遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない 作:鏡路の一般兵
・フルルドリス
戦闘時以外に実体化する時は兜どころか鎧も外した略礼装モード。多分城之内とか本田は最初に実体化した時に「誰!?」って言ってる。
でも最初は鎧で実体化して、鎧だと話しにくいなとか言って後から装備を外す方がインパクトがあって良いかもしれない。
・アニメ/原作的時系列
ドーマとの決戦直前あたり、前回予告した通り、倉瀬がいないところで完全オリジナル展開が起こった後の話。
そのため開幕が少々唐突なんですが、妄想で行間を埋めて貰えるとありがたいです。
「うう……本当は、分かって……いたのです……。こんなことをしても、ペガサス様の力にはなれない。邪魔をしてしまうばかりだと……。」
「夜行、謝る必要はありません。悪かったのは私の方、私の言葉が足りなかったのデース……」
遊戯と海馬の力を結集した最強モンスター。究極竜騎士の前に消えていく『邪神 ドレッド・ルート』。その操り手であるラフ・ダイヤモンドと将来を嘱望されたペガサスミニオンの一人、天馬夜行の意識は闇に落ちてゆく。
インダストリアル・イリュージョン社がパラディウス社……否、ドーマと敵対すると言うのにペガサスから頼られることのなかった彼は、オレイカルコスの力に手を伸ばした。
彼らに声を掛けず、逃げの一手を指示したのはペガサスの彼らに対する愛情の現れであった。
しかし、このような世界規模の非常事態に頼られなかった当人たちの絶望は如何ほどだったか。
オレイカルコスの力に手を伸ばしたのは、ペガサスから預けられた邪神に魅入られたからか、それとも自分の意志だったのか。
「ああ。私はペガサス様を裏切り、兄さんまで巻き込んだというのに……勿体なき……お言葉……」
それをもう知る手段は既に無く、ペガサスは動かなくなった月行と夜行を抱きかかえると静かに涙を流す。自分の判断は間違いだったのか、彼らを危険に巻き込むことを承知で話をするべきだったのか……。
「ペガサス、話をしてもらうぜ。お前が一体何を知っていたのか。倉瀬との間に何があったのか」
「天馬兄弟の言っていたペガサス様は全て知っていたという言葉の意味。吐いて貰うぞ」
ドーマとの戦いの中、ドーマの三銃士以外でオレイカルコスの力に取り込まれたのは天馬兄弟だけでは無い。羽蛾や竜崎など、多くのデュエリストたちが彼らの道を阻み、その魂をオレイカルコスの結界に封じられている。
海馬もKCの経営権をドーマに奪い取られ、世界海馬ランド計画が大きく後退することになった以上。その全てをペガサスが最初から知っていたという夜行の言葉は、彼らにとって到底看過出来るものではなかった。
ペガサスは未だ海馬に付き従う彼の側近たちに天馬兄弟を預けると、涙を拭いて二人の前に向き直る。
「ドラグマの皆さん。説明しても……構いませんね?」
「っ!何故ここでドラグマの名が出てくる!」
虚空を見据え、話を始めたペガサスに動揺する姿を見せたのは遊戯だった。
ドラグマは倉瀬から……いや、倉瀬の中にいた精霊から預けられたもの。彼らにはこのドーマとの戦いの中には何度も助けられてきたし、良好な関係を築いてきた自信がある。
しかし天馬兄弟曰く、全てを知っていると言うペガサスに関わりがあるのなら、その今まで築いてきた関係の全てが裏切られる可能性すら存在しているためだ。
「安心してください。ドラグマの皆さんが敵と繋がっているという事はありえません。ただ、これをお話しするのなら、彼らには必ず許可を取らなくてはならないのデース」
「どういうことだ……?」
「ふぅん。ここまで事態が動けばカードに宿る精霊が実在するというのはもはや疑いようのない事実。話をする必要があるのならさっさと話をさせればよいのだ」
もっとも、ペガサスはそのような不安は杞憂であると言い、遊戯は状況が飲みこめぬまま困惑し、海馬は早く話を進めろと言う。場が混乱に包まれる中、ペガサスから指名されたドラグマの面々は実体化を始めた。
勿論、普段ならばこう簡単に実体化できるものではない。精霊が人間界で実体を持とうとするのなら、それ相応のエネルギー……生贄が求められる。
彼らが容易に実体化できるのは、今の世界にはオレイカルコスの力が溢れていて、精霊世界と物資世界の壁が薄くなっているという、極めて限定的且つ希少な条件が揃った故だ。
「ペガサス殿が必要だと思うのなら話をして貰って構わない。だが、話をする前に遊戯殿と海馬殿にはできれば一つ約束をして欲しい。」
「約束……?」
実体化したドラグマの精霊たちが一様に真剣な眼差しを向ける中、口を開いたのは鎧を外し、白い略礼装に身を包んだフルルドリスだった。
「できればか、まあ良いだろう。できる範囲であれば約束してやろう」
「ああ。それで十分だ。私たちが求めるのはただ一つ、ペガサス殿から話を聞いてもマスターを、倉瀬カインを特別扱いしないでほしいと言う事だ。……恐らく、お二人にそうされてしまうのは、マスターが一番望まないことだからな」
フルルドリスは沈痛な面持ちでそれだけを告げると、他のドラグマの面々に視線でカードに宿っている状態に戻るように指示を出し、そのただならぬ様子にその場にいる全員が息を飲んだ。
ドーマとの戦いの中で彼ら精霊の力は周知の物となっていたし、それだけに彼らがこのような態度を取るということは、よっぽど重い話であると理解できたからだ。そしてその様子を確認した上で、ペガサスが重い口を開く。
「結論からいうと、私とドラグマの皆さんは現在のような事態に陥ることを最初から予測していました。それは彼らの主、倉瀬カインというデュエリストが極めて広範囲且つ、正確に未来の情報を知っている予知能力者だったからデース」
「予知能力者?」
「予知能力者ってあれか……?テレビに出てくるようなインチキの……」
「違いマース!倉瀬ボーイはインチキなどでは無く、正真正銘、本物の予知能力を持っているのデース!もっとも、この予知能力と言う表現は皆さんに伝わり易いように表現しただけで、実際はもっと別の何かではあるのですが……」
予知能力者。未来を読み当てる人間。自身が予知能力者であることを主張する人間は多いが、城之内が言った通り、その大半はなんらかの方法でインチキを行う偽物である。
直接的なイカサマか、数学的な法則か、たまたま的中しているだけの豪運の持ち主かはともかく、本当に未来を予知できる人間はほぼ皆無に等しい。
唯一の例外は強力なオカルトアイテムである千年タウクの所有者であった、イシズ・イシュタールの存在であろう。
「下らんな。予知能力など、所詮まやかしに過ぎん。」
しかし、このイシズ・イシュタールの予知はバトルシティ本戦において海馬に破られている。
これは海馬が未来を変えるだけの力を持ったデュエリストであるという、極めて稀な条件があったからこその出来事ではあったのだが……。
「海馬ボーイ、倉瀬ボーイの予知はユーが未来を変えることすらも予知していたほどデース」
「……なんだと?」
ペガサス曰く、倉瀬の予知は千年アイテムのそれすらも上回り、予知された未来が変えられてしまうことすらも認識していたと言う。
自らの手で切り開いたと信じていたロードが、実際には他の誰かに予知されていたという事実を知った海馬は思わず苦虫を噛み潰す。
「彼の予知が大きく外れたことはただの一度もありません。オカルトアイテムなどではなく、彼はナチュラルにこのような力を持っているのデース」
「適当なことを言ってたまたま的中しているだけ、ということはありえないのか?」
「遊戯ボーイ、忘れているかもしれませんが、私はミレニアムアイの所持者ですよ。そんな私を相手に嘘や偶然のでまかせが通じるとお思いですか?」
「それは……」
そう、倉瀬の予知について語っているのは他ならぬミレニアムアイの所持者。マインドスキャンで他人の心を見通せるペガサスなのだ。
オレイカルコスの結界には阻まれてしまったが、それでも同じ千年アイテムの所持者である遊戯のマインドすらも見通す力。
それを持っている男が、倉瀬の予知は本物であると断言するという事実の意味は重い。
「私が彼のことを本物だと言っているのは、このミレニアムアイで彼のマインドを見通し、明確なビジョンを読み取ったからこそ。彼は正真正銘、闇の力やアイテムに頼らない。ナチュラルな能力者であるといえマース」
「待てよ!そんなに完全な予知が出来るならこんなことにはなってねえはずだろ! 羽蛾や竜崎は……アイツに関わりが無いのかもしれねーけど、天馬兄弟の魂まで奪われるのはおかしいじゃねーか!」
「そうよ!だってペガサスさんだってあの二人が現れた時は驚いてた!あの様子に嘘は無かったはずよ!」
それを否定するのは本田と杏子のような非デュエリスト組。
彼らからすればペガサスのマインドスキャンに対する実感は非常に薄く、天馬兄弟が現れた時のペガサスの動揺を目にしている以上。本当に倉瀬が予知能力を持っているなら、不測の事態がおこるなんてありえないと考えるのは自然な話。
しかし、倉瀬の予知…… 原作知識というビジョンを知るペガサスには、彼らを納得させるだけの答えを持っている。
「ええ。彼の予知は極めて広範かつ正確なものですが、ある欠陥がありマース」
「欠陥……?」
「それは、彼の予知は『自分が世界に存在しなかった世界線』を、コミックやアニメーションという形で観測することによって得られるものであるという点デース」
自分が世界に存在しなかった場合の未来を漫画やアニメのような形で予知する。
その表現に呆ける一同。当然のことながら、自分が存在しない世界を見ると言うことの意味を神ならぬ彼らは理解することが出来ない。その意味を正しく理解できるのはマインドスキャンを扱えるペガサスを除けば、千年錠を持つシャーディーだけだろう。
「つまりマスターの予知とは、自分が存在するというだけでその予知から外れていくということです」
「ふん、そもそも人生とはそんなものだろう。デュエリストとは己が信じるロードを進み、より良い未来を掴み取るものだ。俺には貴様らが深刻な顔をしている理由が理解できん」
呆けた一同に向けて端的に倉瀬の予知能力がもたらす結果を説明したフルルドリスと、それに対して何時もの社長節を炸裂させる海馬。
そう、海馬瀬人という男はいつだって自分の力で自分の道を切り開き、未来を掴んできた。だからこそ、予知が外れると言われても気にならない。未来とは不確定なものだからだ。
だからこそ何が深刻なのか理解できないと語る彼に、フルルドリスは感情的に声を荒げる。
「海馬殿、仮にその予知で『望むべき未来』が得られていたとしたら、今と同じことが言えますか?」
「何?」
「仮に海馬殿が存在しない世界で、モクバくんがこれ以上が無いほどに幸せな姿を見せているとしましょう。あなたはその未来を潰してでも己の道を切り開くことが出来るのかと聞いているのです。」
海馬は目を見開く。彼にとってモクバとの絆、愛情とはその在り方の根幹に存在するものである。アメルダとの戦いの中でも彼は「何があっても弟を守る」と言い切るほどに溺愛している。
そんな弟が確実に幸せになれる未来を潰し、自分のロードを貫くことが出来るのかと、フルルドリスは問いかけたのだ。勿論、海馬は迷うことはあっても最後には己の道を切り開くだろう。これ以上無いほどの幸せを上回る幸せをモクバに与えるため、そして自分が共にその幸せを享受するために戦うことを選ぶだろう。
だが、深刻な顔をしている理由が理解できないと言う発言を彼が事実上取り下げたのは、海馬からの反論が無いことからも明らかだった。
「彼の予知は完璧デース、なにせ倉瀬ボーイがいない世界では、先日の三幻神との戦いも、今回のドーマとの戦いも、そしてそのまた未来で起こる戦いも、その全てに我々は打ち勝っているのですから。
それは遊戯ボーイ、貴方の記憶を巡る戦いでも同じデース、彼の知る世界ではハッピーエンドを迎えたと言ってよいでしょう」
倉瀬のビジョンによって予知されていたドーマとの戦いでは、表の遊戯や城之内が犠牲になるなどこの場にいる人間からも少なからぬ犠牲者が出たという。
しかし、それでも最後は皆の魂が解放されるハッピーエンドであり、その後に起きる遊戯の記憶を巡る戦いにも決着がつく。完全無欠とは言えずとも、誰もが納得した形で光の中に完結する物語。倉瀬はそれの全てを、いや、その先に起こる事態を把握した上で、この世界に生きている。
「お、おい……まてよ……それって……」
「そんなの……あんまりだ!」
自分が世界に必要とされていないのではないかという孤独。
自分がいなくとも世界は回っていくのではないかという孤独。
誰も一度は感じたことがあるのであろう思いを、予知と言う形で突き付けられた倉瀬の気持ちは如何なるものだったのか。それは当事者である倉瀬を除けば、人のマインドを見通す能力を持つペガサス以外には理解できないことだ。
「そう、倉瀬ボーイは……常に自分がこの世界にとっての不要物であると、ハッピーエンドを汚してしまうリスクであると、自分は存在しない方が良いのではないかという恐怖と戦い続けていたのデース。
私が最初からこの戦いの全てを知りながら皆さんに黙っていたことを謝罪します。本当に申し訳なかった……。私はこのドーマとの戦いで予知を元に被害を抑え、彼がこの世界に存在してよい理由。彼がいたからこそハッピーエンドを越えるハッピーエンドを迎えることができたのだと、彼の孤独と恐怖を取り払う証拠を作ってあげたかった……。
しかし、人間が未来を思い通りに変えるなど、思い上がりでしかなかった。と、いうわけデース……。あちらを立てればこちらが立たず、確かにこの戦いの中で守れた人もいましたが……。私は未来を変えてしまったが故に、天馬たちという本来は無事だったはずの犠牲者を増やしてしまいました。
私は何が悪かったのか、天馬たちにも全てを話し頼るべきだったのか。皆さんに相談をするべきだったのか……。 もう何も、分からないのデース」
ここまでに抱えていた感情を一息に吐き出したペガサスは膝を突く。
その場には全てを知っていたにも関わらず、それを黙っていたペガサスを追求しようという空気は欠片も残っていない。
「思えば、倉瀬ボーイに憑いている精霊『デスピアの大導劇神』が劇をモチーフとしているのは、倉瀬ボーイがこの世界を自分が予知したコミックやアニメーションの世界として見ているから。
教導の皆さんが集まったのは、その世界の主役であった遊戯ボーイや海馬ボーイと共に冒険をしたいという思い。教え導き、教え導かれたいという思いの現れだったのかもしれまセーン……。」
ペガサスの見た倉瀬のマインド。それはアニメが流れるいくつものテレビと漫画。そして額に入れられて整理されたカードだけがあるだけの部屋。
部屋の中に倉瀬の姿は無く、彼は常に部屋の外から自分の心の中を眺めている。それは自分が世界にとって異物であると認識しているが故であり、出来る限り世界を変えたくないという意思の現れ。故にこそ彼はシャーディーに自分の部屋が模様替えされることを心より恐れた。彼が知る原作が全て違うものに書き換えられてしまうかもしれない恐怖に酷く狼狽した。
「申し訳ありません。ダーツとの決戦が近いというのにこのような話をすることになってしまって。私がしゃべることで未来が変わってしまうかもしれない。世界が滅んでしまうかもしれない。
倉瀬ボーイは常にこのような恐怖と戦っていたかと思うと、竦んでしまう我が身が恨めしくてなりません……」
ペガサスはその恐怖を理解し、誰よりも倉瀬を理解している。故に全ては話さない、話すわけにはいかない。彼は予知能力者などではなく、転生者というこの世界に生まれ落ちた哀れな迷子であるということ。
彼がデスピアの力を恐れたのは、原作を改変することで、自分で心の部屋を書き換えることに繋がるから。デスピアの力で遊戯を王国で倒していれば、マリクをバトルシティで倒していれば、その瞬間に彼は自分の寄る辺を失ってしまうということ。
だからこそ彼は本来デュエリストが持つ敵意と言うものを欠片も持たないこと。彼にとっては遊戯や海馬だけでなく、マリクやドーマですらも敵とは見做せない、彼にとって原作と言うのはそれだけに重い意味を持つこと。
今、ペガサスが認識している以上の絶望感や恐怖と一人の少年が戦っていると言うのはあまりに残酷な事実であり、それを本人がいない場所で語ることはできなかった。
「大丈夫だペガサス。俺たちは必ず勝つ。ダーツとの戦いに勝って、未来を掴む。」
ドーマとの戦いにおいて、ペガサスは彼に新たな寄る辺を作るため『原作キャラである私がいるから任せて欲しい』と挑み、原作だけに拘らずとも大丈夫だと、倉瀬がいたから世界はより良くなったのだと救おうとして……失敗した。
この状態から遊戯たちが勝利を掴めば、自分が行ったのは無駄な行為だったということになり、遊戯たちが敗北すれば世界にとって不要なリスクを背負わせ、世界を破滅に導いたことになる。
「そして倉瀬が予知したというハッピーエンド、それを越える何かを見つけてみせる!」
天馬兄弟との戦いによって、ペガサスは初めて本当の意味で倉瀬が抱いていた恐怖に気が付いたと言える。
自分がやっていることは一体何だったのか、結局全てを遊戯に任せるなら、自分がいることの意味は何だったのか。
「例え俺が勝ってしまうことで、倉瀬が自分が世界に必要とされていないと思ってしまうとしても、倉瀬がいたからこそ出来た何かを見つけてみせる」
故にこそ、遊戯の必ず勝ってみせるという宣言と、それに応える周囲の声は……。
どうしようもないほどに頼れるはずなのに、ペガサスに深い絶望を与えていた。
―――
遊戯一行がドーマの本拠地を目指していた頃。倉瀬……デスピアの大導劇神は彼らに先んじてドーマの本拠地に辿り着いていた。無論、正攻法などではない。
物質世界とデュエルモンスターズ界に加え、烙印世界という三つ目の世界。複数の世界を渡りながらオレイカルコスの力の波動を辿り、ドーマの手下との交戦を避けながら進んでいたのだ。
主である倉瀬の保護は完了した。仮に自分が負けてもマスターの魂が奪われることはない。
そういった保険を掛けた上で彼は歩みを進める。
「まさか、名もなきファラオでも海馬瀬人でもなく、キミが私の神殿へ最初に訪れるとはね。なんと呼べばよいのかは分からないが……」
「倉瀬と呼ぶがいい。私はマスターではないが、この力はマスターが振るおうと思えばいつでも振るえたもの。私はその力を代行して使っているに過ぎない」
「では、倉瀬。ようこそ我が神殿へ」
ドーマ神殿の壁一面には人間を象った石板……いや、オレイカルコスの結界によって封じ込められた魂が安置されている。
そこには遊戯との戦いで散っていたドーマの三銃士や天馬兄弟、羽蛾や竜崎の魂の姿だけでなく、有史以前から一万年もの長き時に渡って集められた強者の魂があった。
「悪趣味なことこの上ないな。今すぐに彼らの魂を解放することをお勧めしよう。」
「これも我が神復活のためだ。これだけの魂があっても我が神の復活にはまだ足りない。オレイカルコスの神の復活を止めさせ、魂を解放させたいのなら私を倒す以外の方法は存在しない」
倉瀬は周囲を一通り見回した後、声の主であるダーツへと向き直る。
「古代以前よりデュエルとは魂を賭けた儀式。この場を訪れたと言う事は、その習いに従う覚悟はあるのだろう?」
「業腹だがね。一万年の長き時に渡り、踊り続けた小鳥に合わせてやらないほど私は狭量ではない」
コツコツと足音を響かせ、その距離を詰めながら二人は言葉を交わす。
「現代におけるデュエルとは遊びなのだよ。カビの生えたしきたりなど、早々に捨てるべきだろう」
「だが、そのデュエルによってオレイカルコスの神は復活し、腐敗した世界を滅ぼすのだ」
倉瀬の構えるデュエルディスクが赤い光を放つ。光に照らされた影が踊る。
グリモとの戦いの後に身に着けた仮面がその反射によって様々な色へと表情を変えるその様子を見たダーツは興が乗ったのか、王であった者として度量と慈悲を示す。
「ふむ。私は君が1人でこの場に現れた蛮勇を称え、遺言を残すことを許そう。道化師の諫言に耳を傾けるのは王の務め。この腐敗した世界が滅びようと、その言葉を覚えていることを約束してやろう。」
「それはそれはまことに有難きお言葉。では、一言だけ言わせて頂きましょう」
倉瀬は……否。教導の大神祇官/デスピアの大導劇神は言葉を紡いだ。
「一万年、一つの世界程度という小さなスケールで絶望して神に縋るなど、少々視野が狭すぎますな」
次回、倉瀬(大導劇神) VS ダーツ
ドーマ編大ボス争奪レース、開幕!
☆掲示板回でやるか分からないこの世界線におけるアニメやカード環境に関する設定
・掲示板民の倉瀬への理解
千年アイテムすら上回る予知能力をナチュラルに持ってしまったオカルト耐性よわよわ一般人のお兄さん
アニメや漫画のようなビジョンで予知しているので、視聴者が見ているのと限りなく似たような世界を愛している=遊戯王ワールドを愛しているという認識。
・天馬兄弟
夜行がペガサスに頼られずに絶望しているところを邪神が唆し、月行を邪神の力で二人纏めて操る形でドーマ陣営入り。
ペガサスがリスク分散で移した株も全部パラディウス社に取られてKC買収。未来知識で被害を抑えようとしたら、別の被害者が出た上に状況が悪化した構図
ダーツ√の中ボスがドーマの三銃士なら、倉瀬√の中ボスがこの二人。
・ペガサス
アニメではドーマ編で遊戯たちと一緒にアメリカを旅して絆を育みつつ、色々怪しい行動や出元の怪しい知識の描写があって明かされるのがコレ。
そりゃ倉瀬の感情を見たら「Oh……まい……がっ……!」とも言いたくなる。
本話で開示した事情を踏まえた上で、自分の唯一のよりどころである原作がブレイクするのを覚悟で自分を助け、ペガサスの大事なものであるシンディアのことを心配までされている。
自分が全力で協力できる期間はミレニアムアイを返却するまでの僅かな期間だけ。なんとかしてやらなくちゃとなって、周りから見ても大変な様子を見せている中、頼って貰えなかった夜行は自分はそんなに不甲斐ないのかとなってしまったのが今回のオリジナルイベント
倉瀬の前ではこういう感情は欠片も見せていないので、本作のペガサスは本当にずるい大人です。
・倉瀬
原作がハッピーエンドに着地しているんだから、それを崩しかねない自分は世界に存在してはいけない人間なのではないかと自覚がないままに自問自答し続ける系転生者。
実際、いざ介入したら見事に事態が悪化したよ!やったね!
ARC-VやVRAINSのように、明確に何かを失ってしまうことが分かっている世界に転生していたら、「俺が介入してハッピーエンドにして見せる!」 と、思えていたかもしれない……。
彼にとって自分がこの世界に存在していて良いと感じられるのは、精霊が憑いたデッキを回している時だけ。
転生者知識がある上でカードが露骨にキラキラしたり、勝手にデッキに入っているのに精霊が憑いていると言う確信を持てなかったのは、「これは自分が生み出した都合の良い幻覚ではないか」と疑っていたため。
ちなみに漫画だと殆ど出てこないらしいけどアニメと違って何をしてるんだろう?の答えは、「何もしなかった」です。
原作を遵守して世界を守ろうとするあまり、最大の協力者にして理解者になりえたペガサスを見捨ててしまった世界線。多分こっちの世界線のRでは凶導を使っている
・教導の大神祇官/デスピアの大導劇神
倉瀬の思いを理解した上で原作を破壊しにかかる系の過劇派精霊。
マスターにとって大事なものかもしれないが、それで苦しみ続けるようなら、もはやそんなものは必要ない。
全て壊してやる。