何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様)   作:カルデアの廃課金マスター

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FGO9周年前に投稿したかった……。水着エレちゃんは宝具2で撤退してシエル先輩に備えます。

前回に引き続きルーデウス視点。次回はちゃんと日記形式に戻ります。


23冊目

・ルーデウス視点

 

 

「はぁ……」

 

「どうされました師匠? 再びベガリット大陸から戻られて以降、元気が無い様に見えますが」

 

「あ、あぁ。ちょっとな」

 

 

 気づかない内に漏れ出ていた溜息を聞いたザノバが俺の心配をしてくれていた。

 ダメだなぁ……。

 悩みの種を言おうか言わまいか、口を瞑んでいるとザノバが頼ってくれと頼みこんで来る。

 

 

「吐き出すだけでも幾らかは気が晴れるかもしれません。むろん、プライベートな内容でしたらこのザノバ、死んでも口にしないとお約束至りますぞ」

 

「……そうだな。双子の妹が見つかったってのは話しただろ?」

 

「はい、師匠までとは言わずも全ての属性を最低でも初級、複数の中級魔術も習得している才ある方でありながら三流派の剣術を全て中級以上で修めている人だと伺っております。……もしや、妹君の身に何か?」

 

「あ……体の方は疲労感は見えても見た感じの大怪我は無さそうだったんけど……。父様と母様に再会するのをとても楽しみにしていたらしく、現状を伝えると部屋に引き籠ってしまってな」

 

 

 もっと時間を置いて伝えるべきだったと後悔している。

 ゼニスは一緒に暮らしている以上隠し通せない。

 だけど、パウロは遠くに行ったとか、まだベガリット大陸で探索を続けているとかで上手く時間を稼いで……。

 いや、それじゃあダメだ。

 嘘をついていたら決定的な亀裂が入ってしまっていただろう。

 オシィの為だと後で説明しても、あの取り乱しようと俺への怒りを考えれば、一番やってはならない事だと、何となく感じる。

 だったら……と思考がループする。

 大丈夫だ、まだ壊れちゃいない。

 少し間を開けて、少しずつ時間と共に冷静になって話を聞いてくれるのを待とう。

 

 

「ふーむ。余に話してくださったお陰で少しは顔色が良くなりましたぞ。誰かに聞いてもらうだけでも幾らかはマシになるというもの。師匠にとって、余がそうでありたいと願っております」

 

「お前には随分と助けられてるよ。でも、助かった。こうやって話しかけてくれただけでも頭の中整理出来た気がする。オシィが出歩けるまで安定したら紹介するよ」

 

「えぇ、余も楽しみにしております」

 

 

 ザノバには助けて貰ってばかりだ。

 今度、お礼に何か送ってやろう。

 あいつが喜びそうな物と言えば……人形と、俺が渡せば何でも喜びそうだな。

 許可が降りたらだけど、練習手柄にオシィの人形を作って渡すのもいいかもしれない。

 そのためにも、早く仲直りして昔みたい話せる様にならなくちゃな。

 

 

 

 

 

 それから数日。

 オシィは未だに部屋からでてきてくれない。

 そろそろ俺も行動に移しても良い頃合いかもしれない。

 そう思った俺は久しぶりにオシィの部屋まで足を運んだ。

 

 部屋の前に立って深呼吸して心を落ち着かせる。

 また対話を拒否されたらどうしよう?

 なんて声をかければ良いんだろうか?

 そう言えば、ベガリット大陸から帰る道中もまともな会話はしていない。

 必要最低限の受け答えだけしか行わず、記憶の中では元気一杯だった面影も無い。

 シルフィとロキシーと結婚し、ノルンとアイシャも大きくなった。

 ゼニスが治るのかは分からないが、出来る限りの事はやってやる。

 リーリャだってお前の帰りを楽しみにしていた。

 パウロが死んだのは誰だって悲しいよ。

 お前だけが苦労してきたわけじゃない。

 むしろ、たった独りきりで良くここまで生き残ってくれたとも尊敬するくらいだ。

 ブエナ村で暮らしてた時は正反対だと思っていたが、俺もお前もパウロとゼニスの子だ。

 弱いところがあっても不思議ではない。

 でも、哀しい事は乗り越えて生きて行かなくちゃいけないと思う。

 罵倒も暴力だって受け入れるからさ、そこから出て来て家族に元気な姿を見せてくれないか?

 

 

「ルーデウスだけど……入るぞ?」

 

「…………」

 

 

 返事は無い。

 シルフィやロキシーなら同性もあって返事が無くても部屋に入る事もあるそうだが、生憎と俺は男だ。

 双子の妹だとか関係無しに、おおよそ思春期と言う時期(前世基準なら今も思春期かもしれないが)は殆ど離れて過ごしていた俺とオシィ。

 妹だと理性では認識しているが、久しぶりに再会した彼女はゼニスに似て美人に育っている。

 間違いを起こすつもりは全くこれっぽちも無いが、万が一と言う事もある上にシルフィとロキシーも妹と言えども勝手に部屋に入るのは良い顔をしないだろう。

 

 返事はまだ帰ってこない。

 寝ている可能性は……引きこもりになると睡眠時間なんて狂うから宛に出来ないな。

 出直すか?それともシルフィに中を確認してもらおうか?

 なんて考えていると、ようやく部屋の中から声が帰って来た。

 

 

「……要件は?」

 

「は、話をしないか? 部屋に閉じこもってばかりじゃ気持も沈んでばかりだろう?」

 

「ヤダ。話をしたいなら奥さんにでも話しかければ良いじゃん」

 

「俺はお前と話がしたいんだ」

 

「勝手にドアに向かって話してたら?」

 

 

 我が妹ながら当たりが強い。

 機嫌が悪い時のノルンのようだ。

 いや、オシィもノルンも同じパウロとゼニスから産まれたのだから当然か。

 それにしても俺にだけ当たりが強い理由はなんだ?

 俺以外はここまで酷くないはずだが……。

 

 

「向き合って話すからこそ意味があんだよ。会話の内容に意味が無くてもな」

 

「……私はそうは思わないけど」

 

「出てこいなんて今更言わないから、お前が何を考えているのかが知りたいんだ。俺たち兄妹だろ? もっと頼ってくれよ」

 

「頼ってくれ?」

 

 

 よし、この調子で会話を続けていれば……。

 

 

「ふざけないでよッ!! 私がどれだけ助けを求めたのか知らない癖に、全部終わってから言っても無駄だよッ。

 私がこれまでどんな目に遭って来たのか想像も出来てない癖して、そっちはシルフィと先生とよろしくやってたんでしょ?」

 

「……お、俺だってこれまで必死になって」

 

「必死になった結果がこれなのッ!? 拠点を構えてのうのうと生きてるし、シルフちゃんとは結婚して子供まで作ってるし。先生だってリーリャみたいに娶ってる。何処に飛ばされたか知らないけど、どうせお得意の魔法とよく分からない知識でこれまで困らない生活を続けて来たんでしょッ?」

 

「俺が転移させられたのは魔大陸だよ。しかも横には守らなきゃいけなかったエリスだって……」

 

「ふーん、シルフィの前にもあのお嬢様と仲良くしてたんだ。……言葉はどうしたの? 魔大陸だって、守る対象が居たなら何で無事に戻って来られたの?」

 

「それは……」

 

 

 それはルイジェルドが助けてくれたおかげだ。

 彼が居なかった魔大陸での活動時間はもっと長く険しい旅だっただろう。

 もしかしたら俺もエリスも死んでいたかもしれない。

 

 

「私は独りだった。一緒に悩みを解決してくれる人は居ない。言葉だって分かんないし、意味が分からない事も沢山あった。 習った魔法だって剣術だって生き残るのには助かったけど結局は大陸から出れなかった。 そっちだって辛かったならもっと早くパパとママを助けて欲しかった。私なんかよりもずっと強くて頭が良くて……天才なんでしょ!? もっと上手くやれたはずだッ!!」

 

「……ッ!?」

 

 

 思い出したのはミリシオンでの出来事。

 何年前だったか、まだエリスとルイジェルドと旅をしていて、ようやく人間の生活圏内まで戻って来てかなり道のりが楽になった頃。

 そうだ、あの街でパウロと初めて再会して喧嘩した時だ。

 あの時も似たような言葉で責め立てられた。

 フラッシュバックするあの時の光景。

 

 

「お、俺は……」

 

 

 冷や汗が出て来てそれ以上言葉を紡げない。

 確かにオシィの言い分だって分かる。

 知らない大陸に独りぼっちで何年も。

 おおよそ人の住む生活圏に居なかった事から、町での生活に馴染めなかったのか、それとも他の要因があるのか。

 何も話してくれないから、これほどまでに変貌する何があったのかも分からない。

 パウロと喧嘩した時の様に「俺だって」と言い返すのは簡単だ。

 でもそれじゃあ、あの時から何も成長してない事になる。

 

 

「ねぇ、黙っていないで何か言ったら……。パパが亡くなったのもママを優先したからだって整理したよ。ルーデウスが言っても無駄だったってね」

 

 

 急に何を言っているんだ?

 今の今まで感情に振り回されて叫ぶだけだったオシィが急に冷静な対応を見せて来る。

 それなら意地を張ってないで出てくれたら……。

 

 

「だけどね、私の知ってるルーデウスなら不可能を可能とするような天才なんだよ。何もしないでくすぶって立ち止まって閉じこもるだけだった私と違って、ルーデウスはお嬢様を守りながらアスラ王国まで帰ってこれた天才魔術師。私をもっと早く助け出せる事だって出来たはずだ、パパを守ってママを助け出せる事が出来るはずだ、そう思いたいの」

 

 

 つまりこうだ。

 オシィだって仕方が無かったと頭では分かっていても、感情では俺を許せないから意地張って部屋から出てこない。

 そう言いたい訳、だと思う。

 だったら俺に何が出来る?言える?

 

 

「一度向き合って話さないか? こうやって扉越しに話せるなら対面だって……」

 

「向き合ってどうするの? それに…………何でもない」

 

「言ってくれないと分からないよ……。俺なんかよりも遥かに辛い目に遭ってきたのは充分に理解した。その上で言葉にしなきゃ伝わらない事だってあるだろ」

 

「分かってるよッ!! 分かってるけど……ッ!! あぁぁ~~~もうあっち行ってッ!!」

 

 

 駄目だ。

 感情的すぎる。

 パウロの時だってノルンの時だって拒絶はあったが最終的にはどうにかなった。

 それで今回もどうにかなるだろうと楽観的に考えていたのは否定しない。

 だけど、対面すら出来ないのは想定外だ。

 シルフィが一度部屋に入れてもらえたから甘く考えていた。

 

 言葉は一応尽くした。

 それでも無駄なら……無理矢理にでも部屋に突入するか?

 ここまで進まないなら男女がどうこうとか言ってられない気もする。

 ましてや相手は妹だ。

 大丈夫、向き合って言葉を尽くせば……。

 

 

 ガチャリと音が聞こえ、ここで未来視の魔眼が反応した。

 未来の俺の手が吹き飛ぶ。

 ドアノブに伸ばそうとしていた手を引っ込めると、部屋の中から低い声が聞こえて来た。

 

 

「部屋に入って来たら斬るから……」

 

「斬るって……」

 

 

 って……言うか、完全に斬りに来てたぞ。

 魔眼の警告が無くあのまま部屋に押し入ろうとしていたら……考えるだけでも冷や汗が出て来る。

 片腕になったばかりだと言うのに、もう片方の手まで失いたくない。

 我が妹ながら殺意が高い……というのは無理があるか。

 今のは俺が悪い。

 仕方ない出直そう。

 

 

「俺達は何時でも待ってるからな……」

 

 

 伝わったのかは分からないが、俺はそう言うだけ言って階段を降りた。

 また明日も呼びかけて……いや、一応話は出来たんだ。

 オシィも冷静になる期間が必要と考えよう。

 幸いにも命の危険は無いから、大人しくしてあげるべきだろうか。

 食事も部屋の前に置いていれば食べてくれるみたいだし……。

 心配だけど、立ち直って前を向いて歩けるようになるまで、俺は黙っていよう。

 

 

 

 ホントにこれで良いのか?

 もっと上手いやり方があったのではないか?

 でもあれ以上どうしろってんだ?

 

 そんな事を思いながら1週間ほど経った。

 学校に行き、ザノバやクリフ先輩と雑談やお互いの研究について意見を交換し合い、偶に興味のある授業に出る。

 家ではシルフィとルーシーを見て癒されつつ、ロキシーとも関係は良好。

 

 あれからオシィとは一切話せていない。

 シルフィやロキシー、リーリャなんかはドア越しでも話せるみたいだが、やっぱり口数は少ない。

 家から出たふりをしたアイシャ曰く、誰も家に居ない時は部屋の中で何かしているらしい。

 部屋の中でごたごたと……一瞬、物を壊しているのでは?と思ったが、そこまで大きな物音では無かったようだ。

 全員が外に出ている静かな家だったからこそ分かる物音。

 気になるっちゃ気になるが、ここで俺が訪ねても前回の二の舞だ。

 少なくとも、死んだようにボケーッとベッドに寝たきりになっていないと分かっただけでも良しとしよう。

 

 

 とは言え、1週間も経てば冷静になって声を聞いてくれるようになっているはずだ。

 立ち直れとは言いにくいが、せめて部屋からは出て来てもらいたい。

 学校に行けとか、住んでるから家にお金を入れろなんて実家の親の様な事は言わず、単純に部屋に閉じこもるだけの毎日だけは辞めさせてやりたい。

 だが、もう一度俺が行っても似たような会話の繰り返しにならないか?

 そんな思いがあって、なかなか行動に移せずにいた。

 これ以上何と言えば?

 言葉は尽くしたし、アイツが引きこもるなら無理矢理具合には止めていない。

 時間が解決してくれる問題も、時間が経ち過ぎると引き返せなくなるのは俺がよく知っている。

 そうなる前に何とかしなくては……だが、俺が行ったところで、と負のループに陥ってる気がする。

 

 何か、何か小さくても良いからキッカケさえ起これば……そう思わずにはいられない時間が過ぎていく。

 そしてそのキッカケは突然に、予想外の人物が起こした。

 

 

 

 受動的な行動しか起こしてこなかったゼニスが、オシィが引き籠っている部屋に突撃し頬を引っ叩いた。

 言葉は無い。

 それでも、力強い母親の目でオシィを見る。

 

 

「……ママ。私、頑張ったんだよ?

 家族に会う為に、生き残る為に何だってやって来たの。頑張って生き残ってさえいればパパが助けに来てくれるって信じてさ。

 ルーデウスと先生が助けに来てくれた時は物凄く嬉しかった。やっとこの地獄から抜け出せるんだって。

 だけど、ブエナ村は消えちゃっていて、ママはよく分からない後遺症で意思疎通が出来なくて……パパとは会えずじまい。

 私とパパの最後の会話。今でも覚えてる。単純な考えでやっちゃいけない事しでかして、バカみたいな意地張って喧嘩別れ。

 次の日には謝ろうと思ったんだよ。でも、変な光に包まれて、気が付いたら空中に居て。そこから必死に生きた。

 全てはパパに謝る為。でも、その相手が居なくなったんじゃ、何のためにここまで頑張って来たのか分からなくなるじゃんッ!!」

 

 

 感情が爆発したように思いの丈を言葉に表すオシィ。

 家の何処に居たって聞こえる大きさだったがために、家族全員が二階に集まってくる。

 涙を流しながら爆発的に言い切ったオシィは、それでも自身から目を逸らさないゼニスに涙腺を崩壊させ、ついには崩れ落ちて泣きじゃくった。

 

 ごめんなさい、ごめんなさいと、ゼニスの胸で鳴くオシィを見て俺は今後の事について考える。

 何が起こったのかは理解不能だ。

 自ら行動を起こす事が難しいゼニスがここまで動いたのは、母として娘が塞ぎ籠っているのを感じ取ったからなのか。

 回復傾向にある証拠なのか。

 色々考えなきゃいけないと思う事はあるが、今はゼニスが作ってくれたきっかけを俺が受け取る事だ。

 このきっかけを逃さないでオシィとちゃんと話し合いをして、彼女の感情を全部俺にぶつけさせて、それで立ち上がって前を向く手助けする。

 

 でもまぁ何とかなるんじゃないか?

 ゼニスとオシィを見て俺は何と無くそう思ったのだった。

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