遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない   作:鏡路の一般兵

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・アニメ/原作的時系列
城之内 VS 海馬戦 ~ 決闘者の王国本戦 夕食会まで


王国編 ~夕食会の裏で~

 さて、あれから他の参加者たちとデュエルをしていた所。

 無事……。と言っていいのかは分からないが、俺は初日のうちにスターチップを10枚集めてしまった。

 こういうと何やら物凄く強そうに聞こえるかもしれないが、遊戯王ワールド最強格である遊戯がギリギリでの予選突破となっていたのは、単純にペガサスを倒せればよいと言うのでは無く、その過程で強いデュエリストと戦うことを目指していたからだ。

 

 全国大会でワンツーのインセクター羽蛾とダイナソー竜崎は勿論。

 アニメ版で全国大会3位であることが明かされた梶木亮太に、賞金稼ぎの孔雀舞。

 その他は運営側の死の物真似師、闇のプレイヤーキラー、迷宮兄弟と戦うなど、ペガサス島を歩き回っている。

 唯一、主人公チームとぶつかったデュエリストの中ではゴースト骨塚の格が大きく劣るが、こちらは元アメリカ一のカードプロフェッサー……即ち元全米チャンプにも等しいキースがバックに付いている。

 

 王国予選終盤、海馬の自殺示唆によってスターチップを失った遊戯は予選落ちの窮地に立たされるが、これもあくまで前述の理由で移動に多くの時間を費やしたことと、キースや迷宮兄弟からの妨害で時間的猶予を失っていたためである。

 単純なスターチップの枚数だけで言うなら、遊戯は初日の時点で森から海、荒野などと移動に膨大な時間を使ったにもかかわらず、闇のプレイヤーキラーから舞を助けた時点で早々にクリアしているのだ。

 

 で、振り返って俺の状況。

 一戦目こそデストロイヤー式谷という全国大会上位級の相手だったが、他の全国大会上位級だったり、運営側の実力者は……。

 正直言うと、ほぼ全員が遊戯側に向かい、遊戯への挑戦権を賭けた潰し合いが起こっている。

 故に、俺とデュエルを行ったのは、王国編でキースの取り巻きを務めたゴースト骨塚の取り巻きである佐竹や高井戸クラスが殆ど。

 しかも移動せずにデュエルを行うとなれば、そりゃ初日で予選を抜けるよねとしか言いようがない。

 

 このような状況になってしまったのは、現在の遊戯王ワールドにおいて最強のモンスターであるブルーアイズを独占する海馬と、それを伝説の召喚神で下した武藤遊戯という存在が大きいためである。

 全国大会の王者であるインセクター羽蛾ですら、遊戯と海馬がいない大会だったからと謙遜し、エクゾディアを海に投げ捨てると言う手段を取っている。

 冷静に考えてこれヤバくない?

 インセクター羽蛾の性格なら「フン、全国大会の王者であるボクのほうが強いに決まっているだろ?ヒャーハハハハ!」とか言ってそうなのに、2人の方が上だと暗に認めている程なのだ。

 

 そんな上澄み中の上澄みである強者たちが対遊戯を目指して潰し合う以上。

 推定精霊であるエクレシアたちもやる気満々でドロー運も快調なら、如何に残る王国参加者が遊戯王ワールドの上澄みに属していようと、ドラグマのカードパワーもあって正直負ける気がしない。

 勿論、これで本当に良いのかと言う疑問や、これはズルに該当するものなんじゃないだろうか。

 このような思いはあるものの、ある意味でもっともこの世界の真理に近いであろう、「カードの側がやる気になっている」のだからまぁ問題無いだろうと自分の中に疑問を押し込め、俺はペガサス城の一室にいた。

 

 窓の外では遠くで人影が試作型デュエルディスクを投げ合う中、ブルーアイズとレッドアイズが対峙している。

 そう、海馬と城之内のデュエルである。

 

 ここから彼らはゴースト骨塚戦、迷宮兄弟戦を越え、さらに海馬とのデュエルを越えた先、ペガサス城に挑むという原作の流れに思いを馳せるのだが――。

 

 

 ぶっちゃけ、俺はやること無くて暇すぎて困っている。

 初日で予選を抜けたということは、それ即ち、ぶっちぎりの予選1位抜けだからである。

 

 原作の本戦出場者である遊戯、城之内、舞、キース。

 ペガサスに挑むために遊戯とデュエルを行った海馬を見ても分かるが、彼らがペガサス城に訪れるのはあくまで二日目。

 初日に予選を抜けた人間は原作に存在していないのだ。

 

 もしこれが原作やアニメの話であれば、あの強者揃いの王国で一位抜け!?しかも初日のうちにとかどんな強者なんだ!?とでもなるところだろう。

 転生者目線で原作崩壊に気を付けるとか言いながら、速攻で原作崩壊を!?となるところだろうが、これはどう見ても俺の知っている世界線とはズレがあるからね。シカタナイネ。

 そもそも原作と違って予選が8人抜けというところからして違うのだから、「城之内がキースに勝利する」「遊戯がペガサスに勝利する」と言った、原作イベントをフラグとして踏むことができるのなら問題無いと信じたい。

 

 まあ、決闘者の王国で予選1位抜けと言うのは、原作崩壊による将来的な世界滅亡のリスクを考慮にいれないなら、これからの人生が楽になる圧倒的な実績であるので張り切った面も正直強い。

 遊戯王ワールドでの就活において「貴方は学生時代に何に打ち込んでいましたか?」「デュエルを少々」「実績などをお聞きしても?」「全国大会と決闘者の王国で本戦に出場しました!」「採用!!!!」みたいな流れが容易に想像できる以上、精霊の機嫌を取ると言う観点以外から見ても、全力を出さない理由は存在していない。

 

 だからこそ――。

 等と思いつつ、俺はこれからの流れを思い起こしながら、デッキに語り掛ける。

 

「いいか、この王国編はいくつかの重要なポイントがある」

 

 当たり前だが反応は無い。

 カードなんだから当然ではあるのだが、それでも彼らは――精霊は、俺の話を聞いているという確信がある。

 故に、デッキに対して語りを続ける。

 

 語る内容は当然、俺の知っている原作知識。

 

 しばらくしてから行われるペガサス城外壁にて行われる海馬との戦いや、ペガサスとの死闘など、大邪神ゾーク・ネクロファデスを倒すため、遊戯一行が越えなくてはならない試練について。

 この試練を精霊たちが知っているかどうかは分からないが、知らないままにデュエルに干渉してカードの創造や書き換えて無理矢理重要人物との戦いをひっくり返すと言う事は、何があっても起こってはならない。

 

 勿論、普通にデュエルをしている範囲で俺が勝つ。

 と言う事であれば、遊戯たちが原作ほどに頼りにならないという可能性もありえるため、これは仕方がない。

 むしろ場合によっては明確にカードの精霊と意志疎通を取る方法をなんとか確立し、俺が転生者としての知識を駆使して頑張らなければならないということも覚悟しているが、これはあくまでも正真正銘最後の手段だ。

 

 アニメの描写を見る限り、ゾークは究極龍や三幻神、エクゾディアと比較してもカードの精霊的に隔絶した強さを持っている。

 ドラグマの面々は烙印世界を代表する強者であるし、俺が警戒している教導の大神祇官に代表される、「デュエル中に突然光り輝いて書き換わりそうなカード」が書き換わった先――。

 デスピア勢を俺が自由自在に扱えたとしても、ゾークに勝てる可能性は極めて低い。

 

 効果を無効にする、攻撃力を0にするとかやった所で、「小癪な!!」と言われ、邪神にそんなものが効くと思っているのかと無限の闇でゴリ押しされる光景は想像に難くない。

 むしろエクレシア一行を除けばゾークに吸収されたり洗脳されたりまであるんじゃないか、アイツら光属性だけど。

 

 もっとも、勝てるとは思えなかったとしても、世界終焉を防ぐため、出来ることをやるしかなくなることはあり得るわけだがこれはあくまで最終手段。

 原作一行が自然な形で勝てる流れを、俺の存在という異分子が原因で断つと言う事は出来ない。

 

「だから、本当に!本当に突然光り輝いてカードが書き換わったりするなよ!!泣くからな!!!

 普通にデュエルする分には良いから!!!」

 

 故に、俺は決闘者の王国編のサバイバルを警戒して持ち込んだレトルトカレーを食べながら、匂いが付かないように少し離れた所に置いたカードを、デッキを拝み倒すのだ。

 

―――

 

 などと拝み倒している間に寝てしまったようで、起きた頃には二日目の夕方。

 正門前に遊戯たちが集まっているので、あのイベントが起きる頃合いだ。

 

 アニメでは舞の色仕掛けなどを駆使し、観戦組がペガサス城の守衛を強行的に突破する奴……ではなく、海馬とペガサスのデュエルである。

 ペガサスの非道さ、マインドスキャンの恐ろしさを改めて確認するためのデモンストレーションのようなもので、この対戦カードはペガサスがマインドスキャンで海馬の心をカードに封じ込めると言うショッキングなシーンもあるので、正直見たいような、見たくないような……。

 

 いやまて……。そもそも、今の状況……まずくね???

 

 だって俺原作知識持ってるじゃん???????

 

 ペガサスにミレニアムアイあるじゃん?????????????

 

 俺が遊戯の負け筋になるんじゃね????????????????????

 

 マインドシャッフルで対策されることも、友情パワーで防がれることも分かっているペガサスって何??????????????

 

 ……とりあえず観戦は無しだ。

 なんかこう、既に予選突破して寝てて余裕がありましたムーブでここはやり過ごすことは確定として、ペガサス対策を考えないといけない。

 

 控えめに言ってペガサスのミレニアムアイはチートである。

 千年アイテムの所持者ならば防御できるわけでも無く、問答無用で心を読む。

 マインドシャッフルは二重人格という特異性を利用したあくまで小手先の対策であって、あれは心が読まれていると言う事実そのものはまったく変わっていない。

 

 俺はまぁ、こういう性格なので内面と外面が大きく違うが二重人格という訳ではないし、これ以外で対策となると原作組のように友情パワーで心を一つにする必要があるのだが……。

 そんな相手は俺に存在していない。というか、決闘者の王国という隔離された舞台でそれが出来るのは遊戯一行だけだ。

 

 そのため、ここまでペガサスに遭遇していないのは本当に幸いである。

 原作での描写を見る限りミレニアムアイは自動発動では無く任意発動であるため、遭遇した上で心を読まれると言う手順が必要になる以上。

 ペガサス城に来てからは原作を崩さないようにする必要があるとデッキを拝み倒し、すやすやと寝ていた俺が心を読まれているということはあり得ない。

 

 だが、海馬戦が終わればあの悪趣味なスープを飲まされる夕食会が行われるわけで、その場で一切心を読まれないというのは流石に希望的観測が過ぎる。

 いやあそこにペガサスいたっけ? 覚えてないが……いたら困るし、原作にいなかったとしても、この世界でいない保証はない。

 早急に対策を取る必要があるのだが、この状況で俺が頼れる相手など――。

 

「あの、無敵の精霊パワーでなんとかなりませんか……?」

 

 そう、精霊しかいない。

 故に、原作イベントである海馬とペガサスの闘いを観戦することなく、デッキ拝みフェイズ、再開である。

 ここは精霊の不思議パワーで何とかしてもらうしかない。

 

 仮にこの世界線がアニメで放映されているなら、王国編の猛者を相手に1位で予選を抜けた挙句。

 早々に予選を突破するなり部屋に閉じこもってすやすやと眠り、そのまま海馬とペガサスのデュエルを興味が無いと言わんばかりに見なかった凄い奴になるわけだが、その内情は極めて情けないものである。

 積極的に原作イベントに干渉しなければ大丈夫なんて思っていたが、まさかその場にいるだけで原作イベントを崩しかねない事態だったとは……。

 

 まったく考えていなかった。

 仮にペガサスとデュエルする機会があっても、闇のゲームじゃなきゃ問題無いとしか思っていなかった。

 

 ……ともかく、必死にデッキに語りかけながら助力を願っていると、パサ……という音と共に、デッキでは無く、予備のカードたちが崩れていた。

 その中で明らかに、不自然に僅かに光を放っているのは……。

 

 

 教導の大神祇官(パラレルレア)

 

 

 んんんんん。

 私に頼ってくださいと言わんばかりに光りやがって!

 

 これは……これは……。

 

 まあ確かに、こういうことが出来るとしたらお前だろう。

 エクレシア、アルバス、フルルドリス及び、テオはストーリーを見る限り戦闘要員であり、この手の搦め手に向いているとは思えない。

 アディンであればこの手の搦め手にも対応できそうな印象があるが、なんかこう、ストーリーとかでの活躍や重要度的に千年アイテムの力に対抗できるかは怪しい。

 

 しかし、教導の大神祇官ならば間違いなく対抗できるだろうなと謎の確信がある。

 というかコイツで対抗できなければ他に対抗できそうな奴はいないので、何かがあっても諦めるしかないだろう。

 

「でも、本当に悪いとは思ってるんだけど……。正直、お前は信じられないんだよなぁ……。」

 

 キラリと、信じてええんやでと言うかのように光る。

 キラキラと明らかに何かを主張するかのような不自然な光り方だ。

 どうやらかろうじてコンタクトに成功したようである。

 

「いや、そんな信じてくださいとばかりに光られても、俺はデスピアの大導劇神のこと知ってるんだが?」

 

 だが、俺の知る未来の知識を言うと、一瞬でその不自然な光り方は止まる。

 前世でも見慣れた、光の角度によって見え方の変わる自然な光だ。

 

「ちょっと追及したら光るの止めやがって!!!!」

 

 キラキラ

 

 遊ばれてる~~~。

 コンタクトの手段に難があるとはいえ、間違いなく遊ばれてる~~~~。

 

「でもまぁ、他に選択肢は無いから……頼むぞ。マジで。」

 

 いや本当。

 これで俺が将来的に乗っ取られたりとかして遊戯王特有の顔芸闇落ち枠になったらどうしよう。

 少なくとも烙印世界勢はゾークとの関係はないだろうし、少なくともゾークの危険性をあそこまで懇切丁寧に解説したんだから、

 ゾークを倒すまでは余計なことはしないと信じたいんだが……。

 

 

―――

 

視点:ペガサス

 

 それはペガサスにとって初めての経験だった。

 海馬の挑戦を退けた後に開いた夕食会。

 これは対戦カードを決めるためのイベントであると同時に、その場に集めた参加者の心を読み、少しでも自身の勝率を高めるための準備でもあった。

 

 心を読めるからと言って、デュエルに勝てるとは限らない。

 ドローしたカードは読めても、ドローするカードは読めない。

 

 ブルーアイズを相手が握っていることは分かっても、それに対策する手段が手札にあるかは不確定。

 海馬とのデュエルも圧勝したかのように見えているが、それは事前に対策するカードを準備していたからこそで、薄氷の勝利でもあった。

 

 故に、ペガサスはデュエルになんらかの条件を付けることが多い。

 最初の遭遇でマインドスキャンを行ってデッキのタイプを確認。

 もっともらしい理屈をつけて一度退いた後、メタカードを積んでからデュエル。

 

 彼はゲームの創造者にして千年アイテムの所持者という圧倒的なアドバンテージを持ちながら、油断と慢心を捨てた堅実さで己の目的へと邁進していた。

 勿論―― 何事にも表と裏があるように、油断と慢心を捨てた堅実さはデュエリストの直感や危機感を鈍くさせると言うマイナスの面もある。

 もっとも創造主特権とも言えるトゥーンモンスターの存在も含めれば、総合して圧倒的な存在であり、デュエルに関して言えば思い通りにならないことなど殆ど無かったのだが……

 

 何事にも例外というものは存在する。

 

 早々に予選を抜けた後、海馬とのデュエルの見学にも訪れることなく部屋に籠っていた少年、倉瀬カイン。

 彼のことは全国大会で壮絶な手札事故を起こした子として、ペガサスも名前だけは記憶していた。

 

 全国大会の出場者だけに限らず、賞金稼ぎを始めとした多くの実力者が参加する中での予選一位通過。

 それはペガサスの認識を「手札事故を起こした不幸な少年」から「手札事故以外では負けていない強者」であると上書きするに十分なもの。

 

 故にペガサスはこの決闘者の王国を開いた本当の目的。

 海馬コーポレーションを買収するため、BIG5と契約した武藤遊戯を倒すと言う条件を満たすことを主目的としながら倉瀬カインが武藤遊戯を倒してしまった時。

 武藤遊戯を破った倉瀬カインを破る必要が起きた時に備え、十分な対策を取るべく心を読むことにしたのだが……。

 

 ――その倉瀬少年の心の中にいたのは、白き仮面と導着を身に纏い、〈巨大な杖〉を手にした怪しげな存在。

 倉瀬少年とは似ても似つかぬ怪しげな人物―― 否。

 

「やあ」

「ワッツ!? 教導の―― 大神祇官!?」

 

 あるデザイナーが作り、ペガサスが許可を出してデュエルモンスターズに登場したカード。

 その姿がマインドの中にいたのは衝撃と言う他なかった。

 

 鉄獣戦線やスプリガンズなどはまだ早いと判断してカード化は見送ったが、彼らならば良いだろうと送り出したカードたち……それがドラグマである。

 

「まあ、私もマスターの言う事を全て信じていたわけでは無いのだがね。

 我々という存在への理解がある以上、話そのものは大筋で間違っていないと確信していたが……まさか本当に来るとは……。

 とりあえずマスターからは『ペガサスに心を読ませるな』と、オーダーを受けているので、速やかにお帰りを願いたいのだが……。」

 

 クックックッと笑う教導の大神祇官。

 ペガサスは息を飲む、彼がマスターと呼ぶ存在―― 即ちこの心の持ち主である倉瀬カイン。

 

 彼はペガサスが心を読むことを予想し、対策していた。

 心を読むことを推測されたことは初めてではない、むしろ積極的と言うほどではないが公言している以上、その行為が読まれていたこと自体は不自然では無い。

 だが有効な対策が取られたのは初めてのことだった。

 

 心を読まれないために心を閉ざす、思考の奥底に封じ込めようとする人間は過去にも存在した。

 しかしこのような対策はマインドスキャンにとって無力であり、心を読む行為を防ぐことはできない。

 

 ミレニアムアイを得て初めて現れた、心を読むという超常の力に対抗する存在。

 今すぐにマインドスキャンを取りやめるべきか、ペガサスの中に迷いが生まれるが――。

 

「まあ、安心してくれたまえよ。

 ここがマスターの心の中である以上、ゆっくりしていってくれとは言えないが、心を読みさえしないなら我々に敵対する意志は無い」

「……私が言うのもなんですが、到底信じられまセーン」

 

 教導の大神祇官は敵対する意思は無いと宣言する。

 ペガサス側が心を読むと言う、明らかな敵対の意志を示しているのにも関わらずである。

 

「何、単純な話さ。マスターにはマスターの目的があり、その目的の中にキミの排除は存在しない。

 さらに言えば、私個人としてもそのミレニアムアイとやらに挑む気は起きない。やるにしても、入念かつ緻密な準備が必要だ。

 私の考えで言えば、マスターはキミと仲良くした方が良いと思っているぐらいなのだが――。」

 

 なるほどと、ペガサスは心の中で頷く。

 

 ミレニアムアイは所謂闇のアイテム。

 ペガサスはその作成理由や伝承の全てを知っているわけでは無いが、自身が手に入れた経緯で大まかにそれを理解している。

 デュエルモンスターズの作成の過程で大きなインスピレーションを受けた、古代の壁画に描かれていた内容を知っている。

 

 三幻神と呼ばれる恐るべきカード。

 何かに突き動かされるようにそれらを生み出し、恐れた後に封印したのは他ならぬペガサスなのだ。

 精霊や神、千年アイテムと言う超存在がこの世界にあることは彼らにとって疑う理由が存在しない。

 

 今回は偶然そういった超存在同士が接触すると言った事態が起こってしまったが、偶発的な事件であるが故に、彼らからしても千年アイテムに対する知識が一部でもあれば、このような状況で何もせずに穏便な対応を望むと言うのは至極当然の判断なのだ。

 

「分かりました。

 では、今回の所は引き下がりマースが……あなたのご主人に伝言をお願いしても?」

「おっと、それは悪いができない。

 マスターは私たちの存在を確信しているし、語りかけることもしてくれる。

 だが、この手の力にはとことん才能が無くて逆は出来ないのさ。直接伝えてくれたまえ。」

 

 パチンとマクシムスが指を弾く。

 刹那、ペガサスは倉瀬の心の中から、現実へと引き戻されていた。

 

(……恐ろしい相手デース)

 

 今は夕食会の場。

 表面上は余裕を見せるため、視界の端に倉瀬少年を収めながら笑顔を保ちつつ、冷や汗を流す。

 教導の大神祇官の指パッチン一つで心の中から叩き出されたと言う事は、逆に指パッチン一つで心の中に閉じ込められる可能性もあったと言う事だ。

 

 相手の心を読むマインドスキャンは無敵に近い能力だが、完全ではない。

 そのことを理解したペガサスは、すっかり鈍くなってしまったデュエリストとしての直感や危機感を自覚するのだった。

 




書き上げてからエクレシア、アルバス、フルルドリスを差し置いて精霊組で最初に台詞どころか出番をがっつり貰うのがコイツってマジかって思った。
倉瀬は精霊関連の力がクソザコなので、精霊組が次に台詞を貰うのは果たしていつになるのだろうか……。

次回は初めての対原作キャラとなる遊戯戦です。


☆掲示板回でやるか分からない世界線のアニメやカード環境に関する設定

・アニメ倉瀬の描写
アニメ的には今回の内容は殆ど放映されていません。
海馬 VS ペガサス戦を7人の本戦出場者が見守った後、8人目の予選通過者は現れなかったと思ったら、夕食会に倉瀬が「寝坊しました」とか言って登場。
カレースープを黙々と食べていたら、ペガサスから初日の時点で予選を突破、ぶっちぎりの1位通過であることが明かされる感じでしょうか。
城之内が羽蛾と竜崎を見て全国大会上位って言っても大したことないんだなとかちょっと思ってる所に、ぶっちぎりの1位通過で現れたらカッコいい……カッコ良くない?
後はデッキに祈ってるシーンなんかも台詞抜きで流れてたら強キャラ感ありますよね!(なお実態)

・ペガサスの危機感
ペガサスが使うデッキとか遊戯戦の大まかな流れは変わりません。
マインドシャッフルや友情パワーでマインドスキャンを防がれた時、立ち直るのが早くなって強キャラ感が増します。

・千年眼とマインドスキャン
シャーディですら迷ったら二度と出られなくなる罠だらけの構造をしているのが王様の心。
アニメ版によるとブラックマジシャンを始めとするモンスターたちが守衛として存在している。

そしてその奥底に隠されたカードの情報ですら、友情パワーによる妨害が無ければ容易に抜き取るのがマインドスキャンである。
(千年錠と千年眼による効果の違いと言えばそこまでだが)


・教導の大神祇官
「自分の墓地から融合・S・X・リンクモンスター1体を除外して発動できる。」というシンクロ以降の召喚法に関わる効果を持つ。
しかし倉瀬が持っているカードは「自分の墓地からエクストラデッキに存在したモンスター1体を除外して発動できる。」とかいうガバガバ表記になっている。

そのため原作効果だとエクストラデッキを経由しているならペンデュラムモンスターを除外しても特殊召喚が可能と言う事になっている(フレーバー)
一方で紙のカードで登場するのはエクレシアたちが長年暴れ続けたこともあって非常に遅く、リンク以降の登場となったため我々の知る効果と同じものが実装された。

烙印ストーリーでの行動と精霊としての存在は別物なので、何故か自分が冷遇されていることに複雑な感情を抱いていたが、今回の件で事情を理解した。
ある意味デュエルより代えの効かない場面で頼られて実は嬉しい。

ちなみに杖を持っていることからも分かる通り、「何かがあったら光りながら書き換わる気満々」だったので倉瀬の警戒は100%正しい。
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