変だったらお手数かもしれませんがちょっと教えてくださいお願いします。
リタ視点のみです。
あたしの目の前にいるのは、銀の髪に蒼の瞳をした端正な顔立ちの青年、――――そんな風に見える、どこか中性的に整った顔立ちをした女。
長身、細い体躯。たおやかな手足。正直、剣よりも楽器や何かの方が似合うような、奴。
そいつの名前はギルべルティーナ・ミヅキ・ベルンシュタイン。
傭兵のギルベルト・ベルンシュタインとして最近名前が売れてきた傭兵。
男装をしているけど、列記とした女だ。
黒い色をした、襟元や袖口までかっちり、と細身の程をなしていながら、腰から広がっていく裾がひらりとたなびく、僧衣の様な装束の傭兵。
伝説の傭兵であるギペル・クロイツウェーグの愛弟子にして、孫ということになっている奴。私の義理の家族みたいな扱いをアスピオでは受けていた。
最近では、何故か野党に襲われてたメイベリーの末娘を助けたら、その末娘に気に入られて専属の騎士にさせられそうになって、慌ててここまで逃げ出して来た奴。
面倒事が嫌いなのに面倒事の方が勝手に奴に向かって駆けていくトラブルメーカー。
クロイツウェーグの若当主にも気にいらた。そして、その当主と顔が似てるらしい。……面倒事しか来ないわね。
付け刃とは言えど、剣や魔法腕前は玄人はだしで、分かりにくいが性格もいい。
普通にモテる奴。女にも男にも。あいつに言ったら、全力で逃げたけど。
……自分で言っておきながらあれだけど、ここまで化けるとは思わなかった。
男所帯の傭兵の世界で傭兵として生計を立てて生きるといったあいつ。
異世界人である事も隠さなきゃいけないから、少しでもあいつ自身を探る事が出来ないように、と身の安全を図る為にとりあえず性別が違えば混乱するのだと判断して、男装をさせたけど、此処まで似合うだなんて思っていなかったのだ。
正直、はまりすぎててなんか違和感がないのが違和感って感じ。
傭兵姿のまま、綺麗に微笑めば、女のひとがころりと落ちるし、ドギマギする。
そんな感じのあり様になっている。
やりすぎた気がしないような気がしないでもない。
平均よりも大きそうな胸を隠すためにさらしをきつく巻いて、体型をごまかすために体のあちこちを布で巻いて、それに服を大き目の男ものに変える。そうすると、彫刻か彫像のよう硬質に整った容姿のせいで、男女の性差があまりない。違和感がないので、多少可笑しいなと相手が思っても気のせいだって言えば、すんなりと流せる。そんな顔立ちになるし、同年代の奴等と比べて細いけど高い背丈のせいか、やや鋭い目つきの端正な顔立ちの青年にしか見えない。身長とバランスがいい、細い手が映える。
服装のせいで性別不詳の人間にしか見えなくなる。
見えなくなるのだけど、姿を変えるたびに、普段の性格はがらっと変えて、声色は少し低めに仕上げるのだから恐れ入る。
完璧に、青年に化ける為に此処まで手を加えるんだから、演技魂の塊だと言っても過言ではないの。
青年期になっても淡いままの、冷たい色合いの銀の髪。
そして透明に近いまでに透き通りすぎて、冷たく見えるアイスブルーの瞳。
雪の様に白く、磁器の様に滑らかな白磁の肌。
理知的な光を帯びて、彫刻の様に整い、硬質な美しさを持つ顔。
男装している時の口調は本人の気質からしれないけど、おちゃらける時はあれど基本的に温厚で真面目。あと、レディファーストを徹底させる手腕。
それに、結構真面目な性格と来たものだから……たいそうな人気がある人物になってしまった。本人の意思に関係なく、押し上げられてしまった。
あんたに、あのギペルじいさんについていける剣の腕も相まってアスピオの若い子にファンクラブができたと話したら、引き攣った顔をした。
頭が痛いとでも言いたげな苦い顔を思い出すと此方も違い気持ちになる。
あー、あんたそういうの苦手そうだものねと言ったら。
だったら、今すぐに私なんか追っかけるのを止めるように説得してくれと頼まれた。
真顔で。
真剣に。
座った青い目で、心の底から頼まれた。
いや。だって怖いわよ、あの空間。
そう言って断ったら、肩を落として、がっくりとした体制になった。
そのあとにもう、いいや。それよりも何食べたい?と尋ねられた。
そのことについて、今は気にしないことを決めたらしい。
というよりも、今は気にしたくないの間違いかしら?
そうして台所に歩いて行ったギルの後姿を見ながら、過去に思いを馳せた。
少しだけ、昔の事を考える。
するとこうしてギルが台所で料理したり、暮らしているのは信じられないことだと思う。
第一印象は何て言うか凄かったの一言でしか表わせない。
何とも言えない、アクロバティック落下だったから、印象は正直悪かったのだ。
屋根を突き破って落ちて来て、意識のある状況で絶叫されたら、第一印象は最悪だ。
そもそも最初の出会いからして、神のいたずらとしか言えないような偶然の連続で、双方にとって絶対にありえないことの類だった。
そうだからだろうか、気まずさしか感じ無かった。
なんせ異世界の人間、神様を信じていないあたし。
向こうも知らない場所に一瞬で移動したことに呆けてた。
新しく作った魔法陣が発動していなかったら私は信じられなかったと思う。
向こうだって、まともな会話は出来なかっただろう。
その状況で、出会ったのにこの状況まで打ち解けられた自分は本当にすごいと思う。
あいつ、不器用なのに年下に関しては意外とコミュニケーション能力が高かったのだ。
大体、あたしがあの銀色が異世界とか違う文化圏から来た、という話。
そんな荒唐無稽な話を信じれたのは、あれが咄嗟につかんだという鞄に入っていた“けーたい”やら“ウォークマン”とやらを見せられたからだ。
テルカ・リュミレースではまだ有り得ない資源と技術を使ってできた携帯できる機械。
それはオーバーテクノロジーに値する代物で、今の技術、科学では作れないものだった。
落下して来たのは、ギルべルティーナ・ミヅキ・ベルンシュタインと名乗った一人の女。
ドイツのバイエルンと呼ばれる地方で生まれ、短期留学中でニホンという島国にいたという16歳の学生。行くあてがないと言ったその横顔を見て、話しを聞いてしまったあたしはそいつを家に引き取った。
断じてほだされたとかじゃない。
ただ、持ってる機材に興味があったからそれだけだった。
少なくとも、最初は同情もあったのだ。
一緒に暮らし始めて、温かくておいしい料理を作ってくれて、部屋は凄く綺麗に整頓されていて、こういうのが家族っていうのと思った。
つらつらと、そんなこと思いながら、お返しに文字を教えてあげたり、魔術の理を話してあげると子供のように喜んだ。
魔法なんて私の世界にはない、と目を輝かせて私を質問攻めにしてきたのも覚えている。
そうして何週間か暮らしているうちに、あたしが家計で悩んでいたのを知って、ギルが武器を取る道を選んだのも知っている。
ほっそりとして、何処までも白い綺麗な手。
それに武器を持つようになって、肉刺を何度もつぶし、前よりも無骨になったのも知っている。
辛い時ですら、いつものように軽く笑って、笑顔で隠して本心をなかなか見せない。
働くようになった理由だって、年下の子にずっと頼りっぱなしってのはねぇと笑ってた。
けど、それだけであんなに頑張れるものなのか、私にはわからない。
表向きは帰る方法を探すためらしい。
それこそ、ありえない。
稼いだお金はほとんど家に入れてる癖に。
馬鹿じゃない?
そう、思ってたのに。
気づいたら人の心の中に入り込んでいて、笑顔をくれた。
頭をなでてくれた。
欲しかった言葉をくれた。
わけが分からない。
しかも、元傭兵のギペルじいさんに
今ならあたしとあんた、二人分くらいなら賄えるのに。
そこまで、思った所で声をかけられる。
「リタ。お皿出して、ご飯で来たから」
「ん、分かった」
それでも、世界は回ってる。
いやようなく、あたしとギルの時計の秒針が進むのである。
「いただきます」
「おう、温かい内に食べなさいよ。いただきます」
こんなのが、嬉しいと思ったのなんて絶対に言ってあげない。
だって、自分だけが一喜一憂するなんて癪じゃない。
リタって、ほぼ一人で生活してきたわけだから根本的には家族愛的なものに飢えてそう。
誰かがずっと一緒にいてくれた訳じゃないから一緒にいたらどうしたらいいか分からないとかもありそう。
ギルとリタ。完璧にではないけど多少は打ち解けてきた頃の話。
ぎこちなく、見てる方がはらはらしながら見守るような義家族関係。
あと、リタがギルの前で本を読みながら物を食べないのは、ギルが怒って凄いことになったからです。