遊戯王の世界に転生したが、原作イベントを踏み外すと世界滅亡なんて冗談じゃない 作:鏡路の一般兵
海馬 VS デュエルロボ ~ バトルシティ開幕まで
ペガサスからの協力を取り付けることが出来た俺は、マインドスキャンの力を利用することで初めて精霊たちとコンタクトを取ることに成功した。
原作で城之内たちがマインドスキャンを防ぐため、遊戯のマインドの中にはいったアレの亜種だ。
カードの機嫌を損ねるようなプレイングをしてしまった時以外、手札事故らしい手札事故は起きていなかったので、精霊が憑いているとしても嫌われていることはないはずだ。
そうは思っていたのだが、実際に話をするまではまったく確証が持てなかったので、短いながらも話を出来て一安心。
もっとも、話と言っても精霊側からはともかく、俺からすると事実上の初対面になってしまうこともあり、残念なコミュニケーション能力が発動してしまって長く話を続けられなかった。
エクレシアはその効果から何度も何度も使いまわされているし、その度に戦闘や効果で破壊されているため、それに関してどう思っているのか?
運用を見直してデッキを変えた方が良いのかなど、聞きたいことは山ほどあったのだが……。
俺が口を中々開けないところに、私たちはマスターをずっと見てるのでそういう性格なのは分かってますよなどと逆にフォローされる始末。
頼りない性格ですまんな……。
なお、この俺の性格を無視してガンガン話してきた奴もいる。
教導の大神祇官である。
口を開けば「何で私を召喚しないのか!毎回デッキから外すのか!」と正論で苦情の雨霰。
テオとアディンが引き剥がす中でも「決闘王とのデュエルで活躍のチャンスすら貰えないのは流石に悲しい」と駄々をこねる有様。
その上でいやお前絶対光り輝いて書き換わるじゃん……。
と、懸念を口にしたら、「そもそもなんでダメなんですか? 決闘王が相手だろうと問答無用で倒してしまえば、マスターを目指す形になって成長イベント・必須イベントは発生すると思いますよ」とか言ってきやがった。
え、いやそもそもデュエル中にデッキのカードが変わるとか卑怯じゃんと返しても、黙っていたペガサスですら「デュエルモンスターズの精霊の意志の元にカードが書き換わるのは何の問題もないのでは?」とか言い出すのだ。
いや、デュエルリングとかの設定的にも新しいカードが出てきたら困るでしょと言っても、ソリッドビジョンのシステム云々の話で問題無いらしい。
それでよいのか創造主と割と本気で思ったが、まあ遊戯王ワールドだとこの手の感覚は別に珍しい話でもないことを思い出す。
遊矢の突然のペンデュラム召喚ですら困惑されながら受け入れられてたことを考えると、間違っているのは俺の方なのか……?
カードが書き換わる場面に遭遇すると言う事は無く、この点に関しては遊戯王ワールドの価値観にアップデート出来ていなかったため、思わぬところで転生以来のカルチャーショックを受けてしまったが、やはり個人的な心情は曲げられない。
デュエル中に書き換わるのは絶対に無し、絶対に突然光り輝いて新しいカードになったりしないことを条件に、教導の大神祇官を始めとする面々もデッキに採用することを約束する形になった。
……彼らを採用すると言う事はデッキ内にドラグマカードの割合や展開手段が増え、エクレシアの再利用に特化する必要が無くなるということでもある。
教導の大神祇官はある意味で、俺が言い出せなかった質問をしなくてもすむように話題を誘導してくれたのかもしれない。
彼の表情は仮面の下に隠れているため見えないが、思ったよりいい奴――。
いや、いい奴ではないかな多分……。
俺の懸念通り、隙あらば書き換わろうとするメンタルだったことは確認できたし、背景ストーリーと精霊の関係は別だと思っていても流石に警戒は解けない。
彼らが書き換われば勝てると言う状況になったとしても、それを拒否する心の強さを見せつけることで、自分の信条を曲げないようにしたいところだ。
―――
で、そんなことをした後はペガサスが手配してくれた飛行機に乗って自宅に帰還。
遊戯たちを観測できるが、原作のイベントには干渉しない位置。
しかしそれでいて原作のイベントが潰れそうなら軌道修正、または別の成長イベントを準備できる場所。
これを維持するため、デッキを調整しながら「ペガサスからの推薦」という形でバトルシティの開催を待つ状況だった。
無論、俺は全国大会と決闘者の王国の両方で本戦に残っている押しも押されもせぬ実力者だ。
デュエリストレベルが足りない―― ということは無いと思わせて、実は普通に足りていない。
城之内の決闘者レベルが2だったことからも分かる通り、実はあの時のデュエリストレベル、決闘者の王国以前のデータなのだ。
海馬は城之内を凡骨凡骨と呼び、馬の骨と表記しちゃうようなお茶目な所もあるが、恣意的に決闘者レベルを下げる程器の小さい男ではないはず。
つまり、城之内の決闘者レベル2というのは町内大会ベスト8時点のものであり、俺のデュエリストレベルも全国大会二回戦で壮絶に手札事故を起こした時で反映され、レベル4と参加資格外になっているのだ。
原作におけるバトルシティの参加枠は48人という狭き門である。
この世界線での参加人数は王国編の例を見るともっと増えるだろうが、デュエルディスクという最新機器を如何なKCとはいえどれだけ用意できるのかという問題もある。
このままでは俺が参加枠を取り逃すこともあるかもしれないということで、カードの創造主であるペガサスからの推薦という鬼札が切られたのだ。
これは俺にとって非常に大きいもので、いわば天下のインダストリアル・イリュージョン社が俺の将来を保証したようなものであり、デュエルにかまけていても両親を始めとする周囲の人間から心配されない、完全なフリーハンドが手に入ったと言う事である。
「倉瀬!最近学校で見ないけどどうしたんだ!」「学校に来ないと将来が大変だぞ!」「むしろ来てくれ!学校の宣伝に使うから!!」などと言われても、実は決闘者の王国の縁でペガサス会長のお仕事を手伝っています。
とでも言えば誰もが黙らざるを得ないのだから、これは非常にありがたい。
同年代の友達どころか、教師ですら俺に余計なことは言えない状況に、デュエルモンスターズの力がどれだけの物かを痛感する日々だ。
―― しかし、世の中にはペガサスの威光が通じない人間が僅かながら存在する。
その代表例こそがバトルシティの主催者である海馬瀬人。
今、俺の前で不機嫌そうに立っている、我が道を全力で走り抜けるブルーアイズスキーである。
曰く、ペガサスの推薦であろうとも易々と例外を認めるつもりはない。
例外として参加したいのであれば、その実力を俺に見せてみろと言う事である。
もっともこれは海馬のマインドを理解しているペガサスからの「早い段階で海馬から認められておいた方が良い」という勧めもあっての行動だ。
バトルシティへの参加権を得られる可能性が極めて高いというだけでなく、俺は決闘者の王国で海馬との絡みが一切無い。
ペガサス戦の観戦もしていないし、魂が解放された後も出会っていない。
つまるところ今の俺は海馬から見て「魂が解放されたら知らん間に遊戯のライバル扱いされている凡骨」ということだ。
海馬瀬人という男は他人の意見に揺らがない強い意思を持っているが、それは思考が硬直化していたり、狭量であると言う意味ではない。
自分の考えを曲げさせるなら、それ相応の力を示してみせろと言うだけで、一度認められれば他人の考えでも考慮に入れるぐらいはしてくれる寛容さを持っている。
故に、バトルシティ前に海馬への印象を残しておきたいという魂胆である。
「準備は出来たようだな」
「ええ、大丈夫ですよ」
「王国では遊戯を相手に競り合ったと言うが、俺はこの目で見たものしか認めん。
ペガサスの推薦であろうと、バトルシティに参加すると言うのであれば、それに相応しい実力を見せるがいい」
故に、バトルシティそのものに関わらず、原作に干渉しないこのタイミング。
この瞬間でなら原作における超重要人物である海馬と極めてローリスクでデュエルが出来る且つ、今後の展開で予想外の事態が起こった時の介入の布石にできると言う事だ。
デュエルスタイルはデュエルディスクを用いたスタンディングデュエル。
ある意味で転生者冥利に尽きると言うか、ほぼ最速でこれを使えるというのは転生者でなくとも燃え上がらざるを得ない状態である。
「先攻はくれてやる、かかってくるが良い!」
「ならお言葉に甘えさせて貰います。 俺はまず手札のサンダー・ドラゴンを捨てて効果発動!デッキよりサンダー・ドラゴンを2体手札に加え、更に手札の融合賢者の効果を発動し、デッキから融合を1枚手札に加える!」
「フ、お得意のサーチコンボか。引きに自信のないデュエリストがやりそうなことだ」
「デッキを圧縮して必要なカードを引き寄せるのが俺のスタイルなんでね。
では、手札に加えた融合を発動し、手札のサンダー・ドラゴン2体を融合!」
ぐっ、と胸の前で手を合わせる。
あの作品は賛否両論色々あるが、デュエルディスクで融合をするなら一度はやってみたかったこのポーズ!
「彼方にて響きし雷鳴よ、今重なりて真なる力を見せよ! 守備表示で融合召喚! 現れ出でよ! 双頭の雷龍!!」
口上とともに現れるのは毒々しいピンク色の体色をした雷龍。
双頭という割には頭は背中についていて、率直に言って合体に失敗したとしか思えない頼れなさだ。
しかし、遊んだ記憶を封印したくなるゲームを触ったことがある人間なら、誰もが頼れることを知っている、本来ならばこの時代最強クラスで尚且つレアな融合モンスターである。
具体的に言うと、バトルシティでアンティカードに出来るぐらいのレアカードだ。
「さらにフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる時、手札から教導の聖女エクレシアは特殊召喚できる!
来い!エクレシア!守備表示!!」
「ふぅん、先攻1ターン目は攻撃できない。
上級、下級を問わずに守りを固めるか」
「そういうことです。エクレシアは召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからドラグマカードを手札に加える!俺が手札に加えるのはドラグマ・パニッシュメント!手札のカードと合わせて2枚を魔法・罠ゾーンにセットしてターンを終了します」
俺の盤面は槌をいつでも振れるように構えるエクレシアと、低い唸り声を上げる双頭の雷龍という守備モンスター2体とドラグマパニッシュメントを含んだセットカードが2枚。
あの海馬社長を相手にするのに手札は1枚と心もとないが、パニッシュメントでアルバス融合モンスターを落とせば相手のリソースを削りつつ、ドローを含めて次のターン開始時は3枚の手札で開始できる。
双頭のサンダードラゴンを召喚するために大きく手札を消費してしまったが、まあ先攻としては及第点といった初動だろう。
「俺のターン、ドロー!
1ターン目から最上級の融合モンスターを出してくるとは、確かに中々の実力があることは認めなくてはなるまい。
サーチコンボはつまらんが、引きの弱さをデッキでカバーする貴様のスタイルには、実の所この俺とて一目置いているのだからな」
「社長さんは見たものしか信じないんじゃ無かったので?」
「見たことがあると言うだけだ。
俺はたまたまお前が一回戦でマッドドッグ何某なる奴を蹂躙したデュエルを見ていた」
あ~なるほど。
俺は二回戦の手札事故が新聞とかテレビで報道されてたけど、そりゃ一回戦もどこかの専門チャンネルでなら見れただろうからね。
海馬社長はたまたまそれを見ていたと。
具体的なデュエル内容は忘れてしまったが、初手アルバスくん素引きの上振れから、エクレシアフルルドリスの構えに持ち込み、フルルドリスを出さなくても勝てるだろうと温存したら、精霊たちのご機嫌が斜めになってしまったのだ。
まあ出してくれと言わんばかりに熱を持ってた上で出さなかった俺が悪いのだろうが…… どうやらそれを見られていたらしい。
仕事中にテレビで流れたとかそんな感じなのかな。
「だが、所詮貴様のコンボは小手先のモノ。力とはなんたるかを見せてやる。俺はマジックカード、融合を発動!!」
「いきなり融合!?」
「手札のブルーアイズホワイトドラゴン3体の力を結集し、現れよ!」
などと思ってたら何か凄い事が起きてる!?
当然のように初手ブルーアイズ3枚って社長は一体どれだけブルーアイズに愛されておられるの!?というか、ブルーアイズ3体融合ってことは……。
「強靭!無敵!最強! 現れろ、青眼の究極竜!!」
「なっ!!!!」
「さあ、お得意のサーチコンボとやらをやってみせるがいい。出来るものならな」
滅茶苦茶かっこい~~~!!!
っていうか双頭 VS 究極竜とか個人的に最高の絵面なんですけど~~~!!!
だが、そんなミーハーな思いとは裏腹に、戦略的にこれは極めて不味い状況である。
具体的に言うと、全ての前提が崩れてしまったぐらいに不味い。
元の世界では負けフラグと言われているアルティメットドラゴンだが、普通ならば出された時点で敗色濃厚。俺のデッキに対しても天敵となる相手である。
「ク……」
「出来まい。貴様のサーチコンボの起点となるのは教導の聖女 エクレシア。召喚するだけでカードを持ってくる強力な効果を秘めているが、持ってきた『ドラグマパニッシュメント』には致命的な弱点がある。」
そこまで言って、愛おしげに青眼の究極竜を見つめる海馬。青眼の究極竜はブルーアイズ3枚と融合を合わせて4枚の消費で出せる大型モンスターである。
そんな究極竜を伏せカードで破壊できれば、戦局は一気にこちらに傾くのは間違いないのだが……この場面で俺が伏せカードを発動させることはできない。
「それはモンスターを破壊できるのはエクストラデッキに存在する攻撃力以下のモンスターに限られていると言う点だ。ならば最初から破壊できない程に強力なモンスターを出してやれば貴様のサーチコンボはそこで終わりだ」
そう、そうなのだ。
ドラグマでパニッシュメントから始動する場合、対象以上の攻撃力を持つエクストラデッキのモンスターを墓地に落とさなければ始まらない。
パニッシュメントはこの前提をクリアして初めて強力なコンボを生み出すのだが、ここを止められると何もできなくなるという危険性も秘めている。
究極竜の4500を越えるエクストラデッキのモンスター……持ってるわけないじゃん!?
いや、この時代でもF・G・Dとかはいるだろうが、流石にレア度が高すぎる……。
ブルーアイズの3000を越えられる融合モンスターならいるのだが、流石に4500となると無理である。
と言うかこの弱点、マスターデュエルとかでもまぁまぁ意識してない人が多くて、2500より高いモンスターだけで勝負を決められるのに、2500以下を出してパニッシュメントアプカローネルークミドラーシュで逆転勝ちとかザラだったのに、社長がもう対応してきやがったんだが!!
対応力高すぎないか!!
「さらに手札よりマジックカード、アルティメット・バーストを発動!!
このカードの効果によりアルティメットドラゴンは3回連続攻撃を可能とし、
貴様はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスター効果の発動が出来なくなる!」
いや、手札強過ぎでしょ。
こんなの止まらんやん。
三つ首のドラゴンが開く口に蓄えられる全てを滅ぼさんとする光。
対するは組まれたプログラミングの通り、反撃のため果敢に雷撃を放とうする双頭の雷龍。
そして、鎚を構えつつもこちらを振りむいて笑顔を見せる少女の姿。
「これぞ史上最強にして華麗なる究極の力!アルティメットバースト!三連打アッ!」
放たれた3つの光は守備表示の双頭の雷龍とエクレシアを飲み込む。
この攻撃が全て通ればエクレシアと双頭の雷龍が倒され、4500のダイレクトアタックが飛んでくるのだが、何も心配することはない。
そう、王国編では相手が融合モンスターを使ってこなかったため、まったく活躍の機会は無かったのだが、教導の本質とはリソースの維持能力では無い。
「ふぅん。デッキの構築力は認めるが、雑魚が群れたところで所詮は――」
「まだ、終わってないぞ」
「馬鹿な!貴様は如何なる効果の発動もできないはず!」
「教導の聖女エクレシアの永続効果! エクレシアはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃では破壊されない!
永続効果は元より発動しているのだから、アルティメット・バーストの効果でも無効化されない!!」
教導の本質とはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターに対するメタ効果である。
例え相手がこの時代最強の融合モンスターだったとしても、決して倒されることはない。
「……フ、ならば俺は残る手札の1枚。
強欲な壺を発動して2枚ドロー、1枚をセットしてターン終了だ」
「俺のターン」
いや、かっこつけてはみたけど普通にまずいて。
海馬社長のブルーアイズは平然と2枚以上並ぶのに、1度しか破壊することができないのだ。
勿論、デッキに眠るガメシエルで究極竜をリリースすればパニッシュメントで破壊できるようになり始動できるのだが、残念ながら今の手札には解決の手段が無い。
つまり究極竜は倒せない。エクレシアが凌いだことで社長もちょっと一目置いた的な様子を見せているが、ここから何もできずに終われば俺の評価は地の底に落ちるだろう。
これから海馬はパニッシュメントで破壊されるカードを出してきてくれないだろうし、引きの強さを考えれば次のターンには間違いなくエクレシアを打開できるカードを引いてくる。
それこそ守備封じあたりを引いて来て、戦闘破壊耐性の上からゴリ押すか、先程伏せたカードが破壊輪あたりでエクレシアを倒す算段がついているのか。
既にターンの猶予は無いと考え、このターンで打倒するか力を認めさせるしかない。
しかし、俺はドラグマ関連に限れば引きがかなり良いのだが、それ以外のドロー力は良くも悪くも一般デュエリスト並。
サーチでデッキを圧縮し、デッキの中が全て有効札という状況にでもしなければ、遊戯王ワールドの上位のドロー力の人間たちに追いつけない。
この状況で何を引けるのか。いや、そもそもデュエルとは何を引けば勝てるかを考えるものでは無い。
何を引いたのか、引いてから考えるものだ。
「ドロー!」
俺の引いたカードは……。
教 導 国 家 ド ラ グ マ ! !
いや、確かに打開できるけど!
打開できるけどさぁ!!
一般デュエリスト並の引きじゃドロー力上位の人間には追いつけねえ。
ドラグマ関連だけでなら対抗できるとは言ったけど、言ったけどさぁ!!
ドラグマ関連も光らないなら入れてあげるって言ってたけど!!
こういうタイミングで引いてくると、どうしても前世の印象を引き摺ってしまうため、出待ちをされていた感があって躊躇してしまう。
最初は悪意が無いように見えて、何度も使っていると……と言う奴だ。
まあいい。今は戦略目標である海馬社長に認められるのが最重要案件。
まずはあの究極竜を打開する。
「フィールド魔法 教導国家ドラグマを発動!」
「トゥーンワールドと同じ、テーマ専用のフィールド魔法か!」
「その通り、残念ながらこのカードの効果はトゥーンワールドほどぶっ飛んだものじゃないが……。それでも普通のフィールド魔法の効果とは一線を画すよ」
立体幻像が生み出すのは白く宗教色の強い都市の姿。
俺の背に座する巨大な建造物には不思議な光が当たり、荘厳な雰囲気を漂わせる。
エクレシアはそのフィールドを懐かしむように眺めると、力の象徴たる巨竜を睨みつけた。
「メインフェイズに教導の聖女 エクレシアを攻撃表示に変更してバトル! エクレシアで青眼の究極竜に攻撃!」
「攻撃力1500の雑魚モンスターで攻撃力4500の究極竜に攻撃だと!?
ええい!迎え撃て!アルティメットバースト!!!」
鎚を振り上げて三つ首の巨竜目掛けて走り出した聖女は、一瞬にして光の奔流に飲まれた。
その攻撃は一見するとまったくの無意味であるかのようにも思えるが、彼女が無事であることは既に分かっている。
俺の元へと到達した光、即ち攻撃力の差分のダメージが俺を襲うが、何の問題もない。
「攻撃の差は3000。俺は3000もの反動ダメージを受けてしまうけど、エクレシアはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターとの戦闘で破壊されない!
そして教導国家ドラグマがフィールドに存在する時。1ターンに1度、ダメージ計算後に戦闘を行ったモンスターを破壊する!!」
「何!?」
光の奔流が収まった時、聖女はその元凶である究極竜の前にいた。
多少装備が煤けているがそれ以外はまったくの無傷。
そして振り上げた鎚に教導国家ドラグマに降り注ぐ光が集まり――。
そのまま青眼の究極竜を轢き潰した。
「ブルーアイズアルティメットドラゴン、粉砕!!ターンエンドだ!!!」
……こわっ!!
そんな『やりましたよ!』って感じでぴょんぴょんしながら戻ってこられると普通に怖いよ!!!
っていうか究極竜を潰された社長も怖いんだけど!?
「おのれぇ…… よくも我がアルティメットを…… だが、俺のターン!!!ドロー!!!!」
そういうと海馬社長は俺を見据えると、全力でカードを引き抜いた。
そして引いたカードをチラりと確認するとニヤりと笑った。
「トラップカード!リビングデッドの呼び声を発動!このカードは自分の墓地に眠るモンスターを攻撃表示で特殊召喚する!俺が選ぶのは当然、青眼の究極竜!さあ、場に戻れ華麗なる究極の力よ!」
「させません。速攻魔法!墓穴の指名者を発動し、青眼の究極竜を除外する!これにより蘇生の対象を失ったリビングデッドの呼び声は不発となる」
「フッ……アルティメットの蘇生を対策するカードを伏せていたか」
ヤバいカードを伏せておられる!
だが、究極竜を除外しても未だに海馬社長の墓地には初手の融合で墓地へ行ったブルーアイズが3体眠っている。
大型モンスター軸の戦術と言う意味では闇マリクがいるが、彼はラーの翼神竜という1枚のカードを徹底的に使いまわすもの。
彼を相手にするのであれば俺のデッキは非常に相性が良いが、海馬の大型モンスター軸というのは、1枚のカードを使いまわすというものではない。
「ならば手札よりマジックカード、復活の福音を発動!墓地に眠るレベル7か8のドラゴン族モンスター……即ち、青眼の白龍一体を復活させる!」
「くっ……復活した青眼の白龍に対してドラグマパニッシュメントを発動!エクストラデッキのメテオブラックドラゴンを墓地に送ることでブルーアイズを破壊!」
ふ、復活の福音はヤバい!
だってあのカードの効果は――。
「無駄だ!ブルーアイズの蘇生後、墓地へ送られた復活の福音の更なる効果!このカードが墓地にあり、自分フィールド上のドラゴン族モンスターが戦闘・効果で破壊される時。
このカードを墓地から取り除くことで、その破壊を無効にする!」
「いや……これは……まいったな……」
「貴様のアルバス融合モンスターの効果が発動するのはターンの終了時、大型モンスターを出しても徒労に終わると言うのは、そのターンの内に勝負を決めることに失敗した弱者の戯言に過ぎない。もっとも、お前のアルバス融合モンスターでは、俺のブルーアイズの攻撃力に届かない以上、どちらにせよサーチまでは届かないようだがな」
ワーハハハハと高笑いを決める社長。
俺は2枚のセットカード、墓穴の指名者とドラグマ・パニッシュメントは既に使い切った。
残るのは攻撃表示で棒立ちする、教導の聖女 エクレシアただ一人。
社長の場にいるのはブルーアイズただ一体だがその攻撃力は3000。
通常モンスターであるためエクレシアの耐性は機能せず、攻撃力の差は1500。
青眼の究極竜を突破するために既に3000のダメージを受けている俺の残りライフで耐えきることはできない。
何かないんですかと言いたげな視線を俺に送ってくるが、すまんエクレシア。
マジ何もない……究極竜のアルティメットバーストを合計3発も耐えて貰ったのに……すまん……。
いやまて、ある。
まだ出来ることは……ある!
「バトルだ!滅びのバーストストリーーーーム!!!!」
「くううううう!!!だがただでは負けない!
教導国家ドラグマの効果!1ターンに1度、ダメージ計算後に戦闘を行ったモンスターを破壊する!エクレシアアァァァァァッッ!!」
本日合計5発目となる光の奔流を見ながら最後の指示を出す。
ダメージ計算後、既にライフは尽きているのだから勝敗の決定には何の意味もない光景である。
しかし、しかしだ。
ここまでエクレシアが頑張ってくれたのに、何もできずに終わると言うのはあまりにも情けない。故に最後の足掻きとして飛ばした指示は……。
俺のライフが0になり、戦闘破壊され光となって消えていく行くエクレシアが、鎚を豪快に投げ飛ばしてブルーアイズの腹にぶつけると言う形で遂行された。
それでブルーアイズが砕け散ったりはしないが、思いのほか痛かったのかちょっと顔を歪めている。
そして、ライフポイントをまったく削れなかったし、これはちょっとダメかな。
やっぱ社長相手に楽しようするのは良くない。実力をつけて段階的に認められるしかないか、などと思っていたのだが……。
「その決闘盤はくれてやる」
「え、いいんですか?」
なんかいきなり予想外の言葉が飛んできた。
ペガサスとの因縁があるのは聞いてますし、ライフポイントをまったく削れなかったので、参加をしたいなら自分の力でデュエリストレベルを上げてこい。
そんな風に言われるかと思ったと言う事を、可能な限り婉曲的且つ、社長の機嫌を損ね無さそうな言い回しで聞いてみたのだが……。
「究極竜を倒せるほどの決闘者がバトルシティに参加したいと言うのに、それを許さないわけがないだろう。ペガサスの推薦と言わず、お前の力でバトルシティに参加できるよう、決闘者の王国でのデュエルデータ及び、今回の戦いを参考にデュエリストレベルは修正しておいてやる。
もっとも、バトルシティを制するのは俺だがな!ワーハハハハハハハ!!!!」
究極龍を処理した時点でどうやら社長的な基準はクリアしていたらしい。
デュエリストレベルの修正に関しては、ペガサスの推薦だから参加させたと言う形を回避したいのだろうか。まあ、そこらへんの会社的な因縁、政治的な話はともかく、バトルシティに参加できるならそれに越したことはない。
遊戯たちの活躍が見れる、それだけで俺のテンションはあがり調子になるのだから。
なお、デュエリストレベルがいくつになっているか気になったので、後で確認してみたら4から7になってた模様。
全国大会王者の羽蛾でも6じゃなかったっけこれ!?ライフポイントを一切削れなかったのに、なんでこんなに社長からの評価が高いの!?
次回、バトルシティ編開幕!
教導の大神祇官「前話でマスターの後ろに立った時のオーラの色ですか? 黒でも青でも白でも金でもありません。勿論、私だけ赤に決まってるじゃないですか!リーダーカラーです!!」
余談ですが倉瀬くんの見た目はGXでアカデミアのモブ生徒にいそうな感じで考えてます。
お触れホルスの人を黒髪にして長くした感じの遊戯王ワールドならどこにでもいそうなお兄ちゃんです。
変な髪型はしていないと思います。
※追記 多分前髪はちょっと目にかかってて内向的にみえてたりするんじゃないかって感じなんですが、フレーバーです。
またGW中の書き貯めとかで部分的にでも作ってたのがここまでなので、そろそろ毎日投稿が終わるかもしれません。
☆掲示板回でやるか分からないこの世界線におけるアニメやカード環境に関する設定
・倉瀬
双頭を使うだけで視聴者視点ではデッキパワーが落ちたように見えてしまう凄い奴。
・海馬瀬人
ブルーアイズや究極竜を上回る攻撃力をエクストラデッキに準備するのが大変なので実は倉瀬の天敵。
初期手札が上振れてるならアルバスくんで喰えるので、大型モンスターの殴り合い合戦になる。
本デュエルの前段階でデュエルロボ相手に「究極龍に立ち向かう恐怖」を体感しているため、戦意を失わず究極龍に立ち向かってきたことで評価にプラス補正が入ってる。
・青眼の究極竜
負けフラグと呼ばないで
・双頭の雷龍&メテオブラックドラゴン
某封印したい記憶で究極竜に立ち向かった仲間
出せないので弾丸でしかないが、実はメテオブラックドラゴンは倉瀬の手持ちで最もレアリティの高いカード。
・教導の聖女 エクレシア
アルティメットバーストを3発耐えて究極嫁を殴り倒した女。
この回は作画担当がノリに乗っていたこともあり、アニメ回の伝説となる。
なお、デュエルは「どうでもよい、あっても無くても困らない」経緯やタイミングで行われたため、何故エクレシアが究極龍を殴り倒しているのかは、しっかりアニメを見ている人でないとご存じない。
アニメ遊戯王ではBMG登場以前からいる貴重なアイドルカードであり、
この世界線ではこの回が話題になったことでBMGと並んで遊戯王の看板モンスターの一角となる。