原作崩壊します。(いまさら)
独自理論展開します。(バカなりに考えた)
自分で書いていて、途中ゲシュタルト崩壊しました。
世界、世界が、世界ってなんだっけ……? みたいな。
あくまで当作品における世界論ですので、リアルなツッコミはやめてもらえるとありがたいです。
マイキーこと佐野万次郎に出会ってしばらく。花垣武道は陰鬱な気分で夜の繁華街を彷徨っていた。
その原因は一週間ほど前に急遽開催された、橘日向の自宅マンションでの勉強会にあった。より正しくは勉強会の途中に発覚した花火大会の開催であり、それを見物しようと上がった屋上で偶発した事故に起因している。
『タイムリープの発動条件はボクとの握手です』
現代で橘直人は確かにタケミチへそう言った。
事実、最初と異なり今回は自分の意思で過去へと舞い戻ったタケミチが、現代でタイムリープ直前に記憶しているのは直人との握手だ。
『君にしか姉は救えない!』
その言葉を耳に現代でブラックアウトした視界が、次に映したのは十二年前の喧嘩賭博の対戦相手であった。
唐突な状況に混乱こそしたものの、今に思い起こしてみれば直人の言葉の正しさが証明された瞬間だ。
同時にそれは花火大会の日。
恋人である日向の手を握ろうとして、ついうっかり彼女の弟の手を握ってしまった瞬間。中学生の花垣武道が現代の冴えないフリーターに戻ってしまうことを意味していた。
にもかかわらず。
タケミチは中学生のままであった。
いくら待てども、直人の手を握り直しても、現代への回帰現象は起こらず。ただ恋人から白い目を向けられた。
『タケミチ君……? ナオトの手なんて握って……え、もしかして、そんな訳ない……よね? 大丈夫だよね?』
挙げ句に直人からも距離を取られ「そっちの趣味は……」などと言われる始末であった。
タケミチは「お前の言葉が原因なんだけど!?」とは思いつつも日向の手前、声を大にして言う訳にもいかず。彼は花火そっちのけで弁明に励む羽目となった。
そして、タイムリープの出来ない状況を放置する訳にもいかないタケミチ。よって彼は誤解を解き、その後で秘密裏に直人との密会を果たすことにした。
その密会の場でタケミチは、未だ子供の橘直人にすべてを打ち明け相談した。恥も外聞も捨て去り、年下に頭を下げて「助けてくれ!」と懇願したのだ。
『話はわかりました……けど、ごめんなさい』
それが相談を受けた直人の第一声であった。
そのまま彼は続ける。
『ボクにもわかりません……』
タケミチは愕然と、直人の言葉を聞いていた。
同時に、「だろうな……」という諦念が湧く。
一体全体どこの世界に「未来のあなたに言われ、記憶を引き継いで過去を変えに来ました。でも帰り方がわからないから教えてください」などという、妄言地味た言葉へ即答できる中学生がいるというのであろうか。
話を信じてくれただけでも大金星というものだ。
『でも、可能性ならあります』
されど、落胆したタケミチを直人は見捨てなかった。
少年は、あくまで「可能性」と念押して続ける。
『話を聞く限り、前回現代へ戻った時にタケミチ君は大きく過去を改変していますよね?』
タケミチが一回目の過去からの帰還時。
変わったものはたった一つ。
しかしその一つは、大きな意味を持っていた。
『そう、死ぬはずのボクが生きていた……』
タケミチの主観では「生き返った」が正しいであろう。
その原因、死ぬはずの橘直人が死ななかった理由を、タケミチは当人から直接に聞かされていた。
『未来のボクは過去へ飛ばされて来たあなたの言葉を信じて行動した。その結果ボクの死は回避され、あなたの知る歴史と大きく異る転換史を迎えました……姉は、残念ですが』
つまり、と一拍置いて直人は言った。
『歴史を変えるほどの大きな事を過去で成せば、未来に戻れるのではないでしょうか?』
ここで話が終わっていれば、タケミチは可能性に賭けて邁進するだけで事すんでいた。
子供と言えども頭のいい直人の推測には、少なくとも矛盾はなくタケミチ自身が納得を示したのだから。
だが、そこで緊張の解けたタケミチが零した台詞は、直人の状況推測をひっくり返すに十分な威力を持っていた。
『はぁ~よかったぁ! 記憶にないホーライさんがいたり、未来に戻れなくなったり、オレもうどうしたら良いのかテンパっちゃってさぁ。ほんと直人がいてくれてよかった!』
『……? ホーライさんって、輝夜姫ですよね? 記憶に無いってどういう』
『ああ、そうなんだよ! オレ過去に戻ってくるまで蓬莱山輝夜なんて全然知らなくてさぁ。もうビックリよ。はは』
『蓬莱山輝夜を……知らなかった? あの、東方グループ代表の一人娘、都内なら誰もが一日一回はその名を耳にするとさえ言われる輝夜姫を……未来から来たタケミチ君は存在すら知らなかった、と?』
その後、急に考え込んだ直人はタケミチに質問を繰り返した。本当に知らないのか、ありえない事ではあるが忘れているだけでは、中学時代のことをもっとよく思い出して、と。
タケミチはしどろもどろに、それでいて必死に答えた。
『タケミチ君……もしかしたら、もしかしたらですよ? あなたのいる此処は、この世界は、あなたのいた未来に続く過去ではないかもしれません』
直人は言い聞かせるように、オカルトの持論を語った。
平行世界における時間干渉の影響。この世界論でタケミチのタイムリープを実行した場合、時間軸は一つの川のようなものであり、タケミチがタイムリープをして遡り辿り着いた時点以降の流れが大きく変わる。つまり歴史改変現象が起こり、タイムリープ以前の歴史は消滅してしまう。
言い換えれば、なかった事になる。
『ボクはタケミチ君の話を聞いて、この説を考えました。でなければ死んだはずのボクが生きているはずがない』
けど、と言い淀み直人は言紡ぐ。
『もしもタケミチ君のいた本来の時間に、つまり元いた世界に蓬莱山輝夜が存在しなければこの説は破綻してしまう』
平行世界論では、別世界とは交われない。
つまりα世界の過去にいる人物Aは、未来から観測してもα世界に存在していなければおかしいのだ。
もしも過去、あるいは未来の一方でしか存在しないのであれば、それは世界の流れその物が違う事を意味してしまう。
これが『過去の人物で、未来では死んでいて知らなかった』ならば問題はなかったのだ。しかし『未来から来たタケミチが、過去でしか存在を確認できない』となれば。
『タケミチ君は日本の某大手電機メーカーの大企業や複数の子会社、世界的財閥や財団をうろ覚えながらも把握はしていた……にもかかわらず、世界的にも名の知れた東方グループを知らなかった』
その事実は平行世界論で物を語るには、ありえない事だと直人は言い切った。
『ここがあなたのいた流れ、未来から視たはるか後方の光景世界なら、蓬莱山輝夜も東方グループも、どんな形であれタケミチ君が知らないとおかしいんです……』
直人はそう言って、慎重に考えながら、言葉を続けた。
『タケミチ君が過去から未来に戻れた最初の段階では、タケミチ君はおそらく正しい意味で過去にいた……』
それはタケミチへ語るというよりは、己の思考を口にしながら思考を回す探偵のような口調であった。
『その後……そう、蓬莱山輝夜と出会った後だ。その後で、つまりこの時点で世界が移動……していた? いや、違う……、もしかしたら立体交差並行世界論……タケミチ君はタイムリープして、世界の交わる分岐点に……そう! そうだ!』
『ナ、ナオト……?』
『世界の交わる、言うなれば複数の世界の可能性が一つに交わる交差点で蓬莱山輝夜に出会ったんだ! そのせいで蓬莱山輝夜の存在しない世界のタケミチ君は、蓬莱山輝夜のいない過去には行けなくなってしまった! いや、もしかしたら……うん、そうだよ、未来に戻れないのはそもそも、この世界の未来ではボクが……まって、そうじゃない』
『ナオトく~ん……?』
延々と、直人は独り思考に耽った。
それをタケミチが戦々恐々と眺め続けてしばらく。
直人の出した結論は、タケミチを陰鬱とさせるには十二分の威力を誇るものであった。
『タケミチ君……これはあくまでボクの持論ですが、あなたが元いた現代に戻れる可能性はとても低いと思います』
そう言って、直人は説明した。
曰く、未来に戻れないのはそもそも世界が違うから。
タケミチのタイムリープ能力は、あくまでも直線上の時間軸を十二年単位で前後移動するものであり、世界と世界を跨ぐ力はないのでは、と。
ならばなぜ、今の花垣武道は世界を跨ぎ存在するのか。
『おそらく、蓬莱山輝夜が特異点になったんです』
平行世界論ではなく、立体交差並行世界論。
それを単純に述べれば、平行世界論において世界を一本の線で表すのに対して、立体交差並行世界論は書いて字のごとく。無数の可能性世界を表す線が、あらゆる場所で交わり、絡み合い、しかし干渉する事なく存在している状態を指す。
例えば、恐竜のいる世界。
例えば、あべこべの世界。
例えば、魑魅魍魎の蔓延る世界。
例えば、存在しないはずの人間がいる世界。
直人は持論と称して『特異点』を説明した。
それはタケミチ本来の、蓬莱山輝夜が存在しない『世界A』と、蓬莱山輝夜の存在する限りなく『世界A』に近くて遠い『世界B』。この二つの『世界A・B線』が本来は決して干渉するはずのない『立体交差地点』で、おそらくはタイムリープによる時間干渉に影響されて接触干渉。
そして2つの世界の『相違点』であった蓬莱山輝夜を、彼女の存在しない『世界A』のタケミチが観測したことによって、蓬莱山輝夜は『特異点』化。その『特異点』を観測した『世界A』の存在であるタケミチは、『世界B』のタケミチに強制的に引っ張られて統合される。
その結果として、世界を跨ぐ形になってしまった。
『ボクはそう結論付けました……その、さっきも言いましたけど、あくまで仮説ですし、最初に言ったように未来を大きく変えれば帰れるかも知れません……』
申し訳なさげの直人に、タケミチは言葉を返せなかった。
戻れないかもしれない。過去を変えても世界が違う。それはつまり、橘日向の死を覆せない事を意味していた。
『もし、もしも……』
絶望へ沈んだタケミチに直人が口開く。
それが慰めの言葉なのか、本気の言葉なのかは、タケミチには判断がつかなかった。
それでも、僅かな希望を見出したのは確かだ。
『蓬莱山輝夜に接触すれば……、』
『世界A・B』の『相違点』である蓬莱山輝夜と、彼女と初めて出会ったその場所こそが、二つ揃って『特異点』になっているのであれば。
『……もしかしたら、帰れるかも知れません』
その言葉を耳にしてから一週間以上。
どのようにすれば蓬莱山輝夜と公園で接触できるのか、タケミチは悩みに悩んで今日も無意味に街を彷徨う。
そんな少年の携帯が、後ろポケットの中で鳴り響き。
「あれ、タケミチ君?」
まったく同じタイミングで背後から掛かった呼び声に、タケミチは振り向きながら呟いた。
「ヒナ……」
今話はTATEditorで書きました。
いいですねアレ、書き手さんにオススメですよ。
皆様、感想評価いつもありがとうございます。
それを励みに頑張ってまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
追伸。
裏世界ピクニックの小説まとめ買いしました。
更新遅れまくったらそのせいかも知れません。
だからぼくは悪くない。
ではまた。