銀の剣士は旅に出る   作:リード@

13 / 15
物凄い間が空いてしまいましたが、生きてます。


13話 理不尽は歩いてやってくる

 

 

「武闘大会のお知らせ………?」

 

 

差し出されたのは二色刷りのチラシを読み上げる。

それは、ノードポリカを本拠地にする戦士の殿堂(パレストラーレ)

この国唯一にして最大の闘技場を持つギルドの紋章が押された正式なもの。賞金額やルールなどが細かく記された紙面には『汝ら、剣をもって最強を証明せよ』とうたい文句が記載されている。

 

 

「おう。ノードポリカの一大行事。賞金額が一番でけえ、年に一度のお祭りだ」

「……俺とギルが一緒に居る時に声かけて来たってことはお前……」

「察しがいいな、ドンの孫」

 

眉をしかめるハリーをよそに、ザギはニンマリと笑う。

嫌な予感が胸をよぎる。

あ、これ、あかんやつや。

 

「3人から参加の団体戦。一対一での決闘よりも賞金が高い。一人頭で割っても、儲かるだろ?」

 

咄嗟に逃げようとしたハリーの腕を引っつかんだ。

自分でもらしくないほど力を込めて、腕を引く。

 

「ギル、テメェ………」

「よし、三人参加だ。賞金は山分けな」

「そうこなくっちゃあ!!」

 

赤毛の男が快哉を鳴らす。腕を引いて引き留めた少年は凄まじい目つきで此方をねめつけているが気にしない。一人で逃げようとした方が悪いのだ。毒食うなら皿までの精神で行こう。それはそれで道ずれ(イケニエ)は捕まえるがなぁ………!! 無理やり腕を引いたせいで樽のようなグラスが床に落ちたが、気にしない。そのまま、全力で逃げようとしたハリーの腕にしがみつきながら、スツールに腰を落とす。

 

 

「俺は関係ないだろ……ッ!?」

 

うん。そりゃあ、そうだと私も思う。

だけど、お前、この男から逃げられると思ってんの?

人ん家に勝手に上がり込んで、喧嘩を売りに来るような男だぞ?

此処に居たのが悪い。

 

 

「……ごめん、諦めろ(お前も一緒に死ぬんだよ)!!」

「おい、今絶対。何か違う事、言っただろ、てめぇ!!」

 

 

そんな漫才じみたことをしている私たちをしり目に赤毛の男は意地悪く大笑いしている。

笑いすぎて、ひぃひぃ、言っているのだからこいつも変人だ。

 

「よし、じゃあ、この三人で参加でいいな」

 

笑いすぎて目の端に浮かんだ涙を拭いながら赤毛の男は口を開く。

そして、懐から白い紙を取り出した。

 

「代表はドンの孫に任せる。んで、ギルベルト、てめえが副将。俺が一兵卒な」

 

私たちが騒いでいる間にだろう、スカートの可愛らしい店員さんに頼んで、インク壺と羽ペンまで持ってきてもらっていた。スラスラと見かけによらず丁寧な筆跡で、参加者名簿らしき紙に名前を記入していく。

 

 

「チーム名は適当に決めとく。短い間だが、よろしくな」

 

 

最早、諦めたように力を抜いたハリーと、此方も微妙な顔をした私を見ながら赤毛の男はおどけた様に告げる。一応、後で確り謝っておこうと心に決めながら、私はハリーの黙りこくった横顔を見つめた。

長い睫が揺れる。懐に紙とチラシを収める男を見ながら、ようやくハリーが口を開いた。

 

 

「……ついでに、なんで俺だったわけ?」

「俺もこいつも友達いないからな」

「――――――あぁ、そっか。ならしかたねーわ」

 

……おい、ちょっとまて。

今度は私が、思い切り苦い顔をする番だった。

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

スタジアムの中で、さざ波のように反響する歓声の渦の中心で、ギルはそっと目を伏せた。経っているのは自分を含めた三人だけ。これはチーム戦であったから、自分達こそが勝者だった。折れた槍、燃えた大地、砕けた鎧や切り裂かれた布地、柱には矢が突き刺さり、決戦後と言うにふさわしい光景の中に自分たちは居る。

 

耳朶を打つ歓声、人々の活気に満ち溢れた声。

自身の名とチームメイトの名を呼ぶ声。私たちに浴びせられるのは、勝ち取った勝利に対する賞賛と栄誉だった。

確かに人からの賞賛というものは心地のいいものだけど、借金返済の為というしょっぱい理由がある人間がこれを受け取っていいのかと考えると頭が痛い。

栄えある勝利を穢したのではないかとか、心臓がずきずきと痛む……私は小心者なのだ。ギルベルトと名乗(仮面を被)って居る時なら兎も角、一度冷静になった時は目も当てられない。

これ、知られたら怒られるんじゃないかと冷や汗が流れている。

 

 

「勝ったな、ギル!!」

「勝った、……うん、勝った」

 

バンバンと肩を叩いてくるハリーの顔が良く見られない。

満足そうな顔をしている赤毛の男の顔もだ。

頭だけが冷静に冴えていく。

胸に宿るのは、頭の血が引いたことでやって来た冷静さにも似た感情だ。

やらかした後って冷静になるよね。これはそんな話である。

そんなことを私が考えている間に音律魔導器で拡張されたアナウンスが流れ始めた。

 

 

 

『勝者は、“三銃士”!! 初参戦したニューフェイスが優勝旗をもぎ取ったぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

「(や め ろ)」

 

かっと目を見開きそうになった。

いろいろあって、感情が混乱しているがこれに関してはやめてほしい。ただの、リングネームというかチームネームだと言われれば、それでおしまいだが、まって。ちょっと待ってほしい。

三銃士――王妃様の手紙を取り返しに異国に乗り込み務めを果たした騎士の名前。重い。なんでこれにしたんだ、あいつ。あれか、適当につけといてと丸投げした私が悪いのか。そもそも昔の恋人との手紙を取り返してきて!なんて頼むような王妃に仕えた騎士たちの話のタイトルを付けてどうすんだ。あれで許されてるのは“一人はみんなの為に、皆は一人の為に”という言葉位だと思うぞ。私的な意見だけどな!!

そもそも三銃士って名前しか知らない奴には三人組のように思われてるけどあれ四人組だからな。私ら、三人組だからな。三人組に追加で一名の人員が補充されて異国行きだから………追加メンバーがいつか来るのかそれとも私と俺を分割してカウントしているのか、あの赤毛の考えが読めない。

うんうん、唸っていると赤毛とハリーに頭を小突かれた。

 

――――勝ったからには、黙って胸を張っていろ。

 

 

そんなことらしい。

正直、よくわからない。

だけど、私にとってはよくわからなくてもこの世界の人らにとってはこの試合に勝った優勝者というのは讃えるべきもので、栄誉を与えられるものなのだろうということは理解できた。

後悔と、これからどうするかについては後で考えることにして、そっと顔を上げて、ささやかながらに胸を張る。

 

勝った事自体は嬉しいのだ。

ただ、借金の為にこんな試合に参加したのはどうなのかと思ってしまっているだけで――――まぁ、それは後で考えることにして、今は胸を黙ってはることにしよう。

 

確かに私たちは勝ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――だけど、“白銀の聖騎士”と“朱色の悪魔”、“碧眼の弓兵”はやめろ。非常に中二病くさい。

 

 

 

 

 




金がないなら、手に入れればいいBy赤毛の男(職業・無所属傭兵)


三人組は称号を手に入れたぞ()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。