遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない   作:鏡路の一般兵

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・アニメ/原作的時系列
KCグランプリ開幕直前


終章 ~KCグランプリの裏側で~

 

「本当にいいんですか?」

「構いませんよ。むしろカードの方が倉瀬ボーイの元にいることを望んでいると思いマース!」

 

 ドーマ編が終了し、打ち上げ……この世界を巻き込んだ大騒動のお疲れ様会も終わり、遊戯一行が帰国までの余暇としてアメリカ観光を楽しんでいる頃。俺はインダストリアル・イリュージョン社にいた。三邪神の一角にして最高神、邪神 アバターを返還するためである。

 

 勿論、三邪神が呪われたカードだから手元に置いておきたくないだとか、そんな薄情な理由ではない。ダーツとの戦いで俺を、教導の大神祇官を助けて蛇神 ゲーを打ち倒し、さらにはオレイカルコスの神に取り込まれた人の魂、心の闇を解放した神。それを前世知識で評価して恐ろしいカードと呼ぶつもりはない。

 しかし、その神が持つ力は人間に過ぎたるものであるということは疑いようが無く、俺の心情としてもどうしても「自分しか使えないカードはずるい」という認識が先に来てしまうのだ。

 勝手に光り輝いて書き換わったり生えてくるデスピア関連はともかく、教導に関しては問題無く実用できるほどに集めるのが不可能に近いと言うだけで、普通のパックから出てくるのでそういう認識は無いのだが……流石に最高神ともなるとどうしても気になってしまう。

 そのため創造主であるペガサスに返還という形にして、定期的に拝みに来る感じで許してもらおうと考えていたのだが……。

 

「アバターから見て倉瀬ボーイは最高に近い使い手ですからね。まず、神のカードを扱う資格を持っているので呪われない。これだけで全然違いマース!」

 

 確かにそれは大きい。原作におけるグリモ戦の描写を見る限り、神のカードは扱う資格が無い人間が扱うと天罰を下す。これは三邪神に限った話ではなく、三幻神でも同様である。

 GXの時代にもなると、「フィールド魔法 神縛りの塚」を用いることで天罰を回避することが可能になっていて、コピーラーの怒りぐらいなら抑えることができてしまうのだが、神を人間の力で縛って怒りを溜めてしまうリスク。制御に失敗するリスクを考えると、神のカードを扱う資格を持っていて、且つ精霊が憑いている俺に預けておくと言うのはベターな選択であるといえよう。

 神のカードの力を目的に盗み出され、邪神に呪われて地下に潜って大惨事とかが起こると、どう考えても悲惨な事態になるからな……。

 

「有資格者以外が持つと呪われてしまうというのは天馬たちが証明してしまいましたし、そうなれば如何に神のカードとはいえ封印されたまま。場合によっては倉瀬ボーイの知る世界の様に、存在すら許されない可能性もありマース」

 

 俺のデッキにいたのなら、アバターの方も精霊経由でその経緯は知っているだろうし、場合によっては勝手にマインドに入って見ているかもしれない。それを考えれば、アバターが俺の元にいることを望むのは妥当なことだろうと。

 俺が特別というより、アバター自身の損得や生存欲求という観点からみてもそうせざるを得ない理由があるのではないかとのことだ。

 

「でも……うーん……」

「不安なら、ちょっとここで一人回しをしてみるべきデース、安心して良い証拠をお見せしマース」

 

 安心できる証拠?

 そう疑問に思いつつもデッキを回す、初期手札は5枚。 あ、天底の使徒に教導の大神祇官が揃ってる。エクレシアを呼びつつ墓地に融合モンスターを落とし、任意のドラグマサーチ。大神祇官特殊召喚から墓地を肥やして動くことが出来る、現在の遊戯王ワールドで一番欲しい並びである。

 

「そのデッキを裏返してみてください」

「デッキを?」

 

 とても良い手札だと思っていると、意味深な表情をしたペガサスが注目するのは手札ではなくデッキの方。指示された通りにひっくり返した先、デッキボトムにいたのは邪神 アバターである。……? どういうこと?

 

「では、何度かそれを繰り返してみて欲しいのでデース!」

 

 ボトム、アバター。

 ボトム、アバター。

 ボトム、アバター。

 

 なにこれ怖い。何回繰り返してもアバターがデッキの底に張り付いてるんだけど、シャッフルちゃんと出来てるよね?

 と、思って申し訳ないとは思いつつ、意図的にアバターが絶対底に来ないように意識してシャッフル……嘘だろ、またデッキボトムがアバターなんだが!!

 

「え、普通に怖い」

「安心してください。つまるところ、アバターは倉瀬ボーイのデュエルの邪魔をする気はない。ユーが心配しているような、神のカードを持っているから勝ってしまうということは起こらないと言う事デース」

 

 曰く、神のカードはそれだけの力を持っているのだから、活躍する場面や使うべき場面はカードの側にも選択権がある。

 ダーツとの戦いはアバターが生まれた理由。神のカードが暴走した時のカウンターという使命を満たすものであり、しかも使い手がラーの翼神竜を事実上倒している俺と教導の大神祇官の合わせ技であり、自分の依り代たるカードを生贄に捧げるという過程を経て召喚された。

 それだけの場と舞台、そして使い手を整えられたからこそ神は召喚に応え、その力を示したのであって、普段使いをしようとしてもアバターの側から拒否する。ダーツとの戦いのような相応しい舞台以外では表に出ることは考えにくい。

 

 もし、俺が安易に神に頼るようなことになれば、自然と神のカードを扱う資格を失い、いつの間にかデッキから消えているのではないかとのことだ。

 確かにカードが勝手に生えてくるのだから、資格を失えばカードが勝手に消えていることもあるのか。そうなれば責任重大だ。カードに感謝しつつ、今まで以上に不義理を働かないようにしないと……。

 

「さて、邪神 アバターに関する話はこれぐらいにして本題なのですが、倉瀬ボーイ。ユーが学校を卒業した後、我が社及びKCで働くつもりはありませんか?」

「こちらからお願いしたいぐらいです! とはいえ、インダストリアル・イリュージョン社及びKCとは一体どういう……?」

「簡単に言ってしまえば、海馬ボーイは今回の戦いでオカルト分野の存在を認めざるを得なくなり、私も自分の無力さを痛感する結果となってしまいました……」

 

 結果的に失敗しなかったとはいえ、自分の行動は確実に間違っていた。もしかしたらその間違いが取り返しのつかない失敗に繋がっていたかもしれない。そう語るペガサスの表情に影が差す。

 俺は今、どんな表情をしているだろうか。俺は記憶が無いために実感が無いが、天馬兄弟はペガサスに頼られなかったことを苦にして邪神やオレイカルコスの力に縋ったと言う。これは本来の原作にはなかった経緯、俺の存在によって起こった事件である。

 

「おっと、そう暗い顔をしないでください。天馬たちの失敗は全て私と彼らの責任。ユーが責任を取る必要はないのデース。とは言っても、そこで苦にしないような性格でないことは分かっているので……こちらを見て欲しいのデース!」

 

 そう言って取り出されるのは何かの企画書、強き魂と力を持ち、将来を支えるデュエリストの育成とそれに伴う施設の確保……。これ、デュエルアカデミアのことやんけ!

 

「デュエルアカデミア、倉瀬ボーイのビジョンにも存在していましたが、私はこの施設の必要性を誰よりも強く痛感したのデース。これから起きる事件を解決に導けるデュエリストの養成というのもそうですが、一番重要なのは精霊に関する正しい知識と相互理解」

 

 確かに精霊に関する知識というのはこの世界ではほぼ皆無に等しい。原作でもあまり深掘りされることのない要素であったし、カードの背景ストーリーと、カードの精霊としての性質や性格がまったく異なると言うのはGXの暗黒界や、俺の教導の面々が証明している。

 

 ……いや、エクレシアとかフルルドリスはわりと背景ストーリーから連想される性格だと思うのだが、教導の大神祇官がイレギュラーにもほどがある。あいつに関しては背景ストーリーのことを認知している説もあるし、精霊としての格もかなり高いようなのでそれに関連しているようにも思えるのだが……。

 

 ともかく、そういう精霊の謎について研究する必要性は俺にも理解できる。背景ストーリーや設定が恐ろしいからと、善良な精霊が排斥されるのは良くないし、その逆もしかりだ。

 俺の考えがそこまで思い至った所で、優しい笑みをしたペガサスは話を続ける。

 

「海馬ボーイもこれからのことを考えると最優先で研究を進めるべきだと判断しているのですが……ここで問題があるのデース」

「問題?」

「ええ、普通の人間には精霊が見えないということデース。今の私ならミレニアムアイの力で確認できますが来週には手術を行って千年アイテムを失う身。闇のアイテムに長く触れていたおかげで精霊を視認できるようになっているかもしれないなど、希望的観測はできません」

 

 そう、原作が終わりに近づくと言う事は、ペガサスのミレニアムアイも失われると言う事。確かにこれから精霊の研究を行うと言うのに、精霊に関して変則的な手段を用いているとはいえ、見ることが出来る人間がいなくなるのは確かに問題だ。

 

「それを考えれば、確実に精霊が憑いているデュエリスト、倉瀬ボーイをデュエルアカデミアの計画に巻き込んでおくことで、精霊に関する認識を深めるのは必要不可欠ではないかという判断がされたというわけデース!」

 

 故に俺というその場にいるだけで精霊が見える人間と見えない人間を区分できる存在が重要になるとのこと。精霊が見える人間なんていうオカルティックな募集をしたとして、自分は精霊が見えると言う偽物が現れることは目に見えている。そしてそれが本当なのか嘘なのか、客観的な区別は不可能と言っていい。

 そこで何食わぬ顔をして俺を置物にしておくことで、精霊が見える人間だけを確実に判別できる。また、ドーマの神殿のような精霊が力を振るいやすい環境があるなら、そこにアカデミアを設立することで、研究を優位に進められること。

 そしてなによりペガサスの発言で魅力的だったのは……。

 

「この研究が進めば、倉瀬ボーイのようにオカルト分野への才能が無い人間でも精霊が見えるようになるデバイスや、そもそも精霊が実体化しやすい場所や環境、条件を見いだせるのではないかと考えているのデース」

 

 なるほど確かに。実際デュエルアカデミアはそういう超常現象の研究目的と言う側面もあったはず。そのせいで定期的に学生から行方不明者が出たりなんだりという面もあったが、俺と言う存在があればその研究が早く進むという訳か。

 原作ではその実現にこぎつけていたとはいえ、場所が絶海の孤島だったからな……。あそこに学校を建設するのはいくら遊戯王ワールドでも並の労力ではなかっただろうし、もう少し近場に作れる可能性も考えるとそれも非常に美味しい。

 何より、オカルト分野の研究が進めば俺も精霊の皆とのコミュニケーションが取れるようになる。精霊が見える人間が見つかるだけでも嬉しい事なので、完全に渡りに船で断る理由が無い。

 

「分かりました。そのお話、お受けいたします」

「グッド!これで一安心デース! では、一安心ついでにもう一つ。KCグランプリが終わった後……エジプトに向かって貰えませんか?」

「はい?」

 

 KCグランプリ、それは遊戯王DMにおける記憶編前の最終イベント。

 それはバトルシティ決勝の配信が出来なかった不手際や、ドーマ編で起きた立体幻像の暴走、パラディウス社による買収騒動などなど、いくつもの問題が重なってしまったが故に起きたKCの株価大暴落を立て直すべく、KCが健在であることを示すために開かれた、世界規模のデュエル大会のことである。

 また世界経済ではアメリカ並の影響力を誇ったパラディウス社のTOPが突如行方不明という影響も大きく、各地で業務不全に陥っていることが大きな影響を与えているため、裏の世界ではその後釜を狙ったり恐慌を防ぐといった政治的な攻防が起こっているらしい。

 

 いやまぁドーマの靴を舐めてた奴が、ダーツが倒された後もデカい顔をするのは許されませんってのは当然な話なわけで、ここでKC社の軍門に下るか、それともあくまでドーマに殉ずるかという試金石的な意味合いもあるのだろう。

 原作では没落貴族ことジークがこのタイミングで一つ騒動を起こしているが、ここで動かないと今後はKCが躍進。パラディウス社の後釜に座るのが目に見えている以上、もうここしかチャンスが残されていなかった、という事情もあったと考えられる。

 

 アニメではハッキングとか不正カードだとか、色々動きが雑だなと思っていたが、パラディウス社の消滅という異常事態で動かざるを得なくなったと考えると、むしろあの行動は必然だったのかもしれない。

 もっともこういった政治的な陰謀に俺が関わることはないので、ペガサス推薦の招待選手として参加し、後は遊戯や他の有力参加者とカード談義に花を咲かせているつもりだったのだが……。

 

「エジプト行きって何でです? ミレニアムアイは月行さんが遊戯たちに届ける予定だったんじゃ……」

「そうだったのですが、月行から自分のように邪神に操られる人間に持たせるとまずいのでは?と言われ、断られてしまったのデース」

 

 なるほど。

 先日のペガサスミニオンが引き起こした事件はあくまでも主犯は夜行。夜行が邪神 ドレッド・ルートに魅入られオレイカルコスの力に頼り、それを止めようとした月行を邪神 イレイザーの力で巻き込んだ形らしい。

 そのため夜行は自責の念と対外的な処分を兼ねて現在は謹慎中。あくまで巻き込まれた形の月行はお咎めなしだが、罰として夜行が受け持っていた仕事を全部やるといった形になっているらしい……。確かに邪神に操られた後にミレニアムアイを持っていくというのは流石に怖いし不安になるよな……普通に分かる……。

 

「私はミレニアムアイを摘出した後はしばらく安静にしておかなければなりまセーン。しかし、既にエジプト政府にも話を通してしまっているので、誰が持っていくのかとなると……」

 

 天馬兄弟を操った邪神の上位であるアバターに認められていて、精霊もいっぱい憑いていて、メンタルの改善でオカルト耐性も人並みになったであろう俺が一番安全と、なるほど納得。

 適当な人物にミレニアムアイを預けるわけにはいかないし、KCはKCグランプリの運営に忙殺されている。恐らく名もなきファラオの魂の受け入れ準備で手一杯のイシズを連れてくるわけにはいかず、マリクとリシドはグールズの問題がある。

 

 遊戯たちにアメリカ滞在を伸ばして貰い、エジプトに直行して貰うのも超融合や光のピラミッド、十代のメンタル改善デュエルが控えているので論外。個人に頼むと言う意味ではKCではなく社長というのもありだろうが、ペガサス会長の頼みとか絶対拒否するだろうしな……そもそも遊戯の魂を冥界に返したくないだろうし。

 

「勿論、アメリカでの滞在が伸びたり、エジプトに向かうことで必要になる補償は任せてくだサーイ!単純な費用に加え、学校への通達から公休扱いの手続きまで、全部こっちでやっておきマース!」

 

 そうなれば俺が月行の代役を務めない理由はない。

 天下のインダストリアル・イリュージョン社への就職を決めつつ、ペガサスというバックを得てのエジプト旅行。戦いの儀を観戦できるチャンスとか逃せるわけがないよなぁ!?

 遊戯が冥界に帰ってしまうと言う意味では寂しい思いもあるが、それに立ち会えないと言うのはもっと寂しい。参加できる場面で参加できないのは絶対に後悔が残る。それは後に物理的に冥界の扉を開こうとした映画での社長が証明している。それくらいに戦いの儀はビッグイベントだ。

 

「分かりました。そういうことなら俺もお受けします」

「グッド!」

 

 そんな風に色々自分の思いを正当化しつつ、ペガサスの金で戦いの儀見学というサプライズに思いをはせていると、ペガサスの机から1枚の紙がヒラリと落ちた。

 本能的にそんな風に落ちた紙を拾い上げ、何の気なしに拾い上げて見ると……。

 

「ペガサス会長、これ……」

「Oh! それはKCグランプリの招待選手一覧表デース! それは明日の開会式で明かされるものなので、まだ内緒でお願いしマース!」

 

 そういってニッコリと微笑んで二つ目のサプライズを俺に届けたペガサスの姿に、この人には本当にかなわないなと思った。何故ならば、その参加選手表には最近見たはずなのに懐かしい名前。

 

 実は俺がこの世界で既に何かを成し遂げていたことを証明する名前があったのだから。

 

―――

 

「違う、これじゃねえ。こんなんじゃあいつらのデッキには勝てねえ」

 

 金髪に無精髭の男。

 かつて不敗伝説を打ち立て、バンデットと恐れられた男はカードと睨み合っていた。

 

「チッ、なんで俺はあんな無意味なことをしてたんだ……」

 

 彼……キースがそんなことを言っている理由は単純だ。ペガサスに敗北したその時、彼の時間は止まってしまった。

 栄光を失ってから、只管にロシアンルーレットや賭けデュエルに興じていた暗黒の日々。デッキの強化もせず、栄光の惰性で食いつないでいたあの頃。

 それ故にキースのデッキはペガサスに負けたその時から決闘者の王国に至るまで殆ど強化されておらず、ド素人の城之内にイカサマをしてもなお不覚を取る事態に至る。

 

 ペガサスに復讐するという彼の意志は変わらない。しかし、ペガサスに復讐しようとして、あの敗北の時とそう変わらないカードだけで戦おうとしていたのは一体何だったのか。

 彼はそれを倉瀬と遊戯のデュエルを見て思い知らされた。自分が使っているデッキより、数段上のパワーを持つカード群。カードゲームとは、構造上・商売上インフレしていくものだと、キースは分かっている。

 かつて最強を誇ったブルーアイズですら、今では観賞用のカードに過ぎないとすら公言して憚らないカード・プロフェッサーもいる現状。栄光の日々を支えた魂のデッキ、それが現在では決して強いデッキだとは言い切れなくなっていることを彼は理解していた。

 

 勿論、キースは腐っても全米最高のカードプロフェッサーと呼ばれた男であり、キースがいなくなってアメリカのデュエルはレベルが落ちたとまで言われるデュエリストだ。

 過去のカードを使っていたとしても、イカサマを行わなかったとしても、その豊富な知識に裏打ちされた戦術と戦略は未だ全米でもトップクラスの実力を誇っている。

 何せ今の全米チャンプは如何に天才ともてはやされていようとも12歳の小娘、挑戦権さえ得られれば今すぐにでもその頂を取り返す自信がある。

 

 しかし、それでは足りない。到底足りない。カードの絆や戦術では無く、純粋にカードのパワーが足りていない。それをキースは誰よりも正確に、正しく理解していた。

 

 一体いつからだろう、自分がカードのパックを開けなくなったのは。カードのショップへ向かい、新たなカードを調べなくなったのは。

 思えばペガサスに挑むその前から、自分が最強であることに驕っていたのかもしれないと彼は自嘲する。

 

 故に、キースは自分に残されていた全財産を使って片っ端からカードを購入。自分のマシーンデッキを可能な限り強化した上で短期間で数多の大会に参加。

 自分がいない間に有名になっていたらしい賞金稼ぎやプロフェッサーどもを片っ端から撃破して賞金を総取り、その賞金を全てカードに突っ込むと言うサイクルを繰り返していた。

 盗賊復活と、アメリカのデュエル界はキースの雄姿に沸くが、本人はそれに満足できていない。

 

 何せ数年単位で存在する資産の差、カードパワーの差というのは埋めがたく、どれだけ金を注ぎ込んでも教導デッキに勝てる気がしないのだ。

 そうこうしている内に遊戯がバトルシティで神のカードを入手するという情報が流れ、プレイングや戦術で互角……いや、自分が上回っているとしてもまだ追いついていないと、彼は自らのデッキを強化し続ける。

 

 そんな中で告知されたのがKCグランプリの開催である。

 KCとの蜜月っぷりをアピールすることを目的としてペガサスも観戦に訪れ、ペガサスの推薦として倉瀬が、バトルシティの成績優秀者として遊戯と城之内が、現全米チャンプである小娘も参加するという、キースの仮想敵の全てが参加するというこれ以上無い理想的な参加メンバー。

 それを確認したキースは残っていたコネ、新たに出来たコネを総動員して参加の枠を確保していた。

 

 しかし、現在は参加枠をなんとか確保しただけであり、勝つための戦術や戦略のビジョンがまったく浮かんでこないのだ。

 なにせレッドアイズブラックドラゴンが数十万もするウルトラレアカードであるこの時代。ギャンブルで資産を擦り減らしたキースでは必要なレアカードを集めるための資金力が足りていない。

 しかもマシーンデッキの強化のために全財産を使っているなどという情報が流れれば、キースの妨害のため、キースに高く売りつけるため、マシーンカードを買い始めるものまで現れる始末。

 結果として、マシーン関連のカードは値上がりし賞金を総取りしていても必要なカードが入手できなくなるという事態にまで陥っていた。

 

 仮に必要なカードを入手したとしても、後から不要になることもあれば、連鎖的に必要なカードが増えることすらある。

 不要になったカードを売って後から必要になったら最悪だ。買い直せるかすら分からない。買い直したはずのカードがグールズの残した負の遺産、偽造カードだと目も当てられない。

 結果としてキースの家はカードで埋まり、それだけカードが増えると盗難対策に資金を投じる必要があると、色々な意味で限界が訪れつつあった。

 

「しっかりカードを買い続けてればこんなことにはならなかったってのに……」

 

 そんな風にキースが愚痴るのも止むを得ない話だろう。

 しかし、そんな風に愚痴るキースの横顔からは笑顔がこぼれており、彼が強きデュエリストとしてのマインドを取り戻したことを表していた。

 彼がKCグランプリで目的を果たせるのかは、誰にも分らない。

 




次、最後の掲示板回として、KCグランプリやパラドックスに関する話をします!
がっつり描写して申し訳ないんですが、キースのデュエル描写はありません(本来はキースがラストデュエルの相手になる予定だった初期構想の名残)

☆掲示板回でやるか分からないこの世界線におけるアニメやカード環境に関する設定

・掲示板世界線でのアニメ話
アメリカのカードショップを巡っていると、レベッカから「最近機械族のカードが値上がりしてるのよね」って話を前振りに、その後の大会参加者紹介でキースが再登場する。
そのためKCグランプリでは「伝説の竜装備の城之内 VS 改心したキース」が行われたりする。
そう、本作ではデュエルモンスターズ界組がカードと言う思い出を残して帰って行ったので「伝説の竜カードが消えていない」のだ。
まあ、流石にドーマ編ほどの頻度でカードが生成されることはありませんが……掲示板世界線の戦いの儀では王様が三幻神に加えてティマイオスを使ってきます。この王様、冥界に帰る気ないな?

・キース
初期のプロットだと倉瀬が存在していたことで変わった事として再登場、メンタルを救済する予定だったのだが……過劇派が過劇派してキャラが勝手に動いたので出番が一気に減ってしまった。
序盤でキースに関する描写が多かったり、掲示板回で好意的な反応がされていたのは、本来はここでデュエルを行う予定だったため。
ただ、本作における王国編~KC編の間のキースの行動を書いてみたら、実際にデュエルを描写するより、掲示板回で勝敗やリアクションを描写する方が面白いかな?ってなったので、これはこれで正解だったかもしれない。
多分だけどこのキースはGXに出てくるし、カイザーがヘルカイザーやってる時に闇落ち経験のある機械族使い繋がりで少なくとも話題に上がる。

・邪神 アバター
アバターは相応しい場面以外出てこないというスタンスなのでペガサスも誤認しているが、実は倉瀬に憑いているというより教導の大神祇官に憑いている。
あれだけ最高の舞台を準備した上で、あれだけの闇の瘴気と煙を吹き出していたアバターを、自分自身を生贄にして召喚するほど覚悟の決まった神官を逃す手はないのだ。
倉瀬に対する評価は「まー神の所持者として資格は持ってるし安易に神に頼らんのは評価できるな、ウチの神官が気に入ってるからなんかあったら対応するで、仕事せんけど。」と言うもの。

・ペガサス&倉瀬
ミレニアムアイが失われて精霊がと会えなくなるのにリアクション薄くない?ってなるかもしれないけど、ここまでして貰った倉瀬は精霊の存在を疑わないので大丈夫。
デュエルアカデミア関連の話をしたけど、ここらへんはとりあえず描写する予定はありません。一度完結させた後、掲示板世界線でのキャラクター紹介という形で某大百科のまとめ風にして語る感じにします。良い感じのプロットが思いついたらGX編とかも小話とか番外扱いで進めるかもしれないけど予定は未定。
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