なのに、完璧に爺と孫の話になってる。
オリジナル路線を突っ走る話になりそうです。
まだ、主人公の壊れっぷりは出てきてませんがそのうちひょっこり何のリアクションもない状況で出てくる予定です。
最初は、気まぐれだった。
泣きそうな顔で頭を下げてくる銀色の子供が必死だったから。
いつか壊れてしまうんじゃないかと感じるほど切実な声だったからなのかもしれない。
だが、最初に剣を教えてやろうと思った理由は、どこか昔の自分に似ていたからだ。
青臭く、どこまでも愚直に馬鹿な様子が過去の記憶を刺激したからだったのだ。
そう、本当にそれだけの些細なこと。
馬鹿みたいに簡単な事実。
それだけの理由と自分の気まぐれでこいつに剣を教え込んだ。
俺に教えれる全ての事で持ってして、鍛えて、教えて、骨の隋にまで染み付くほどに様々な事を叩き込んだ。それはサバイバル術であったり、魔術の行使の仕方であったり、体術の事であったり、馬術であったりもした。
魔物の解体の仕方まで短期間で身につけたのは其れなりに弟子も必死だったという事だろう。
何度も血反吐を吐き、蹲り、叫んでも、絶対に足を止めなかった。
意地、だけで走り続けているのだと思う。
自覚してるのかは、知らないが。
そんな事を考えながら剣を構えて対峙する弟子の姿を見て、それにしても、見れば見るほどあの人にそっくりだと、嘆息する。
少し癖のある銀の髪も、意思の強そうな瞳も、それでいてどこか柔らげな目元も、凛々しく整った鼻梁も、硬く結ばれた唇も、どこか似ている。瓜二つと言ってもいいほどに。
唯一違うのは目の色だけだ。
この餓鬼は透き通るような薄い青色だが、あの人はこの世のものとは思えないぐらい綺麗な紅色だった。
はっとするほど白い肌と硬質な顔立ち。
整っているが故に、恐ろしく冷たく見える容姿もとても似ている。
だが、性別が違う。
あの人は男でこいつは女。
武器を持ったことのない人間。
あの人は俺に剣を教えてくれた人間。
それだけの違いがあった。
だが、それ以外はまるっきり同じだと思った。
それに、あの事件の後から俺はもう、剣を持つことはないと誓っていた。
そうだったのに。
何故だかわからないが、懸命に俺に頭を下げてくる姿が昔、あの人に教えを請うた若き日の自分の姿に重なった。
―――壁に立て掛けた剣を掴んだのは、ただ、それだけの理由だった。
それなのに。
教えることは楽しかった。
水を吸うスポンジの様に全ての事を
こうも個人に入れ込み鍛え続けた自分の技を、心を、剣を、何処までも教え込んでもいいと思える。
そんな人間に出会えるとは、………長い人生を生きている自分だからこそ、この出会いは運命だったと言いきれる。
人生とは時々、神様のイタズラに出会うものだ。
こんな愉快なものがいるからこそ人生は素晴らしく痛快で面白いのだ!!
そんなことを考えていると、し掛けてこない俺にしびれを切らしたのか弟子が突っ込んで来た。
待つことも、教えただろうに。
待つよりも突っ込む方がいいと思ったのか土を蹴飛ばして、滑る様に斬りこんでくる。
握ったことは無かったと自己申告した剣の動きはともかく、足の使い方は熟練じみて上手い。剣の動きも、まぁ最初に比べれば及第点だ。
フットワークと組み合わせればだいたいの奴には通用するだろう。
ガィイン!!
剣と剣が合わさり刀身を削り、火花が散る。
何度か交錯しただけなのに腕がしびれることに舌打ちをする。
馬鹿力が、あの細腕にどんな力が加わってるってんだ!!畜生が!!
力を利用して、クルリと切っ先を回し、迫ってくる剣をいなし、何度か剣を交差させるように打ち合う。錆びた音を、聞きながら、拳を鳩尾に叩き込んだ。
柔らかい、腹の肉が俺の拳に当たる。
ヒュッと息を飲む音が、やけにはっきりと聞こえた。
「っ!!」
呼吸が一瞬固まり、それによって固まった身体を間髪いれずに地面に叩きつけ、そのまま起き上がろうとする餓鬼の首筋に剣を添える。
「まだまだだなギルべルティーナ」
「………ギペル師匠」
肺のあたりに手を当て、息を乱しながら地面にぶっ倒れた弟子に手を貸す。
そして、上体を起こしながらぼやく弟子の声を聞いた。
どこまでも、しんどそうな。
けれども、どこか真っ直ぐとした声が響く。
「あなた本気で、容赦ないですよね……」
「手加減してもらいたいのか?」
そうからかうように笑えば、弟子というよりも孫のような歳の弟子は、整った顔を僅かに引きつらせ、地味に眉間に皺を刻んだ。
こいつは結構負けず嫌いなのだ。
そして、膝を抱え込んで屈んだような姿勢から、ぽつりと落とすように口を開いた。
「それは、嫌です」
どこまでも、不愉快そうに。
そんなことなんて不快だと言いたげな、不機嫌ここに極まりみたいな顔をしてぼやいた。
死にそうな顔色。いつも白い頬は青白くなっている。
目尻だって震えていた。
なのに言っていることは一端で、どこまでも真剣な眼差しをしていた。
それに吹き出しそうになりながら言葉を紡ぐ。
「だろうな」
そして不機嫌そうにぼやく弟子の頭をなでる。
ちょうどいい高さにあったそれは、クシャリとした音をたて、俺の耳にそれを伝えた。
癖が僅かにあるくせに、その銀の髪は見かけよりも柔らかく艶やかだ。
触り心地がよく、思い切り撫で回すと。
ぺしりと。
よわよわしい力ではたき落とされた。
その手は弟子の手で、酷く不機嫌そうだ。
「こんなことしないで下さいよ……」
俺のせいで乱れた銀の髪を、大雑把にだが手早く手櫛で直し、零す弟子。
わざとぶっきらぼうに告げている。
そうとわかったのはその言葉が照れ隠しだと気付けたのは若かったころの自分にも通ずるものがあったからだろうか。
運動のせいか、其れとも照れているのか、ようやく悪かった顔色は薄っすらと朱色を帯びた頬と首筋が見える。
それを視界の中に収めて、くくっと喉の奥で笑い。
俺は、もう一つしかない目を細める。
それを見た弟子が顔を歪めたのが見えた。
リアルに嫌そうな顔である。
「……その、笑い方止めてくれません」
心底不愉快です、と苦々しく零す弟子。
図星だったのだろうか、目元が赤い。
目で見て、確認できるほどに。
その姿がますます昔の自分に重なる。
それに気を良くして、にやりと笑う。
「いーやーだ」
にやにや笑いながら告げる俺。
それにイラッとしたのか俺にからかわれてるのを自覚しているからか、弟子はいつも少し血色が悪いと感じる程に白い顔を赤くして、言葉を荒げる。
「ああ、もう!!貴方は餓鬼ですか!?少なくとも私よりも年上の癖に!!」
大人びてるのに、綺麗な容姿の少女が珍しく年相応の対応をする。
それは、こんなにも可愛らしく見えるのかと新たな発見をしながらも、微笑ましい様子になんとなしにほわりとする。
キー、キーと困ったように喚く声。
それも、照れ隠しだと知っていると小動物、特に子猫のように聞こえるから不思議なものだ。
「あー、もう可愛いな畜生!!」
ガシッと頭を抱え込む(ヘッドロックか?)ように、頭を固定するとガシガシと頭を撫でる。
「ー!?」
ぎょっとしたように逃げようとする弟子を抱え込みさらに撫でる。
あーもう、何だろうこの心地。
多分、俺に孫がいたらこんな感じなんだろうなと思いつつ、思いっきり可愛がる。
ぜーぜーと息を乱すこいつを見て、こいつを戸籍上の孫にしてよかったなぁと地味に思った今日この頃。
もうちょいしたら、旅に出させてとあるキャラに逢わせたいです。
リタしか原作キャラが出ていないという恐怖!
ついでに、恐ろしい修行。超スパルタなのに弱音を吐かないのは、主人公の意地と矜持が高いことと、恐ろしいとか辛いと思う感情、感覚が鈍く麻痺しているからです。
あと師匠ことギペル様の紹介。
ギペル・クロイツヴェーグ
隻眼の元傭兵。昔はドンやアイフリードと鎬をけずりあったこともある人物。
老人だから白髪。目の色は灰銀。老いても整っているキツメの顔立ち。
超強い。というよりも鬼。訓練、もとい修行はもっと容赦なくて鬼。