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主人公の名前をギルベルティーナ・ノア・バイルシュミットからギルベルティーナ・ミヅキ・ベルンシュタインに変更しました。
1話 目蓋を開ければ異世界だった
役者希望の友人に頼まれ、しょうがないなと参加した筈の某府某区で行われたコミケに行っただけなのに……ッ!!
悲鳴じみた言葉を心に押し込めながら、唇をかみしめた。
友達と遊びに行っただけでこんなことに巻き込まれるなんて思うわけない。強制的に着替えさせられ暑さで目眩をおこしたと思ったら、メルヘンかつファンタスティクな世界に落っこちたってどういうことだ。どう考えても理不尽すぎる。予兆すらないってどんな事なんだと神に問いたい。そして、もう二度とあいつの頼み事は聞かないと心に決めた。……まぁ、それから先、会えるのかどうかもわからないけど、再会したらお前の顔を一発殴らせてくれよと思うよ。
しかも、講堂みたいに広い場所に居た筈なのに真っ暗(当社比)な場所の空中。友達に付き合っただけなのに何この理不尽。強制スカイジャンプ。但し命綱なし、みたいな。
なにが悲しくて落下した挙句、人様の家の屋根を突き破るほどの衝撃を感じなければならないのか……痛いし、しんどいし怖い。それに、みっともなくて情けなさすぎる。私はジェットコースターとか落下系のものが大嫌いなのだ。落ちるなんて死んでもごめんだと思っていた。……現実逃避だよ、畜生っ!!
正直、屋根を打ち破った事よりも、落ちた事の方が嫌だった。
自分でもどうしてそうなったのか分かっていないアクロバットな落下でこの世界に飛び込み、家主の前に落ちて来た私の名前はギルべルティーナ・M・ベルンシュタイン……一応、ドイツと日本の血を引くハーフなので日本の名前も持っているけど、私はドイツの方の名前を使っているのであまり使わないし、別に気にしないで構わない。
そう発見者に告げたら、何とも形容し難い顔をされた。
その発見者の名前はリタ・モルディオという。
私が地面に落ちて、正確には別の世界に落っこちて(あり得ないと思うけどマジなのよね、うん…どうしてこうなったんだろうね)神様なんてぶっ殺す。たとえ、不敬だと言われようともぶっ殺す。少なくとも一撃喰らわせてやるとか、不敬極まりない物騒なことを思うようになったのは最近の事………冷静なればなるほど、なんというか死にたくなったりする。
一般人の私の心に刻み込む原因となったのは何カ月か前の出来事。十数年の生活で私の中で積み上げられてきた価値観やらアイデンティティーまでもをなぎ倒す様に狂わせた出来事のせいだった。私は、どちらかといえば祖父の影響もあってか、それとも祖国がドイツというヨーロッパの一角を担う国であったから、我らが主を信じていた。祖国は旧教、新教の違いはあるとはいえど一神教なのに。母の国だって八百万の神々がいるとは言えど、気が狭い神もいるまいに。……と、そんな生ぬるいことを思っていた事も私にはありました。数ヶ月とはいえ、理不尽とか非常識とかに晒されてそんなもの蒸発寸前だ。帰って来い、私の信心。
普通は災難だったから諦めようと思うのかもしれない。だけど、私はこの災難というか天災の様な出来事を未だに許せないのだ。あの強制空中ジャンプを覚えている。床がいきなりなくなった瞬間など、忘れられるものではない。空中に投げ出された瞬間の恐怖もだ。絶対に忘れないし、この記憶が消えることもないだろう。こんなことをしたやつは必ず殺す。
屋根を突き破った感触を覚えている。あの痛みと落下の恐怖も許せないのに、異世界で家なき子とかふざけるなと思う。諦める前に怒りが湧き出てきてしょうがないのだ。
正直、全てが嘘だと言いたい気持ちでもあるけど、苛立ちも覚えるのだ。もしも全てが夢ならこれよりも嬉しい事はないのにそんな事はないのだから、報われない。
遣る瀬無い分、この気持ちはそんな言葉が当てはまる。
でも、うん。正直に言えば、ないわーといいたくなる。
というか、私の今までの常識が叫んでる。
またたきの間に推定100キロ以上移動する(当事者に何も告げず)とか、ありえぬぇーと。
だが、同時に空から落っこちたのだとしても、僅かに此処に落ちてよかった、と思う心。そんな安堵とぞっとするような恐怖が入り混じって今の私を形成していた。
その理由が一つ、此処が比較的に安全な場所であるからだ。帝国の直轄地みたいな研究都市。学園都市とはちと違うが入場も厳しく検査され、荒っぽい人間はまず来れない場所。街自体が地下にあるから太陽の光りが直接ないのもいい。私は色素が普通のヨーロッパの人間や東洋の人と比べると殆ど無いくらい薄い。髪なんてほぼ色素は無いから白いし、一番ましとは言えど瞳も色素が薄い。私は生まれつき、体に関するほぼ全ての物に色素がほとんどないので、人よりも肌や瞳が日の光に弱く、少しの紫外線が当たるだけで肌が腫れるを通り越して炎症を起こして焼け爛れたり、瞳が痛くなる。サングラスと日焼け止めは人類の中でも最も優れた発明品なのではないだろうか。……まぁ、そんな私は直接強い日光に当たると、人よりも直ぐにぶっ倒れそうになるので影にいるだけで大分楽なのだ。これだけは、地下の街で少しばかり得したのかなと思わないでもない………ないのだが此処は異世界である。
こんな事を他人に言えば、可哀想なものを見る目でお前、頭がおかしくなったの?と聞かれそうだが、本当にここは異世界なのだ。死にたい。
何が悲しくて
しかも、この世界可笑しい。話す言語はドイツ語のくせに書き言葉は日本語の五十音っぽい摩訶不思議きまわりない文字だし……この年で言語習得とかキツイんだぞ。なんなんだこの食い違いは、気持ちわる!!
だが、こんな風に踏んだり蹴ったりな目にあってはいるが、騎士や貴族の家に落ちなかっただけでも私は運が良かった方なんだろうなぁとも思う。
それは酷い目に会い過ぎての比較なのか一般と比べてなのかよくわからない事になっているが私の感想でもあった。
あんなところに落っこちたら問答無用で牢屋行きだ。絶対に、私の話なんか聞いてくれないぞ。
ある意味、アスピオという研究以外どうでもいいという人種が多く生息する街だから、私の様な異邦人(この世界の常識や一般教養、国の生まれでないという意味で)が、あまり視線を集めずになじみこめているのだから、救いはあるのだろう、きっと、多分、メイビー。そんなことを私が思う程度には……研究機関に所属し、アスピオという街に住む研究者でもあり、そして何よりもここの家主であるリタから聞いた、騎士団とか貴族の話は酷いものだった。身分というものが強固に存在する世界であるらしいよ、私の落っこちた異世界とやらは――――故に、貴族や騎士の住む貴族街や城に落っこちてたら終わってた。運がいいのか悪いのか。少なくとも悪運だけはあるらしい。
空中からアクロバット落下の後に屋根を突き破って部屋の中に侵入とか、中世的な価値観のあるこの世界ならいきなり斬首されても仕方がなくなる様な登場だった。ぞっとするわ。意味わからん間に処刑とか笑えん。
それなら、ここに落ちたのは最高に近い物であると思う。少なくとも状況を理解してくれる人間がいるのはありがたい事だ……そう思わなければ、ぶっちゃけやっていけないし挫ける。ただでさえ、めげそうなのにこれ以上追い詰められてたまるものか。だが、私を叩き落とした元凶と、この世で空中ジャンプなんてもの考えたやつは地獄に落ちればイイと思ってる。ドリフのお約束じゃあないんだからさぁ……需要なんてねーよ。嫌なもんは嫌で。嫌いなもんは嫌いである。リタの前に落っこちた時、痛みよりも恐怖で吐きそうだった。吐かなかったけど、其れくらい私にとっては恐怖体験だった。帰る時にあれが必要だと言われたら、多分泣く。
まぁ、そんなあれこれがあった中で、発見者とお互いの認識のすり合わせを行ったのだが一体全体、どういうことなんだろう。魔法がある時点で頭おかしいんじゃねーのと思ってたけど国の成り立ちもおかしかった。普通に大陸もあるくせに国が実質一つしかないっておかしいだろ。ローマ帝国時代でも植民地みたいな扱いとはいえ、便宜的に国を名乗れる土地が幾つかあったっていうのに。
そのせいで第一前提から教えられた結果、この国は一つしか国がないので二つの祖国を持つというのは珍しいものであるらしい。というか、他の人間には絶対に言うなと厳命された。異世界からの人間なんてサンプルにされる危険性しかないと。魔術は無いが、科学が発展している不可思議な世界の一員だとバレたら、この世界の人権なんて異世界人にはないといいきられると、強く忠告された。
何それ……異世界怖い。何でこうなったんだ。
私は、ハーフだが国籍はドイツで一般人。
……容姿の色合い自体は、北欧人ならそれなりにいるだろうがハーフの私が持っているのは珍しい部類に入るだろうと自覚してる。
だが、それ以外は普通の高校一年な留学生だぞ!!
ヤーパンの漫画やゲームみたいに、影で暗躍したり、ヤンキーのチームとかを率いてたりしていない。いなかったのに、これである。泣いても許される所業だ。
神よ、やはり貴方は出来るだけ惨たらしく死ぬがいい。
そんなことを考えたのだが幸いかな……私は先天的に色素薄い、ドイツ人であった父に似ているために彫りの深いというか、東洋人よりも目鼻立ちのはっきりとした顔立ちをしている。日本人が想像するところの典型的なドイツ人、みたいな感じというのだろうか。そして、それがこちらの世界の人間の容貌に近いものだったのだ。色んな意味でセーフである。これでヤーパンの人間である母に似てたら、明らかに周囲から浮くところだった。周囲から浮くってめちゃくちゃ目立つから、出来るだけ避けたいことである。私は髪の艶や肌の滑らかさなどは母に似たが一番に受け継ぐ筈のコーカソイドの母親の色は受け継いでいない、それは私が生まれつき色素が薄いからだ。
それが人目を集める以外で初めて好転を呼びこんだ。この国の人間の特徴を聞いて、ガッツポーズを決めたい気分になったのは言うまでもない。この世界になじむ上での欠点が一つ潰れたのは歓迎すべきところだった。
だが、私は色素以外の特筆事項なんて護身術と楽器演奏以外に思い浮かばない。この世界ではどちらもあまり役に多々なそうな気配がしてならない。護身術というが護身術習うよりも不審者に対してはベルをならして、物を投げつけた方が安全だと師範が言ってた。……よりにもよって、あんたが言うのかという気分になったが、それもそうだろうなぁとも思う。男女の差はそれだけ大きい。私が習ってた奴は何故だかテコンドー的な動きがあるが一応は空手で、拳の届く位置まで距離を詰めるというのは中々恐ろしい。外したら終わりだ。
まぁ、私の護身術はイイとして本当になぜ、私なんだ。
オタクと分類される友人曰く、頭の中が御花畑の人間には異世界とやらに行きたがっている人間もいるらしいと聞くが何故、そいつらではなく私なんだ。別に行きたくもなかった異世界とか鬱になる。拒否権ぐらいよこせや、くそが。
そんなことを内心考えながらも、色々な説明をしてもらったのだがその結果、今までいた世界からファンタジーだけど現実な世界に移動したのだと理解してしまった。
それを知った時、その結論に落ち着いた時点でぶっ倒れたかった。
理論的にあり得ないだろう。
私は白いポケットを持った青猫狸ではないのだ。
あり得無い事はあり得無いと言い切れるほど達観した人間でもなかったのだ。
神に問う、常識とは何ぞや。
秩序とは如何なものか。
貴方がすくうのは足元だけなのか。
そうであるのならば地獄へ落ちろ、くそったれ!! 心中で神に唾を吐きかけると言うか、嘆きを叫んだというか、憎悪の芽生えを感じたというか何と言うか。ファッキュー、聖四文字。
ところで、私は生真面目なタイプであると言われるが、ぶっちゃけ面倒な事は大嫌いだ。嫌いな事をしたく無いから真面目に行動して早く終わらせるだけだ。傍からは面倒見が良くて朗らかに見えるらしいけど、実際は表情が硬いから文句言ってくる奴等の多い人付き合いなんて苦手だし、性格なんて外面は良くても内面が鬱々としてるし、些細な事も引きずるし、私は絶対に主人公気質なタイプではない。どちらかというと策士とか、何もかも全て知っているけど本筋にまったく絡んでこない主人公の友人Eぐらいのポジションだと自分では思う。
それなのに、何故こんな目に。
僅かに熱を持ち、潤んでくるこの目は気のせいだ。
神よ、…とりあえず死ね!出来るだけ酷く死ね!
そうやって、現実逃避したのは何カ月か前の話。
一悶着あって、どうにかなった挙句に、結局は落っこちた先のアスピオのリタの家に何とか置いてもらえることになった。年下の女の子と一つ屋根のした。字面はいい。
しかし、糞気まずい。
何かの小説にあった話だと思うが別にその話の様にラブコメやらと、ハプニングがあるわけではないのだ。同じ屋根の下とはいえ、お互いに距離を図り兼ねている要素が多大に含まれている関係だったのだから。
あくまで、リタが私を保護したのも自分の実験のせいだという義務を感じたからで、私がそれにすり寄ったからでしかないのだ。
それで、識字が出来なければ働けないというか、この学術都市で文字が読めないとしれたら目も当てられないと文字の勉強を中心に行いつつ、魔術の勉強(この世界には魔法があった!ありえない!!)をかじり、家事をしていた。
少しは距離が縮まった様な気はするがどうすればいいのか途方に暮れた。私にコミュニケーションを求めるなよ。
とりあえず、リタに聞けばどうにかなるので面倒を見つつ、質問を繰り返したりしてた。
しかし、それもとある問題に気づくまでのことだった。
私が来たせいで生活に困りはじめているリタの姿を見て、一念発起するしかないと背中に冷や汗を流しながら悟った。年下の女の子にお金たかるとかヒモよりたちが悪い!!カッコ悪い!!私はニートにはならない、絶対にだ!!
そんなことを悩んでいると何故かこの世界に来て身体能力が格段に上昇していたことに気づいたので(仮説として重力の負荷があげられる)、近所に住んでいてリタの面倒を見てる後見人であり、有名な元傭兵だったらしいギペル爺に三日三晩かけて土下座した。というか、あれは根気がちだった気がする。ほぼ泣き落としに近い形でしぶしぶ許しを貰い、弟子入りをした。
そしたら、鬼か何かのように傭兵として戦い方を仕込まれた。生活の仕方というかサバイバル方法も仕込まれた。
蛇の食べ方とか知りたくない。
テントの張り方は教えてくれてありがとう。
死ぬかと思ったのはもう数えきれない。
ギペル師匠、超怖い。容赦ない。鬼上官にしか見えない。
背後に鬼が見える。
師匠の剣で何度か死にかけたのに、続行した。
ムカつく気持ちの方がでかくて、食いついた。
だけど、さ。右側、眼帯なのに死角なしって可笑しいよね!? 誰かそうだと言ってくれ!!
そんな死ぬほど怖い修行。
そのおかげで、まぁ結界の外に出てもそう簡単には死なないだろう、とお墨付きをもらうくらいには(強制的に)成長し、それをリタに報告するとなんだか複雑そうな目で見られた。困ってるんだろうか、心配なんだろうか。
手がボロボロになったのを見られてたから困る。
そんな目で見られても働かないとご飯が食べれない。
今まで通りに暮らしていけないのは事実なので、しぶしぶ承諾してくれました。
ただし、条件をつけられた。
それは一つだけだけど、仕方ないと思った。
それは傭兵とかそういう仕事するなら男のふりをすること。所謂男装をして傭兵になれって言われた。
………なんで?って聞いたら、異世界人の世間知らずが女一人で傭兵なんて危ないでしょうが!!と叱られた。
年齢は私の方が上なのにリタの方がしっかりしてる。
平和ボケしてる年上よりも生まれた時からこちら生まれの人間の方が危機感はあるって事だったがなんか、釈然としない。
ギペル師匠にもそうしろと言われたので、結局基本的に男装をする事になった。
最初は何で男装なんだと思っていたのだけど、やべぇ、胸をさらしで潰すのなんてこんなに動きやすいの始めてだ。
圧迫感が多少あるけど、胸がないから超動きやすい。
ジャンプしても胸が痛くないのが素晴らしい。肩も軽い。
締めつけるのは少し辛いけど、それを差し引いても動きやすい。
しかし、そんな私が着てるのは最初に落ちて来た時に着せられてた某国擬人化の一人楽しすぎるぜ!!な国の公国時の服装だった。あれ?なんだろう、思いがけない所から攻撃喰らった気分。泣きそう。どうしてこうなる。いや、あっちに残してきた友人を偲ぶ|縁≪よすが≫にはなるけれど……え? 気を使ってくれた?………ワタシコウイウノダイスキダヨー。ははっ、―――――――死にそう。
あれよりも丈夫にアレンジされてる。
しかし、ファンタジーRPGの
でも思わず、遠い目で何故に、とぼやいたら、こういう格好好きなんでしょう?と聞かれて答えられなかった。
いえ、友達の趣味ですなんて答えられたらどんなに楽なんだろうか。
しかし、私はつくづく男っぽいのかもしれない。少なくとも中性的な顔立ちで体躯なのかもしれない。……同じ年の女性や男の平均以上に身長高いし、声も低めなので、胸をさらしで潰して、服で身体のラインを隠せば、あら不思議。鏡に映っていたのは銀の髪に鋭い目をした青年でした。……うん。似てるとは散々言われてたし、色々演劇狂いの友達に仕込まれたせいもあって無駄に完璧に近い知識は叩き込まれて、演技は出来るけどさ。二次元のキャラクターに似ているって何なんだよと、へこんだ私がいたのは内緒です。
首元を隠す為か、詰襟の様になっている白シャツが覗く、襟。ケープの様な形状になっているせいで、肩の薄さと小ささを隠す作り。全体的にかっちりとしたデザインの黒い、服。首から掲げるのは私物だった銀の十字。
耳を飾るのは、師匠に頂いた十字の中央にはめ込まれた
そんな服を着た青年は、ギルベルト・ベルンシュタイン、と名づけられました。
私の名前、ギルべルティーナの男性名だからという理由。
後、名前を変えると呼びかける時に言い換えるのが面倒らしいです。愛称で統一された名前をつけられました。それは道理にかなっているし、確かにそうですけど、それはそれでへこむ。なんだろうこのやるせない感。知らないはずなのに何で!!と驚愕したのは此処だけの話です。
私は、普憫じゃないからなぁぁぁぁぁ!!
「!!」
叫んだ所で、目が覚める。
どうやら夢を見ていたらしい。
どうしようもない泣きたくなるような事実の夢である。
くそう、鬱だ。
何故、こんなにあり得ない事なのに嘘じゃないんだ。
壁にもたれかかって寝ていた為に凝り固まった身体を伸ばす。バキベキゴキと身体にありえない音がでた。
うおう、ちょっと自分に引きつつ、軽いストレッチをしてから傍らに立てかけていた剣をベルトに引っ掛けるように腰に差し込む。ブーツのつま先を床に打ち付けるようにして、底に仕込んだ隠しナイフが外れてないかを確認する。
そして他にも仕込んだ武器や道具、それらの一通りの確認をして、一息つく。壁際に畳んでいた砂よけ風よけの為に使う薄手の外套を肩に引っ掛け、立ち上がった。
すると、ドアの陰から
「ギルベルト」
そこには、紅茶色の目をした、メアリー・カウフマン。
見事なソプラノの美声。個人的には好ましいと思える女性らしい柔らかい声をかけられる。
朗らかなそれは、美しい彼女によくにあっていた。
「今日で契約は終わりだ。報酬を」
「やっぱり、私のギルドに入る気はない?」
「悪ぃな。今の所ギルドに興味がねえんだ」
そう、口角をあげて告げる。
成り切って答えを告げる。
少しばかり粗が見えそうなのはご愛嬌というやつだ。
すると、カウフマンは残念そうに眉を下げて微笑んだ。
美人ってこんな顔をしても美人だから得だと思う。
その美しい横顔をなんとも言えずにじいと見つめてしまう。
「そう、残念だわ。名が上がり始めてる僧衣の騎士を雇えないんて」
「“僧衣の騎士”?」
「あら、貴方が知らないなんて、ね。でも、いいわ。教えてあげる。それは……貴方の異名よ、ギルベルト・ベルンシュタイン。ふらりと現れ、助けてくれる銀髪の剣士。……貴方がついこの間、メイベリーの令嬢を助けた時、お礼の言葉だけ貰えれば結構ですとか言って報酬もお礼も貰わなかったからかしら、騎士よりも清廉な人柄の傭兵として、結構な噂があちこちの都市で流れてるわよ」
悪戯っぽく微笑む顔が美しい。
これにヤラレル男はそれこそ星の数ほどいるだろう。
ぼんやりとそんな事を考えて、
「馬鹿か、俺はそんなんじゃねぇよ」
わざと、特徴的な笑い声を出す。それこそ、あいつの様に成り切る。……ケセセと苦笑いしながら告げる。
ブーツも服も外套も変わりなし。
よし、何時でも結界の外に出ても問題がない。
「貴方はそう思ってるけど、そうじゃない人達もいるってことよ」
そのまま、カウフマンの脇を通り抜ける。
カウフマンも苦い顔だ。
「知らねぇよ。俺は俺の思うがままに生きるだけだ」
「まぁ、これは忠告。貴方が極悪人を捕まえ歩いてるせいで騎士団の貴族が動いてるらしいわ」
「何でまた?」
「面子をつぶされたから、だそうよ」
めんどくさいな、そんな表情が表に出てたんだろう。
カウフマンは苦い顔だ。
それをあえて無視をして、ひらっと手をあげる。
「ご忠告ありがとうよ」
開け放った扉からは陽光と風が吹き込んでくる。
それに目を細めながら、外への道を踏み出した。
異世界からやってきた少女ギルべルティーナ・ベルンシュタインもとい、傭兵ギルベルト・ベルンシュタインの非日常はこの様に廻っていくのだ。
男口調なのは、いろんな事を隠す為だよ!!なお、この演技は自分が傭兵をやる上で使いやすい人格を作り出しているだけである。