ある朝、俺は死んだ。
何の前触れがあったわけでも無く、学校までの道中の見通しの悪い十字路で、まるで恋愛漫画の主人公のようにぶつかってしまったのだ。
ヒロインでは無くトラックに。
そんな風にしてある意味運命の出会いをしてしまった俺は、気づけば全くもって見知らぬ場所に立っており、目の前には「神」がいた。
…何を言ってるのか分からねーと思うが、俺も何が起きたか分からなかった…
ただ、神であるとしか思えないほど神々しい雰囲気を纏った存在が目の前に現れたことだけは確かで、そんな予想外の出来事の連続に混乱した俺だったが、直後に状況を理解した。
…理解させられた。
自分がトラックとの事故で即死し、転生までの中継としてこの場にいるのだということを、何を話すわけでも無く、まるで脳に直接情報が送り込まれたように、強制的に理解させられたのだった。
いわゆる異世界転生か、と自分でも驚くほど落ち着いて考え、そして不安になった。
異世界転生ものの主人公の多くは、ドラゴンや魔王のようなとてつもなく強大な敵と戦闘をする。
平和な日本で生きてきた自分にはそれがとてつもなく恐ろしく感じられ、
「できるなら、また日本で健康に暮らしたいなぁ…」
と呟いた。
すると目の前の神は
「いいだろう」
と一言だけ言い、その直後に俺は意識を失ったのだった。
再び俺が意識を取り戻すと、そこは暗くほんの少しだけピンクっぽい様子の狭い空間であった。
転生したということはここは母親の胎内なのだろうと納得し、そのままじっとしていると、近くから恐らく男女であるだろうと思われる2人の話し声が聞こえてきた。
きっと今話している2人が自分の両親なのだろうと思い、その会話を聞いていると、あまり内容は聞き取れなかったが、どうやら2人はとても喜んでいるようであった。
それを聞いているとなんだか自分も嬉しくなってきて、
「きっとこの両親はいい人達だ」
と、何の根拠も無い考えが浮かび、ワクワクしながら自分が生まれるのを待っていると、突然自分のすぐ隣を勢いよく刃が通り過ぎた。
あまりに唐突な出来事が起きたことへの驚愕と、一歩間違えれば自分が真っ二つになっていたことへの恐怖とで、赤ん坊となっていた俺は大声で泣き出してしまった。
そして俺の存在に気づいたお爺さんは、慌てた様子で俺を持ち上げ、近くにいたお婆さんとひとしきり騒いだ後、満面の笑みを浮かべてこう言った。
「この子は子供ができない儂らのために、神様が与えて下さった子供であるにちがいない!」
その言葉にお婆さんも同意して
「それではこの子の名前を考えなきゃいけませんね。」
と言った。
そして2人は少し考えた後、
「桃から生まれたのですから桃太郎という名前はどうでしょう?」
とお婆さんが言うと、お爺さんもそれに同意して
「それがいい!そうしよう!」
と言った。
その日本人なら誰もが聞いたことのあるだろう名前に驚き、先ほどまで自分がいたであろう場所を見てみると、そこには見たことも無いほど大きな桃が真っ二つにされた状態で置いてあったのだった。
それを見て、俺は
「桃太郎かよ!!!」
と内心でつっこみ、先ほどまでよりもさらに大きな声で泣き出してしまったのだった。
深夜テンションで書いたので続きません