何のとりえも無い少女が異世界で生き抜くお話(チート能力は無い模様) 作:カルデアの廃課金マスター
S月Y日
ルーデウスへの手紙を書いた。
やはり文字を書く慣習が付いていないから、思い出すのに必死だった。
もっと本も読もうと思った。
肝心な手紙の内容。
初めに誕生日おめでとー。私も同じだからロアの街で売ってる誕プレよろしく、とお祝いの言葉と手紙書いたからプレゼントを強請った。
その後は、こちらはお元気ですよ、治癒魔法の中級を覚えたぜ!!その他は偶にしか復習してない、剣術はギリギリ中級に届きそうな感じ?的な近況報告をざっと。
最後に、ノルンとアイシャが物凄く可愛い事を残りの場所に書き連ねた。
出稼ぎに行くまではルーデウスも妹二人の事を可愛がっていたので、さぞかし悔しがるだろう。
クハハハッ、帰ったら圧倒的なお姉ちゃんを身につけた私を見るが良い。
U月N日
誕生日数日前。
本来ならロアの街に行く予定だったとゼニスママから聞いた。
行けなくなった理由、パパウロは仕事でどうしても村を出れない。
ゼニスママ、ノルンとアイシャが少し体調が悪い。
そっか、ならしょうがない。
私だけでも家で祝って貰おう。
ルーデウスは……きっとお貴族様風のパーティーでも開かれるだろう。
パパウロ騎士だし、ゼニスママも外国の貴族令嬢だったみたいだし。
E月N日
ノルンとアイシャの体調が本悪的に悪くなった。
予兆だったのが起きたと言える。
リーリャとゼニスママが妹二人にかかりっきりになったので私が要だ。
手始めに家事を頑張ろう。
掃除洗濯料理……元の世界と違って便利な家具がないけど、この世界に転生して10年も経てば慣れるもの。
分からない所や自分の判断で出来ない事はリーリャに相談する。
今日から数日間は剣術の鍛錬は抑え目かな?
n月H日
誕生日前日。
明日のお祝いにワクワクしてると、何時ぞやの馬車がやって来た。
初めは誕生日に伴いルーデウスが帰って来たのかと思ったが、それは違った。
私の迎えだった。
……私がこの家の子ではなく本当の親が迎えに来たとかそう言うのじゃない。
単純に、このフィットア領を治めるボレアス家の家がルーデウスの誕生日を祝うべく迎えの者を寄越しただけだ。
何も聞いていなかったのでビックリ。
パパウロとゼニスママ曰く、私に対する誕生日プレゼント的なもの。
双子なのだから、ルーデウスと会えないのは寂しいだろう。豪華なパーティーとまでは行かないが、貴族の館で祝って貰え。ロアの街の観光もして来なさい。等々。
勿論、これだけが全てではなく、帰ったらここにいる家族がもう一度誕生日会を開くらしい。
というわけで、断る理由もないので私もロアの館へドナドナ~。
A月NN日
お昼過ぎに出発し、ロアの街に着いたのは夜過ぎだった。
途中で休憩なし。
前世と違って整備されていないガタガタ道を、スプリング?が無い異世界馬車で半日にも及ぶ進行。
揺れすぎて若干酔った……。
この世界での馬車は私には合わない。
ロアの街に着き、屋敷へ入ると既に寝静まった後。
途中休憩で晩御飯は食べていたのでそのままおやすみなさい。
現在の時刻は夜。
既にお誕生日会やらは終わって部屋でゆっくりしている。
初めてのお屋敷、知らない街、知らない人達……。
緊張しまくりだった。
今日の動きを振り返って行こうと思う。
誕生日当日、起きたら館の一室。
メイドに起こされて、されるがままに湯浴み、着替えをさせられた。
本職のメイドさんは凄かった。
こちらが何もしないでもパッパッと身支度を整えてくれる。
でも、ひらひらとした服装は正直に言って動きにくかった。
着替え終わればこそこそと別の部屋に移動し、この館の主である……さ、サウロ?様に挨拶をした。
お辞儀して挨拶をしたのにものすごい勢いで怒られた。
あの人嫌い。色々と耐えられた私は偉い。
その後はこの街の領主フリップ様?その妻のヒル……何とか様?にも挨拶。
パパウロの従兄に当たる関係らしい。
まぁ、今後はお貴族様と関わらない生活を目指したいので、家に帰る頃には忘れるだろう。
その後は部屋に戻って時間まで待機。
下手に動かれて迷子になると困るのと、ルーデウスと下手に鉢合わせするのを防ぐためらしい。
一応お客様扱いなのか、何かあればお呼びくださいと言われた。
今になって気づいたけど、用事が出来た時は何処で何をすれば良かったのだろうか?
時間になったらメイドさんの後ろについて会場入り。
ささやかなホームパーティーって聞いてたが、普通に盛大な会場に大勢の人だった。
これがささやかってマジで?
ルーデウスの生徒であるエリスお嬢様の声に合わせていざ入場。
約3年ぶりの再会に、どんなリアクションをすればいいのか分からなかったが、ルーデウスはパパウロとゼニスママをご所望だったらしい。
とりあえず「パパウロとゼニスママじゃなくてごめんなさい?」って感じでルーデウスの前に立った。
そしたら、唖然→泣きそうな顔→抱き付かれた。
あーーうん、3年も離れてた双子だもんね。
気持ちは分からなくもないけど、屋敷の人が沢山いる中でこれは恥ずかしかった。
ルーデウスの気持ちを考えてグッと堪えたけど。
抱き合いが終わった後は誕生会が進行。
ルーデウスだけでなく、私にもプレゼントが送られてきた。
何でも、ルーデウスは3年間の間でこの屋敷に物凄く馴染んでおり、その双子の妹である私にも恩恵が少しだけ届いた……と言う訳だ。
プレゼントは真剣だった。
流石に名剣ってレベルではないが、市販で買える仲でもかなりお高い奴っぽい。
この誕生会に招待してくれただけでも十分なプレゼントだったのに物まで……。
ちなみに、ルーデウスは私の目でも分かるくらい高価そうなオーダーメイドの杖を貰ってた。
ルーデウスと私とでは扱い違い過ぎじゃない?
まあ、私はルーデウスのおこぼれに肖っているだけだから文句は言えない。
普通に出された料理も物凄く美味しいし……。
と言う訳で、楽しい?10歳の誕生日は過ぎたのであった。
2月÷日
昨日の事で一つ忘れていた……いや、単に思い出したくないだけだったのかも?
パーティーの途中でルーデウスに女の子を紹介されたのだ。
エリスちゃんと言うらしい。
歳は私達よりも数個上で、ルーデウスの生徒だと。
第一印象は「狂犬」
初対面なのに怒鳴られた。
わけがわからないよ。
この子横暴過ぎて嫌いだと言う事が分かった。
まあ、もう二度と合わないかも知れないから、今日だけの我慢。
す月S日
一泊して自宅に帰ってきた
やはりここが一番落ち着く。
一生ここから出て行きたくないけど、お仕事とか結婚とか考えるならそうもいかないんだろうなぁ…。
10歳児にしては少々早すぎる悩みだ。
で、パパウロとゼニスママとの約束通り、家に帰ったら誕生日パーティーを開いてくれた。
お貴族様のパーティーも良いけど、豪華すぎて気が気でない。
素で居られる身内だけの方が楽しかった。
A月NN日
昨日は色々と疲れていたので、誕生日会が終わったら直ぐに寝てしまった。
昨日の振り返りからしようと思う。
誕生日会は実家らしくとてもほっと出来た。
まず、ルーデウスの近況をパパウロとゼニスママ、リーリャに話した。
三人ともルーデウスが元気でやっていると知りとても喜んだ。
その後は何時もよりも豪華な食卓。
ゼニスママが「昨日のパーティーに比べたらこんなものしか用意できないけど…」と言ってきたので「ママの方が美味しいし、愛情が入ってるよっ!」と言って泣かしてやった。
で、肝心とは言っちゃ悪いが、誕生日会と言われたら一番重要なもの。
そう、誕生日プレゼントだ!!
パパウロからは実用性な真剣。
5歳の時にルーデウスが貰ったのとは違う、大人が使っても可笑しくないちゃんとした真剣だ。
同時に剣神流の中級を認定してもらった。
ようやくだ……。
ちょっとだけ泣けた。
ゼニスママからの贈り物は髪飾り。
おしゃれそっちのけで剣ばかり握ってる私に、少しでも着飾る楽しさを教えたいらしい。
……ごめんなちゃい。
おしゃれは前世で十分味わったから、この世界でないと出来ない剣術の方が魅力的なんだ……。
リーリャからは刺繍の入ったハンカチ。
オシャレと実用性を兼ね備えた、実にリーリャらしいプレゼントだった。
今後は全部、常に持ち歩いておこう。
午後の自由時間は真剣を使った素振りをした。
木剣よりも重たいので、慣れるまで時間がかかりそう。
k月O日
真剣を貰った事で鍛錬に剣の重さに慣れる項目が追加された。
流石に打ち合いでは使用しない。
重さに慣れるにはとりあえず持って振る事が第一だ、とパパウロに言われた。
同感だったのでもっと頑張ります。
T月O日
2日経った。
真剣も持てたことだし、少しだけ期待していたが、全く話題にならないとなると、それはそれで怒りが湧いてきそう。
S月I日
剣を振る。
重さにはある程度慣れてきたかもしれない。
N月O日
前々から準備していたアレを実行するべきだろうか?
悩む悩む。
明日の鍛錬中にパパウロにそれと無く聞いてみよう。
M月I日
最悪だ。
初めに言いだして数か月も経ったのに、途中でそれで喧嘩までしたのに、また忘れられてた。
怒ったので午前中の鍛錬は途中で抜け出し、あの計画の準備に時間を割いた。
晩ご飯の時に帰ってもパパウロとは話さなかった。
反抗期再びだ。
ゼニスママが昔言っていた「パパウロは口だけで約束は一つも守らない」って言葉は本当だったみたいだ。
ずっと準備はしていたので、明日には決行しようと思う。
Z月U日
怖かった。
有り得ない。
でも駄目だ。
自分がやったことなのに……。
物凄く怒られた。
パパウロが一番悪いのに。
部屋に戻って一通り泣き止んで、心も落ちついたので今日の出来事を整理する。
まず、前から準備した事を決行した。
朝ご飯を食べる前に。
家族が起きる前に昨日の内に準備していた保存食を持って家を出る。
家出や誘拐と間違われない様に、ちゃんと書置きも残した。
この書置きを書くのに一番準備時間がかかった。
向かった先は森。
一度、パパウロや自警団と一緒に入った事がある場所だ。
ここで行うのは、当然実戦。
かなり前にパパウロから、時期が来たら連れて行って戦わせてくれるって約束してから長い月日が経った。
私が忘れたと思うなよ……。
その日をどれだけ待ちわびていたか。
一向に連れて行ってくれない上に、確認したら忘れられてた。
更に数日待っても気配すらない。
だから自分で行くことにした。
村の自警団には剣神流の中級有段者は居ないらしく、なら中級を認定して貰った私の方が強いはず。
なら、私だって森に入ってモンスターと戦っても大丈夫なはずだ。
パパウロは加護保護過ぎるよ……。
それで来たのが森。
村の境界線を超えても何も無かった。
剣を構えて進んだ。
出来心で、数体倒せたら満足して帰るつもりだった。
見つけたのは猪型の魔物。
そろそろと近づいて、私の攻撃範囲に入ったら一気に距離を詰めて攻撃した。
先手必勝だ。
先手は無事に当たった。
でも、変な場所にあったのか、剣は途中で止まって抜けなかった。
暴れる猪型の魔物に振り回されて吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた時の対処法も習っていたが、初めての実践だったのでそんなことは頭の中から吹き飛んでいた。
受け身も取れずに吹き飛ばされ、木にぶつかって止まる。
息がつまった。
目を開けると、私に向かって突進してくる猪型の魔物。
横に転がって回避した。
極度の緊張もあって、既に息が上がっていた。
その後はあまり覚えていない。
がむしゃらに回避したり剣を振って攻撃をしたりした……ような気がした。
多分、パパウロから習った事の半分も出来てない。
疲労困憊になってようやく倒せた1体。
予想以上に体力を消耗したので、当初の予定の2体目など頭に無かった。
帰ろう。そう思った。
でも、戦闘で訳も分からず動き回り、森の奥に入ったのか位置も方角も分からない。
更に、何度か喰らった攻撃のせいでまともに歩けなかった。
朝にあった、初めての実戦が出来るという高揚感は無くなっていた。
道に迷ったら動かない方が良いと、前世では聞いたことがあった。
それにならって動かなければ良かったのだろうが、軽いパニックになっていた私は森を出たい気持ち一心で走った。
走ればきっと帰れる、そう思った……のだと思う。
走った先にあったのは森の入り口…なはずもなく、複数体でこちらを睨んでいる魔物。
もう訳が分からなかった。
こんな事ならパパウロが言い出すのを待てば良かった。
簡単に倒せる様に見えた魔物狩りも、子供の私には厳しすぎた。
何もかもが楽観的に見過ぎていたと、今になれば分かる。
がむしゃらに剣を振って、逃げて、剣を振って、逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて剣を振って逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
気がついたらパパウロに抱きしめられていた。
安心と罪悪感で泣きじゃくった。
さて、そろそろ曇らせタグがアップし始めます。