遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない   作:鏡路の一般兵

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・アニメ/原作的時系列
遊戯たちが三幻神を奪われた直後


ドーマ編 ~オレイカルコスの結界②~

 

『倉瀬!』

『倉瀬ボーイ!!』

『なんだこれ!近寄れねえぞ!』

 

 オレイカルコスの結界を発動された直後、三幻神を奪われた遊戯一行がペガサスと共に現れ、周りを見渡せばドーマの三銃士が建設中のビルの足場からこちらを見下ろしている。

 結界に突進して物理的な破壊を試みる城之内と本田に、オレイカルコスの結界の特性と効果……前列や後列のアレコレや、敗北した側が魂を奪われることを説明する三銃士。

 デュエルの組み合わせや三幻神の強奪タイミングが異なる点を除けば、海馬とダーツ以外の主要人物が揃ったドーマ編の開幕に相応しい陣容と光景である。

 

「……随分と賑やかになったな」

「ふふふふ、我らがドーマの力を披露するのに相応しい舞台だ。オレイカルコスの結界の効果はラフェール様がおっしゃられた通り!

 自軍のモンスターをダークモンスター化し、攻撃力を500ポイントアップさせる! 攻撃力1700となった切り込み隊長でバトルだ! そのセットモンスターに攻撃!」

 

 俺の元へと迫りくるのは目を血走らせた金髪の戦士が2人。

 立体幻像で人間型同名モンスターが並ぶのはいささかシュールな光景であるが、攻撃力1700ならば問題はない。

 

「リバース、セットしていたモンスターは『教導の天啓 アディン』で守備力は1800。

 守備力が攻撃力を上回ったので100ポイントの反射ダメージを与える!」

「ぐむぅ、だが痛くも痒くもないな。私はバトルを続行せず、2枚カードを伏せてターンエンドだ」

 

 さて、とりあえず序盤はお互いにそれなりと言った形だがここからどうなるか。

 

「俺のターン、ドロー! メインフェイズ、サンダー・ドラゴンを手札から捨てて効果発動!デッキからサンダー・ドラゴン2枚を手札に加える。

 そしてさらに融合を発動!彼方にて響きし雷鳴よ、今重なりて真なる力を見せよ! 攻撃表示で融合召喚! 現れ出でよ! 双頭の雷龍!!」

「だが2体の切り込み隊長の効果により攻撃は出来ない。モンスターを並べておくことしかできないようだな」

「そのロックが突破できないと流石にね。カードを1枚伏せてターンを終了する」

 

 切り込みロックさえ無ければアディンに自爆特攻をお願いして、戦闘破壊から効果を起動してデッキからフルルドリスを特殊召喚。

 そのまま双頭の雷龍と合わせて攻撃力のゴリ押しで打開することもできる場面だったのだが、残念ながらこのターンにロックを突破する手段が無い。

 突破されにくい大型の壁モンスター兼、ドラグマを展開するための布石として双頭の雷龍を出しておくことしかできず、短期決戦を挑むのは難しい状況。

 闇のゲームは俺の体への負担が大きいこともあり、ロック戦術による長期戦は勘弁して欲しいのだが……。

 

「私のターンだ!ドロー!これは良いカードを引いた。私は先史遺産マヤン・マシーンを攻撃表示で召喚!オレイカルコスの結界の効果で攻撃力を500ポイントアップし攻撃力は2000ポイントとなる!だが、ここで攻撃は行わず、ターンを終了する!」

『おい、なんでアイツは倉瀬の壁モンスターを攻撃しないんだ?守備力を上回ったって言うのに』

 

 これはロック戦術を維持してきてますねえ。

 グリモの意図を理解していない城之内が、壁モンスターの数を減らさないことを疑問に思っているようだが、ここで俺にとって一番厳しいのは相手が動いてこないこと。アディンを表側守備表示のまま放置されてしまう事である。

 

『それは教導の天啓 アディンには戦闘・効果で破壊された時、デッキからドラグマモンスターを特殊召喚する効果があるからデース!

 ここで安易に戦闘を行って状況に合わせたドラグマの皆さんを特殊召喚されるぐらいなら、このまま盤面を維持した方が良いという判断に違いありまセーン』

『倉瀬のデッキは召喚時にアドバンテージを稼ぐ効果が多いからな。ここでアディンを破壊しても切り込み隊長の攻撃力では双頭の雷龍を倒せない以上、倉瀬の展開を助けるだけの結果になりかねない。だからロックが決まっている今はその状況を維持し、決めきれる状況が来るまではあえて動かずにいるつもりなんだ』

 

 そうなんだよなぁ。ペガサスと遊戯が言う通り、俺が双頭の雷龍を特殊召喚しているという事実。これがあるだけでグリモの視点ではわざわざアディンを戦闘破壊し、切り込みロックを打開できる可能性のあるモンスターや、より大型のモンスターを呼ぶことを許す理由が無い。

 ドラグマの効果が知られていない状況でなら攻撃してくれたかもしれないが、俺にも二つ名がつく程度の知名度がある以上。事前の調査と対策はしっかりと行ってきたという訳だ。

 

『それだけじゃありまセーン。あちらの場に存在している先史遺産マヤン・マシーンには機械族モンスター2体分の生贄になるダブルコスト効果が秘められていマース』

『じゃあ何か!?本来切り込み隊長の効果で守れるのは戦士族モンスターだけだってのに、オレイカルコスの結界の効果で切り込み隊長を突破しないと、後列にいる先史遺産マヤン・マシーンを攻撃できなくなって、攻撃が封じられたまま後列に強力なモンスターがどんどん増えていくってことか?」

『その通りだぜ、城之内くん。だが俺の知る倉瀬はこの程度のロックで動けなくなるデュエリストではない!きっと打開の手段をいくつも準備しているはずだ!』

 

 ……遊戯から褒められるとちょっと照れる。まあ、実際打開手段は既に準備してある。俺がドラグマを使っていないにしても、切り込みロックだけで機能停止してしまうようでは現代遊戯王の経験者とは言えない。

 現代遊戯王の恐ろしさとは、この手のロックをあっさりと打開できることでは無く、突破後にワンショットするだけの火力。ロックの突破手段自体はあって当然なのだ。

 

「お前のエンドフェイズに罠カード、ドラグマ・パニッシュメントを切り込み隊長に対して発動!その攻撃力以上のモンスターをエクストラデッキから墓地に送ることで、対象のモンスターを破壊する!」

『そうか!エンドフェイズに切り込み隊長を破壊しちまえば、アイツはそこから新しくモンスターを召喚することはできねえ!』

『倉瀬ボーイの場に既にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター、双頭の雷龍が存在しマース!手札に存在するドラグマモンスターの数によっては、連続特殊召喚からワンショットが決まる場面デース!』

 

 ペガサス会長!それフラグだから止めてくれない!?

 と言うのはともかく、実際問題これが通れば切り込みロックは解除され、新たにモンスターを呼べなくともアディン自爆特攻からフルルドリスを特殊召喚。

 自身の効果で3000打点となるフルルドリスが攻撃力1700の切り込み隊長を倒して1300ダメージ、攻撃力2800双頭の雷龍で攻撃力2000のマヤン・マシーンを倒せば800ダメージ。

 アディンで与えた100ポイント反射ダメージ込みでグリモのライフは残り1800となり、アルバスの落胤ならジャストキル、ドラグマモンスターならフルルドリスの効果込みで勝負が決まることは間違いない。

 

「無駄だ!カウンタートラップ、盗賊の七つ道具!罠カードが発動した時、1000ポイントのライフを支払うことで、その発動を無効にして破壊する!」

「くっ……」

 

 だが、残念ながらペガサスの発言がフラグになってしまったようでこの狙いは通らず。

 罠カードから離れた光はどこかへと消え去り、切り込みロックが維持されたままの盤面になってしまうが……。

 

「……ドロー! よし! フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる! 頼むぞ! 教導の聖女 エクレシアを守備表示で特殊召喚!」

 

 最高の場面で来てくれた聖女はくるりと回ってポーズを決める。

 俺のフィールドにはエクレシアとアディンの2人に、融合モンスター『双頭の雷龍』が1体。

 

「特殊召喚に成功したエクレシアの効果! デッキからドラグマモンスター、教導の騎士 フルルドリスを手札に加える!

 そしてフルルドリスもエクレシアと同様に、フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するなら、手札から特殊召喚できる!」

 

 ならばデッキから呼び出すのは当然、エクレシアの姉貴分たるフルルドリス。

 エクレシアが振り上げた鎚の先から魔法陣が描かれると、その魔法陣からカードが、全身鎧の騎士が現れる。

 

「さらに!フルルドリスが特殊召喚に成功し、自分フィールドにドラグマモンスターが存在する場合、相手モンスター1体を選んで効果を無効にする!対象は当然、切り込み隊長!」

『上手い!これなら一気に場のモンスターを増やしながら切り込みロックを突破できる!』

『しかもフルルドリスにはドラグマモンスターの攻撃宣言時、フィールドに存在するドラグマモンスター全ての攻撃力を500あげる効果がありマース!これなら……!』

 

 そして遊戯一行の歓声が上がる中、全身鎧の騎士は剣を振り上げ、必殺の雷を放った。

 その一撃は狙い違わず切り込み隊長へと向かい……。

 

「甘いわっ!罠カード、神の通告を発動!私は自分のライフポイントを1500支払い、フルルドリスの特殊召喚を無効にして、破壊する!」

「ぐっ……」

 

 盤面をロックする力の片方を奪わんとした瞬間、突如として現れた神によって、特殊召喚が成功した事実ごと無効にされてしまう。無念そうに光の粒子となって消えゆくフルルドリスと焦った様子のエクレシア。

 実際問題俺も焦っている。バックの2枚が両方とも有効妨害札。サーチして妨害札を引っ張ってきたわけでも無いと言うのに、素引きでそのドロー力というのは勘弁してくれ案件である。

 

「これで切り込み隊長のロックは崩れんぞ」

「なら俺にできることはない……カードを1枚セットし、ターンを終了する」

「私のターン、ドロー!」

 

 俺の現在の手札は2枚、場には守備表示のエクレシアとアディン、そして攻撃表示の双頭の雷龍。伏せカードは1枚でライフは初期値。

 対するグリムはこのドローを含めて手札が2枚となり、場にはオレイカルコスの結界の効果を受け、攻撃表示のマヤン・マシーンと切り込み隊長が2体。

 ライフポイントは2枚の罠カードの効果で目減りして1400とやや不安な水域に入ったが、それでも鉄壁と言うにはほど遠い状況。

 

『倉瀬のライフポイントはまだ全然削れてねえし、場には大型の融合モンスターも、伏せカードもある。だけどこの状況は……。』

『ああ、切り込み隊長とオレイカルコスの結界による二重のロックコンボ。そして後列にダブルコストモンスターがいるとなれば、これは不味い予感がするぜ』

『それに……今の倉瀬ボーイはまだ戦える体ではありまセーン……。立っているだけでも辛いのが見てわかりマース……。』

 

 いや本当、これはかなりまずい。

 単純に盤面が不利なこともあるが、エクレシアが鎚を振り回していない。

 

 姉貴分であるフルルドリスの特殊召喚が妨害されてしまったと言う事もあるだろうが、彼女たちには精霊が憑いている。その彼女の元気が無いと言う事は、グリモのデッキや手札から何らかの気配を感じ取っている可能性が極めて高いということだ。

 つまるところ、場にダブルコストモンスターがいて、手札に最上級のモンスターが不在である可能性など期待はできず……。

 

「先史遺産マヤン・マシーンは機械族モンスターを生贄召喚する時、2体分の生贄にできる、私はマヤン・マシーンを生贄に捧げ、パーフェクト機械王を魔法・罠ゾーンに召喚!オレイカルコスの結界の効果で攻撃力は500ポイントアップして3200となる!」

「双頭の雷龍の攻撃力を超えられたか……」

 

 当然の権利のように大型モンスターの召喚に成功されてしまう。現れるのは白銀の装甲でその身を固めた人型機械。俺にその手の趣味があれば大喜びするところだが、残念ながら俺の趣味はそっちの方ではない。

 しかしこの場面で重要なのは3200を誇る攻撃力。こうなるとアディンから教導の大神祇官を特殊召喚しても受け止めることができず、壁としての役割を遂行することすら怪しくなる。

 ラーを相手に狙ったように仁王立ちの反射ダメージが決まれば、グリモの残りライフからして問題無く打開できるだろうが、残念ながらセットカードは仁王立ちではない。

 

 アルバスの落胤の効果は相手フィールド上から墓地に送って機能する効果であるため、後列にいるパーフェクト機械王にも通るのだろうが、パニッシュメントを七つ道具で無効化されてサーチが阻まれた彼はデッキの海の中。

 いつ引けるか分からない以上、一気に劣勢に陥ってしまったのは間違いない。

 

『まずい!』

『あの男、モンスターゾーンへの攻撃は切り込み隊長でロックしたまま、後列に機械族モンスターを召喚して機械王を強化するつもりデース!』

 

「ふふふふふ、流石に決闘王と創造主は私の戦術に気が付いたようだな!バトルだ!切り込み隊長で教導の聖女エクレシアを、パーフェクト機械王で双頭の雷龍を攻撃!攻撃力の差分、400ポイントのダメージを受けて貰う!」

 

 グリモの額に浮かぶオレイカルコスのマークが輝きを増す。

 エクレシアは切り込み隊長の剣を必死に受け止めるがやがて光の粒子となって消え、パーフェクト機械王から放たれた極太のレーザーによって双頭の雷龍は光の粒子すら残さず消滅。

 ダメージが微量だったおかげか、幸い俺の肉体や精神に与える影響は少ないというか、新しい影響はほぼ皆無だったがこちらのフィールドに残るのは冷や汗を流すアディンだけ、かなり不味い状態である。

 

「くっ……」

「これで私はターンを終了する。」

 

 フルルドリスの特殊召喚が妨害されることを考慮し、エクレシアを守備表示で展開していたのが功を奏しライフは未だ潤沢に残っているが、パーフェクト機械王の攻撃力を考えると既に致死圏内。アディンのリクルート効果を考えればまだ生き残ることはできるが……。

 

「ドロー! ……モンスターを1枚セットし、ターンを終了する」

 

 本当にまずいのは俺のデッキにドラグマモンスターが既にほとんど残っていない状態であることだ。大神祇官と神徒はデッキに残っているが、ここで彼らを呼んでも状況は変わらない。

 教導の大神祇官の効果が決まればエクストラデッキからアルバス融合モンスターを落とし、アルバスの落胤をサーチしてパーフェクト機械王を素材に融合が決まる可能性は残されているが……。

 

 グリモが神の通告をエクレシアの特殊召喚ではなく、フルルドリスの特殊召喚に切ってきた点から考えてドーマの情報収集能力は伊達ではない。

 エクレシアの特殊召喚に神の通告を打てばドラグマカード全般に対するサーチ効果を止めることができたのだから、魔法・罠へのアクセスを考えると普通ならここで打つのが大本命。

 しかし、この場合はフルルドリスがデッキに残ることになり、素引きや天底の使徒から切り込み隊長の効果を無効化する動きの可能性が残ってしまう。

 それにも関わらずエクレシアの効果を通し、わざわざフルルドリスへのアクセスを許したのはここで神の通告を切り、俺のデッキリソースを枯らすことそのものが目的だったと見て間違いない。

 

 そう考えると奴がエクストラデッキに何らかのモンスターを採用している可能性。これが極めて低いものとなってしまう。

 俺がマリクとの戦いで教導の大神祇官が効果を発動できたのは、原作知識によってヒューマノイド・ドレイクという融合モンスターを採用しているという事前情報があった点が極めて大きい。

 相手のエクストラデッキを確認できない遊戯王ワールドでは、教導の大神祇官の効果を発動しようとして、そこで初めて相手のエクストラデッキにモンスターが存在しないために効果が不発だと判明することもありえるのだ。

 この「自分の情報が収集されていると分かっている状態」で、相手がエクストラデッキにモンスターを採用していることを信じて効果を使えるだろうか。……使えるわけがない。不発に終わった瞬間に魂が奪われるのだから、そんなリスクは冒せない。

 

 つまり今、俺が引きたいのはミラーフォースや激流葬、ライトニング・ストームのような盤面リセット系のカード。グリモは既に盗賊の七つ道具と神の通告という強力なカウンター罠を2枚使っていてバックも残っていない。

 またこの2枚のコストにライフポイントを消費している以上、下級モンスターのワンパンでも通ればその時点で勝てるので、盤面のリセットが通れば現在残っている伏せカードと合わせて十分以上に勝利が狙えるということである。

 

「私のターン、ドロー!手札よりレベル7モンスター、可変機獣ガンナードラゴンを魔法罠ゾーンへ妥協召喚!このモンスターは妥協召喚を行った時、元々の攻撃力が表記されている攻撃力である2800の半分、攻撃力1400となるが、オレイカルコスの結界の効果で500ポイントアップして攻撃力1900!

 さらにフィールド上に機械族モンスターが増えたことで、パーフェクト機械王の攻撃力はさらに500ポイントアップして3700!!」

『攻撃力3700!!』

『まずい!アディンの守備力をパーフェクト機械王以外で上回られちまったぞ!』

『これではアディンの効果で後続に何を呼び出しても、パーフェクト機械王の攻撃で破壊されてしまいマース!』

 

 だが、パーフェクト機械王に神のような耐性は無く、場に存在するモンスターの数こそは増えたが、グリモのバックは依然として0枚のまま。

 耐えられるターン、打開策となるカードを引く猶予が減ってしまうのは痛いが、打開策を引いても勝てないという状況以外ならば何の問題もない。

 

「では、そろそろ本気で行かせてもらおう!可変機獣ガンナードラゴンで教導の天啓 アディンを攻撃!」

「アディンは戦闘で破壊された時、デッキからドラグマモンスターを特殊召喚できる!俺が呼ぶのは……教導の神徒!!攻撃表示!!」

 

 盤面が完成したこともあり、ついに殴ることを選んだグリムに対し、俺はアディンから攻撃力2000の教導の神徒を展開。

 これは教導の大神祇官を出してもパーフェクト機械王に破壊されること自体は変わらない点と、素引きしてしまった時のリスクによるものだ。

 教導の大神祇官は素引きしても双頭の雷龍を除外から特殊召喚できるが、教導の神徒は場のエクストラデッキに存在したモンスターが破壊されないと特殊召喚できないため、手札で腐ってしまう。そうなると敗北が確定的になってしまうため、今のうちに使い切っておこうという訳だ。

 

 また切り込み隊長では破壊できない攻撃力を持つため、パーフェクト機械王の攻撃を誘導できる点も極めて重要だ。守備表示で出すと、切り込み隊長で2連打でモンスターを全破壊。3700打点のダイレクトアタックが飛んでくれば、俺のライフは二つの意味で消し飛んでしまう。

 

「ならばパーフェクト機械王で教導の神徒を攻撃!!」

「教導の神徒は相手モンスターが攻撃を宣言した時、フィールドのドラグマモンスターの攻撃力を500ポイントアップする効果がある!」

「しかし所詮は2500止まり!攻撃力3700との差分、1200のダメージを受けてもらうぞ!」

 

 パーフェクト機械王に一矢を報いようとする教導の神徒だったが、攻撃の差は如何ともしがたく光の粒子となって消えていく。俺は先程とは異なり大きくライフポイントが削られたことで、それに伴う肉体的・精神的衝撃に対し反射的に備えたが……。

 

『倉瀬ボーイ!』

『倉瀬!』

 

 周りから聞こえる俺を心配する悲痛な叫び声とは裏腹に、俺はまったくダメージを受けていない。

 ……いや、立体幻像に伴う衝撃は来ているのだが、逆に言えばその程度であり、俺が覚悟したような現象。現在全身を襲う疲労感や脱力感が強化されて動けなくなるような事態が発生していないのだ。

 

「さらに続けて1体目の切り込み隊長でセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターは教導の鉄槌テオ、教導の神徒が攻撃された時はセット状態だったため、攻撃力は上がっていない……」

 

 え、ちょっとまて。どういうことだ。

 オレイカルコスの結界は敗北すると魂が抜かれるだけで、肉体的・精神的なダメージって無いんだっけ?

 城之内がヴァロンとの戦いの後に疲れ切っていたのは……あれは物理的に殴り合っていたから?

 

「2体目の切り込み隊長でダイレクトアタックを行い1700ポイントのダメージ!」

「くっ……」

「これで貴殿のモンスターは全滅しライフポイントは残り僅か700ポイントとなった!私はターンを終了する!!」

 

 じゃあこのさっきから全身を襲う、立っているのも辛いほどの虚脱感はなんなんだよ。切り込み隊長がテオに、俺に切りかかる中。

 まったく変わらない疲労感に困惑しつつ、ともかく今はこの場を打開しなければとメンタルを切り替える。

 

 相手の場にはオレイカルコスの結界の効果を受けた切り込み隊長が前列に2体存在し、後列には妥協召喚した可変機獣ガンナードラゴンと強化を受けて攻撃力3800になったパーフェクト機械王がいる盤面。

 一見すると絶望的な状況にも思えるが、相手のモンスターには耐性が無く罠カードも既に使い切らせている以上、見た目の印象ほど返せない盤面という訳ではない。

 盤面をリセットする系のカードはそれなりに採用しているし、一度盤面を返して勝ってしまえば、この場には遊戯とペガサスの二人がいるのだから、俺を襲っている謎の現象についても答えを聞ける。

 

 今はデッキを信じ、カードを引くだけだと気合を入れた瞬間。

 突如として全身から力が抜けた。力が抜けたと言っても、カードを取り落とすとか、その場に倒れるだとかではない。

 

 重い体を動かす主導権を誰かが代行するように、自分の周りを何かが包み込むかのような感覚。

 何事かと困惑している間にも俺の体は、先程までの俺の鈍重な動きとはまったく違う、別の何かであるかのように動き出し……。

 

「私のターン、ドロー。強欲で貪欲な壺の効果を発動。デッキから10枚カードを除外することで2枚ドローする」

 

 俺の口から、俺の声で、まったく意図していない音が出た。俺の中から何かを削ぎ落としたかのように聞こえる不思議な音。

 何が起こったか分からないままに俺の意識は薄れ始め、最後に俺が知覚できたのは赤く輝くデッキと……薄く、赤い何かに包まれた自分の体だった。

 

「そして、魔法カード『烙印開幕』を発動!」

 




・掲示板世界線のアニメ
病院から直行なので服装は病衣、入院用パジャマに1枚羽織った程度の姿デュエルをしている上、明らかに口数が少なくリアクションも薄い。
攻撃力3700となったパーフェクト機械王を見ても驚いているように見えず、反射的に凌いでいるようにしか見えない。
内心で考えている「どうせアイツ耐性ねえしな……打開札引けたら普通にいけるんだが……」みたいなことは誰にも分っていない状態。
しかし、実際問題として体力が限界なのは間違いない。

・倉瀬
闇のゲーム中にダメージを受けたのは本デュエルが始めて。
そしてここでダメージを受けても肉体的・精神的にまったく異変が無かったため、「あれ????」ってなってる

これは描写を見る限りオレイカルコスの結界そのものには精神的、肉体的にダメージを与える効果が無いかあっても通常の立体幻像と同じ程度。他の闇のゲームと比べて比較的薄味に見えるのである意味当然。
でも闇のゲームが始まると自分の体がどんどん重くなっているのは事実なので、何でこうなっているのか分からず混乱している。
そしてその後に体の主導権が失われ、意識も薄れていく。何が起こっているのかマジでわかっていない。

・ドラグマの皆さん
わりとブチギレモードなので片っ端から沸いてくる

・グリモ
事前に対策しているとはいえドラグマを凌ぎ切るヤベー奴。

・烙印開幕
今回、ドラグマメンバーの中に出番が無かった奴がいるらしいっすよ?
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