何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様)   作:カルデアの廃課金マスター

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エリス視点的な話。何時もより短いです。


26冊目

 エリス視点

 

 

「オーシノル?」

 

 

 その女の名を聞いたのはルーデウスとの授業中だった。

 確か…あたしが授業の理解に悩んでいて、ルーデウスが分かりやすい例えの話の中に出て来た名前だった。

 あたしは知らないのに、ルーデウスが物凄く詳しそうにその人の事を話すから、あたしが聞き出したんだっけ?

 

 

「ルーデウスが何度も口にするから気になってしょうがないじゃない。一体誰なのよソイツ」

 

「あぁ、僕の妹ですよ。双子なので同い年ですね」

 

「ふーん」

 

「エリスお嬢様と同じで父様から剣を習っていて、僕よりもずっと強くて努力家な妹です」

 

「あぁ、パウロから少し聞いただけだが、筋は良いそうだ。中級を与えてから久しいらしいから、今のエリスお嬢様と同じくらいだと思う」

 

 

 気に入らない。

 

 あたしだけ知らない人をギレーヌもルーデウスも褒めているのが気に入らない。

 あたしの方が絶対に強いのに、同じくらいなんて言うのも気に入らない。

 ルーデウスの表情が気に入らない。

 

 会った事も無い同じ年頃の女の子で、同じ剣士にあたしは無性に腹が立って嫉妬していた。

 浅はかな感情だったと思う。

 今でもニナやイゾルテに安直過ぎると言われる事があるけど、あの頃のあたしは今よりももっと愚直で向こう見ずな小娘だった。

 

 だからあたしは、ルーデウスの妹だと言う女の子に出会った時、剣での勝負を申し込んでいた。

 

 

 オーシノルがあたしの家にやって来たのは、10歳の誕生日だと言うのに祝いに来れないルーデウスの両親の代わりだった。

 前々からパパがルーデウスのパパと手紙でやり取りして計画を立てていたみたいだけど、当時のあたしは急に現れた初対面の人もルーデウスと一緒に祝うのは物凄く嫌で仕方がなかった。

 でもルーデウスの為だからと我慢して乗り切ったのは偉いと思う。

 

 翌日。あたしはオーシノルに勝負を申し込んだ。

 彼女もあたしと戦うのが楽しみだったようで、もめる事なく模擬戦が組まれた。

 審判はギレーヌ。観客はルーデウスだけ。

 ちっぽけな模擬戦だけど、この頃のあたしには剣術の大会のようにも思えた。

 

 ルーデウスは剣術が上手くない。

 それはあたしもギレーヌもルーデウス自身も認めている。

 下手ではないし、多分同年代の人と比べても動ける方なのは間違いではないけど、それでもあたしからすればルーデウスの剣はあたしよりも下の位置にいる。

 魔術もありの戦闘ならあたしが負けることだってあるけど、剣術だけで戦ったら十回に九回よりも多く勝てるだろう。

 

 そんなルーデウスとは違う相手。

 ギレーヌはあたしよりも魔術を使うルーデウスよりも強いから比較にならない。

 ルーデウス曰くあたしと同じくらい強い相手。

 そう、同格の人も剣術で戦うのに、あたしはどうしょうもなくワクワクしていたのだ。

 

 

 

 向き合って相手を見る。

 楽しそうに笑みを浮かべている。

 きっとあたしも同じ顔をしているのだろう。

 

「双方良いな。 では、初めッ!」

 

 ギレーヌの合図と共にあたしは地面を蹴った。

 初見の相手。成長したあたしなら、少なくとも同じ実力と言われて合図と共に接敵する程甘くは無い。

 でも、この頃のあたしはギレーヌ以外の敵を知らなかった。

 

 慢心。

 

 魔術アリのルーデウスならともかく、剣術だけなら負けたことが無い。

 故に、突っ込んで剣を振るって、振るって、何とか勝てるだろう。

 そんな甘い考えで何時も通り剣を振るった。

 

 だけど、彼女は私の初撃を簡単に防いだ。

 一瞬だけ放心したあたしだけど、そこはギレーヌとの戦闘訓練では当たり前のように防がれているから、すぐさま二撃目を放つ。

 それも防がれた。それどころか、あたしの知らない動きでカウンターを放ってくる。

 あたしも負けじと防いで次の攻撃に転じる。

 

 一合、二合、四合、八合……。

 十数を超えてから数える暇も無かった。

 あたしが攻撃すると余裕そうに防いでカウンター。

 あたしが防ぐと競り合わずに次の動きに繋げる。

 ルーデウスがより剣術に特化ような戦い方に、あたしは攻めあぐねていた。

 非常に戦いにくい。

 あたしが嫌な事しかしてこない。

 

 冷静に、冷静に。

 ギレーヌとの訓練であたしは感情を乗せつつ冷静に剣を振るう事を学んできていた。

 ルーデウスとの戦いではそれはもう完璧に……とはいかないけど上手く出来ていたと思う。

 ギレーヌとの訓練では強さの差を何度もたたき込まれているから、攻撃が通じないのはよくあること。

 だけど、同年代の、それもあたしと同じ女の子が、あたしに匹敵する剣の腕を持っている事が物凄く気に入らなかった。

 

 冷静に努めようとしているものの、あたしはどんどん冷静じゃなくなり、ただただがむしゃらに剣を振っていた。

 焦る一方のあたしとは対極に、オーシノルは冷静にあたしの剣を受け止めて返す。

 ただ、焦ってはいないものの、彼女も決め手に欠けるらしくあたしに有効打を打っては来ない。

 剣神流の技量とパワーやスピードはあたしの方が上だったけど、それ以外の物は彼女が勝っていた。

 剣神流だけでなく、この頃のあたしが知らない流派、水神流と北神流を駆使してオーシノルは巧みに立ち回る。

 物凄くやりずらい。

 確かに、ルーデウスが褒めるだけの腕前はあった。

 でもそれが気に入らなかった。

 

 結果はどうなったんだっけ?

 ただがむしゃらに剣を振って、気が付いたらあたしもオーシノルも倒れてた気がする。

 勝ったような負けた様な……。

 いえ、負けてたらきっと悔しくて悔しくて覚えているはずだから、何とか勝てたのだろう。

 そう勝てたはず。……勝ててないと気が済まない。

 

 登場のあたしには剣神流しか納めていなくて、オーシノルは単にあたしと同じくらいの剣士としか思っていなかった。

 勝負にはあたしが勝ったはずだけど、あのまま成長すればあたしと同じくらい強くなるのだと信じてやまなかった。

 剣の聖地で修行を始めるまでは。

 

 

 

 

 

 剣の聖地であたしは強くなった。

 剣神が居る剣神流はもちろん。水神レイダからは水神流のカウンターを学び、北帝オーベールからは北神流を学んで北聖の称号まで貰った。

 だからこそ、三大流派全てを学んだからこそ、幼き日のあの戦いであたしが勝ったオーシノルはとんでもない使い手だと言うのを実感出来た。

 確かに身体能力と剣神流の技術はあたしの方が上だった。

 でも、彼女は北神流と水神流も同じくらい上手に扱っていたのを思い出すと、あたしみたいに順当に育って居たらどれだけ強くなっているのだろうか?と疑問に思って、闘志を滾らずには居られない。

 加えて、ルーデウス曰く魔術だってあたし以上に使えるらしい。

 三大流派に魔術を加えた戦闘はあの頃から凄まじい技術力だった。

 

 今のあたしと同じくらい成長していると思えば、剣王となったあたしといい勝負が出来るのではないだろうか?

 もし時間があるのなら、何でも世界最強レベルに扱えると言う対オルスデッド戦の模擬戦闘になるはずだ。

 強さはオルスデッドに全く敵わないにしても、三大流派を(あたしの勝手な妄想だけど)全て聖級以上に扱えるこれまた上級以上の魔法も扱える剣士との戦いは、絶対にオルスデッドとの戦いに役に立つ。

 ルーデウスとの連携を確かめるのもとても楽しみだ。

 最後に会ったその時から巧みに魔術を扱えていたルーデウスだ。

 きっとあたしの想像を超える魔術を発見して、きっとオルスデッドを倒せる魔術も開発済みに違いない。

 ドラゴンを独りで倒したり、魔王を一撃で殺したって話もニナから聞いたことがある。

 癪だけど、そんなあたしのルーデウスの双子の妹なんだから、同じくらい成長しているに決まっている。

 剣の聖地を離れてからギレーヌ以外に剣の打ち合いが出来る相手が居ないと考えていたけど、ルーデウスと結婚出来たら義理の妹になるわけだし、剣の鍛錬なんて毎日のように出来るはず。

 とても楽しみ。

 

 

 

 なんて思っていたのに……。

 

 オルスデッドとの戦いが終わり、無事にルーデウスの三番目の妻として迎い入れられて彼女と対峙した時、あたしはルーデウスと魔大陸を旅していた頃に起きた悲劇を知る事となった。

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