遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない 作:鏡路の一般兵
ドーマとの決戦直前あたり、遊戯一行は現在ヘリで突入中。
デュエル中に精神フェイズを挟むと全然進まなくなるので、今話はまずデュエルを進めます。
精神フェイズなどは次回行う予定です。
「一万年、一つの世界程度という小さなスケールで絶望して神に縋るなど、少々視野が狭すぎますな」
「言うではないか、だが許そう。本来道化師とはそういうものだ」
お互いに口元を緩ませ、一見すると友好的な様子でデュエルが始まる。
勿論友好的に見えるのは王と道化師という立ち姿だけであり、この二人の間に仲良くしようと言う気はさらさら存在していない。
片や古代アトランティスの王にして、世界の営みを滅ぼそうとするもの。
片やデュエルモンスターズの精霊にして、世界の流れを壊そうとするもの。
彼らに共通するのは現在の世界を憎んでいるという、ただ一点のみである。
「先攻は頂きますよ。私は『デスピアの導化 アルベル』を通常召喚!アルベルは通常召喚に成功した時、『烙印』魔法・罠を手札に加えることが出来る!
私は烙印開幕を手札に加え、フィールド魔法 烙印劇城デスピアを発動!1ターンに1度、手札・フィールドよりレベル8以上の融合モンスターの素材となるようにモンスターを墓地に送り、融合召喚を行う!」
白亜の都市が現れたかと思えば、それが一瞬にして禍々しい赤に染まる。
それが思い起こさせるのはオレイカルコスの力により急速に発展し、滅んでいったアトランティスの姿。
「私はフィールドのアルベルと、手札の多次元壊獣ラディアンを墓地に送る!教導が誇る神器よ! 闇を喰らいて呪いと成し、この地に顕現せよ! 来たれ! デスピアン・クエリティス!守備表示!」
「ほう、早速融合召喚を行ってくるか」
しかし、その姿がダーツに何かしらの感傷を与えることはない。
10000年という月日は彼からその手の思考を奪っていたし、何より倉瀬の側もそれによる改心を期待していないのだから当然ではあるが、その様子はこの二人に妥協点が存在しないことをこれ以上無く表していた。
「先攻1ターン目は攻撃できない。私は強欲で貪欲な壺の効果でデッキの上からカードを10枚除外して2枚ドロー。手札を補充した上でカードを1枚伏せ、ターンを終了する。」
「初手から大型の融合モンスターを出してくるとは、自分が戦っているのがどのような相手か、しっかりと弁えているようだが……全ては無駄なこと。私のターン、ドロー。」
序盤から大型の融合モンスターを出されたダーツはといえば、自らが引いたカードを見てニヤリと笑う。このデュエルは既に常人の領域で行われるものに非ず、大型モンスターを1ターン目から召喚するなど、出来て当然の事柄に過ぎない。
「フフ…… 私は漆黒の闇より生まれしフィールド魔法、オレイカルコスの結界を発動し、続けて儀式魔法 オレイカルコス・ミラーを発動。
このカードは手札・フィールドからレベル6以上になるようにモンスターを生贄に捧げ、デッキからミラーナイト・コーリングを特殊召喚する。召喚先は当然、後列だ」
「デッキから儀式召喚!」
オレイカルコスの結界が光を放つ中、ダーツから離れた所にポツンと現れるのは攻撃力・守備力共に0の結晶型モンスター。
一見すると貧弱にも見えるそれだが、デュエルモンスターズの世界に於いてステータスが0というのは、単純に能力が高い場合よりも恐ろしい。
手間暇かけて出したモンスターのステータスが0ということは、それ即ち、それに見合った効果を持っているということだからである。
「さらに、ミラーナイト・コーリングの効果を発動。場にミラーナイト・トークン4体を攻撃表示で特殊召喚し、全てのトークンに銀の盾カウンターを一つ置く。
ミラーナイト・トークンの元々の攻撃力・守備力は0だが、戦闘を行う時、相手モンスターと同じ攻撃力と守備力になる」
そしてその効果の恐ろしさを証明するかのように、ダーツの場が鏡の盾を持つ騎士で一気に埋まった。
1枚……いや、コストとなった上級モンスターを含めて2枚が5枚へと、しかもそのうち4体は相手モンスターと同じ攻撃力と守備力を得ると言う相打ち効果を乗せてだ。
単純に4体のミラーナイト・トークン全てと相打ちをするにしても4枚の消費が求められる上、なんらかの効果を予感させる『銀の盾カウンター』のことを考えれば、ふざけるなと言いたくなるほどのアドバンテージ生成能力。
1枚が4枚のフィールドアドバンテージになるという意味ではスケープ・ゴートのようなカードも存在しているが、こちらには生贄として使えないという制限がついていることを考えれば、この点でも破格の性能だと言えるだろう。
「デスピアン・クエリティスの攻撃力と守備力は共に2500。守備表示のままである限り、同じ攻撃力を得るだけならば破壊はされない……が、クエリティスが突破されてしまった時。ダイレクトアタックでライフポイントを削られるのは厄介だ。
デスピアン・クエリティスの効果!1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズ、フィールドに存在するレベル8以上の融合モンスターを除いた全ての攻撃力を0にする!」
しかし、その破格の性能に対抗しようとするデスピアン・クエリティスの効果もまた破格。
オレイカルコスの結界の効果により500ポイントアップしたトークンたち……その効果でモンスターを相打ちさせられたとして、後にライフを削るはずだった攻撃力を奪う。それは主のライフポイントは削らせないという意志の下に発揮される、クエリティスが誇る絶対守護の力だ。
「グリモとの戦いで見せていた力か……。だが、その程度の力では時間稼ぎにしかならない、私はオレイカルコス・キュトラーを後列に通常召喚してターンを終了する」
「おっと、貴様がターンを終了する前に罠カード、ドラグマ・エンカウンターを発動させてもらうぞ。このカードの効果により、私は手札・墓地からアルバスの落胤1体を特殊召喚する。現在、私の墓地にアルバスの落胤は存在しないため、今回は手札から特殊召喚!」
「何?」
ダーツが自分の前にウニの様なモンスターを召喚してターンを終えようとしたとき、罠カードの発動宣言と共に手札から現れるのは白髪の少年。
召喚された少年は現れると同時に駆け出し、鏡を持つ騎士たちの間をすり抜けると、ミラーナイト・コーリングへと肉薄する。
「本体とオプションが存在する儀式モンスター。この手のモンスターは本体を倒さなければオプションが復活し続けるもの。道化としては一度は驚いてやるべきだとは思うが……これは遊びでは無いらしいのでな。
特殊召喚したアルバスの落胤の効果発動!アルバスの落胤は召喚・特殊召喚に成功した時。手札を1枚捨てることで、相手フィールドのモンスターを墓地に送って融合召喚を行うことが出来る!」
「私のモンスターを素材に融合召喚!? だが、お前のアルバスの落胤が素材にできるのは攻撃力や属性に対応したモンスターのはず……!」
ダーツは思わず動揺する姿を晒す。
彼は世界を牛耳る巨大企業、パラディウス社の総帥として多くのデュエリストのデータを集めている。その中には当然倉瀬のデータも存在し、倉瀬が持つカードの中でもレベルや攻撃力、属性、種族を参照し、破壊以外の形で除去を行いながら融合召喚を行うアルバスの落胤は要警戒対象であると認識していた。
しかし、現在そんな要警戒対象な力を持つ白髪の少年に肉薄されているモンスター、ミラーナイト・コーリングを始めとする場のモンスターは、レベルや攻撃力が既存のアルバス融合モンスターの召喚条件を満たさず、属性に至っては存在すらしていない。
故に、そのモンスターたちを素材に融合召喚を行おうとする倉瀬の姿に『まだ判明していていない融合先があったのか!』と思わず反応してしまったのだ。
「このモンスターの融合召喚に必要な素材はアルバスの落胤1体に加え、このターンに特殊召喚されたモンスター。即ち、儀式魔法オレイカルコス・ミラーの効果により特殊召喚されたミラーナイト・コーリングだ!来たれ!鉄駆竜スプリンド!」
結晶体と言う特筆上、自分から動けないミラーナイト・コーリングに触れるや否や、少年はミラーナイト・コーリングの姿を別の何か……戦闘機へと書き換えそれに乗り込むと、フィールドの中央に座するクエリティスの横に並ぶ。
オレイカルコスの結界により封じられるのはあくまで後列のモンスターを攻撃することだけ、対象を取ることそのものは封じられていないことを利用した鮮やかな処理であった。
「ミラーナイト・トークンは銀の盾カウンターが存在する限り、戦闘・効果では破壊されず、ミラーナイト・コーリングにはトークンへ銀の盾カウンターを供給する効果があった。その効果が発動する前に処理してくるとは……誉めてやろう、道化」
ミラーナイト・コーリングの効果が判明する前段階。この時点から本体とオプションの関係から危険度を直感的に判断し、有効な行動を許す前に迅速に処理した倉瀬をパチパチと手を叩きながら褒めるダーツ。
先程見せた動揺を隠すため、絶対者である王であったものとしての余裕を見せる行動にも思えるが、実の所彼は未知のカードが現れた点に反応しただけで、スプリンドが融合召喚された点にはまったく脅威を抱いていない。
なぜならオプションであるミラーナイト・トークンは本体が倒されたからと言って消失するわけでもなければ、最初に付与された銀の盾カウンターが消えると言う事も無いからだ。
戦闘を行う時に相手モンスターと同じステータスを得る効果は、発動のタイミングがメインフェイズに限られているクエリティスの守護の力を掻い潜ることが可能である。オレイカルコスの結界の効果が打ち消されているため、クエリティスを倒すまでは倉瀬のライフを削ることはできないが……。
逆に言えばそれ以外の点には一切不安な点はない。4体のミラーナイトが生き残っている限り、この4体がそれぞれ持つ銀の盾カウンターの数、8度の戦闘で相打ちを取ることが出来るのだ。それだけの時間を稼げるのなら、ダーツは自らが信奉する神の力。その一角を降臨させる程度ならば容易いと考えていた。
「ドロー。 ……カードを1枚セットしてターンを終了する!」
事実として倉瀬はそのダーツの思惑を越えることはできず、手札にあったカードを1枚セットしてターンを終了する。
彼が新たに引いたカードも悪くはない。いや、極めて強力なカードではあったが、この場を直ちに打開できるというものではない。
確かにダーツはミラーナイト・コーリングを最低限の消耗で処理されてしまったが、特殊召喚された4体のモンスターはその存在だけでダーツへの追い風として機能している。
烙印劇城の放つ光に照らされて影が深まる中、倉瀬はその風を止めることだけを考えていた。
「私のターンだ、ドロー。 私はフィールドのオレイカルコス・キュトラーの表示形式を守備表示に変更し、漆黒の闇より生まれし第二の力。オレイカルコス・デウテロスをオレイカルコスの結界に重ねて発動する!」
「フィールド魔法にフィールド魔法を重ねるだと?」
「これぞオレイカルコスの結界の真の力が一端、オレイカルコス・デウテロスはフィールドのモンスターの数×500ポイントだけ自分のライフを回復することができる。フィールドにはミラーナイトトークン4体とキュトラーを合わせて5体。ライフを2500ポイント回復して私のライフは6500ポイントとなる!」
対するダーツはこの有利な状況がある間に盤面を固めんと、一気にライフを回復する。
オレイカルコスの結界は如何なるカードの効果によっても除去できず、自らの陣営を強化するフィールド魔法。倉瀬もまた烙印劇場デスピアという自らの陣営のみに恩恵のあるフィールド魔法を用いているが、その力の差は歴然。
オレイカルコスの結界は時間がターンが経過されればされるほど強化されていき、さらにはライフポイントのアドバンテージがついてくるのだ。
ミラーナイト・コーリングでモンスターの数を一気に増やし、銀の盾カウンターの効果によって破壊耐性のあるミラーナイト・トークンで相手の攻撃を躊躇わせ、盤面を維持してライフポイントを回復。この一連のコンボこそが、ダーツを勝利へ導く一つ目の大戦略。
「ミラーナイト・トークンよ、鉄駆竜スプリンドを攻撃しろ!」
「その攻撃宣言時。罠カード、『神風のバリア エア・フォース』を発動!」
「無駄だ!ミラーナイト・コーリングは銀の盾カウンターの効果でそれぞれは一度まで破壊されな……いやまて? ミラー・フォースではなくエア・フォースだと!?」
しかし、デュエルに絶対確実な勝利や戦略というものは存在しない。
エア・フォースとは相手の攻撃宣言時、相手の攻撃表示モンスターを全て持ち主の手札に戻すカード。相手のモンスターを全て破壊するミラー・フォースと比べてモンスターの再利用を許すため使いにくいとされているカードだ。
上級モンスターを手札に戻せれば死者蘇生などによる再利用を防げると言えば聞こえが良いが、倉瀬を代表するカードである教導の聖女 エクレシアや、ガジェットモンスターに代表される召喚誘発効果持ちを戻してしまえば、再度その効果を使わせてしまうことになる。
よって普通のデッキでは採用されにくい部類のカードに当たるのだが、倉瀬のデッキは普通ではない。
アルバスの落胤とのコンボのため、壊獣カードが採用されている彼のデッキでこのカードを使えば、仮にアルバスの落胤を引けていなくとも、相手のモンスターを除去した上で最上級モンスターである壊獣を渡すことで攻撃を誘発。
エア・フォースの効果で持ち主の手札、即ち倉瀬の下に戻して再利用をするコンボとして、ミラー・フォース以上の逆転のカードとして機能させられる。勿論、この場に壊獣モンスターは存在していないのだが、ここで重要なのは……。
「エア・フォースの効果は相手の攻撃表示モンスター全てを手札に戻すもの!しかしトークンはカードでない以上、手札に戻ることが出来ず、その場で消滅する!破壊していないのだから、銀の盾カウンターの効果で守ることはできない!」
「ミラーナイトの耐性の穴を突かれたか……!」
トークンはモンスターであってもカードでは無いと言う点である。
ミラーナイト・トークンは戦闘において必ず相打ちを取り、銀の盾カウンターの存在が必要とはいえ耐性まで持っている恐るべき存在だったが、このデュエルではその仕事と力を全く発揮できぬまま、虚空へと消えてゆく。
「私の場に残るのは守備表示のオレイカルコス・キュトラーのみ。ならば私はオレイカルコス・ギガースを通常召喚してターンを終了する」
ダーツは圧倒的なアドバンテージを生成するはずのミラーナイトカードをさしたる被害も無く突破されてしまったことに苦虫を噛み潰すが、全ては後の祭り。
彼はこのターンオレイカルコス・ギガースをキュトラーの壁となるように召喚してターンを終えることしかできず、ダーツの背を押していたはずの風は、1ターンもしないままにエア・フォースの力で逆風へと変わることになった。
「ドロー!」
一方、倉瀬の側がこれで有利になったかと言えばそうではない。
ダーツの場に通常召喚されたオレイカルコス・ギガースの攻撃力は僅かに400、オレイカルコスの結界の効果を含めても900にしかならず、スプリンドの攻撃力2500には到底及ばない。これでは何かを誘っていますよと言っているようなものだが、今の彼の手札にはその対抗手段が無い。
(……クエリティスを出す位置を間違えましたね。中央に出していなければ、スプリンドの効果で表側表示のカード。キュトラーとギガースを纏めて葬り去れたものを)
鉄駆竜スプリンドの効果は1ターンに1度、自身を空いているメインモンスターのゾーンに移動させ、その縦列に存在している表側表示のカードを全て破壊すると言うもの。
彼はクエリティスを主の体を守る守護神としてモンスターゾーンの中央に出していたが、ダーツもまた自分の前……モンスターゾーンの中央にモンスターを出してきたため、その効果が発動できない状態になっていた。
モンスターを出す場所というのはあくまで結果論ではあるのだが、ここまであからさまな誘いを相手から仕掛けられている状態では、それを後悔するのも致し方の無い事だった。
「デスピアン・クエリティスの効果!レベル8以上の融合モンスターを除く全てのモンスターの攻撃力を0にする!そしてスプリンドでギガースを攻撃!」
しかし、罠だと思っていてもデュエルモンスターズとは相手のライフポイントを0にしなければ勝てないゲームである。
ダーツはミラーナイト・トークンを処理されたことで、ブラフに頼るしか無かったという可能性もあるのだからと、倉瀬はデスピアン・クエリティスを守備表示のまま保険として温存し、スプリンドでの攻撃を選択した。
「無駄だ、オレイカルコス・キュトラーの効果。フィールド上にオレイカルコス・キュトラーが存在する限り、私はモンスターの戦闘で発生するダメージを受けない。
そしてオレイカルコス・ギガースは戦闘・効果で破壊された時、無限に再生復活し、さらにギガースは復活するたびに元々の攻撃力を500ポイントずつアップする」
しかし、その攻撃は結果的に無意味に終わる。スプリンドによる戦闘破壊はギガースの効果で事実上無効化され、ダメージはキュトラーの効果で通らない。
キュトラーを破壊するには無限に再生復活するギガースを処理しなければならず、再生復活を続ければいつかは相手のモンスターの攻撃力を上回ると言う通常ならば鉄壁の布陣。
「無限の再生復活、しかも元々の攻撃力を500アップとは恐ろしい効果だことで」
なるほど。それなら攻撃表示だったのも頷けると、ギガースの種の一つを割り出した倉瀬の表情には笑みが浮かぶ。元々の攻撃力が無限に500アップした所で、クエリティスはその効果により強制的に攻撃力を0にできるのだ。
戦闘・効果という幅広い範囲に対応して壁になり続けると言うのは脅威だが、それだけで勝負が決まると言う程ではない。
もっともこの認識はダーツの側からしても同じで、除去手段が豊富な倉瀬を相手にこの布陣が長く持たないことは分かっていたし、長く持たせるつもりも無い。
ギガースは戦闘・効果で破壊された時に復活する効果を持つが、倉瀬のデッキはアルバスの落胤による融合や壊獣モンスターによるリリース、さらにはエア・フォースのような破壊以外の除去手段が豊富に存在している。
オレイカルコス・ギガースはその無限に蘇生し、強化されていく効果のデメリットとして、自身がフィールドに存在する限りドロー出来なくなるというマイナスの効果を持っている。つまり再生復活を続けているだけではダーツの手札が増えないまま、倉瀬の手札が増え続けて除去手段の獲得を許す結果となってしまう。
故にダーツはギガースとキュトラーを敢えて突破させ、そこから自分のエースモンスターの召喚に繋ぐという戦略に頭を切り替えていた。
重要なのはキュトラーではなく、ギガース側に何かがあると判断させ、そちらに除去を誘発すること。先のターンに攻撃表示で召喚したのはそのための布石。
「私のターン!オレイカルコス・ギガースはその再生能力と引き換えにフィールドに存在する限りドローフェイズをスキップをするデメリット効果を持つ。
しかし!私の手には既にオレイカルコスの真なる力を解放する準備がある!オレイカルコス・デウテロスに重ね、第三の結界を発動!オレイカルコス・トリトス!」
「三重の結界……!」
「これにより私のフィールドのモンスターには如何なる魔法・罠の効果も及ばない!もはやエア・フォースのような罠カードは無意味としれ!そして第二の結界、オレイカルコス・デウテロスの効果!フィールド上にはギガースとキュトラーがいるため私は1000ポイントのライフを回復!」
これでダーツのライフポイントは7500。
倉瀬のライフポイントも初期値の4000のまま動いていないとはいえ、オレイカルコスの結界による回復力の分だけ差が開いていく。
「オレイカルコス・ギガース、鉄駆竜スプリンドを攻撃せよ!」
「おっと、バトルフェイズに移行する前にデスピアン・クエリティスの効果! オレイカルコス・ギガースの攻撃力を0にする!」
「無駄だ!私のフィールドにオレイカルコス・キュトラーがいる限り、戦闘で受けるダメージは0になる。ギガースを強化再生復活してターンを終了する!」
哀れな巨人、オレイカルコス・ギガースは主の指示を忠実に守ってスプリンドに突っ込むと、本日2度目の爆散を見せる。
二度の再生によりギガースの攻撃力は1900とスプリンドに迫りつつあり、クエリティスがいる限り戦闘時の攻撃力は0になるとはいえ、何が起こるのか予断を許さない状況が近づいていた。
「ドロー! ……良いカードだ」
例えば、一見すると今のギガースはダーツをセルフドローロック状態に追い込んでいるだけだが、オレイカルコスの結界が持つ効果の中にモンスターを1体リリースすると、攻撃力500ポイントごとに1枚ドローなどという効果があるかもしれない。
毎ターン自爆特攻を繰り返せば、最低限本来ドローできていた枚数の手札を補充し、相手に戦闘破壊されればされた分だけ得をするような効果が隠されているかもしれない。
「私は妖精伝姫 カグヤを召喚!このカードは召喚に成功した時、デッキから攻撃力1850のモンスターを1体手札に加えることが出来る!私は妖精伝姫 シラユキを手札に加え、さらなる効果を発動!」
勿論、これが本物の倉瀬であれば「いや、オレイカルコスの結界にそんな効果なかったと思うんだけど……。むしろキュトラーがヤベーわ……」などと言いながらキュトラーを倒そうとするだろう。
しかし、今の倉瀬はデスピアの大導劇神が意識を奪い、その上で自分のことを倉瀬と呼ばせている状態に過ぎず、本人ほどの原作知識がある訳ではない。
「妖精伝姫 カグヤは1ターンに1度、自身と相手フィールドのモンスター1体を手札に戻す。だが、この効果は同名カード1体をデッキから墓地に送って無効にすることが出来る。無効にするかどうかを選べ」
「フフ……オレイカルコス・ギガースは私のデッキに1枚だけ、無効にはならないから安心するといい」
故に、倉瀬が、大導劇神が手札に戻させたのはオレイカルコス・ギガースの側。
後列に存在し、戦闘ダメージを無効にするだけのキュトラーより、何らかの秘密がありそうなギガースの攻撃力上昇をリセットすることを選んだ。
「バトルだ、私はスプリンドでキュトラーを攻撃!」
「かかったな!オレイカルコス・キュトラーがフィールド上で破壊された時、自分の手札・デッキからオレイカルコス・シュノロス1体を特殊召喚する!」
「何だと!?」
そしてギガースを手札に戻され、無防備となったキュトラーを破壊されたダーツは自身のエースたる土偶……オレイカルコス・シュノロスを呼び出すと、判断を誤ったことを悟った倉瀬を見てニヤりと嬲るような笑みを浮かべる。
そう、ここまでの戦いは彼にとっては完全なる前座、余興でしかない。
「この効果で特殊召喚されたオレイカルコス・シュノロスの攻撃力と守備力はキュトラーが無効にしたダメージ、攻撃力2500のスプリンドとお前の効果によって攻撃力が0となったギガースの戦闘2回分と同じ、5000となる!!」
「攻撃力と守備力5000!」
オレイカルコスのライフ回復でプレッシャーを相手に与えつつ、ギガースやミラーナイトを誘導し、戦闘ダメージをキュトラーで無効化。
そして厄介な前衛を排除した上でキュトラーを叩き、ようやくダメージが通せるようになったと思わせたところに、今まで相手が受けるはずだったダメージ分の攻撃力と守備力を持つシュノロスを展開。
この一連のコンボは相手の努力や戦術を嘲笑い、絶望させることで如何なる賢者や聖者ですらも心の闇へと落とすという、オレイカルコスの悪意。
「さらにオレイカルコス・シュノロスは特殊召喚に成功した時、デッキから自身の剣と盾、オレイカルコス・デクシアとオレイカルコス・アリステロスを呼び出す!」
後列にシュノロス、前列にデクシアとアリステロス。本体とオプションという関係は奇しくもミラーナイト・コーリングと同じ時のもの。
過去には心の闇に取りつかれないままこの盤面まで辿り着いた人も存在した。しかし、倉瀬が既にアルバスの落胤やエア・フォースを使っているように、如何なる強者であってもこの盤面に辿り着くにはリソースを削られる。
リソースを削った状態で、オレイカルコスの三重結界による様々な恩恵で強化されたシュノロスが立ちふさがる。如何なる強者が相手でも意図的にこの状況に追い込むことで、お前の今までの戦いは全て無価値だった、無意味だったと突き付け、心の闇を生み出す。
オレイカルコスの神とは、こうした心の闇を餌にここまで育ってきた
「お前のクエリティスは守備表示。スプリンドの攻撃が終わった以上、これ以上のバトルはできん。何も伏せるカードが無いのなら、速やかにターンを終了したまえ」
「…… ターンを終了する」
故に、本当の戦いはここから始まる。
次回、倉瀬(大導劇神) VS ダーツ 後編!
遊戯とか社長は仮想敵だから序盤から精神フェイズを仕掛けてたけど、一般賢者や聖者メンタル相手なら、ここらへんで精神フェイズ仕掛けてるんじゃないかなという個人的な妄想。
前書きで書いた通り、精神フェイズ含めながらのデュエルだといつ終わるか分からないので、今回はデュエルだけがっつり進めました。
多分掲示板世界線だと心の闇関連の話とかもしてると思うけど、本作でやってもアレかなと判断してデュエルの方を優先しました!原作のドーマ編を皆も見よう!
☆掲示板回でやるか分からないこの世界線におけるアニメやカード環境に関する設定
・デスピアン・クエリティス
1ターン目から守備表示で鎮座し続け、オレイカルコスの結界の攻撃力アップを完全封殺。
ミラーナイトを相手に強固な壁として君臨する絶対守護の力。無限に再生復活するギガースをセルフドローロック扱いにする凄い奴。
倉瀬を守る守護の力として中央に鎮座しているせいで、スプリンドで破壊できないというお茶目な所見せてるのは内緒です。
・妖精伝姫 カグヤ
デスピアの素材になる光属性で、壊獣とシナジーがあり、物語モチーフというデスピア倉瀬にピンズドな凄い奴。
倉瀬のマインドが明かされた後に出てくる物語モチーフな奴なので、禍々しいデスピアと比べて可愛らしい見た目なせいで、逆に闇が深く見えると思う。
・鉄駆竜スプリンド
対オレイカルコスの結界最終兵装。
モンスター効果で表側表示のカード列破壊は対オレイカルコスで最終兵装過ぎるのでここで出す予定は無く、墓地に落ちていって名前だけ見られるカードだけの扱いだったのが、投稿直前に衝撃のある事実が判明したため急遽採用された。
そう、ダーツの使用カード(原作)には属性の表記が無く、なんと自分のターンになるとアルバスくんでも吸えなかったのだ!クリアーモンスターかよお前ら。