混血のカレコレ【Over the EVOLution】 作:鬱エンドフラグ
…はい、唐突なクソつまんないギャグごめんなさい。
日本のとある高校。
そこは異宙人と人間が共存している珍しい学校のうちの一つ。
人間の生徒はもちろんのこと、エルフ、妖精、獣人、リザードマンなど多種多様な種族が在籍しており、かなり風変わりだがこの世界では珍しくもない光景だ。
「え?カゲチヨ、学校に来るのをやめたんですか?」
「そーなんだよ!」
昼休み。教室で昼食をとっていたヒサメは、クラスメイトであり友人である少女…フィーアにプンスカと怒りながら愚痴をこぼしていた。
「昨日来てなかったと思ったらそういうことだったんだねー」
「なんでカゲチヨは学校にこなくなったんだ?」
話に加わるピンクに近い薄紫色のロングヘアーにスタイルの良い少女『ミキ』と黒髪にぽっちゃり体系の少女『ノリコ』。
彼女らもヒサメの友人でありこの四人で昼食を摂るのはもはや恒例の事。
ノリコの言葉にヒサメは大きくため息を吐き答える。
「暑いから、だって」
「クズだな」
「クズだねー」
「全国の不登校に悩む子ども達に謝ってほしいですね」
ノリコ、ミキ、フィーアの順に酷評する三人。
それを聞いてヒサメは苦笑を浮かべた。
「でもたしかカゲチヨってゾンビと吸血鬼のハーフでしたっけ?」
フィーアがそう言うとヒサメはうなずく。
「やっぱり普通の人より日差しに弱いんでしょうか」
「まぁ夏も真っ盛りだしな」
フィーアの言葉にノリコが同意する。
実際吸血鬼とゾンビのDNAを持つカゲチヨにとって夏の暑さや日の光はかなり堪えるものなのだろう。
「フィーちゃん、今日もお弁当美味しそうだねー」
ミキが話題を変えるように言う。フィーちゃん、というのはフィーアのことだ。彼女の弁当箱には色とりどりのおかずが入っておりとてもおいしそうである。
特に今まさに彼女が食べている卵焼きはとてもきれいな黄色をしており、見ているだけで食欲をそそられる。
そんなミキの言葉にフィーアは嬉しそうな表情を見せた。彼女は料理が得意であり、褒められて純粋に嬉しいようだ。
するとフィーアはあることに気づき、やれやれ、しょうがないなぁ、という顔をする。
「ヒサメちゃん…一個だけなら良いですよ」
「えっ!?な、な、なんのこと!?」
「ヒーちゃん…涎出てるよ…」
ミキの指摘にヒサメは慌てて口元を拭う。
「じゃ、じゃあ一個だっけ…」
「ヒーちゃんだけずるいよー、フィーちゃん!私にもちょうだい!」
「私にも一つくれないか?」
「もー、3人とも。仕方ないですね」
3人の催促にフィーアは呆れた様子を見せながらも自分の弁当箱を差し出す。
ヒサメ、ミキ、ノリコは礼を言うとそれぞれの箸で卵焼きを掴み口に運ぶ。
そしてその味を確かめた3人は…。
「「「──────…甘っ!?」」」
開口一番に口を揃えそう言った
「?そりゃ甘いですよ、砂糖入れてますから」
「いやいやいや!だとしても甘すぎじゃない!?」
「ミキの行きつけのスイーツ店のパフェより甘い…」
「無性に渋いお茶かコーヒーのブラックが飲みたい」
3人の反応にフィーアはキョトンとした顔を見せる。
「そうですかね?私はまだまだだと思いますけど」
どうやら彼女にとってはこの程度の味付けはまだ未熟らしい。
「ちなみにだけどフィーアちゃん、この卵焼きってどれくらい砂糖入れたの?」
恐る恐る尋ねるヒサメにフィーアはさらりと答えた。
まるで何でもないことのように。それが当然であるかのように。平然と。さも何事もないように。淡々と。当たり前であるかのように。普通に。
「1kgのやつ一袋分ですね」
「糖尿病になるよ!?」
「甘党どころじゃないよ!!狂気の沙汰だよ!!」
「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」
「そんなにおかしいですかねぇ…」
フィーアは弁当の卵焼きを口に入れる。
(うーん、やっぱり物足りないなぁ。昔食べたあの味がどうしても再現できない…)
もぐもぐと舌鼓を打ちながら考えるフィーア。
(…それにしても)
フィーアはチラリとヒサメを見る。
(カゲチヨ、ヒサメちゃん、そして二人と一緒にカレコレ屋を営むシディさん…)
カゲチヨはゾンビと吸血鬼、ヒサメは雪女とカンナカムイ、シディは狼男とホルス。
3人とも人間でありながら異宙の能力を持っている。
(まるで私と同じ──────…)
「…いや、考えすぎですね」
「何か言った、フィーアちゃん?」
「いえ、なんでもありません」
「誰もいねぇよな…」
コンビニ前の電柱に隠れながらキョロキョロと辺りを見回す男。側から見れば完全に不審者である。
深い隈に血色の悪い顔の男…カゲチヨ。
なぜ彼がこのような行動をとっているかというと、理由は簡単。
現在不登校中である彼は同級生や知人にはできる限り会いたくないのだ。それだけでなく人の視線が怖い。学校に行ってないことを責められてるような気になってしまう。
そのためカゲチヨはこうして人目を避けているわけだが。
そもそも日差しが苦手な彼にとって日中に出歩くこと自体が苦痛なのだが。しかしそれでも外に出なければならない理由があった。
スマホの充電器が壊れたため、新しいものを買わなければならない。
学校への不安、不登校ゆえの漠然とした恐怖などのネガティブな思考の隙間を埋めるにはスマホは欠かせない。
それで仕方なく外に出てきたのだ。
本当ならシディについて来てもらえたらよかったのだが残念ながら彼は今フードデリバリーのバイト中だ。
よって一人で外出することになった。
「大丈夫だ、落ち着け俺…コンビニは目の前だ…サッと買ってサッとカレコレ屋に戻ればいい…」
カゲチヨはもう一度周りを確認する。よし、大丈夫そうだ、と思った瞬間だった。
背後から近付いて来た男がカゲチヨのパーカーのポケットから財布を抜き走り去った。
「ア゛…?……ア゛ァ!?」
突然の出来事に唖然となるカゲチヨだったがすぐに我に返り慌てて追いかける。
「待ちやがれっ!!」
必死に追いかけるが、ひったくりの男の足が思った以上に速く追いつくことができない。
(こうなりゃ能力使うか?)
とカゲチヨが考えたその時、ひったくりの男の前方から一人の少女が片手に買い物袋を持ちながら歩いてくる。
「おや?あれは…」
少女は目の前に迫ってくるひったくりの男とその後方のカゲチヨに気がつく。
ひったくりの男は懐からフォールディングナイフを取り出し柄から刃を展開する。
「邪魔だあああっ!!」
それを少女に向かって振り回す。
「っ!やべぇっ!!」
カゲチヨは血液操作を用いて男を拘束しようとするが。
(ダメだ!!この距離からじゃ間に合わねぇ!!)
ひったくりの男のナイフが少女に突き刺さる寸前。
少女はギリギリのところでサッとナイフを躱すと自身の足をひったくりの男の足に引っ掛けた。
男は勢いよく転倒し、ナイフは地面に落ちカキンッと音を立てる。
「マ、マジかよ…」
カゲチヨが呆気に取られていると少女は寄ってきた。
「カゲチヨじゃないですか。何してるんですかこんなところで?」
「え、あ!フィーア!?」
それは彼のクラスメイトでありヒサメの友人のフィーアであった。
「ア゛ー、ちょっとコンビニに…」
「へー、暑いという理由で学校に来ないくせに外出はするんですね」
「うぐっ!い、いやスマホの充電器が壊れて仕方なく…」
「全く、ヒサメちゃん呆れてましたよ」
「とっところでお前大丈夫かよ!?怪我とかしなかったか!?」
「露骨に話題変えて来ましたね…別になんともありませんよ。それより…」
先ほどフィーアに転ばされたひったくりの男はいつの間にか起き上がっており逃走を図ろうとしていた。
「忘れ物ですよ」
フィーアは地面に落ちてある財布をリフティングの要領で一度蹴り上げ、足の甲のつま先で財布を蹴っ飛ばした。
「えっちょそれ俺の財布!!」
カゲチヨは自身の財布が蹴っ飛ばされたことにギョッとするが。
「グエフッ!?」
財布は見事にひったくりの男の後頭部に直撃し跳ね返る。
「よっと」
フィーアはそのまま跳ね返った財布を片手でキャッチした。
ひったくりの男は財布が頭部に直撃した痛みと衝撃でダウンした。
その光景を見てカゲチヨは唖然とする。
「はい、どうぞ」
「お、おうありがとな」
フィーアはカゲチヨに財布を手渡す。
(こいつ運動神経ヤバすぎるだろ…)
カゲチヨは内心冷や汗を流した。
「それじゃあ私はこれで失礼します。それと、もう不登校についてはとやかく言うつもりはありませんが、あんまりヒサメちゃんを心配させちゃダメですよ」
そう言って去っていくフィーアの背中を見ながらカゲチヨはふとあることを思う。
(アイツもしかして、シディとヒサと同じ──────…)
そんな考えが頭に浮かんだが、すぐに打ち消した。
「…考えすぎか」
カゲチヨは深く考えるのをやめ、ダウンしたひったくりの男を交番に突き出して帰路についた。
…充電器を買うのを忘れていたことに気付いたのはカレコレ屋に着いた直後だった。
数日後…
「おや、カゲチヨようやく学校に来たんですね」
フィーアはヒサメと共に登校するカゲチヨの姿を見つけ声をかけた。
「まぁ色々あってな…」
「…それ、大丈夫ですか?」
日差しによりカゲチヨの頭からジュウウウウという肉が焼ける音と共に煙が上がっている。
「だ、大丈夫だ…問題ない」
「それフラグでは?」
「カゲが学校に来るようになったのは嬉しいんだけど…」
ヒサメも困った顔をしていた。
「シディに居場所を奪われる(精神的な)痛みに比べれば!なんのこれしき!!」
「本当に何があった」
「よくわかりませんが、不登校から脱却できたようでよかったですね」
フィーア「天の道を往き、総てを司る女…私の名は、フィーア!」(ドヤァ)