遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない   作:鏡路の一般兵

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・アニメ/原作的時系列
ダーツ戦、決着後


ドーマ編 ~遊戯 VS 倉瀬 二戦目~

 

「結局のところ、デュエルは遊びでは無い。なんて軽々しく言う奴ほど、デュエルのことを軽んじているんですよね」

 

 あれから、敗北したはずのダーツは自分の魂を生贄に捧げて巨大な竜の如き威容を誇るオレイカルコスの神を復活させた。

 デュエルの勝敗を無視し、自分に勝てば魂は解放される等とのたまい、それを実行しない所業。

 

 それに対峙するのは道化が操る三邪神の頂点に君臨するアバターに加え、遊戯一行の操る三幻神や伝説の竜。更には白き竜が、黒き竜が、教導が、デスピアが、エアトスが、デュエルモンスターズ界に残された精霊たちがオレイカルコスの神と対峙する。

 多くのモンスターたちが協力してオレイカルコスの神の動きを止め、闇の具現たるアバターがオレイカルコスの根源である心の闇、10000年の長きに渡って捕らえられてきた強き魂を解放していく。

 未だ肉体が生きている魂はあるべきところへ、肉体が既に滅びているなら、安らかなる眠りが与えられる冥界の闇へ。

 多くの手間暇をかけて復活したはずの神は、ほんの僅かな時間だけ現世に力を示し、あっという間にその力を失って行く。

 

「そもそも……本当に人間の心の闇が問題なら、10000年なんていう長い時間をかけずに復活すればいい。復活のために世界の裏側を牛耳って、散々暗躍して10000年かかるなんていう時点で、奴の論理は破綻していたのですよ」

 

 オレイカルコスの神最後の抵抗。選ばれしデュエリストである遊戯に憑りつこうとする、そんな最後の悪あがきすら許されずに神は朽ちていく。

 同じ竜であるオシリスの数十倍を誇った威容は既に失われ、そこに残るのはただの巨大な蛇の姿。

 それが星が持つ人間の恨みの正体だと言って、一体だれが信じるのだろうか。

 

「王はこの蛇の陰謀で国が傾き、心が弱った隙を突かれ、乗っ取られてしまったんでしょうね。地球が生まれてから46億年と言いますし、コイツが本当に星の怨念ならこの程度の力ではすまないか、10000年程度の時間ではまったく気にしないのではないかと私は思います」

 

 5000年周期で発生すると言う、冥界の王とそれに対抗する選ばれしデュエリストの戦いなんてのもあるらしいですからねとクスリと笑い、道化はオレイカルコスの神をただの蛇へと貶める。

 真実は分からない、オレイカルコスの神が本当に星の怨念だったのか、それとも星の怨念を名乗るだけの力ある大蛇だったのか。ただ、そうであったと認識された神はもはや神でいられない。

 かつて、戦いに敗れた国やそこに住まう人々に奉じられていた神が、人間を誑かす悪魔へと存在を堕とされたように、オレイカルコスの神はただの力ある大蛇へとその格を堕としていく。

 いつの日か、オレイカルコスの神が再びデュエルの世界に現れる日が来たとしても、この有様ではもはや無限の力を持つことはできない。せいぜい、その効果にかつて誇っていた栄光の面影を残す程度だろう。

 

 そんな力ある大蛇に最後まで取り込まれていたダーツも最後には解放され、彼は彼が本来愛していた家族と共に冥界へと下る。ダーツが自身の成した悪行、業と如何に向き合うのかは誰にも分らない。

 だが、家族と再会した彼の姿はとても安らかであり、死後の世界に如何なる苦難が待ち受けていようとも、彼ならばそれを乗り越えることができると、その光景を見た誰もが確信できるものだった。

 

 伝説の三騎士やブラックマジシャンガールら精霊たちも、カードという思い出を残してデュエルモンスターズ界へと帰っていく。

 物質世界と精霊世界の壁は本来厚いもの、カードを通し、デュエリストの魂を通し、彼らの主に力を貸すことはできるが、この騒動の間ほど近くにいられる存在ではない。

 

 彼らが最後に見せた幻想的な姿に皆が心を奪われ、彼らとまた会うためにもデュエリストの魂を忘れず、その腕を磨き続けなければならないと、改めて遊戯一行が決意を固める中……。

 

「デュエルをしましょう。遊戯くん」

 

 遊戯に挑もうとするのは、倉瀬……いや、倉瀬の姿をした別の何か。デュエルモンスターズ界とは別の精霊世界からやってきた、異なる理を示す精霊。

 そう、このドーマに関わる物語のカーテンコールはまだ早い。この物語の始まりを告げた、倉瀬の変貌という問題が残っている。

 倉瀬の中にいる道化はダーツを倒し、その後の戦いにも協力してくれた。しかし、彼はあくまで本来の倉瀬とは違う別の何かである。そのことを思い出した人々が、何が起こるのかと思わず身構える。遊戯がデュエルディスクを構え、戦闘の準備を整える中……。

 

「ああ、安心してください。私が望むのは闇のゲームでも何でもない。ただのデュエルですよ」

 

 え?と、疑問符を受かべる遊戯の姿に、マスターの体を使ってそんな闇のゲームなんて危ないことを無駄にするわけないじゃないですかと、仮面に隠された表情の下からでも分かるように彼は笑う。

 まあ、実の所。彼の主を苦しめる原作の流れを破壊するため、ファラオが自分の記憶を追い求めないように条件を付けようかとも彼は考えていたのだが……。道化にとってもダーツとの戦いは思いのほか大騒動だったのだ。

 確かにこれは、原作を崩すことを躊躇うだけの出来事だと。原作を崩すことそのものがリスクだとして、自分が存在していてはいけないのではないか、自問自答してしまうと正しく納得できたのだ。

 しかし、道化はその原作の流れを選ばれしデュエリスト以外の身でも解決できることを証明した。

 

 あとは彼の主である倉瀬カインを目覚めさせるだけともなれば、道化には道化の論理がある。 ……具体的には、感動的な演出が欲しいのだ。

 この大団円を迎えた原動力である彼のマスターが二度と思い悩むことが無いように、道化は即興で舞台を整え、台本を準備する。

 

「おや?決闘王ともなると、何も賭けない戦いはお望みでは無いと?」

 

 ケラケラと笑いながら挑発。

 そんな訳じゃ!と否定する遊戯と、道化の意図を察したのか、遊戯ボーイはずっと何かを賭けて戦っていたので、そういう戦いは慣れていないに違いありまセーンと茶化すペガサス。

 そしてそんなペガサスを見て、そもそも全ての始まりはお前が遊戯の爺ちゃんの魂を奪って、決闘者の王国に呼び寄せたからだろうがと、総突っ込みを入れる遊戯の友人たち。

 痛い所を突かないで欲しいデース!あの時の私は闇に飲み込まれていて……などと言い訳をするペガサスの滑稽な様子に、既に何かが起こるのではないかと、誰もが警戒した空気は完全に失せていた。

 

 何をする気なのかと警戒しているのは、烙印世界の背景ストーリーを知っていて、実は少し前から意識を取り戻していて、この様子を俯瞰するように見ている倉瀬本人だけである。

 主が体の主導権を取り返そうとするのを「もう少し待っててください」と言って妨害している道化は、この物語を進めた道化として最後の役割を果たす。

 

「では、この後に打ち上げでもやりましょうか。私と遊戯くん、負けた方がこの場にいる全員分のワンドリンクを奢るという事で。会場の確保は海馬社長かペガサス会長にお願いしても?」

 

 彼ら精霊が思ったよりも俗であることを理解していた皆は、その言葉を聞いて思わず笑った。

 ペガサスがノリノリで会場を都合しようとすれば、お前の選んだ会場で飯など喰いたくないと海馬がモクバに場所を取るように指示を出す。

 城之内がお前金持ってるのかよといえば、道化はマスターが持っているので大丈夫ですとおどけ、表の遊戯が倉瀬は大丈夫なのかと聞けば、うちのマスターは寝坊助なので熱いデュエルで叩き起こして欲しいと頼む。

 

 魂などを賭けようもない、平和でありふれた現代の姿。体の主導権を取り返せず見ていることしか出来ない倉瀬は「ちょっと待って!人の財布で勝手に賭け事をするな!というか賭け事そのものが良くないって!それに俺は起きてるんだから、デュエルで叩き起こして貰う必要もない!誰か気が付いてくれ!!」などと怒っているが……。

 そう、道化は精霊としての格は神や青眼には及ばないとはいえ、物凄い力を持っていることは間違いないので、彼が本気になったら普通の人間にはまるで抵抗できないのである。

 

 そして、客観的には未来予知の影響で日々魂が衰弱し、ドーマとの戦いで限界を迎えた倉瀬の意識。これを遊戯と道化の二人でデュエルを行い、倉瀬が持つデュエリストとしての魂を呼び起こそうとする最後の戦いが。主観的には道化が自らの主に、彼が生きる世界の今を見せる戦いが始まろうとしていた。

 

―――

 

 俺は白雪姫ってガラじゃなくね……?

 そんなことを思いつつ、俺は自分の体を動かすことができないまま、教導の大神祇官と遊戯の戦いを俯瞰するような視点から見ていた。

 デスピアン・クエリティスが主を守る絶対守護の力として扱われていたり、このカードは私の主を象徴するカードとかいってシラユキを召喚する、原作にはなかった光景をだ。

 いや、クエリティスがそんな前向きな力として遊戯たちに認識されてるって、一体全体何があったらそんな天地がひっくり返るようなことが起きるんだよ。

 

 俺の意識がうっすらと目覚め始めたのはダーツとの戦いからの途中である。

 気が付いたら周りが石板で埋まった一室にいて、そこで遊戯たちに代わって自分がダーツを煽りつつ、ゲーと戦っていたのでそれはもう驚いた。

 何せ普通に城之内が生きているし、観戦に来るメンバーも違う。なんならラフェールが封印されてないし、まるで意味が分からなかった。

 

 これ大丈夫か? 絶対世界の流れが狂っただろ。ダーツとか設定も格も高すぎて、遊戯と海馬のドリームチーム以外で勝てる相手じゃないのに、一体どうして……。

 そんな風に困惑する中。今、俺の体を乗っ取って勝手にデュエルを進めている精霊は、邪神と共に蛇神 ゲー、そしてその使い手であるダーツを撃破し、その後のスーパー神話大戦にすら参戦した。

 呪われたはずの邪神が神へのカウンターとして、その存在意義を存分に示す姿にペガサスは感極まって泣いているし、もう何が何だか分からない状態である。

 

 ……まあ、何故こんなことになってしまったのかは分かっている。

 遊戯は俺とのデュエルの中、精神が傷ついて眠りから覚めないことになっている俺を起こそうと語りかけている。それは他の面々も同じで、決闘者の王国やバトルシティなど、ちょっとした繋がりしか無いはずなのに、彼らの言葉を聞くと胸が熱くなる。

 俺、そんなにデュエリストとして認められていたのかと。ドラグマを使ってズルしているだけだと思ってたけど、そんなに評価されていたのかと。

 

 目の前では遊戯がドラグマを使うという恐ろしすぎる光景が展開されているあたり、ドーマとの戦いの中で俺のパーソナルの一部が開示されてしまったらしく、精霊の皆の存在も俺が認められる一つの要因となっているようだが……。

 それは率直に言って、俺という異物が主人公たちから敵とみなされたり、拒絶されたりするのではないかという恐怖を払拭するもので、とても嬉しい事だった。

 

 遊戯とのデュエルが進む中、俺は俺自身の心の部屋にいないという、自分では一切認識していなかった衝撃の事実を語られ、精神状態が如何に不安定なものだったかを語られた時は、なんかもう大丈夫だから勘弁してくれ!!と泣きたくもなった。

 闇のゲームに対して極端に耐性が無い理由などと合わせ、マインドスキャンによる分析を合わせて語られると認めるしかない。俺の心は俺が思っている以上に不安定で、精霊の皆やペガサスに心配をかけてしまっていたようだ。動けるようになったら謝罪をしなくてはならない。

 

 烙印劇城やクエリティスの効果に対抗するため、ドラグマとブラマジやら、伝説の竜とドラグマやら、アルバスとブラマジの融合体が出てくる世紀末なことこの上ないデュエルを見せられると、心に穴が空いたような気分になってしまうので、俺が俺である限り、問題の完全解決は難しいのだろうが……。

 ここまでやって貰って、可能性を見せて貰って、それで何も変わらないと言うのは無理というものだ。きっとこれからの俺は原作への向き合い方も少しずつ変わっていくに違いない。

 

 だから!ねえ! 教導の大神祇官さん!!そろそろ肉体の操作権を返してくれません!?

 遊戯とか城之内、ペガサス会長が語りかけてくる光景を見続けてるだけだと罪悪感が凄いんですけど!!!!社長も社長でしゃべらないままジッとこっちを見つめられるとか、無言な分だけ期待が痛いんですけど!?

 俺が一体どれだけ周りからみて不安定だったのかはもう分かったので、なんとかしてくれませんか!!!!

 

 それはもう、精霊たちに心配させてしまったのは悪いと思う。

 しかし、しかしだ。だからと言ってこれだけ世界から俺が求められている光景を見せつけるのはある種の公開処刑という奴ではないだろうか。

 だからもう勘弁してくれと、何度もお願いした所で答えが来た。

 

(では、体をお返しします。安心してください、世界の流れは変わってしまいましたが、マスターが愛したものは何も変わっていないので)

 

 その答えを聞いた瞬間、俯瞰視点にいた俺の意識が体に引き戻される。

 盤面はほぼ終局。俺と遊戯のライフは共に500を切り、俺の手札は1枚でフィールドにモンスターは無く、遊戯の場にはブラックパラディンがいるが手札は無い状況。

 ……いやアイツ。デュエルで負けそうになったから肉体を返した訳じゃないだろうな。遊戯のエースモンスターの攻撃でデュエリストの魂に火が点いて意識を取り戻したみたいな空気を作るみたいな感じで。

 

「超魔導剣士-ブラック・パラディンでダイレクトアタック!!」

 

 そうだとしたら、途中から意識が戻ってたことを暴露してアイツの株を地の底まで落としてやらないといけない。なんて思っていたのだがどうにも違うようで、ここからでもしっかりと戦うための手段が残っていた。

 ……どうやら、本当に最高のタイミングで俺の意識が戻ったことにしたいらしい。本当に心配されていたようで、カードに愛されていたようで、背景ストーリーだけを基準にデッキから抜いていたことが申し訳なくなってくる。

 

「俺は墓地から赫灼竜マスカレイドの効果を発動!マスカレイドは自分・相手のターン、相手フィールド上にエクストラデッキから召喚されたモンスターがいる時、墓地から特殊召喚できる!守備表示で蘇れ!マスカレイド!」

 

 視界を遮る仮面を外しながら俺は言葉を紡ぐ。

 仮面を外した俺はどんな表情をしているのか、少なくとも悪い表情はしていないと思うが……。今の俺は演者である。

 道化が整えた舞台の主人公……いや、この状況だとヒロインか?

 

「ようやく起きたようだな、倉瀬! ならば俺はブラックパラディンで、守備表示の赫灼竜マスカレイドに攻撃!超・魔・導 無・影・斬!」

「この効果で特殊召喚されたマスカレイドはフィールドから離れた時、除外されてしまうけど、君の場に攻撃できるモンスターはもう存在していない。だから……」

 

 俺を叩き起こしたことになる王子様……と言うには聊かブラックパラディンは暴力的だったが、感動的な舞台であることは間違いない。

 光の粒子となって消えてゆくマスカレイドを見やりつつ、遊戯がニッと笑った。

 

「ドローは無限の可能性。1枚のカードから逆転されるなんて、よくある話。だろ? 俺はこれでターンを終了するぜ」

「ああ、そうだよ。……おはようでいいのかな、皆さん?」

 

 そんな俺の言葉に周囲から歓声があがる。

 いや、滅茶苦茶恥ずかしいと言うか、教導の大神祇官がマジで盛り上げるだけ盛り上げてやがったから、もっと前から意識を取り戻したとかマジで言える雰囲気じゃない! 俺の認識以上に謀られてた!

 ……でも悪くない。こういう気分は悪くない。遊戯王の世界に転生して、俺が本当に欲しかった光景。見たかった光景というのはこういうものなんだろう。自分のせいで世界が滅んだらと思ってしまうと、やりたくても目指せなかった光景。

 教導の大神祇官はこの光景を見せたくて、俺が世界から外れていないことを教えたかったのだろう。

 

 ならば俺もそれに応えなければならない。勿論、俺の考えは変わらない。カードの創造だとか、書き換えだとか、そういうのは何かずるい気がするという思いは変わらない。

 でも、それを理由にカードたちの思いを無視してはならない。だってカードたちは俺のためにここまでやってくれたのだから。それに応えない奴は、デュエリストじゃない。

 

 だから俺は、赤く光るデッキに手を伸ばす。

 

「俺のターン! ドロォーッ!」

 

 ……分かっていた。この場面で引き当てるなら、このカード以外に無いと思っていた。今、カードが創造されたのか、それでも元から書き換わっていたのかは分からない。

 しかし、この場面で俺が引くのならこのカードだろうという、確信めいた何かがあった。おあつらえ向きに遊戯の手札は無く、ブラックパラディンの効果は使えない。だから、このカードを使うのは、ココしかない。

 

「魔法カード、『烙印融合』を発動! 烙印融合は自分の手札・デッキ・フィールドから素材に指定されたモンスター2体を墓地に送り、アルバスの落胤を融合素材とするモンスター1体を特殊召喚する!俺はデッキからアルバスの落胤と多次元壊獣ラディアンを墓地に送り融合召喚!守備表示で現れ出でよ!神炎竜ルベリオン!」

「デッキから融合召喚だと!?」

 

 驚愕する遊戯を見ながら、そりゃ驚くよね。墓地効果持ちはもう全部使いきってるみたいだから許してねと内心で謝りつつ。

 俺の知る世界でも最強クラスの性能を誇るカードを使って動いていく。

 

「神炎竜ルベリオンの効果!このカードは特殊召喚に成功した時、手札を1枚捨て、自分のフィールド・墓地・除外ゾーンに存在するモンスターの中から、神炎竜ルベリオンを除くレベル8以下の融合モンスターの素材となるモンスターをデッキに戻し、その融合モンスター1体を特殊召喚する!」

 

 周囲はデッキからの融合召喚。そしてデッキに戻しての融合召喚の流れに驚いて声を上げる。だが逆に言えば、驚く程度でしかない。

 使うことを恐れていた力。嫌っていた力。世界に拒絶されるかもしれないと恐れていた力。

 そんなに素直に驚かれるだけだと、自分がこんなことを気にしていたと言う事実が小さい事のように思えてくる。

 

「俺は先程除外した赫灼竜マスカレイドとアルバスの落胤をデッキに戻し、融合召喚!現れ出でよ!氷剣竜ミラジェイド !!」

「攻撃力3000!中々のモンスターが相手だが、ドラゴン族のモンスターが相手ならブラックパラディンの敵じゃないぜ! フィールドにルベリオンとミラジェイドという、2体のドラゴン族モンスターが増えたことで、攻撃力は更に1000ポイントアップして5900!」

 

 なんか凄いことになってる。

 まあ、アルバスの落胤絡みの融合モンスターは遊戯の側の墓地にもいるので当然と言えば当然なのだが……。

 俺が召喚したのは氷剣竜ミラジェイド、時代を代表する超強力モンスターである。

 

「問題無い!ミラジェイドは自分・相手ターンに1度、アルバスの落胤を素材とする融合モンスター1体……鉄駆竜スプリンドを墓地に送り、フィールドのモンスター1体を選んで除外する!」

「何だと!?」

「選ぶのは当然、ブラックパラディン!」

 

 ミラジェイドは圧倒的攻撃力を誇る黒騎士が見せた一瞬の隙をついて氷漬けにすると、どこか遠くへと放逐してしまう。

 これによって遊戯のフィールドはがら空き。ダイレクトアタックが通れば俺の勝ちだが……。

 

「バトルフェイズ!ミラジェイドでダイレクトアタック!!」

「まだだ!墓地の超電磁タートルの効果を発動!このモンスターをゲームから取り除くことで、バトルフェイズを終了する!!」

 

 そう、俺の前に立っているのは武藤遊戯。

 決闘王と呼ばれる最強のデュエリストが、俺のためだけに立ってくれている。

 

「なら、エンドフェイズに墓地に送ったスプリンドの効果でアルバスの落胤を手札に加え、ターンを終了。ミラジェイドは除外する効果を使った次のターンは効果を使用することはできないけど……このカードは相手によってフィールドを離れたエンドフェイズ時。モンスターを全て破壊する効果がある」

「なるほどな。このターンのうちに勝負を決めることが出来なければ、ミラジェイドの効果で俺のフィールドは全て破壊され、アルバスの落胤のダイレクトアタックで俺の負けということか、これは面白くなってきたぜ」

 

 そういうと遊戯はドローの構えを取る。その姿に淀みは無く、俺が大好きだった遊戯の姿がある。世界の命運も、誰かの命もかかっていない。ただのデュエルと言う事もあるだろうが……それ以上に、敗北を恐れずに困難な状況に立ち向かう姿がある。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 そうやって引いたカードを見て、遊戯はニヤリと笑った。

 

 その姿に俺は「ああ、なるほど」という奇妙な納得感を覚えて嬉しくなる。

 教導の大神祇官の言った、世界の流れは変わってしまったが、俺の愛したものは変わらないというその言葉。それはこういう意味だったのかと。

 

「やっぱり、引いちゃいました?」

「ああ、引いたぜ。1枚で逆転できるカードをな!」

 

 確かに、変わっていない。

 ダーツを倒したのは教導の大神祇官であり、原作イベントを踏み外しても世界が滅亡しないことを証明した。だが同時に、原作イベントを踏み外しても、俺が大好きだった世界は変わらないことも証明した。

 

「魔法カード、円融魔術を発動!このカードは自分のフィールドと墓地から融合素材となるモンスターを除外することで融合召喚出来るようになるカードだ!」

 

 だってよ、遊戯がこんなに強いんだぜ?

 未来のカードを使っても、カードを創造したとしても、絶対に勝てないぐらいに強い主人公。

 

「俺は墓地からブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガール、教導の聖女 エクレシア、教導の騎士 フルルドリス、教導の天啓 アディン、教導の鉄槌 テオら全ての魔法使いモンスターを取り除き、究極融合召喚!」

 

 でも、だからといって、俺が存在する意味が無いなんてことはない。

 それは俺が見たダーツとの戦いでも、このデュエルでも証明された。

 

「これが俺のやがて至るべき可能性、究極の黒魔術師 ――!」

 

 だからありがとう。

 俺はもう、大丈夫だ。

 




もう少し倉瀬のマインド改善に話を使う予定だったけど、ここまでやった過劇派なら絶対しっかりケアするよな……。ここで片手落ちな行動はしないよな……。
ってなったので、BC編では掲示板進行&想像に任せる扱いにして、あと掲示板含めて3話、長くても5話で決着をつけます!
もう少しで完結なので、もう少しだけお付き合いの方。よろしくお願いします!

※追記
すみません。ミラジェイドのドラゴン判定は妥協枠です。
初代時間軸で幻竜族ってなんだよってなるのと、オシリスがドラゴン判定だったのでゴリ押ししてました。教導の大神祇官でやってる「エクストラデッキに存在したモンスター」みたいな扱いです。
下の設定枠に入れてればよかったんですが、入れ忘れてましたごめんなさい。


☆掲示板回でやるか分からないこの世界線におけるアニメやカード環境に関する設定

・ドーマ編最終デュエル
特に賭けるものない「遊び」の戦い。
基本的に遊戯の戦いは何かを背負ってしまっているので、何も賭けない戦いをして貰いたかった(ワンドリンクの奢りはあるけど)。
強いて言うなら「凹んでしまった友人を元気づける」ためのデュエル。
アニメではデスピアをぶんまわす教導の大神祇官がドーマ編の同窓会メンバーで追いつめられた後、どんな時でも負けたくないという思いから倉瀬が意識を取り戻すという凄く感動的な光景。

実際にはもっと前から意識を取り戻していたのだが、後からうじうじ悩まないで済むように教導の大神祇官が最終盤まで主導権を握り続けていた。

・教導の大神祇官/デスピアの大導劇神
単純に全部解決してから主導権を戻すだけだと「やっぱり俺はいらなかったんじゃ……」となるのが分かっているので、「まだ眠っているマスターの心をデュエルで起こして欲しい」と、倉瀬が目覚めている状態で遊戯とデュエルを提案。
「あの友情カードはマスターがいたから生み出されたものですよ。ペガサス会長を見てください。あなたがいたから救われたんですよ。ちゃんと見ておいてください。」とか見せててアフターケアもばっちり。
多分だけど、エンディングは専用の編集がされてて、最後は全員が打ち上げでカラオケかなんかでデュエルかデッキ相談回をやってる一枚絵が表示されてて、半透明の精霊たちがそれを周りから見てたりする。

・倉瀬
この後に教導関連のカードはしっかり返して貰った。
精霊の姿が見えるようになったりはしないが、倉瀬の影にはアバターが沈んでいるので本人のメンタル改善と合わせて闇のゲーム関連のセコムはばっちりになった。
なお本人はアバターが沈んでいることを知らないが、実は『17話 ~烙印開幕~』の時点で倉瀬の影の中にいる。

・遊戯の究極融合召喚
どんなモンスターが召喚されたかは皆さんの想像にお任せします。
ただ、クインテット・マジシャンと同じようにリリースされない効果は付いてると思う(倉瀬の予知能力を未来への生贄にはしない的な意味で)

・オレイカルコスの皆さん
カード化された時に弱体化されまくった理由付けをさせて貰った。
本作の掲示板世界だと、道化が本当のことを言っているかが不明なので真実は闇の中。
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