ガンダムブレイカー・シンフォニー   作:さくらおにぎり

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2話 再会のワンステップ

 オウサカ家の平日の朝は規則正しい。

 特別な予定でも無ければ、家人の誰もが決まった時間に起床し、決まった時間に朝食を摂り、決まった時間に出勤、登校する。

 そのオウサカ家の一人っ子であるリョウマも例外ではない。

 両親が厳しいと言うわけではなく、ただ規則正しいことが生活習慣になっているだけである。

 起床、洗顔、着替え、朝食、登校準備と言うルーチンをこなし、さていつもの登校時間までまだ少し余裕があると言う時、リョウマはスマートフォンを開き、メールが一件着信しているのを見る。

 

「お、セイスイさんからの返信……」

 

 ブラウザからガンスタグラムへ飛び、返信内容を確認する。

 どうやらついさっきに着信が来たようだ。

 

 セイスイ:いつもコメントありがとうございます!今日から転入生デビューですが、頑張ります!セイスイ、行きまーす!(アムロ感)

 

 ガンダムキャラの台詞を用いた返信を見て、リョウマは小さく笑った。

 画面を閉じると同時に、インターホンが鳴らされる。

 

「っと、今日は少し早いな……」

 

 スマートフォンを鞄に放り込むと、すぐに玄関口へ向かう。

 

 ドアを開けたその向こう側にいるのは、チサだ。

 

「リョウくん、おはよ」

 

「おはようチサ。いつも来てもらって悪いな」

 

「いいの。わたしが好きで来てるだけだから」

 

 戸締まりだけ確認してから、リョウマとチサは並んで歩き出す。

 

 

 

『公立緑乃愛(みどりのあ)第一学園』

 

 過去に災害によって校舎が大きく損壊し、一時期閉鎖されていたが、長い時間を掛けて建て直された、古い歴史のある学園であり、近隣には同名の第二学園が設立されている。

 

 昇降口で上履きに履き替えようとしたところで、リョウマはふと思い出した。

 

「そうだチサ。昨日言ってた、GBフェスタのバトル形式が公開されてたぞ」

 

「あ、そうなんだ。今年はどんなルール?」

 

「過去にもあったサバイバル形式。広大なフィールドで、最後の一人になるまで続けられるってルールだ」

 

「へぇー」

 

 教室に行くかとロッカーの鍵を閉めたところで、

 

「なるほどなるほど、話は全て聞かせてもらった」

 

 リョウマとチサのいる位置とは反対側――ロッカーの向こう側から、二人にとって聞き慣れた声が聞こえた。

 そうして姿を現したのは、一見すると真面目そうな風貌を持つ、整った顔立ちの男子生徒。

 

「聞き耳を立てるとは趣味が悪いな、『ハルタ』」

 

 リョウマの遠慮のない物言いに彼――『ナガイ・ハルタ』はそれに気にした様子もなく返す。

 

「趣味が悪いとは人聞きが悪いじゃないか。俺様に比肩する美形とは言え、目付きの悪いリョウマに言われたくはないな」

 

「自分で自分のことを「俺様」とか「美形」とか言い切れるお前はある意味凄いな」

 

「事実を言っているだけだからねぇ。おっと、チサちゃんおはよう。今日も可愛いね」

 

 ふとハルタの視線が、リョウマの隣りにいるチサに向けられる。

 

「ハルタくん、おはよ。あと、あんまり褒めても何も出ないよ?」

 

 チサはチサで、ハルタの相手の仕方は知っているので、彼から「可愛い」と言われても、照れたりせずに平然としている。

 

「チサちゃんがチャーミング過ぎるから、つい可愛いと言ってしまうのさ。強いて言うなら、冷たい言葉に冷めた態度、氷のような視線で俺様を罵ってくれると嬉しいね」

 

「あ、あはは……」

 

 しかし対するハルタも、このように相当な『変態』であるため、チサもこうなると相手をするのに困るのである。

 

「行くぞチサ。こいつを相手にしているとバカが感染って変態をこじらせる」

 

「あ、うん」

 

 リョウマは、ハルタを無視するようにその脇を通り、チサも頷いて彼に続く。

 

「ってこら!俺様の話はまだ終わってない!」

 

 ハルタもすぐに踵を返して追い掛ける。

 なんだかんだと言いつつも、リョウマとハルタは友人同士なのだ。

 

 

 

 リョウマ、チサ、ハルタのクラスは、二年三組だ。

 教室に入ればいつも通りの光景……にしては、どこか浮足立っている雰囲気があった。

 

「何かあったのかな?」

 

 チサもこの浮足立つ雰囲気を感じ取り、小首を傾げている。

 

「何かはあったんだろうな」

 

 考えたところで分かるはずもないとして、リョウマが自分の席に鞄を下ろすと、ハルタは意外そうな顔をした。

 

「なんだ、二人とも知らないのか?」

 

「知ってんのかビスケット」

 

「誰がビスケットだ。しれっと鉄血の第一話の流れを持ってくるんじゃない」

 

 リョウマが(わざと)話題を逸したので、ハルタは話の腰を戻す。

 

「今日はウチのクラスに転校生が来るって噂だよ。それも、極上の美少女だそうだ」

 

「そうなの?」

 

 知らなかった、とチサは目を丸くする。

 

「先生方からは何の連絡も無かったけど、そう言うのに敏い奴から聞いたのさ。ほら、そこに空席があるだろ」

 

 ハルタが指した先には、ちょうど一番後ろの席のリョウマの右隣に当たる場所だ。

 

「ハルタがそう言うからにはそうなんだろうな」

 

 リョウマは大して興味も無さげに頷くのみ。

 

「反応薄いよ、何やってんの!……いや、普通に反応薄いな?」

 

 弾幕に関する名言を口走りつつ、ハルタはリョウマの反応の薄さに目を細める。

 

「ようするに転校生が来るって話だろ」

 

 それがどうかしたのか、とリョウマは訊き返すが、

 

「かーーーーーっ!こ・れ・だ・か・ら、チサちゃんと言う極上の美少女を幼馴染みに持つお前は羨まけしからんッ!」

 

 右手で顔を覆いながら天を仰ぐハルタ。

 

「ご、極上とか言われても……わたしは全然普通だよ。ね、リョウくん」

 

 チサは謙遜しながらも、リョウマに同意を求める。

 

「チサが普通なら、世の中の女学生は美少女だらけだな」

 

 が、彼の答えはチサを照れさせるには十分過ぎた。

 

「も、もう、リョウくんってば……」

 

 さり気なく二人の世界に入るリョウマとチサに対し、放っておかれているハルタと言えば、やれやれと呆れるように溜息をついていた。

 

「……これで付き合ってないって言うんだから、世界の悪意が見えるようだよ」

 

 予鈴のチャイムが鳴り響くのを合図に、生徒達は蜘蛛の子を散らすように各々の席へ着いていく。

 もう数分の後に、担任の女教師がやって来る。

 

「はーいみんな注目ー。どこから情報が漏れたのか知らないけど、もう知っての通り、今日からこのクラスに転入生がやって来ます。特に男子!女の子だからってあまりがっつかないように。……はいじゃぁシミズさん、入って来て」

 

「は、はいっ」

 

 担任の呼び声に、廊下で待っていた一人の女子生徒が入室してくる。 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ひと目見ただけで雑誌の表紙のモデルだと言っても過言ではないほどの、見目麗しい美少女。

 流れる水のように悠然と教壇の上に立ち、好奇の視線を向けてくるクラスメート達へ向き直って、

 

「あ」

 

「ん?」

 

 ふと、リョウマと目が合った。

 

「(昨日のシミズさんじゃないか。そうか、昨日に引っ越して来たばかりって言ってたな)」

 

 なるほど、とリョウマは声に出さずに呟くと、美少女――ミヤビは我に返って慌てて自己紹介をする。

 

「み、皆さん初めまして。今日からこのクラスのお世話になります、シミズ・ミヤビです。えぇと……」

 

 チョークを手に取り、黒板に『清水 雅姫』と書く。

 

「初めての転入で、分からないところ、至らないところはあると思いますが、よろしくお願いします」

 

 ぺこりと頭を下げると、ふわりと亜麻色の髪が揺れ動く。

 名は体を表すかのように、その雅やかな仕草に男子はおろか女子までもが釘付けられている。

 

「はい、質問をよろしいでしょうか」

 

 いつも通りの態度を崩さないのは、ハルタだ。

 

「ナガイ……あんたは相変わらず空気読まないね。どうせいきなりナンパするんでしょうに」

 

 担任もハルタの性格は知っているために、呆れ顔だ。

 

「失敬ですね先生。礼儀作法や順序を無視したナンパなど成功するはずもない。まずは当たり障りのない範囲で尋ねるだけです。ナンパへ派生させるかどうかは、その時次第です」

 

 ナンパすることを全く隠すこともない。

 

「おっと、申し遅れた。俺様はナガイ・ハルタ。ナガイでもハルタでも、クソ野郎でもウジ虫でも、なんでも好きなように呼んでいただいて結構だよ」

 

「え、えぇと、よろしく……?」

 

 あまりにも堂々とし過ぎて、肝心の質問相手であるミヤビも苦笑いを浮かべながら困惑している。

 

「と言うわけでシミズさん。まずは、どこから越して来たのかを教えてもらえるかな?」

 

「あ、はい。えっと、京都からです」

 

 困惑しつつも、ハルタからの質問はちゃんと受け答えるミヤビ。

 

「……京都から。なるほどなるほど。一目見て、はんなりが似合う高貴な方だと言う俺様の見立ては正解だったわけか。では次の質も……」

 

 ハルタは続けざまに次の質問をしようとするが、担任から「ホームルームの時間終わるから、続きはまた休み時間にね」と強引に切り上げられてしまった。

 

「シミズさんの席は、そこに用意してるから。オウサカ、隣の席のよしみで仲良くしてあげてね」

 

「ん、はい」

 

 自分の名字を呼ばれて、リョウマは反応する。

 それに促されるように、ミヤビは流麗な足取りで席へ向かう。

 ミヤビが席に腰を掛けるのを確認してから、ケンゴは挨拶として声を掛ける。

 

「昨日ぶりですね、シミズさん」

 

「は、はい。昨日ぶりで……敬語じゃなくていいんですよ、同い年だし……、えぇと……オウサカくん、でいい?」

 

「呼びやすいようにどうぞ。分からないことは、……俺じゃ話しかけにくいなら、こっちのチサでもいいです……じゃなくて、いいからな」

 

 リョウマは、一つ前の席にいるチサを指してやる。

 

「あ、わたしはナカツ・チサだよ。よろしくね、シミズさん」

 

 リョウマに促されて、チサも挨拶する。

 

「はいそれじゃ、ホームルームはこれで終わり。イジメ問題とかになるのは勘弁ねー」

 

 担任がそれだけ言って、ホームルームは終了。

 それと同時にミヤビの元に質問攻めの嵐が……巻き起こることもなかった。

 ミヤビに対する興味の視線は確かに向けているのだが、特に大半の男子が自ら話しかけようとしないのだ。

 無理もない、相手は見目麗しい美少女である。

 下手には近付けまい、と男子達は互いを牽制し合い、ミヤビとは一定の距離を保っている。

 唯一積極的に動いている男子はハルタくらいだ。

 かく言うリョウマも、いくら担任に頼まれてとは言え、他の男子と同じように積極的に話しかけようとはしなかった。

 代わりと言うべきなのか、チサが最初に話し掛ける。

 

「改めまして……ようこそシミズさん、二年三組へ」

 

「えっと、ナカツさん……よね」

 

「うんうん、リョウくんから紹介された、ナカツ・チサだよー」

 

 緊張を押し隠しながらのミヤビに対し、チサは人懐っこい笑みと共に接する。

 

「そう言えば、リョウくんとシミズさんって、昨日どこかで会ったことあるの?」

 

「あぁ。チサと別れてから、『甘水処』に買い出しに行く途中で会ってな。シミズさんも甘水処に行こうとしてたらしいんだが、道に迷ってたみたいでな」

 

 ついでに案内しただけだ、とリョウマは頷く。

 

「そうなんだ。困ってる人がいたらすぐに助けたがるのは、リョウくんのいい癖だよね」

 

「癖ってなんだ癖って。悪い癖みたいに言うな」

 

「悪くなんて言ってないよ、褒めてるんだよ」

 

 チサのリョウマに対する接し方を見て少しだけ緊張が解けたのか、ミヤビは小さく笑う。

 

「オウサカくんとナカツさんって、仲良しなんだ?」

 

「そうだよ、幼馴染みだからね。仲が良いのはもちろんだよ」

 

 むふんと胸を張ってみせるチサ。

 彼女のおかげで場の空気が緩んだのを見計らって、今度はハルタが殊勝な態度で話し掛ける。

 

「先程は突然質問したりして申し訳ない、シミズさん」

 

「あ、えっと……ナガイ、くん?」

 

「おぉ、覚えていてくれたとは光栄だ」

 

 そのハルタから距離を置いた背後にいる男子達は「クッソォ、ナガイのヤツ抜け駆けしやがって……」と言う小声を羨望の視線と共にハルタの背中に叩き付けるが、その彼は意に介した様子は見えない。

 

「ところでシミズさん、つかぬことを聞いてもいいかな?」

 

「つかぬこと?……変なことじゃ、ないですよね?」

 

「普通のことさ。率直に訊かせてもらうと、彼氏はいるのかな?」

 

 シンッ……と教室の空気が沈黙する。

 の、直後。

 

「彼氏っ!?い、いないいない!私にその……彼氏とか恋人とかっ、いないですから!」

 

 慌ててミヤビは否定し、「彼氏いない」説は確定される。

 

「おいハルタ、シミズさんを困らせるようなことを訊くんじゃない」

 

 さすがにこれはまずいだろうと思い、リョウマは割って入る。

 

「何を言うんだい、彼氏彼女がいるかどうかを訊くのは、当然のことじゃないか。彼氏がいる相手にナンパをしても意味が無いだろ?」

 

 どこが悪い、と全く悪びれもせずに言ってのけるハルタ。

 

「あー、その、シミズさん。このハルタ(アホ)の言うことは無視していいからな」

 

「だ、大丈夫です、ちょっとびっくりしただけで」

 

 でも、とミヤビはリョウマと目を合わせる。

 

「その、出来たらいいなって思います。……恋人」

 

 前向きなミヤビに、チサはうんうんと頷く。

 

「シミズさんってすっごく可愛いから、きっとすぐに出来ると思うよ」

 

「や、やだ、そんなもう……」

 

 率直に物を言うチサに、ミヤビは照れたように頬を染めるが、そこでチャイムが鳴り響き、一時限目の授業のために質問タイムも一時終了だ。

 

 

 

 それから、休み時間の度にミヤビの質問タイムは続いた。

 とは言えそれは、主にチサが当たり障りの無いことをゆっくりと訊いているだけだ。

 なおかつチサ特有の"ゆるふわ"な柔らかい雰囲気が、自然とミヤビの緊張を解きほぐし、やがて他の女子生徒も話しかけていく。

 そうしていく内に交友を広め、放課後を迎える頃にはすっかりクラスの一員として迎え入れられていた。

 

「転校初日お疲れ様、シミズさん。どうだったかな?」

 

 帰りのホームルームが終了して、いの一番にミヤビへ話し掛けにいくチサ。

 

「うん、クラスのみんなも優しくて楽しい人ばっかりで……上手く、やっていけそうかな」

 

 最初こそ固さが抜けなかったミヤビも、チサのゆるふわな雰囲気に充てられてか、緊張らしい緊張感も見えない。

 その様子を尻目にしつつ、リョウマは手早く荷物を纏めて鞄を担ぐ。

 

「あ、リョウくん。この後、チサちゃんに学園案内してあげようと思うんだけど……」

 

「悪い、『甘水処』に提出するガンプラをそろそろ仕上げたくてな」

 

「あ、気にしないで気にしないで。それじゃぁ、また明日ね」

 

「明日と明後日は土日で休みだぞ」

 

「……そ、そうでした。いつもの流れでつい」

 

 てへへ、と小さく笑うチサ。

 

「んじゃシミズさんも、これからよろしくな」

 

 最後に、ミヤビにも。

 

「あ、うん。これからよろしくお願いします」

 

「あとはチサに任せた。それじゃ」

 

 軽く会釈して、リョウマは足早に教室を出る。

 

 

 

 

 

 翌日。

 今日は土曜日で、リョウマは登校の必要がないのだが、両親は共働きなので朝から家を空けている。

 なので、昼食は好きにしていいと言うことで現金を手渡されている。

 午前中は甘水処に展示用のガンプラを提出しに行き、午後はどうするかと言ったところだ。

 

「(ま、昼食と気分転換も兼ねて、どこか行くか)」

 

 そんなわけで、リョウマは鞄を片手に、懐には自転車の鍵を仕込んで外へ出た。

 

 

 

 自転車で十数分の距離にあるショッピングモール。

 そこの地下階にあるフードコートで食事をしようと考えたリョウマは、ハンバーガーとポテト、ドリンクのセットを購入し、さて空席はあるかと視線を左右させる。

 すると、見知った顔が二つ。

 

「あははっ、何それ変なのー」

 

「でしょ?そしたらね……」

 

 ミヤビとチサの二人が、楽しそうに談笑している。

 ふと、チサの視線がリョウマに向けられる。

 

「あ、リョウくん」

 

「えっ?」

 

 それにつられるように、ミヤビもリョウマを見やる。

 

「おっすチサ。シミズさんもこんにちは。そこの席、いいか?」

 

「うん、どうぞどうぞ〜」

 

 チサは椅子に置いていた自分の荷物をどかすと、リョウマのために空席を作る。

 悪いな、と一言入れてからチサの隣席に座るリョウマ。

 

「ところで、二人は遊びに来てるのか?」

 

 リョウマはハンバーガーの包装紙を解きながら、このショッピングモールに二人がいる理由を訊ね、チサがそれに答える。

 

「えっとね、今日の午前中にミヤビちゃんのお部屋の片付けを手伝おうって話を、昨夜にしててね。それでミヤビちゃんのお家に行ったんだけど、ミヤビちゃんのお部屋、普通に片付いてたの。わたしが手伝いに来た意味がないってくらい」

 

「そんなことないわ、チサちゃんのおかげで台所周りがすぐに片付いたもの。お母さんも大助かりって言ってたし。それで、片付けのお礼にお昼ごはんでもご馳走しようかってことになって……」

 

「ここでごはんにしてたら、リョウくんが来たってことだね」

 

 お互いに謙遜し合っているチサとミヤビだが、リョウマは二人の呼び方が昨日と異なっていることに気付く。

 

「経緯は分かったが……二人とも、下の名前で呼んでるんだな?」

 

「そうなの。せっかく友達になったんだから、名前で呼び合おうよってことになったの」

 

 ねー、とチサはミヤビににっこりと笑顔を見せる。

 

「名前で呼ばれるのは、ちょっとくすぐったいけど……そう言えばオウサカくんは、今日はどうしたの?」

 

 ミヤビは苦笑しながらも、今度はリョウマがここに来た理由を訊ね返す。

 

「ん、昼食と気分転換を兼ねて外出ってところだ」

 

 ハンバーガーにかぶりつき、ポテトを数本を口に放り込み、ドリンクでそれらを流し込んでいくリョウマ。

 

「それでね、この後はガンプラバトルしに行く?って話をしようとしてたんだけど、リョウくんも一緒にする?」

 

 リョウマが飲み込むのを見計らってから話しかけるチサ。

 

「ん、俺は構わない。シミズさんは?」

 

「私も大丈夫よ。三人一緒にってなると、ミッションモード?」

 

 ミヤビの言うミッションモードとは、決められたシチュエーションの中でNPCとバトルし、達成条件を満たしてクリアするモードだ。

 ソロプレイ用からマルチプレイ用のミッションも用意されており、ガンダム作品の原作再現からオリジナルミッションまで、様々なミッションを楽しめる。

 

「よし、それじゃこの後だな」

 

 リョウマはやや急ぎで残っているハンバーガーやポテトを食べていくが、チサに「ゆっくり食べないと喉詰まっちゃうよ」と諌められた。

 

 

 

 昼食の後はバトルブースへ向かい、三人揃ってシミュレーターを起動させていく。

 ミッションモードを選択、リョウマ、ミヤビ、チサの三人によるマルチプレイモードだ。

 通信回線を繋ぎ、リョウマは女子二人に話し掛ける。

 

「さて、どのミッションに挑むか?」

 

 最初にチサが「何でもいいけど、あんまり難しいのはちょっと……」と自信無さげに答える。

 それを聞いて、ミヤビも通信に割り込む。

 

「チサちゃんは、普段からバトルはしてないの?」

 

「うん、バトルはあんまり得意じゃないから、たまにやってるくらいかな。ライトユーザーって感じ?」

 

「そっか。じゃぁ、チサちゃんのことも考慮して……」

 

 ミヤビはタッチパネルでミッション画面をスライドさせていく。

 

「うん、これならどう?」

 

 彼女が選択したのは、『ムーン・アタック【エゥーゴシナリオ】』と言うミッション。

 原典作品は『Z』に当たり、月面都市フォン・ブラウン制圧を目的としたアポロ作戦を発動したティターンズと、それを迎え撃つエゥーゴとの戦いを再現したものだ。

 今回はエゥーゴ側でのシナリオなので、達成条件はボスユニットである『ガブスレイ』二機の撃破。

 

「アポロ作戦か。ガブスレイ二機が少し手間取るかもしれないが、大丈夫だろう。チサもいいな?」

 

「うん、多分大丈夫だと思う」

 

 リョウマとチサからのOKを確認してから、ミヤビは「じゃぁ、これにするわね」と頷いてミッションを決定。

 

 バトルフィールドは『フォン・ブラウン』に決定され、出撃だ。

 

「オウサカ・リョウマ、クロスボーンガンダムX1、出撃る!」

 

「シミズ・ミヤビ、ガンダムAGE-2、Stand up!」

 

 リョウマはクロスボーンガンダムX1、ミヤビはガンダムAGE-2、そして、

 

「ナカツ・チサ、『大喬ガンダムアルテミー』、行きまーす」

 

 チサは、そのSDガンダムのガンプラ、大喬ガンダムアルテミーを出撃させた。

 

 

 

 出撃完了し、月面へと着地する三機。

 

「チサちゃんのガンプラ、大喬アルテミーなのね」

 

 ミヤビは、チサの大喬ガンダムアルテミーを見やる。

 

「うん。わたし、SDガンダムとかこう言う簡単なのしか作れないから。ミヤビちゃんのガンプラも、淡紅色が可愛いよね」

 

「ありがと。この色って調色が難しくて……」

 

 女子二人が通信越しに仲良くお喋りしているが、リョウマはミヤビのガンダムAGE-2――正確にはそのカラーリングに既視感を覚えていた。

 

 淡紅色のガンダムAGE-2。

 

「(まぁ、色を変えるだけなら、それほど難しいことじゃないしな)」

 

 単なる偶然だと納得してから、リョウマは女子二人の会話を遮った。

 

「談笑しているところ悪いが、来たぞ」

 

 アラートが反応し、低軌道上に展開しているティターンズ艦隊からMS部隊が発進してくる。

 マラサイが二機とハイザックが四機、それぞれ小隊となって向かってくる。

 

「俺が先行する」

 

 リョウマは操縦桿を押し上げ、クロスボーンガンダムX1を加速させる。

 ザンバスターを両手で構えさせ、スコープを覗く。

 まだオートロックオン可能な距離ではないが、リョウマはカーソルをマニュアルで合わせ、ハイザックの一機に狙いを付け――

 

「……そこだ!」

 

 迷いなくトリガーを引き絞る。

 銃口より放たれたビームは、まだ遠方にいるハイザックの中心を寸分違わず撃ち抜き、爆散させてみせた。

 

 ハイザック、撃墜。

 

「まずはひとつ」

 

 続いてもう一機狙撃しようと動くが、マラサイ・ハイザック部隊はすぐに散開した。

 

「そう簡単にはいかないか」

 

 狙撃の体勢を解き、通常戦闘の構えを取るリョウマ。

 いよいよ双方が双方をロックオンし始め、本格的な戦闘が始まる。

 

「行くよ、AGE-2!」

 

 ミヤビはガンダムAGE-2をストライダーフォームに変形させ、敵部隊の側面に回り込んでいく。

 

「よーし……攻撃、開始!」

 

 チサの大喬ガンダムアルテミーは、手にした琴――『三色響阮』からガトリング砲を展開すると、正面に向かって速射を開始する。

 側面からはガンダムAGE-2、正面からはガトリング砲の銃弾が迫る中、二手に分かれて迎え撃つ敵部隊。

 しかしその内の一機はガトリング砲をまともに受け、爆散した。

 

 ハイザック、撃墜。

 

 もう一方であるミヤビのガンダムAGE-2は、マラサイの放つビームライフルを掻い潜りながらもハイパードッズライフルを発射、マラサイの腹部を貫き、さらにその奥にいるもう一機のハイザックの右腕をも破壊してみせた。

 

 マラサイ、撃墜。

 

 ドッズライフルを始めとする、DODS効果を纏ったビーム兵器の強みは防御耐性への貫通力だけではない、このように位置関係とタイミングさえ合えば、一度の射撃で複数の敵機を攻撃することも可能なのだ。

 

「シミズさんはともかく、チサも久しぶりなのにやるな」

 

 俺も遅れは取るまい、とリョウマは再びロックオンカーソルをマニュアルで合わせ、マラサイの一機を正確に撃ち抜く。

 

 マラサイ、撃墜。

 

 残りは二機。

 チサの大喬ガンダムアルテミーはガトリング砲の射撃を敢行、ザクマシンガン改を連射するハイザックをハチの巣にし、最後の一機も、ミヤビのガンダムAGE-2がハイパードッズライフルで仕留めてみせた。

 

 これにて敵部隊は全機撃破。

 

 続いて強敵であるガブスレイ、それが二機だ。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 しかし、待てど暮らせどミッションは進行しない。

 

「なんか、止まっちゃった?」

 

 チサは小首を傾げている。

 

「ロード中……にしては、長いわよね?フリーズ?」

 

 ミヤビも同じように戸惑っている。

 

「……いや、制限時間は止まっていないな」

 

 リョウマは制限時間を確認して、それが止まっていないことを確認する。だが、正常な状態ではないだろう。

 

 不意に、アラートが新たな敵機の出現を告げる。

 ティターンズ艦隊の旗艦であるドゴス・ギアからではない、別方向からだ。

 

 紅色と紺色の二色で構成された色合いに、左右非対称の腕の右手は巨大な鉤爪になっており、華奢に見える腰部に反して大型のスカートアーマー。

 

 人型と言えるかどうかも怪しい、その異形の機体は。

 

「……『バウンド・ドック』だと?」

 

 何故あの機体が、とリョウマは目を細める。

 

 原作では『Z』の終盤に登場した強化人間専用機であり、ゲーツ・キャパ、ロザミア・バダム、ジェリド・メサ(強化人間ではないジェリドは恐らく自身の操縦技術だけで乗りこなしている)の三名が搭乗している。

 

「隠しボス……ってわけじゃないよね?」

 

 ミヤビも、不意に現れたバウンド・ドックの存在に警戒している。

 

「な、なんか変なのが来てるよ?」

 

 バウンド・ドックを「変なの」と言うチサ。狼狽えがシンクロしているのか、大喬ガンダムアルテミーが首を右往左往している。

 

 変なの呼ばわりをされたからかどうかは不明だが、バウンド・ドックはおもむろに左腕を向け、モノアイを覗かせるアーマーの側部に取り付けられた拡散メガ粒子砲を炸裂させた。

 

「来るぞ!」

 

 リョウマは即座に操縦桿を跳ね上げてクロスボーンガンダムX1をメガ粒子砲の範囲から逃れ、ミヤビのガンダムAGE-2も咄嗟にストライダーフォームへ変形して急速離脱する。

 が、チサだけは反応が遅れてしまい、直撃こそ避けられたものの、大喬ガンダムアルテミーは右腕と左足を破壊されしまった。

 

「あっ!?」

 

 三色響阮も破壊されて、大喬ガンダムアルテミーは攻撃手段を失った。

 バウンド・ドックは続いて追い討ちをかけようと、ビームライフルを放つが、その間にクロスボーンガンダムX1が割り込み、ビームシールドで防ぐ。

 

「シミズさんはチサを頼む!奴は俺が食い止める!」

 

「っ、了解!」

 

 ミヤビはガンダムAGE-2を反転、ストライダーフォームの状態で右腕だけ変形させると、損傷した大喬ガンダムアルテミーを掴んで、フォン・ブラウンの市街地近くまで連れて行く。

 

 それを見送りつつ、リョウマは即座にバスターガンとビームザンバーを連結させ直してのザンバスターを撃ち返す。

 しかし、バウンド・ドックの装甲はかなり強固らしく、ザンバスターのビームを直撃しようとも損傷らしい損傷が見られない。

 

「……X1の火力じゃ歯が立たないか」

 

 原作でも、百式やZガンダムのビームライフルを数発直撃しようともほぼ無傷、戦艦の核融合炉の爆発に巻き込んでようやく破壊に至ったほどだ。

 そうなれば必然的に近接攻撃を叩き込まねばならない。

 バスターガンを切り離してサイドスカートに納め、ビームザンバーを構え直す。

 

 すると対するバウンド・ドックも上半身を折り畳んで脚部を前方に向けたMA形態へと変形、一気に加速するとビームライフルと拡散メガ粒子砲を織り交ぜた波状射撃でクロスボーンガンダムX1へ攻めたてる。

 

「クソッ、接近させてくれないな……ッ」

 

 恐らく接近戦をされることを嫌ってMA形態へ変形し、一撃離脱戦法を取るのだろう、なかなか意地の悪いAIが組み込まれているらしい。

 

 回避とビームシールドによる防御で被弾を避けていくリョウマだが、このままではどこかのタイミングで被弾するだろう。

 A.B.Cマントも、ビームライフルならまだしも拡散メガ粒子砲を受ければ確実に貫通される。

 

「(であれば……)」

 

 メガ粒子砲の嵐を掻い潜りつつ、リョウマは策を巡らせる。

 勝負はバウンド・ドックが距離を詰めて来た時だ。

 離脱したバウンド・ドックが反転し、再びビームライフルと拡散メガ粒子砲をばら撒いてくる。

 リョウマはそれらを冷静に回避しつつ、ウェポンセレクターを回し――

 

「そこだ!」

 

 バウンド・ドックとニアミスするその寸前に、クロスボーンガンダムX1は左のフロントスカートを開き、シザーアンカーを射出、バウンド・ドックの後部に咬み付いた。

 それを確認すると同時にワイヤーを引っ張り上げ、バウンド・ドックを離脱させない……はずだった。

 

「ぐっ!?」

 

 しかし、MA形態のバウンド・ドックの推進力はクロスボーンガンダムX1を上回っていた。

 シザーアンカーに咬み付かれようとも構わず加速するバウンド・ドックに、クロスボーンガンダムX1は振り回される。

 

「……だが、捕えたぞ!」

 

 振り回されながらも、クロスボーンガンダムX1はシザーアンカーのワイヤーを巻き取り、バウンド・ドックとの距離を詰めていく。

 ビームザンバーの間合いにまで詰め寄った時、不意にバウンド・ドックは折り畳んでいた上半身を展開し、『下半身だけMAのままで』ビームサーベルを抜き放ってきた。

 

 ビームザンバーとビームサーベルを打ち付け、弾かれ合う。

 

 クロスボーンガンダムX1は左手のバスターガンを捨て、ビームサーベルを抜き放ち様に振り上げるものの、それより先にバウンド・ドックが右腕のクローアームでそれを掴み、握り潰してしまう。

 

「まずいかっ」

 

 片腕を失うクロスボーンガンダムX1。

 距離を取ろうにも、シザーアンカーを切り離さなければならないが、この間合いを逃すわけにもいかない。

 続いて振り下ろされるビームサーベルをビームザンバーで弾き返す。

 だが間髪なくバウンド・ドックは下半身を回転させて右脚部クローを振り上げ、クロスボーンガンダムX1のボディを掴んだ。

 

「くっ、こいつ……!」

 

 メギメギと嫌な音を立てながらクロスボーンガンダムX1のボディが軋む。

 頭部バルカンを速射させて抵抗するものの、ビームライフルも通らない装甲にバルカンなど豆鉄砲のようなものだ。

 ダメージが重なり、リョウマのコンソールが黄色い『CAUTION!!』の表示をがなり立てる。

 このままではバイタルバートを潰されると分かっていても事態を好転出来ない。

 

 しかし不意に、バウンド・ドックの右足にビームが炸裂――DODS効果を伴ったそれは、ザンバスターでは効かなかった装甲を突き破ってみせた。

 

「オウサカくんっ!」

 

 チサの大喬ガンダムアルテミーを避難させていた、ミヤビのガンダムAGE-2が戻って来て、ハイパードッズライフルで狙撃してくれたようだ。

 

「すまんシミズさん、助かった」

 

 リョウマはミヤビに礼を言いつつ、制御の途切れたクローアームを引き剥がした。

 バウンド・ドックの頭部がガンダムAGE-2を一瞥すると、ビームサーベルでシザーアンカーのワイヤーを切り、その場から飛び下がってイニシアティブを取り直した。

 損傷させている今、MA形態に変形しても満足な速度は出せないだろう。

 

 互いに体勢を立て直している最中、リョウマはミヤビと接触通信を行う。

 

「チサは?」

 

「遮蔽物に隠してきたから、流れ弾が飛んできても大丈夫だと思う」

 

「よし……ならシミズさん、アテにさせてもらう」

 

「あんまり頼られると困るけど……任せて」

 

 すると、二機もろとも仕留めようとバウンド・ドックが左腕の拡散メガ粒子砲を向けてくるが、クロスボーンガンダムX1とガンダムAGE-2は即座に散開し、拡散メガ粒子砲からを逃れる。

 

「私が牽制する!」

 

 ミヤビはガンダムAGE-2をストライダーフォームへ変形させ、バウンド・ドックの側面へ回り込みつつビームバルカンを浴びせ付ける。

 バウンド・ドックにはほぼ無力なビームバルカンだが、バウンド・ドックの注意がミヤビに向けられ、ビームサーベルを納めると同時にビームライフルへ持ち直して連射する。

 そうしている間にも、リョウマのクロスボーンガンダムX1はビームザンバーを構え直してバウンド・ドックへ肉迫する。

 バウンド・ドックの対応も早く、またもビームライフルからビームサーベルへ持ち替えて、クロスボーンガンダムX1を斬り裂こうと振るう。

 リョウマは冷静にこれをビームザンバーで受け流し、すぐに飛び下がり、右フロントスカートのシザーアンカーを開き、それをビームザンバーに挟み込ませ、

 

「こう言う攻撃だってある!」

 

 ワイヤーを振り回して、西部劇の投げ縄(ローピング)のようにビームザンバーを放つ。

 バウンド・ドックはこの攻撃をビームサーベルで弾き返すが、リョウマは続けざまに攻撃を仕掛ける。

 右腕のブランドマーカーを切り離し、それを空いた右手に掴むと同時にビームシールドを発生させ、

 

「喰らえ!」

 

 ビームブーメランのように回転させながら投げ付けた。

 バウンド・ドックはこれもビームサーベルで斬り弾こうとするが、ビームシールドであるためそこでメガ粒子同士の干渉が生じる。

 

 ――それが、リョウマの狙いだ。

 

「今だシミズさん!」

 

 リョウマはミヤビに呼び掛けた。

 それに応じるように、ガンダムAGE-2はストライダーフォームからMS形態へ変形、同時にハイパードッズライフルをバウンド・ドックへ向ける。

 バウンド・ドックはビームシールドに足止めされている。

 ミヤビはロックオンカーソルをバウンド・ドックのバイタルバートへ合わせ――

 

「当てて見せる!!」

 

 迷いなくトリガーを引き絞った。

 螺旋状に放たれたビームは真っ直ぐにバウンド・ドックを貫かんと迫る。

 バウンド・ドックは右腕のクローを盾代わりにして防ごうとするが容易く貫ぬかれ、肩口を抉られる。

 

 だが、そのガードによって威力が減衰したのか、バウンド・ドックのボディを貫通するには至らなかった。

 

「……仕留め損ねた!?」

 

「いいや、ナイスだシミズさん……!」

 

 ミヤビは仕留めきれなかったことに目を見開くが、リョウマはすぐに行動に出ていた。

 シザーアンカーに繋がれたビームザンバーを回収していたクロスボーンガンダムX1は、既にバウンド・ドックの右側――ノーガードの側から回り込んでおり、

 

「これでっ、終わりだ!!」

 

 バウンド・ドックの右肩口にビームザンバーを突き刺し、そこへバルカン砲を撃ち尽くさん勢いで撃ちまくる。

 装甲内部に銃弾を叩き込まれ、バウンド・ドックは何度も爆発を起こし、ついに爆散していった。

 

『オウサカ・リョウマめ……!』

 

「!?」

 

 バウンド・ドック、撃墜。

 

 爆散に吹き飛ばされたクロスボーンガンダムX1だが、すぐに姿勢制御してみせる。

 

「(今の声はなんだ……それに、どうして俺の名前を?)」

 

 同時に、『Mission Clear!!』表示がファンファーレと共に表示された。

 

 

 

 リザルト画面を見流しつつ、リョウマは一息ついて操縦桿から手を離した。

 

「ふー……」

 

 スマートフォンとクロスボーンガンダムX1を回収して、両隣にいた二人を見やる。

 ミヤビは安堵に胸を撫で下ろしており、チサは活躍出来なかったのか気落ちしている。

 

「二人ともお疲れさん。何とかなったな」

 

「オウサカくんもお疲れさま」

 

「うー、わたしヘボヘボさんだったよ……」

 

 バウンド・ドックに戦闘力を奪われた挙げ句、二人に助けてもらったからだろう、チサは落ち込む。

 

「まぁ、気にするなよチサ。そう言うこともある」

 

 だが、とリョウマは目を細めた。

 

「本来のエネミーであるガブスレイ二機は出てこなかった。それに、あのバウンド・ドックの強さは明らかに設定レベルを越えていた。……なにかおかしいと思うのは、俺の穿ち過ぎか?」

 

 チサもそれに反応する。

 

「隠しボスとかじゃないなら……あんまり想像したくないけど、誰かが不正なアクセスで乱入したとか?」

 

 ミヤビも話に寄ってくる。

 

「可能性としてはあり得るわね。でも、何が目的で……?」

 

 女子二人がどういうことかと悩んでいる中、リョウマは引っ掛かりを感じていた。

 

「(仮にあのバウンド・ドックが、俺を狙って乱入したとしても、相当システムに精通してなければ、個人を特定して乱入なんて出来ないが……?)」

 

 一抹の不穏さを感じつつも、バトルは終わったと言うことで、三人はバトルブースを後にした。

 

 

 

 その後は、ミヤビとチサのウインドウショッピング巡りや、おやつにアイスクリームを食べたりとしている内に、辺りは茜色に染まりつつあった。

 

「っと、もう夕方か」

 

 リョウマがそう言うと、ミヤビとチサも時刻を確認した。

 

「あ、もうこんな時間……」

 

「うーん、もう少し遊びたいけどしょうがないね」

 

 リョウマはともかく、女子二人は門限などもあるだろう。

 ショッピングモールを出て、リョウマは駐輪場へ向かう。

 

「二人は電車で来てるんだな?」

 

 番号を入力し、自転車の鍵を開けて引き出しつつ、リョウマはチサに問い掛ける。

 

「うん。さすがに自転車でここに来るのは大変だし……リョウくんは普通に自転車で来てるけど」

 

「交通費をケチりたいんだよ」

 

 そう言いつつも、リョウマは女子二人を駅の改札近くまで送る。

 

「じゃぁオウサカくん、また週明けに学園でね」

 

「ばいばいリョウくん」

 

「あぁ、二人とも気を付けてな」

 

 軽く手を振り合ってから、リョウマは自転車のペダルを踏み込んだ。

 

 ――あのバウンド・ドックの乱入に、どこか心に影を落としながら。

 

 

【次回予告】

 

 リョウマ「さてと、俺のX1もそろそろ改良とか考えないとな」

 

 アイカ「おぉ、リョウマ。ちょうどいいところに。近々にアルバイトを一人雇うんだが、その新人教育をお前に任せようと思ってな」

 

 リョウマ「おいこら、俺はいつから甘水処の従業員になったんだ」

 

 アイカ「まぁそう言うな。お前ぐらいしか頼める相手がいなくてな。しかも、お相手は可愛らしい美少女だ。断る理由は無かろう。というわけで頼んだぞ」

 

 リョウマ「次回、ガンダムブレイカー・シンフォニー

 

『新人教育、始めます』

 

 勝手になし崩し的に決められてしまった。解せぬ」

 

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