遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない 作:鏡路の一般兵
竜崎と羽蛾がグリモ(ダークオベリスクの人)に襲われる前
ドーマ編は今まで以上にオリ設定とか独自解釈が増えます。許してください。
本当に書き溜めが尽きたので、そろそろ毎日投稿が終わります。でも出来る限りは頑張ります。
「Hey!倉瀬ボーイ!お加減は如何デース?」
「問題ありません、元気ですよ。まだ体は重たいですけどね」
バトルシティ準決勝から数日、遊戯と海馬の間で行われた準決勝の熱気もようやく落ち着いてきた頃。
教導の大神祇官とフルルドリスが初手に2枚セットで来なくなったデッキを一人で回していると、俺の病室にペガサスがやってきた。
と、言ってもこれが初めてではない。俺がマリクと戦った後、ペガサスはバトルシティの予選が終わると直ぐにやってきて、自分がデュエルログを監視していたのに申し訳なかった。
危険に晒すようなことをしてしまったと、新品のデュエルディスクを片手に謝りに訪れている。俺のデュエルディスクは回路が焼き付いて壊れちゃったからね。多分世界最速でデュエルディスクを壊してしまう形になったので非常に申し訳ない。
もっとも、あのデュエルは特段長引いたわけではなく、デュエルが終わるより早く海馬社長という最高戦力を送り込んでくれているわけで、ペガサスが何も失敗していないことは誰の目にも明らかだ。
協力関係を結んでいるといえ、天下の創造主に謝られては俺の方が恐縮してしまうので、マリクが悪いと言う事で納得して貰うことになった。
原作では闇マリクに責任を押し付け、良い感じに許される空気となっていた彼らだが、犯罪組織であるグールズを運営していたのは明確な彼らの意志。
とりあえず墓守りの一族としての使命を果たすまで、遊戯を導くまでは猶予期間と言う事にして、それ以降はリシド共々罪を償うという形で決着したらしい。
彼らを追及するのはオカルトに理解があり、闇の力に飲まれる影響を体感しているペガサスであるため、罪を償う期間そのものは意外と短くて済むとのこと。
デュエルモンスターズの創造主で最大の被害者であるペガサスがほどほどで済ませるなら、他の被害者たちも「あなた程の人がいうなら……」状態になって、重い罪を主張するのに及び腰になるというわけだ。
……下手に罪を重くするとペガサスも人の魂をカードに封じ込めたりしていた点が、遊戯や海馬から追及されてしまうことになりかねないからね。
ミレニアムアイを近々手放すことにもなるのだから、自分が追及される時が来たとしても、闇の力に飲まれていたのなら仕方ない。という前例をマリクの件でシレッと作っているのだ。分かっていた話ではあるが大人って汚い。
「ところで、今日は一体……」
「ソーリー。ドーマの件についてデース」
などと大人の世界に思いをはせつつ、多忙なペガサス会長が忙しい時間の合間を縫って病室に来るなど何があったのかと聞いてみれば、ドーマの件に動きがあったらしい。
そう、実はバトルシティ以後の原作は殺人的な速度で状況が推移する超過密スケジュールなのだ。
ドーマ編はその導入として、羽蛾と竜崎がオレイカルコスの結界に魂を奪われるシーンがあるのだが、彼らはそれぞれ全国大会で東日本代表と西日本代表を務めている。
即ち、少なくとも彼らのうちどちらか一方。あるいは両方がバトルシティのために遠征で童実野町を訪れており、帰宅するまでに問題が発生したということだ。
KCグランプリ編も遊戯たちがドーマ編後、日本への帰国手段を失ったがために参加する大会だと言えば、どれほどの密度で事態が動いているのかが分かるだろう。
今回の世界ではその襲撃は無かったのか、俺が知らない間に既に修正されたのか、これから起こるのかは分からないが、パラドックスの襲撃もバトルシティ終了後の時系列である以上。
このタイミングでは1か月に3度……いや、下手したら1週間に3度のペースで世界の危機が起こっていたことになる。遊戯王ワールドの治安は相変わらず最底辺だ。
ともかく、そんなことよりも今はドーマ編。この物語の中では遊戯が実力負けするという前代未聞の事態が発生することもあり、一連の世界の危機ラッシュの中で随一の危うさを誇る事件である。
故に俺とペガサスはこの危機に関してはバトルシティ編のように原作に沿った形では無く、有利な状況を作ってから進行することを決めていた。
「もうパラディウス社に動きが?」
「イエス。海馬ボーイと遊戯ボーイのデュエルの中で行われた神の激突。
その影響でテレビが破壊されて陸の孤島と化している病院の中では分からないと思いますが……。今朝、カリブの沿岸で古代遺跡が発見されたと報じられました」
古代遺跡、これはドーマ編のラスボスであるダーツが治めた古代アトランティスのもので、ドーマ編開始の時報である。この報道があったと言う事は、もう暫くするとモンスターが実体化し、ドーマの三銃士による神のカードの強奪事件が発生することになる。
既に動ける程度に回復しているとはいえ、覚悟していた以上にイベントの密度が高く、思わず体が震えた。
「となると買収も?」
「ええ、仕掛けてくることが分かっていないと気が付けないほどの巧妙さですが、バトルシティの予選終了後から、資金や人に動きが見え始めました。」
曰く、社長がバトルシップに乗り込み、他のことに手が回らなくなったタイミングとのこと。
古代エジプトに関連する魂が現代に蘇った時点で、ダーツがどこかで動くこと自体は確定していて、神のカード争奪戦という一大イベントを好機と見たというわけだ。
「バトルシティの開催は成功でしたが、やはり神と神のエネルギーで世界各地の通信機器が破壊された影響も大きいようで……。
通信機器の破壊そのものはそれだけの激戦だったし、神の激突を見れたから許すと言う感じの評価なのですが、決勝の放送が出来なかったのは失点でしたね」
世界各地の通信機器を破壊しておいて、それでいいのか市場評価。
いやまぁ本来見ることのできない神の激突をこの目で見られたと言う意味では遊戯王ワールドだとプラス評価なのか……?
社長が行ったデュエルの結果次第で株価が乱高下という話はどこかであった気がするし、通信機器の破壊そのものは神の激突を見れたからヨシ!プラス評価!
でも決勝までにインフラの回復が出来なかったのと社長が知らん間に負けてたのはダメ!マイナス評価!みたいな感じなのかな。
「結果としてプラスとマイナスの材料が両立し、株価の動きは極めて読みにくくなっていマース。
現時点でどの程度パラディウス社の手が入っているものかは完全に不透明で、ここからモンスターの実体化騒動による株価の大暴落に合わせてパラディウス社からの買収を受ければ、いくら海馬ボーイが経営者として優秀であっても耐えきれなかったのは納得できマース!」
「むむむ……」
「そして我がインダストリアル・イリュージョン社にも、数日前から天馬たちが急な出張で本社から離れざるを得なくなるなど、ドーマの魔の手が迫っていることを確認済みデース」
「ペガサスミニオンにも……」
「ええ。しかしこちらは問題ありまセーン、彼らは一流のデュエリストですし、これから起こる問題については詳細を伏せつつ、私が対抗手段を準備していることは伝達済み。
下手に動かれると予定が崩れるから動かないように伝えたのですが……」
コホンと咳払いをするペガサス。
遊戯王Rでその実力を見せつけたペガサスミニオン。ペガサスの突然の死からもインダストリアル・イリュージョン社を守り抜いた彼らはデュエリストとしてだけなく経営者としても超一流。
彼らに話を通しているのなら、不安要素はないはずなのだが……、何かちょっと歯切れが悪い。え、何か不測の事態があったんですか。
俺と言う存在がいて、原作をなぞるようで違う道筋を歩んでいるから、そういうの凄く焦るんですけど!
「ちょっと夜行がですね。月行が上手く手綱を握ってくれればよいのですが……。」
「ああ……」
まあ、邪神の影響を受けていたといえ、杏子の体にペガサスを下ろそうとするとか、暴走癖があるからな……。
インダストリアル・イリュージョン社に魔の手が迫っていて、自分たちは急な出張を組まれて会社から離され、ペガサスはバトルシティの影響で本社に不在。
それでこれからちょっと問題が起きるけど、対抗手段は準備してあるから問題無いと言われても安心できないのは物凄く分かる。
ペガサス様が何かを隠している!大変なことが起こりそうなのに相談して貰えなかった!あの人を支えるにはラフ・ダイヤモンドである私では力不足なのか!!とか言ってる姿が面識も無いのに目に浮かぶようである。
これに関しては彼の兄であるパーフェクト・デュエリスト天馬月行に任せるしかないだろう。あの人のパーフェクトな所はデュエリストの腕が完成していることだけでなく、人格や経営能力という点にもあるので、邪神に魅入られていない夜行が相手なら、きっと止めてくれるだろう。面識ないけど。
「もっとも、この世界ではパラディウス社がKCを買収することは許しまセーン。しばらくの間ゴタゴタは起こるでしょうが、インダストリアル・イリュージョン社名義で保有していた株の一部を私や天馬たちの名義に移し替えていマース!
故に、パラディウス社が我が社の乗っ取りに成功しても、パラディウス社がKC社の株を半分以上取得し、海馬ボーイから経営権を奪うと言う展開は、世界市場ごと操作しようとも絶対にありえないのデース!」
ドーマ編最大の問題。それはダーツの持つパラディウス社及び、秘密結社ドーマの影響力だ。俺たちはドーマが、パラディウス社が、ダーツが一連の問題の首魁であることは分かっている。
しかしその本部がどこにあるかは分かっておらず、最速で乗り込んで解決すると言う事は不可能なのだ。
本部の場所自体はアニメで語られていたような気もするが、そんな詳細なところまで俺の記憶に残っていない以上、原作よりも有利な状況でイベントを開始することにはなるが、同時にある程度は原作に沿っての行動も必要になる。
それが先程報道で流れたという古代文明に残された文献の解読だ。
この文献は風化の影響でそのままでは読めないため、スーパーコンピューターで解析を行い、ホプキンス教授の協力を得る必要があるのだが……。
ここで海馬コーポレーションが買収されてしまったことが影響し、多くの時間と戦力が浪費され、城之内の魂がダーツに奪われると言う結果に繋がってしまう。
故に、この手のイベントを始めとするあれやこれや、主にアメリカの荒野をさまよった時間を大幅にカットしようということだ。
石の荒野などに赴く必要はあるかもしれないが、この時点でKCが安全かどうかではまったく事情が違ってくる。
また半分以上望んでとはいえ敵に洗脳される形となる孔雀舞の身柄もインダストリアル・イリュージョン 日本支社で捕捉しているので、そちらの対策も行われている。
竜崎と羽蛾についてはアメリカへ行くときの荷物検査を厳密に行うだけで解決するためとりあえずスルー。
あまり派手に動き過ぎるとドーマの動きに気が付いていることを悟られてしまうため、より重要な役割を果たす孔雀舞の方を優先したというわけだ。
「でもなんというか……日程が過密ですね」
「過密にするしか無かったのでしょうね。倉瀬ボーイのビジョンでは、恐らく私が王国で倒れたことでインダストリアル・イリュージョン社の株価が低下、さらにバトルシティの影響でKCの株価が荒れ模様。
そこにモンスターの実体化騒動を合わせ、株価の大暴落を誘発したタイミングでの買収でしょうから、ここは因果関係が逆と言うべきデース。
今回の動きに関しても私がバトルシティに向かったことを好機とみて、そこから天馬たちを本社から切り離してからの動きですから、如何なパラディウス社とはいえ、天下の二社を同時に攻略するのは無理があったと言う事に違いありまセーン」
経営的な話に関しては覚えておく程度にしよう。
俺の役割はドーマ編に備えて日本に残っているペガサスに同行し、デュエルモンスターズ界などの説明や理解を円滑に行い、遊戯のオレイカルコス落ちを防ぐことである。
そう、俺のデッキには精霊が宿っている上に転生知識まであるのだから、デュエルモンスターズに存在するモンスターたちの実在証明が可能且つ、デュエルモンスター界など精霊に関わる説明にはこれ以上ないレベルで最高の人材なのだ。
俺にはまったく知覚できないが、精霊たちの存在は千年アイテムの所持者や才能のある人間なら問題無く視認出来る状態……アニメで台詞がある時に守護霊のようにフッと出てくる感じになれば普通に見えるらしい。
問題なのは当然、俺がオレイカルコスの結界に封印されてしまう事だが……これは災い転じて福をなすと言うか、マリクとのデュエルの後で俺は未だ入院中。
そもそも戦線に立てる状態ではないので、説明に関してはペガサス会長に遊戯たちをここに連れて来て貰った上で行い、ドーマとの戦いには参戦せず国内に残ると言う算段である。
KC関連の病院なのだから、ドーマの手が届きにくいと言う事も重要な点だ。
ペガサスに全てを任せる……というのは申し訳ないのだが、俺の身分は未だ学生。
さらに古代エジプトに関わる因縁もないのだから、安全圏にいるのが仕事ということで押し込まれてしまった。
率直に言って自分から他人を巻き込んでおいて何もしないのは悪い気もするのだが、ペガサスから本来なら自分は成すすべなく負けていて、魂を奪われていたと言われれば是非もない。
安全な場所で大人しくしているのも仕事だと割り切ることにする。
「倉瀬さーん、面会ですよー。って!あぁ!いけません!!」
「おや、面会ですか。これは長居してしまいました。では、今日の夜か明日の朝にでもよろしく……? いえ、これは……。」
「ちょっと!!お待ちください!!」
そうこう言っていると何やらナースさんから面会の案内がと思ったが何か様子がおかしい。
俺とペガサスは顔を見合わせ、思わず体をこわばらせる。
そんな俺たちの前に現れたのは……モノクルを付けた髭もじゃのおっさん……?
「ハードラック倉瀬殿に……これは運が良い。ペガサス・J・クロフォード殿とお見受けする。」
え、誰だコレ。普通に知人でもないんだが……。
となるとこのタイミングで偶然別件の襲撃者がくるとは考えにくい以上。このおっさんはどう考えてもドーマの関係者であり、ペガサスもミレニアムアイを光らせているがどうにも様子がおかしい。
「っ……マインドが見えまセーン!」
どうやらマインドスキャンが通じていないようだ。そういえばオレイカルコスの結界は初登場の時、千年パズルによる干渉を跳ね除けていた。
10000年の歴史を持つオレイカルコスの力と言うのは伊達では無いと言う事か。
「貴公らの魂、貰い受ける!」
ペガサスが困惑から復帰できないまま、髭もじゃのおっさんがデュエルディスクを構えた瞬間。
俺は思わず叫んでいた。
「ペガサス会長!逃げて!遊戯たちの元へ向かって事情の説明を!そこが一番安全なはずです!」
咄嗟に握るのはペガサス会長が以前、お見舞いに持ってきてくれたデュエルディスク。
自分はあまりデュエルを行わないからと、回路が焼け焦げて使い物にならなくなった俺のデュエルディスクの代わりに持ってきてくれた物。
声による意志疎通は出来なくても、立体幻像による意志疎通が出来れば入院中の無聊を慰められるはずと持ってきてくれたデュエルディスク。
俺はそれを手早く装着すると、戦う意思を示す。
「っ……!?分かりました!御武運を祈りマース!」
数秒、この場に残るべきか、遊戯たちの元に行くべきか迷ったペガサスだったが、俺の声に答えると病院の窓を飛び越えて外へと走り出す。
窓の外ではモンスターたちが所狭しと実体化し、ドーマ編の開幕を告げていた。
「ふっ、創造主を逃がすために囮となるか。健気なことだ」
「外に出なよ、病院で戦うのは迷惑だ。……だけど外で戦っても騒がしいかな。近場に建設中のビルがあるからそこでどう?」
「構わん、どこでデュエルをしようとも結果は同じだがな」
逃げたり、ペガサス会長にこの場を任せるのは無駄だ。何故なら奴は先程の言動からして俺を主敵においている。
何よりKC関連企業の病院に殴りこんでいるという事実がヤバい。私たちは今からあなたに敵対します。潰しますという宣言に等しく、デュエルアンカーこそ持っていないようだが、だからと言って逃がしてくれるとは思えない。
何故俺を主敵にしたのかという疑問はあるが、俺にはダーツが求める強き闇の魂の持ち主、遊戯や海馬とのデュエルの経験がある。
孔雀舞の勧誘をブロックしたことで俺にその誘いが来たのか、単純に有力なデュエリストの一人として狙ってきたのか。
どちらにしても根本的に和解の選択が無い以上、俺にできるのはこの謎のおっさんとデュエルを行うことだけである。
―――
……30分ほど後。
俺はなんとかデュエル予定地に辿り着いていた。
ペガサス会長が遊戯を呼んでくるまでの時間稼ぎとかそういうことではなく無く、まだ体力が回復しきっておらず、普通に体が重たいのだ。
KCの医師曰く、特に外傷は見られないため、神のカードによるオカルトパワーが影響しているのではないかとの事だが、狙われてしまったからには黙っているわけにはいかない。
衆人環視の場で不測の事態が起きる可能性もある以上、少しでも被害の少ない場所に移動するのは俺の義務ということで頑張って移動した。
幸いと言うか、俺にデュエルを行う気があるのは伝わっているのか、移動が遅いだとか時間稼ぎは止めろだとかをおっさんが言ってくることはなかった。
「我が名はグリモ。ドーマの三銃士、ラフェール様に仕えるものだ」
「……知らない名前だね。どうして俺を狙ったのかは聞いてもいいの?」
そして丁寧に名前を名乗るおっさん……グリモ。
思い出した、この人は羽蛾と竜崎の魂を最初にカードに封じ込め、遊戯を相手にダークオベリスクを使ってくる人だ。
なんかラフェールの部下っていうからドーマ編だとこういうのがいっぱい出てくるのかなと思ったら、結局部下はこの人だけで、ドーマの三銃士以外は羽蛾や竜崎、孔雀舞といった王国組ばかりだったからちょっと印象に残っている。
「主が強き魂を求めている故な。決闘王 武藤遊戯、カードの貴公子 海馬瀬人、グールズ首領 マリク・イシュタール。
この3人の強きデュエリストと戦った其方もまた強き魂を持つものと認めて魂を貰いに参った。ちと、敵意の足りなさが気になるがな」
「ありがたくない事情説明ありがとう。まあ、デュエルは争いの道具じゃないからね。そりゃ敵意なんてものは持てないよ」
彼らが魂を求める目的、それはオレイカルコスの神を復活させるための生贄。転生者である俺は……まぁ、何をもって心の闇というのかは不明だが、ダーツの琴線に触れる何かがあったということだろう。
敵意の無さに関しては今更だ。俺にとって遊戯王カードとは遊ぶための物であり、何よりも遊戯王ワールドの人々を敵とは見れない。
勿論、デュエルに勝つために全力を尽くす意思はあるが、それは相手を敵としてみるのとは似て非なるもの。
「戦意があるなら、それで十分じゃない?」
「フ……よく言った」
そんな俺の考えを端的に伝えると、どこか満足気な表情を返すグリモ。
このおっさんがこういったキャラだったかは覚えていないが、率直に言ってドーマ編のキャラは非常にやりにくい。
何がやりにくいって、こいつの上役である三銃士はダーツに騙されたり嵌められたりしているだけの被害者であり、グールズのような倒すべき絶対的な悪では無いためだ。
よく言えば武人肌な人間が多く、ダーツの干渉による心の闇さえなければ……と、思わされてしまう。
「先攻は譲ろう。お手並み拝見といこうじゃないか」
「……先攻は苦手なんだけどね。まずはモンスターを守備表示でセット。ターン終了だ」
でもそういう精神で先攻を渡されても困るんだよな。壊獣も出せなければ、アルバスくんを出しての融合も出来ない。今回の手札のようにエクレシアがいないとパニッシュメントの準備もできない。
という訳で初動はセットエンド。セットしたカードは「教導の天啓 アディン」、戦闘破壊と効果破壊のどちらでもドラグマモンスターをリクルートできる凄い奴だ。
この時代なら基本的に何が来ても後続を呼び出せるので、エクレシアを経由して任意のドラグマをサーチしても良し、教導の大神祇官を直出しして壁にしつつエクストラデッキから墓地に送っても良し。
先攻で様子を見たい時なら、俺のデッキでも一番の適性を持つ万能魔法使いである。
「私のターン、ドロー!まずは増援を発動し、デッキから戦士族モンスターを1体、切り込み隊長を手札に加える!そして手札に加えた切り込み隊長を攻撃表示で召喚し、効果を発動!
このモンスターは召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる!2枚目の切り込み隊長を攻撃表示で特殊召喚!」
「いきなり切り込みロックか……」
「その通りだ!切り込み隊長がモンスターゾーンに存在する限り、倉瀬殿は切り込み隊長以外の戦士族モンスターを攻撃できなくなる!」
それに対するグリモの初動は切り込みロック。
自分以外の戦士族モンスターに攻撃できなくなる切り込み隊長を2枚並べることで、攻撃対象を選択できなくするロックコンボである。
あくまで戦士族モンスターを攻撃できなくなるだけなので、本来ならこの時点で戦士族を軸としたデッキだと判断できるのだが……。
「オレイカルコスの結界、発動!」
「……なんだ、そのカードは?」
今、俺が立っている舞台はドーマ編の遊戯王ワールド。
原作版オレイカルコスの結界……味方モンスターの攻撃力を500上げる全体強化に加え、魔法・罠カードのゾーンもモンスターゾーンとして扱えるようになるルール干渉効果。
さらにモンスターゾーンにモンスターが存在していると、魔法・罠ゾーンのモンスターに攻撃が出来なくなるというロック効果まで付いた極悪カードが存在している。
カードの効果を知っていると不自然なので知らん顔をしているが、グリモが狙っている手は既に予想がついた。
モンスターゾーンは戦士族で固めて切り込みロック、安全な魔法罠ゾーンには別のモンスターを展開してアドバンス召喚のリリース要員。
オベリスクの巨神兵……は、まだ持っていないだろうが、それにしたってどんな上級・最上級のモンスターが飛んでくるかは分かったものじゃない。
「これは真の闇より生まれしカード、我と我の敵を聖なる刻印にて囲み、何人の干渉を廃してデュエルを行う!デュエルの決着がつくその時まで、何人たりともこの結界に入ることも出ることも叶わず!」
そして何より、このカードの効果が恐ろしいのは……。
「結界を出ることが出来るのは勝者のみ、敗者はその魂を結界に封じられる!!」
コレである。
デュエル開始の流れがちょっと唐突かなとか思ったんですが、このグリモとかいうおっさんは羽蛾や竜崎とデュエルする流れがさらに唐突だったりする(※デュエルシーンは存在しない)
ダーツの行動開始は遊戯や神のカードにも関連しているとはいえ、バトルシティ直後の隙を狙った奇襲攻撃みたいなもんだと思っているので、唐突なのは仕様と言えば仕様か……?
なお、倉瀬が狙われた理由は「決闘者の王国で遊戯と競り合ったデュエリストとして目立ったから」なので自業自得です。
☆掲示板回でやるか分からないこの世界線におけるアニメやカード環境に関する設定
・オレイカルコスの結界(原作)
「絶対に除去されない」という効果を持ち、千年パズルの力でも解除できない(または新たに闇のゲームを仕掛けられない?)ほどの力を持つが、一応オカルトパワーを用いて物理的に結界を叩き割ることで解除できる(ヴァロンが城之内vs舞で叩き割った)
また魂を奪われるのは敗北した側なので、引き分けに持ち込むことで両者生存も可能。
今回は千年パズルの力を上回った描写を都合よく解釈し、ペガサスのミレニアムアイを封じて貰った(たぶんフレーバー)
・切り込み隊長
実は切り込み隊長が出てくるところは原作通り。
流石に切り込みロックはしてこないけど、前衛にオレイカルコス切り込みロックから魔法罠ゾーンにモンスターを並べて生贄準備戦術はドーマ編のやりたい放題っぽいかなと思って採用した。
・グリモ
ラフェールの従者で竜崎・羽蛾の魂を奪ってダークオベリスクを使った人。
今回は竜崎・羽蛾枠に倉瀬が選ばれたので、本編中にも触れた通り、オベリスクはまだデッキに入っていない。今は裏で三銃士が遊戯たちから神のカードを強奪しようとしているはず。
ドーマの情報力をもってすれば、KCで倉瀬vs海馬が行われたことを知るなんてのは造作もない事。もしかしたらそもそもバトルシティ編のどこかで社長が言及してたりするかもしれない(多分マリク戦に関しては普通に言及してる)
・ペガサス
まさか病院で仕掛けてくるとは思わなかった。
倉瀬を戦わせるべきか迷ったが、自分が闇に囚われる=仕込みが全て機能不全に陥る状態になってしまうため離脱した。
遊戯を呼んできてくれるが、そのために神のカードを強奪された直後の亀のゲーム屋に創造主自らやって来ることになり、一緒に三銃士の演説を聞くという物凄く面白い絵面が誕生する。真面目なシーンなのに素材化間違いなし。
・倉瀬
原作への介入は避けているように見えて、実はある理由から根本的にかなり好戦的且つ刹那的な性格であるため、何かが起こると直情的な行動をとる。しかしそのくせに敵意自体は本当に一切ない。
バクラとペガサスの間に割り込んだり、今回のようにグリモからペガサスを逃がしたり、マリク戦で神に気圧されていないのものその理由によるもの。
「シャーディーの心の部屋改変」は心の底から恐ろしく思っているのに、「マリクやバクラの洗脳」「オレイカルコスの結界の魂封印」には堂々と対抗できるのもこれに関係している。