混血のカレコレ【Over the EVOLution】 作:鬱エンドフラグ
『ハンバーグ』
パンダ「久々の外食だ〜!」
ペンギン「ここがシャチが言ってたとこか」
シャチ「はい!このお店のハンバーグすっごく美味しいんですよー!」
パンダ「でもこことても営業してるようには見えないよ?『閉店』って張り紙があるし…」
ペンギン「いや、よく見たらその上に『本日やってます』って張り紙がある」
シャチ「それじゃあ入店しましょっか」
ペンギンたちは店に入った。
ペンギン「…なぁ、この店本当にやってるのか?」
ペンギンの疑問も無理もない。
どの窓もブラインドが降りており、ドアの窓などは段ボールで覆われていた。
灯りはついてるものの薄暗く、おびただしいテーブルと椅子が広いホールに積み重ねられていて少し埃臭い。
シャチ「いつもこんな感じですよ?」
シェフ「いらっしゃいませシャチさん」
すると厨房から小太りの物腰が柔らかい男性が出てきた。
シェフ「おや?今日はお連れの方がいるのですね」
シャチ「はい!僕が働いている職場の先輩のペンパイとパンダさんです」
シェフ「そうですか。最初の料理が出来上がりますので、奥のフロアへどうぞ」
ペンギン・パンダ「…」
ペンギンたちはシェフに案内されたフロアに行くとそこには他の客たちがそれぞれテーブルに座っていた。
ペンギン「他に客がいるってことは、ちゃんと営業してるんだな…(だがなんだ…?この妙な雰囲気は…)」
パンダ「あれ?メニュー表がないね」
シャチ「ああ、このお店はハンバーグオンリーなんです」
パンダ「えぇ!?ハンバーグだけ!?」
シャチ「はい。でも凄く美味しいんですよ!」
シャチのがそういうと、他の客たちもコクリとうなずいていた。
それから少し待っているとシェフが
シェフ「お待たせしました」
と言いながら人数分のハンバーグを運んできた。
そしてそれをテーブルに置く。
それはまさに、鉄板プレートに乗った絵に描いたようなハンバーグで食欲をそそられる見た目をしていた。だが…
ペンギン(な、何だこの匂いは…)
ハンバーグから漂ってくる匂いはとても食欲をそそられるものではなかった。
シャチ「いただきま〜す!」
ペンギン・パンダ「い、いただきます…うっ!?」
シャチ「ん〜、やっぱり最高です〜」
ペンギン「ま、まずい…」
パンダ「うっ、オロロロロロロロロロロロ」
シャチ「ちょっ、パンダさん!?何してるんですか!」
シェフ「お、お口に合いませんでした?」
パンダ「なにこれ…食感も味も全て最悪だよ!!」
シャチ「そうですか?とっても美味しいですけど…もしかしてパンダさんって偏食なんですか?」
ペンギン「すまないが、俺もパンダと同意見だ。とても食べられたもんじゃない」
シェフ「えぇ!?そんなぁ…こんなに美味しいのに」
シェフ「申し訳ありませんでした。シャチさんのお連れでしたのでてっきり…すぐに別のものをご用意しますね」
それから少しして新しいハンバーグがやってきた。匂いも味も先ほどのものとは違い普通に美味しかった。
そしてペンギンたちは店を後にした帰りの道中、パンダとシャチは言い争っていた。
パンダ「今まで食べた肉で一番不味かったよ!」
シャチ「パンダさん!やっぱり失礼ですよ!」
パンダ「ほんとに不味かったんだよ!ペンギンもそうでしょ!?」
ペンギン「あ、ああ…(いや、あれは不味かったというより…まるで身体が受け付けなかったような…)」
シャチ「でも自分はすごく美味しかったですよ?他のお客さんだって美味しそうに召し上がってたじゃないですか!」
ペンギン(たしかに、シャチや他の客はみんな普通に食べていた…。俺とパンダの味覚がおかしいのか…?)
———あれ…ここはどこだろう?
気が付くと私は何もない黒い空間にいた。
どこまでも果てしない闇が広がるばかりで自分がどこに立っているのかさえ分からないような感覚に陥る。
『フィーア…』
ふと、後ろから私を呼ぶ不気味な声が聞こえる。
振り向くとそこには…誰もいない。
そう思った瞬間、地面から泥のようなものが滲み出て、溢れる。
泥は徐々に形を成してゆき、そして…人の形になった。
「ひっ……」
その人型のナニカはあまりに醜く、おぞましい姿をしていた。
鼻や口は無く、本来目がある場所にはぽっかりと穴が空いているだけでそこから絶えず真っ黒な泥が流れ落ちている。
私は恐怖を感じ、後ずさる。
『フィーア…あなたは何をしてるんですか…?』
「え…?」
『あなたは人類の発展の為に作られた道具なんですよ…?それなのに我々を裏切るなんて何を考えているのですか!?』
その声に聞き覚えがあった。
私がいた研究施設の研究員の声だ。
『あなたが裏切ったから、あなたが裏切ったせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで許さない
許さない許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ』
「い、いやっ…」
その悪意に満ちた言葉に思わず耳を塞ぐ。
もうこれ以上聞きたくない。
だがいくら目を瞑っても、どれだけ耳を抑えても、脳に直接語りかけてくるように聞こえてくる。
『フィーア…』
すると、人型のナニカの声が、男の声から少女のものに変わる。
その声にも聞き覚えがあり、私は顔を上げる。
目の前にいたのは相も変わらず泥で形成された人型のナニカだった。
だが穴ぼこしかなかった真っ黒な顔がぐにゃりと歪むと、少女の顔になった。
私はこの子のことを知っている。
私が最初にいた研究施設で廃棄品として処分された子だ。
『私は廃棄されて死んで…あなたは正規品に選ばれて生き残った…』
その声は恨みと妬みが混ざったような声で、私の心を蝕んでゆく。
『今度はあなたが死んで私が生きるのは…とぉうぜんのことよねぇ?』
やめて…もう許して…
『空っぽのあなたには生きる価値なんてない。————————早く死んでくれないかな』
そう言うと彼女は、人型のナニカはボコボコと音を立ててその姿を変えていく。
そして現れたのは、あの研究施設でハザードレベルを上げるために戦わされた怪物—————————『スマッシュ』だった。
『グオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッッッ!!』
スマッシュは咆哮を上げながら私に襲いかかってくる。
「い、いやぁぁぁぁぁ!!」
私は無我夢中で走った。
しかしどこを走っても黒い空間ばかりで景色が変わらない。
それでも走り続ける。
足を止めれば殺されてしまう。
やがて走るのも辛くなり、立ち止まる。
後ろを振り返ると—————スマッシュの姿はなかった。
『………はぁ』
どうやら撒けたようだ。
私はホッと胸を撫で下ろす。
『立ちました』
「え…」
あの不気味な声が聞こえ、私は再び前を向く。
そこにはさっきまでいなかったはずのスマッシュが立っていた。
スマッシュは私を叩き潰さんばかりに腕を振り下ろした—————————
「———はっ!?」
ベッドの上で目が覚める。
「ハァッ…ハァッ…ハァ…ゆ、め?」
汗がびっしょりで、心臓の鼓動も早い。
先程までの光景は全て夢だったのだ。
まだバクバクしている心臓を抑え、なんとか落ち着かせる。
時刻はまだ深夜の2時。
起きるにはかなり早すぎる時間だ。
もう一度寝ようと寝返りを打つ。
だが目を瞑ると夢の内容がフラッシュバックする。
またあの夢を見るのが怖くて眠れなくなってしまった。
私はベッドから起き上がり、部屋を出た。
惣真SIDE
深夜の2時頃
俺はブラッド族故睡眠を取る必要はないので、地下の秘密基地でエボルドライバーや武器のメンテをしていた。
「ふぅ〜これで完了っと」
全てのメンテナンスが終わり、椅子にもたれかかる。
ブラッド族だから身体的疲労はないとはいえ、気分的には疲れるものだ。
休憩がてらにコーヒーを飲もうと思い、地下室を後にした。
冷蔵庫から出て、カウンターに置いてあるコーヒーポットを手に取る。
ふと、背後で扉が開く音が聞こえ、振り返る。
「…惣真さん」
そこにはパジャマ姿のフィーアがいた。
起こしちゃったか?と思ったが、何やら様子がおかしい。
するとフィーアはトテトテとこちらに近づいてくると、俺の体にぎゅっと抱きついてきた。
「フィ、フィーア?」
フィーアは震えていた。
「…どうした?何かあったのか」
俺はフィーアを安心させるように頭を撫でながら優しく問いかける。
それから何分かしてようやくフィーアは開ける。
「惣真さん…一緒に寝てくれませんか…?」
フィーアは震えた声でそう言った。
「わかった、行こう」
「ありがとうございます…」
ブラッド族だから睡眠は必要ないと言っても寝れないわけじゃない。
久しぶりに寝るのも悪くないだろう。
俺はフィーアを連れて寝室に向かう。
フィーアはベッドに入ると、すぐに俺の腕の中に入ってきた。
俺はフィーアを抱き寄せ、背中をさすってやる。
「大丈夫だ。何も心配することなんてないからな」
「はい…おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
俺はフィーアが寝静まるのを見守った。
フィーアSIDE
「…また、この夢…」
私はまたあの黒い空間にいた。
ごぽ…ごぽぽ…
ふと、後ろから大きな泡音が聞こえ、私は振り返る。
すると地面から泥のようなものが溢れ、ごぽごぽと泡立ってるのに気がついた。
そして…
『グオアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ‼』
地面から泥と共に何かが飛び出した。
それは、スマッシュだった。
スマッシュは咆哮を上げ、太い腕を振りながら迫って来る。
「ひっ、い、いや!来ないで!」
私は逃げようと必死に走る。
だが、足がもつれて転んでしまった。
すぐに立ち上がろうとするが、腰が抜けて立てない。
すると、すぐ後ろにまでスマッシュが迫っていた。
いや…誰か…誰か、助けて………………………………………惣真さん……!!
そしてスマッシュは私に向かって、腕を振り下ろした。
私は目を瞑り、体を縮こませる。
しかし、いつまで経っても衝撃はこなかった。
『ッ!…ッ!?』
スマッシュの動揺する声が聞こえる。
「え…?」
不思議に思い、恐る恐る目を開ける。
そして私の目に映ったのは、スマッシュの振り下ろした腕が黄金の怪人によって掴まれている光景だっ
た。
黄金の怪人はもう片方の手に赤いオーラを纏い、その拳をスマッシュに叩きつける。
『ッ!?グウゥゥゥゥッッ!!?』
スマッシュは後方へ吹き飛ばされた。
黄金の怪人は自身の腰にベルトのバックルのように装着されたデバイスのレバーに手を伸ばし、それを勢いよく回す。
不気味なアレンジの交響曲第9番が鳴り響く。
『グッ、グウゥ…ゥゥォォオオッッ!!!!』
スマッシュは立ち上がり、雄叫びを上げながら、目の前にいる存在に向かって走り出す。
『Ready go!』
黄金の怪人の右腕にエネルギーが収束される。
そしてスマッシュが間合いに入った瞬間、
『エボルテックフィニッシュ!Cia~o!』
黄金の怪人はスマッシュにエネルギーを収束させた拳を叩き込んだ。
『グオアアァァァァァ…』
その衝撃によりスマッシュの肉体は泥となって崩れ落ち、黒い地面に沈んでいった。
黄金の怪人がこちらに振り返る。
口を開き舌を出す蛇を真横から見た姿の形状をした鋭い赤い目。
今にも襲いかかってきそうなコブラのような顔。
赤、青、金、といったとても鮮やかな色合い。
その装飾は複雑かつ凶悪でどこか禍々しい。
そんな異形の外見をした存在は私に歩み寄る。
そして、私の頭を優しく撫でる。
安心感と暖かさが私を満たしていく。
涙が頬を伝う。
黄金の怪人の表情は分からないが、なんとなく微笑んだ気がした。
「———はっ」
ベッドの上で目が覚める。
横を向くと惣真さんが寝ていた。
「…ん」
私は惣真さんにギュウッと抱きつき再び眠りについた。
それから悪夢をみることはなかった。
上司「あ〜、腹減ったな〜…おっ!こんなところにレストランがあるじゃないか!」
上司はその店に入る。
シェフ「いらっしゃいませ。奥のフロアへどうぞ」
上司がフロアへ行くと…そこに入った瞬間、そこにいた客たちが一斉に上司の方に振り向いた。
上司「なっなんだ!?」
客たちは何も言わず、ただじっと上司の方を見ていた。
シェフ「失礼しました。ここは満席なのでそちらの部屋へどうぞ」
上司「え、あ、は、はい…」
上司は戸惑いながらもシェフに促されるまま別の部屋へと連れて行かれた。
そして上司が連れてこられたのは厨房の続きの食料庫。
上司「なぜこんなところに…?」
シェフ「それではさっそく…」
上司「ん?」
突如、シェフは体から強烈な衝撃波と高熱を生じる。
そしてその姿を蟹を彷彿とさせる怪人へと変化させた。
カニアマゾン(シェフ)「調理させていただきます」
上司「ぎゃああああああああ!?」
シェフ「お待たせしました」
シェフは手にハンバーグの皿を持ち、フロアにいる客たちにそう言う。
シェフが着ているコックコートには血がべっとりと付着していた。
しかし客たちはそのことを気に留めることなくハンバーグに舌鼓をうつ。
シェフは満足気にその様子を見回していた。