江戸の大火の中でカラスとたわむれる話です。おもしろいです。

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カラスの群れと江戸の大火

「一揆!一揆!」

 

夕焼けのころ、ぼくは江戸の町で騒いでいる百姓どもを尻目に優雅に茶をすすっていた。

 

この茶は玉露でありとてもおいしい。まろやかな香りとあたたかな味に体中をポカポカせしめて、肩が脱落したように、いきなり心が休まってくる。玉露に含まれるカテキンだかテアニンだかカフェインだかの作用のせいだろうか。とにかく落ち着いてくるのである。

 

荒れ狂う農民がバタバタと足を踏み鳴らして、ほとんど地響きのようになっている。

 

あたりは火が轟々と燃えひろがって、一揆に参加していない一般市民層は阿鼻叫喚の地獄のようだ。

 

茶をすすりながら、これは銀魂の銀さんだとか、ワンピースのルフィのウイスキーピークで茶を和んでいる状態のお話の類型なのではなかろうかと感じ始める。狂騒のさなかに落ち着き払うさまは少年ジャンプ特有のものなのか?と思い至る。

 

ぼくはストーリーを広げることができない。

 

制約に縛られてしまうのがこの上なく嫌いだ。論理的・合理的、どうでもよろしい。きみは外連味(けれんみ)を知っているか。ハッタリやゴマカシのことだ。物語では論理よりおもしろさが優先される。

 

江戸の町で茶をすすっているからなんだというのだ。そこに火の手をあげるイベントを発生させて、なにがおもしろいのだというのだ。ただ燃え盛って悲しく、人によっては江戸の三大大火を思い起こす、それのみのクソセンテンスになってしまう。

 

ところでクソとはうんちのことだ。

 

カラスが空を舞っている。

 

カラスが上から俯瞰して江戸の町を見渡すと、そこにはぼくがいた。

 

ぼくは茶をすすっていたようだ。煉獄の炎の中でも落ち着き払っているように見えるそのさまは異質かと、カラスは焼き鳥になることも辞さないような面持ちでぼくの方に向かい始めた。カラスは焼き鳥になった。

 

フェニックスだ。

 

そう、焼き鳥はフェニックス。

 

カラスはぼくの肩の上に乗る。あぁなんだ、この文章はサイエンス・フィクションだったのか。

 

いいえ、誰でも。

 

燃え広がる炎は美しい。プラズマだかなんだか知らないが、目の前が高温になる。茶のせいだろうか。そんなわけがない。炎のせいだろう。

 

カラスはまるでそれが当然だろうと誇るようにカァと鳴いた。やっぱりぼくは還らなければいけないのかもしれない。

 

ぼくは形而下の存在か。

 

いいえ、誰でも。

 

同じ言葉を繰り返して楽しいのか。それほど楽しくもない。

 

カラスがぼくの方を見る。

 

すると農民の1人が土足で、ぼくがくつろいでいた茶屋の中に上がってきた。ぼくはそれはもうびっくりとした。

 

「あつぅい!」

 

農民はそれだけ言い残して、農民は倒れ伏して動かなくなった。農民はもうぴくりとも動かない。

 

こういうことはよくある。

 

よくあるのだが、人間は目の前で何か事故が起きなければ認識できないものだ。そこに関係性を感じなければいけない。たとえばロヒンギャ虐殺を見よ。きみの一部は調べようともしない。

 

仮に近きにいたとしても、近くて遠いような、まるで現代の親戚関係のようだと、結局無関係だと認識する。極めてクローズドな世界だ。

 

人間は物語に影響を及ぼさないことを確認した。

 

それにともなって、カラスはぼくの方をそのまま見たまま祈りはじめた。

 

このカラスは特に声を発して話したり、人間に語りかけることはない。なぜならカラスは話せないからだ。

 

カラスの祈りは尊い。

 

意味を見出そうとするのではない。ただ感じればそれでいい。支離滅裂さ・矛盾さを楽しむのがおもしろいのだ。そのとおりだ。

 

「カァ」という鳴き声が聞こえた。別の鳴き声だ。

 

ふと空を見上げると、そこにはカラスの大群がいた。

 

群れ。

 

群れだ。

 

群れ。それも大きな。

 

鳴き声が共鳴しはじめて喧騒になりはじめた。火の手の轟音や、人々の阿鼻叫喚も忘れてはいけない。3つの大きな音の群れが、オーケストラのようにまろやかなハーモニーを作り出し始めた。

 

群れを認識するとき、ぼくたちは「群れ」と認識する。実体は先のカラスのような神的存在の集合体だったとしても、「群れ」と認識した瞬間その神聖さが失われる。哀れな情報脱落によって、大したことのない存在のように思える。

 

群れのカラスは、めいめいに同じように茶を飲んでいる別のぼくを見つけて、同じようになんらかの運命を悲観したのか、それぞれが祈りを捧げ始めていった。こういうことを一般化という。

 

間違っているのか?大したことのない存在だと思うことが。カラスが大した存在ではないというのか。

 

ぼくの中でも、髪の色が比較的ぬれがらす色、つまりすごく黒い髪の毛をしたぼくがいる。

 

そういうぼくは、神的存在のカラスの中でもやはり人気があるらしい。1箇所だけ、カラスが7羽ぐらいいる謎ポイントが誕生している。人間は見た目なのか?カラスは大した存在なのだ。

 

一方で、カラスがいない、ただただ茶を飲んでいるだけの貧しいぼくもいる。そうしたぼくのところにカラスが飛んでくることはない。鳩の巣原理的にしようがないことだ。哀れな並行世界だ。

 

物語が発散し始めてきた。一揆と江戸の火から、わけのわからない道を経て、こうした文章がひねり出されるというのは霊感とか発明とかと言えるのかもしれない。

 

カラスがもう1度カァと鳴いた。

 

ぼくは物語をここで終えた。


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