マチカネフクキタルのお話です。

1 / 1
マチカネフクキタルの神様ごっこ

マチカネフクキタルは生きていて不満を感じたことがあまりない。

あれが欲しいと思えば大体のものは貰えたし、不要だと思ったものはみんな自分から消えていった。

 

マチカネフクキタルはそれが不満だった。

 

あるとき、マチカネフクキタルはこう思った。

お姉ちゃんなんかいなければいいのに。

 

彼女は一時の意地悪な考えで、瞳を閉じて祈った。

 

全てそのようになった。

 

不満が無いことが不満と言うのは矛盾しているかもしれないが、事実そうだった。

 

マチカネフクキタルは退屈していた。

 

マチカネフクキタルのおでこには一本の溝のようなものがあった。

本人はそんなに気にしていなかった。

 

マチカネフクキタルの特技として、目を閉じると他人がどう思っているか大体わかるということがある。

この特技のおかげで、色々なことを乗り越えてきた。

 

トレセン学園に入学できたのもそのおかげだ。

 

マチカネフクキタルは目を閉じてみる。

 

色々な感情がもやのように人にかかっているイメージが浮かぶ。

 

ああ、あそこにいる二人は、つっけんどんな態度をとりながらも、お互いを愛しているんだなとか。

逆に、あそこの二人は、お互いのことを何とも思っていないから、一緒にいられるんだなとか。

 

マチカネフクキタルは模擬レースを走り、理想のトレーナーを見つけることを望んだ。

彼女は1位を望んだ。

 

全てそのようになった。

 

彼女のトレーナーは彼女自身の理想ともいえる人だった。

マチカネフクキタルはその人から愛してもらえるよう望んだ。

 

全てそのようになった。

 

 

マチカネフクキタルはいろいろなレースを走った。稀代の名バとなれるように彼女は毎日祈った。

 

彼女は、トレーナーがトレーナーであり続けるように願った。

 

全てそのようになった。

 

 

 

マチカネフクキタルは少し疑問に思った。

 

なぜこうも人生は思い通りに行くのだろう。

 

世の中の人たちが語ることは、大体、自分の思い通りにならないから吐き出された言葉だ。

 

マチカネフクキタルはそんな人たちを内心憐れんでいた。

 

マチカネフクキタルは退屈していた。

 

 

ふと思って、目の前のウマ娘がこう喋ったらいいなと考えた。

 

マチカネフクキタルは望んだ。彼女が”アンタアタシのことをバカにしてたんだろ?”と叫ぶことを。

 

全てそのようになった。

 

 

マチカネフクキタルはその結果に驚いた。

いや、最初から気づいていたのかもしれない。

マチカネフクキタルは考えた。

 

私は神様なのではないか?

 

マチカネフクキタルはいろいろなことをした。

 

ジェフ・ベゾスに全資産を世界中に寄付させたり、イーロン・マスクに自身を宇宙旅行に連れていく計画をさせたり、ドナルド・トランプに地球は平面である、と言わせたり。

 

ただそんなことばかりじゃない。身近なウマ娘の人生を壊させたり、逆に人生を救って見せたり、そんなことをした。

 

全てそのようになった。

 

色々な人がマチカネフクキタルのおかげで幸せになり、彼女のおかげで不幸にもなった。

 

マチカネフクキタルはトレーナーともっと進展した関係になることを望んだが、トレーナーは新たなウマ娘ばかり見ていた。

彼女が彼にトレーナーであることを望んだからだ。

 

その姿を見て、彼女は大きな不満を感じた。

 

世界が止まってしまえばいいと思った。

 

 

 

全てそのようになった。

 

 

 

彼女がそう望んだ瞬間、全てのものの動きが止まった。

 

空を見上げる。空は晴れている。だが太陽の暖かさを感じない。

 

木の葉が空中に止まっている。風が吹いていたのだろうが、空気の流れを感じない。

 

世界には、マチカネフクキタル以外に動いている者はいなかった。

 

マチカネフクキタルはぞっとした。

 

これでは、私が世界を殺してしまったのも同然だと思った。

 

マチカネフクキタルは急いで誰かを探した。

 

近くにはゴールドシップがいた。

 

マチカネフクキタルは願った。彼女が再度動き出して、私に話しかけますように。

 

全てそのようになった。

 

ゴールドシップがこう言うように、彼女は願った。

 

マチカネフクキタルじゃねぇか。

 

ゴールドシップは続けた。

 

額の目の調子はどうだ?

 

額の目? マチカネフクキタルは考えた。

 

いや、最初から分かっていたのかもしれない。

 

マチカネフクキタルが瞳を閉じて願うとき、額が開くような感覚がした。

 

私の目は開いていますか? 彼女に伝わるようにマチカネフクキタルは祈った。

 

開いてるよ、そう答えるようにマチカネフクキタルは望んだ。

 

マチカネフクキタルは考えた。

 

私の願いの及ばない場所が、世界にあるのだろうか?

 

マチカネフクキタルは旅に出ることにした。

 

中国の微動だにしない人混みに紛れてみたり。

 

ドイツの城に行って召使いを呼んでみたり。

 

色々なことをしたけれど、彼女の願いの及ばないところはなかった。

 

彼女は最後にアメリカに行った。

 

アメリカのフロリダ、ケネディ宇宙センターに向かった。

 

マチカネフクキタルは宇宙に行ってみることにした。

 

 

イーロン・マスクは言っていた。彼女に言わされたことだが。

外宇宙まで届く、史上最大のロケットを作る。

 

全てそのようになった。

 

マチカネフクキタルはちょっと怖かった。

ロケットが壊れないように彼女は祈った。

 

全てそのようになった。

 

ロケットは轟音を立て、空に飛び上がる。

 

ぐんぐんと空へと上がり、地上は段々と遠くなっていった。

 

マチカネフクキタルは、重力が落ち着いてくる頃に、窓から下を見上げた。

 

そこに映っていた地球は、丸くなく、絵に描いたように平らだった。

 

どんどんとロケットは飛んでいく。

 

マチカネフクキタルは、このロケットはどこへ向かうのだろうと思った。

 

マチカネフクキタルはどこか安心していた。

 

このまま、何もなくなってしまえばいいと思った。

 

全てそのようになった。

 

 

 

マチカネフクキタルは強い衝撃を感じた。

 

ロケットが瓦解する。

マチカネフクキタルが宇宙服を着る前に、彼女は宇宙に放り出された。

 

月が見える。

 

マチカネフクキタルはその月の美しさに考えを奪われていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ふとその奥を見てみると、ロケットが透明な箱の壁のようなものに突き刺さっていた。

 

壁に刺さったロケットから、だんだんと世界が白くなっていくのを感じる。

 

 

全て、マチカネフクキタルが望んだことだ。

 

マチカネフクキタルはこのまま、全てが消えていくことを望んだ。

 

マチカネフクキタルは地球に落ちていく。

 

平らな地球には重力なんてないはずなのに。

 

マチカネフクキタルは暖かさを感じた。

 

時間が停止してから、全く感じなかったものを感じた。

 

マチカネフクキタルは、安心して目を閉じた。

 

__________

______

____

 

マチカネフクキタルが目を覚ますと、彼女は真っ白な箱の中にいた。

 

狭い箱の中に彼女は閉じ込められていた。

 

最初からそうだったのかもしれない。

 

マチカネフクキタルは少し考えてみた。

 

自分が神様だというのなら。

 

マチカネフクキタルは小さい箱が現れることを望んだ。

 

全てそのようになった。

 

箱の中は真っ暗で、中身が見えなかった。

 

彼女はその箱の中が光で満たされるように願った。

 

全てそのようになった。

 

彼女は次に海を作った。

 

彼女はその次に陸を作った。

 

彼女はそれを見て良しとした。

 

次に草を、次に木を、次に季節を、次に昼夜を作った。

 

彼女は海を生き物で満たそうとした。考えうる限りの生き物を海に作った。

 

彼女は陸を生き物で満たそうとした。考えうる限りの生き物を陸に作った。

 

彼女は、そのあとに人間を作った。

 

男を作った、女を作った。

 

それはトレーナーと、マチカネフクキタルに似ていた。

 

彼らが生んで増え、地を満たすことを彼女は望んだ。

 

全てそのようになった。

 

マチカネフクキタルはそれを見て、良しとした。

 

 

マチカネフクキタルは疲れたので横になった。

 

しばらくすると箱の中で色々な音がする。

 

肉と肉が、骨と骨がぶつかる音。

 

鉄がぶつかり合う音。

 

何かが破裂するような音。

 

焦ってマチカネフクキタルが箱を見ると、増えた人間たちが殺し合っていた。

 

曰く、殺し合うことはマチカネフクキタルの意思らしい。

 

マチカネフクキタルはそんなことを望んでいないと言った。

 

その言葉は箱の中に通じなかった。

 

小さい人間たちが争う間、マチカネフクキタルは変な感じがした。

 

この感情は何なのだろうと思った。

 

思い通りにならないから怒っているのだろうか?

 

望んでもいないことを行う者に失望しているのだろうか?

 

滑稽に争う者たちを笑っているのだろうか?

 

いや、そうじゃないとマチカネフクキタルは思った。

 

 

私は彼らを愛している。

 

 

思い通りにならないことを、泣いたり、笑ったり、怒ったり、喜んだりしながら、マチカネフクキタルはその小さな世界を愛そうと思った。

 

マチカネフクキタルは歌った。彼らが、彼女らが生まれてきてから、きっともっといろいろなことをするだろうから、それで希望を失わないように。

 

「ぼくらはみんな 生きている」

「生きているから 歌うんだ」

「ぼくらはみんな 生きている」

「生きているから かなしいんだ」

 

 




白亜紀ジュラ紀 インダスエジプト
地球はまわる まわるよまわる

___________

相対性理論 - おはようオーパーツ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。