったでしょう。」

 

「……分かったって何が?」

 

「魔法も剣術も一定以上の評価を得ているお姉ちゃんが無事じゃないはずないじゃん。ベガリット大陸に居るってロキシーさんのお陰で分かったんだから、後はお父さん達に任せたら良いの。きっと奥さ……ゼニスママと一緒に居るよ。ベガリット大陸から動けないのにも何かしらの事情があるだと思う。あたしとお母さんみたいに何処かに捕まっている……無し無し!!」

 

「不安になるような事言わないでよ……」

 

「…ごめん」

 

 

 アイシャのせいで立ち直りかけた気分が落ち込んでしまう。

 頭は良いのに人の気持ちを理解出来ないというか……。

 アイシャだって私に敵意を持って接して来ている訳じゃないのは分かっている。

 でも、やっぱり仲良くするのは難しそう。

 仲良くしたくない訳じゃない。

 お母さんは違っても同じお父さんの子供だもん。

 

 気まずい空気になっていると、ルイジェルドさんが私とアイシャの頭を撫でてくれた。

 

 

「心配するなとは言わん。子供が母親と姉が見つからなくて心配するのは当然の事だ。だがな、少しは父親の事も信頼してあげると良い。万が一にはルーデウスだって居る。あいつほどの魔術師が居て苦戦する事は無いだろう」

 

 

 だから心配するな。

 ルイジェルドさんはそう言って私とアイシャを毛布に包ませてくれた。

 先ほどまでの不安は完全ではないけど、気にならない程度には小さくなった……と思う。

 少なくとも、今は安心して眠れるほどには。

 ルイジェルドさんは見張りの為にも殆ど寝ないのだろう。

 ルイジェルドさんにも休んで貰いたいけど、私如きがルイジェルドさんの代わりに見張りをする事が出来なくて、むしろ何かをしようと言い出した方が迷惑になる。

 私は黙って毛布に包まると、直ぐに寝ることが出来たのだった。

 

 

 

 

 

・アイシャ視点

 あたしたち家族をバラバラにさせた……色んな人の人生を奪った歴史に刻まれるであろう災害が発生してから早5年が経った。

 当時のあたしは完璧に覚えているわけじゃないけど、それでも起こった事がある程度覚えてもいるし理解もしていた。

 白い光に包まれたと思ったらお母さんと一緒に知らない国の王宮にポツンと居たのだった。

 その後はお母さんが色々やって命の保証をされ、あたしとお母さんはお兄ちゃんとお姉ちゃんの魔術の師匠だと言うロキシー先生をおびき寄せる餌にされた。

 城から出られない事以外はそこまで拘束されない生活が数年続き、私とお母さんを捕らえた王子の痺れがいよいよ切れ始めた頃、私は城を抜け出してお兄ちゃんに出会った。

 お兄ちゃんはお母さんの言った通り天才的な魔術師で、頼ったら直ぐに問題を解決してくれた。

 そこから私はお兄ちゃんを尊敬するようになった。お母さんの言った通り、この人に仕えよう。一生かはまだ分からないけど、出来るだけ長くだ。

 

 お兄ちゃんについてはお母さんが小さな時に言っていた反感、そして助けて欲しい時に助けてくれたという点から今では物凄く大好きだ。

 お姉ちゃんについてはよく分からない。

 記憶はある。私とノルン姉を可愛がってはくれていた。

 でも、頻度で言えばあたしよりもノルン姉の方が多かった……そう私は思う。

 贔屓だ。そう思った事がある。

 王城でお母さんと捉えられていた時、出来心で聞いたことがあった。

 

 

「ねぇお母さん。今になって気になったんだけど、オーシィ姉って私よりもノルン姉の方を贔屓?優先?してた風があるでしょ? それって何でなの?」

 

「……確かにそうですが、お嬢様の前で言ってはなりませんよ」

 

「分かってるって。で、どうして? 理由がないとは思えないの」

 

「ノルンお嬢様と貴女は二人共旦那様の血を引いているとは言え、ノルンお嬢様はゼニス様の血を引いています。つまり片親と両親。どっちを優先するか明白だと思いますよ」

 

「むぅ。確かに正論だけどさ……。それって差別じゃないの?」

 

「身分が違います。我慢しなさい」

 

「でも、お兄ちゃんはそんなことしないと思うよ」

 

「ルーデウス様は心の広い方ですから。血に寄る優劣など付けないでしょう。もっとも、それはオシィお嬢様も同じです。お嬢様の場合、ノルンお嬢様に自分の境遇を重ねてみているからアイシャよりも親身になっているのでしょう」

 

 

 お母さんに言われてもピンと来なかった。

 私とノルン姉の関係をお姉ちゃんは重ねてみている?

 ……確かにお兄ちゃんとお姉ちゃんは双子で、私とノルン姉も異母姉妹で同じ日の1時間違いに産まれたらしいから実質双子のようなものだ。

 確かに兄妹揃って双子って考えたら少しは共感を得るのにも理解できた。

 でも、それじゃあ同じ妹であるアタシじゃない?

 

 

「アイシャには頼りのある姉に見えるかもしれないけれど、オーシノルお嬢様はお嬢様で苦労なされているの。言葉を覚えるのがルーデウス様よりも遅い事に嫉妬したり、魔法だってルーデウス様が簡単にこなしているのを見て沢山練習されたり、ルーデウス様だけ剣術を教えて貰っているのが我慢ならず、私が簡単な事を教える羽目になったりと……。思えば、オーシノルお嬢様にとってルーデウス様は目の上のたん瘤だったのでしょうね」

 

「だから、アタシの方が出来るから出来ないノルン姉を重ねて見ているって事? アタシからしたらオシィ姉も十分凄い人何だけどなぁ」

 

 毎朝パパと剣の稽古をやって、朝食を食べてから家の外で魔法の練習をして、更に剣を降っていると言う。ゼニスママが「もう少し女の子らしくお淑やかに育ってほしかったわ」と言っていたのを覚えている。

 今の私と同じくらいの年からそんな厳しい鍛錬を毎日行っているオシィ姉には脱帽する。

 剣術だってお兄ちゃんよりも出来るらしく、同年代の中では抜きん出て強い……とお父うさんは何時も言っていた。

 それなのに、魔法だって平均的な魔術師と遜色ない中級魔法を複数の属性で扱える。

 どう考えたってオシィ姉はお兄ちゃんと並び立つ凄い人だ。お兄ちゃんの功績がお母さんのデタラメじゃ無ければの話だけど……。

 

 この時の私はオシィ姉の事を勘違いしていた。

 子供の私にはオシィ姉はとても大人に見えて、お兄ちゃんの次に尊敬出来る人だった。

 でもそれは過大評価。オシィ姉だって普通の人間で、お兄ちゃんと同じように悩んで努力して、それでも届かなくて、意地汚く生きて、ボロボロになりながらも生き延びていた。

 




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