幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第八十五話『共和国到着Ⅱ』

「久々の地面と陽の光だ……あ〜疲れた疲れた」

 

「ようアル、そっちも散々だったらしいな」

 

「まあな。しっかし次期伯爵で現子爵の俺と現伯爵のリオンに喧嘩売るようなマネするなんて面白いなあ……潰したくなっちゃうね、今はしないけど」

 

「俺も同じ気持ちだけどこえーな」

 

 イライラする共和国軍とのやり取りを終えて港に降り立った俺は真っ先に外に出た、とにかく地面の感触と太陽の光に飢えていたのだ。

 マリーとはまあそれなりにイチャイチャも出来たがやっぱり例の事が頭にあって中々に素直に心からイチャイチャするのも難しくと悶々とする日々が積み重なり俺はすっかりストレスが溜まりまくっていた。

 

「アルがこれだけ怒ってるとその内戦争にならないか心配になるわよ……」

 

「まあまあ、これ以上下手な事しなきゃ戦争にはならないって。……下手な事してこなきゃな?」

 

「うわぁ……さすがね。これで荷物自分で持ち運ぶなんてなってたらアルの機嫌治すのに苦労する事になったでしょうね」

 

「そうならないように警備ロボに運ばせてんだよ。ま、みんなの分もだけど。リオンもどうせルクシオンに運ばせてんだろ?」

 

「ご名答、面倒だしな。ちなみに勝手に乗ってきた奴らの分は知らん」

 

「とか何とか言っちゃって、ルーデの分は運ばせてんでしょ?」

 

「ルーデは……ついでだ」

 

 だがこういう会話が出来たからある程度ストレスは緩和された、へーほーリオンってばルーデには割と甘くなってんだな、これは良い事聞いたかも。

 

 さて、冷静になったところで一旦このアルゼル共和国編について思い出すとしよう。

 

 まずこの章は非常に特殊だ、周りが転生者や攻略対象含め『モブせか』では大半が悪役だらけという状況という混沌ささえ置き去りにしてしまうレベルのものがある。

 それが『Web版と書籍版で全くもって展開が違うものになっている』というものだ。

 各キャラの生死の差異から始まり書籍版限定登場キャラなんかもいるし、挙句の果てには転生者だったキャラが書籍版でそうじゃなくなってるなんていう差し替えもある。

 こうなってしまえば果たしてどちらの展開で話が進むのか全く分からない、運良くどちらの知識もあるからどっちをベースにした展開であっても知識はあるが……

 

「あ……リオン」

 

「ルーデ?なんだ?」

 

「その、荷物……ルクシオンに言ってくれたのね。ありがとう」

 

「ついでだついで、近くにあったからな」

 

 近くでイチャつくリオンとルーデを傍目に内心大きく息を付く、Web版だとリオンが共和国を滅ぼす展開、書籍版だと逆にリオンが共和国を守ろうとする展開なんだよな……ほんと真逆で、それを知ってる俺としては胃がキリキリしてくる。

 いくらもう想定通りに動かないくらい世界が変わったとはいえ、ここまで違うとどうしても意識せざるを得ないしなあ。

 

 ……何にせよ、どういう展開になっても大丈夫なように準備と心構えはしておかないとなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こりゃ大層な屋敷なこって」

 

「マリエ様は聖女様でいらっしゃいますし、ヘルトラウダ様もいらっしゃるので当然の対応です。何よりも親衛隊の騎士様も大所帯ですし。ヘルシャーク隊の皆様も一緒にとなると流石に入り切りませんので、彼らには別途屋敷を用意させていただいております」

 

 あれから色々駄弁ったり考え事をしながらリオンとは別れて屋敷へ到着。シンプルにめちゃくちゃデカかった、まあこっちは俺が霞んで見えるレベルの聖女のマリーと元王女殿下のラウダがいるから人数云々もあるが当然ってのはまあ当然なんだろうな。

 

 リオンの屋敷に関してはこの外交官からの又聞きにはなるが原作と比べてこっちと同じくかなりデカくなってるらしい。

 まあユリウス達5人とルーデが一緒になったのだから当然だが。

 

「有難い事で。はぁ……共和国に来てから真っ当に話せた現地住みの人間は外交官の貴方くらいですよ……」

 

「アル、本当にお疲れ様。軍の人相手にへりくだった態度取ってご機嫌取りしたのが相当堪えてるみたいね」

 

「そ、それは災難でしたね……今日はごゆっくりお休み下さい、アルフォンソ様」

 

 しかしこんななんでもない外交官との話が癒しになるとか、この国本当にストレスに悪いよ。泣きたい。でも来ない事には帝国とのあれこれを抑え込む事も出来ないからな、苦渋の選択だ。

 

「そうさせてもらうよ」

 

「ああそれと、明日には共和国から派遣されるガイドが到着しますので春休みの期間はゆっくりと観光してください。……心情的には難しいかもしれませんが」

 

 苦笑いで外交官を見送り、俺達は留学の間使わせてもらう屋敷へと入る。軍が軍だけに雑な扱いをされているのではとも思ったが、存外に綺麗な屋敷でしかも非常に大きいので俺、マリー、ラウダ、親衛隊8人、ステファニー、カイルの13人という大所帯でも若干持て余すんじゃないだろうか。

 

 あとそう言えばリオンの方のガイドは描写されていたがはて、こっちのガイドは誰がやるのだろうか。まあ描写されてなかったはずだから気に留めなくて良いとは思うが……なんか変な予感がするんだよな、こう、本当に気に留めなくて良い人なのかってところで。

 

「アル?本当に大丈夫?疲れてるなら膝枕してあげるけど」

 

「大丈夫って言いかけたけど膝枕してもらいたいから大丈夫じゃないって言っておく」

 

「もう〜現金なんだから。ま、我慢されるよりは良いけど。ほら、そうと決まったらアルの部屋行くわよ」

 

「へへ、そりゃどうも」

 

 まあ、今はとりあえずマリーの膝枕でリラックスするとしよう……考えるのはそれからでも遅くないはずだ。

 疲れてるから気が張って変な考えを起こしてるだけに違いない、俺は物事を深く考え過ぎる傾向にあるからそういう思い違いをしているだけだ……よし、それで良い。

 

 これがフラグにならない事を願いながら、膝枕で一時のリラックスタイムを過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名前はピエール・イオ・フェーベル、六大貴族フェーベル家の次男です。これから皆様のガイドを務めさせていただくので、どうぞ皆様お見知り置きを。俺は今は一介の貴族子息でしかありませんので、良ければ親しみを込めてピエールとお呼びください」

 

「あ、ああ……よ、よろしく」

 

 待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!いや本当に待って!?ピエール!?ピエールなの!?アルトリーベでもモブせかのどのルートでも噛ませ悪役だったあのピエール!?庶民にも高圧的で共和国の貴族こそが絶対、みたいなとんでもない思想の持ち主だったのにまさかガイドとかいうガチで下手に出ないといけないような役職を受けるとは……一体なんの狙いがあってこんな事してるんだコイツ……怖くておいそれと話しかけられねえよ。

 

「この国はご存知の通り貿易が盛んなので様々な国の品物や特色が所々にありまして、王国の食文化なども取り入れています」

 

「へ、へえ……ほんとねえ」

 

「さっすがアルゼルは貿易が活発なだけあるぜ、なあマル」

 

「見て回るだけでも興味が尽きないよ」

 

「庶民の人達は敵意向けて来ないみたいだな」

 

「だなあ、これならまだ気が楽になるよ」

 

「親衛隊でもなきゃ今すぐ帰りたいくらいだぜ……」

 

「ほんとそれな」

 

「それでもこれから慣れていかないといけないからね」

 

「アンジェリカ様に誇れる騎士になるには、これくらい平然と受け流せなくては……」

 

 マリーも異常事態である事に焦りを隠しきれてないが、親衛隊の連中はセミエンとマルは貿易に関心を向け、修学旅行の時に一緒にいた2人は庶民に関心を向け、根性を叩き直して以降メキメキ実力を伸ばしてる2人はナーバスになっており、ルクル先輩とランスは気を引き締めていたので1人の違和感に気付く人間はいなかった。

 

 しかしピエールの奴、ヤケに友好的なんだよな……作戦があるにしてもコイツはそんな狡猾に騙せる程頭が良いはずがない、ともすれば何か変な介入があったか?コイツの中身が転生者で頭が良い方の悪巧みを考えているとか、それに準ずる人間に操られているとか。

 

 よし、ジャブを入れてみるとするか。

 

「なあ、ピエール」

 

「……!なんでしょうか」

 

「ピエールはなんで俺達のガイドを?貴族子息に過ぎないとは言え、六大貴族の子息がやるような仕事では無い気がするので」

 

「ああ、やはりそう思われますか?」

 

 ふむ、受け答えは平然としている。目の泳ぎや手足の不自然な動き、動悸も自然で声の震えも全く無しか……ここまで違和感が無いのは逆に違和感しかない、こんなピエールどの公式媒体でも見た事が無いぞ。不確定要素が挟まって改心したという見方が丸いだろうが、アルトリーベの設定からして根っからのクズであるこのピエールがどうやって改心したって言うんだ。

 全く分からん、こうなったら取り敢えずこの留学中に早いところフェーベル家に探りを入れるしか無いか。もしもコイツが本当に改変を受けているのであれば無闇に邪険にするのも可哀想だし、こっちとしてもずっと疑心暗鬼は嫌だし。

 

 さて、まず目下はこの質問にピエールがどう答えるか。

 

「社会勉強ですよ」

 

「社会勉強?」

 

「はい。俺は次男なので家督を継ぐ継承権は低いです。そうなれば行く行く待ち受けるのは自力で這い上がらねば『六大貴族の子息だった男』でしかない。無論それでも権力は高いとは思いますが、所詮は世界を知らないバカ息子。自力でそのレッテルより高くそして憧れのあの方へ……一歩でも近付けるように、民の声を聞き困難があれば共に乗り越えそして自らが貴族であると同時に民でもあるという自覚を持てるように志願したのです」

 

「……な、なるほど?ピエールは実直で真面目なんだな、そういうところ好感が持てるよ」

 

「恐縮です」

 

 家督は継げない前提で話を進め、世間知らずを自覚し、民の声に耳を傾けるどころか共に乗り越えていく、挙句の果てにガイドには志願してなっているだと!?こんなの俺のデータには無いというかピエールが完全に別人になってるって!

 演技でこんなに真逆の人間を完璧に演じるとか無理だって、こっちの方が平静保つのギリギリだわ。

 

 しかし和やかな空間だ、共和国の、それも貴族子息を相手にしていてここまでリラックス出来ている……俺とマリーは例外として、そうした空気作りが出来るのは最早演技の域を大幅に超えているのは間違いない。

 

 それに……何故だかピエールと意識さえしなければ俺までもが話しやすいと思ってしまっている。何なんだこれは、何が起きているんだこれは。

 

 この共和国編、間違いなく予想外と波乱の連続になるだろうな……冷や汗が一筋落ちるのだった。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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