ポケットモンスター 拳 〜超強い俺の嫁とめちゃくちゃに弱い俺の話〜   作:おしゃべりデブ

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連続投稿月間 6日目 なんか続いてます。

そういや、この前書きにキャラ設定とか書いてくって言ってたよね?あかんわ、話の進行が遅すぎてキャラ設定出す暇もない。

僕の人生初ポケモンは実は赤緑なんすよね。
ちなみに自分が赤緑やってる時はダイパが流行ってました。
ゲームを買えない貧乏人間だったんでジャンクショップで格安で買ったゲームボーイで一生遊んでました。

あ、今回そこそこ長いです。



彼の過去

 

 

「......捨てられたんや......親に。」

 

 

「えっ......。」

 

 

彼のこぼしたたった一言のその言葉は、あまりにも残酷なものだった。

 

私はあまりにも非現実的な言葉に思わず言葉を失ってしまう。

 

彼はふぅっと一呼吸置くと、ぽつりぽつりと自分の過去について語り始めた。

 

「おれは多分、ふつーの家に生まれたんやと思う。どっかの街のふつーの家のふつーの子供。ふつーに遊んで、ふつーに飯食って、ふつーに怒られて、ふつーに寝て。なんて事ないふつーの人生を送るんやったんやと思う。」

 

彼はここでは無いどこか遠くを見ながら、自らの炎のように赤い髪をクシャと握り締める。

 

「......あの日までは。」

 

彼は、握りしめた手を離して、パチパチと火の粉を上げる焚き火に薪をくべる。

 

焚き火はパチパチと音を鳴らして、ゆらりと火を揺らめかせてから勢いを強め始めた。

 

「母ちゃんに頼まれて、おつかいしに行ったんや。......帰ってきたら、母ちゃんも父ちゃんも妹もおれが生まれた時からおるイーブイもおらんくなってた。ぐっちゃぐちゃになった部屋だけ残して。......どっか出かけてんのかなって思って、一人で待ってたんやけどな。......結局、2週間たっても誰も帰ってこーへんかった。」

 

彼は、ぽつりぽつりと苦しそうな顔で過去の話を語る。

 

私はただただそんな彼の顔を見つめること以外出来なかった。

 

「......その日な、おれの誕生日やってん。」

 

「っ!......そんな。」

 

思わず声が出てしまう。

 

「おつかいで買ったのも、母ちゃんが予約してくれてた...おれの誕生日ケーキやった。パーティーのキラキラした飾り付けの中、一人で食べるには大き過ぎるケーキと一人っきりのおれ。ははは、あれは傑作やったな。」

 

彼は乾いた笑い声を上げるが、私にはその姿が酷く痛々しく見えた。

 

「待ってたらおれも生きてるもんでな。腹が減るんや。大き過ぎるケーキを一人で食べて、無くなったらイーブイの食ってたポケモンフード食って、それも無くなったら水を飲んで誤魔化して、それでも腹が減るんやけど、おれは子供やったから金も持ってなくてな。結局、電気も水も全部止まっても母ちゃんらは帰ってこんかった。」

 

「......。」

 

「そんとき、感覚的にわかったんや。『あ、おれは捨てられたんやな』って、選ばれたのは妹とイーブイで、選ばれんかったおれは捨てられた。誕生日ケーキも手切れ金みたいなもんで、せめてもの詫びにとでも思ってたんちゃうかなって。」

 

「っ、そんなことはっ!!」

 

「ないとも言いきれんやろ?......何も言わんといきなりおらんくなったんや......おれの事を捨てた以外の答えが見つからん。」

 

彼のそんな言葉に反論しようとした。

 

......でも、言葉が思いつかなかった。

 

「そっからすぐの話やったな。あいつらが来たのは。」

 

「あいつら?」

 

「全身真っ黒な服きて、胸にデカデカと変な文字書いたオッサンらが勝手に家の中入ってきてな。おれのこととっ捕まえてなんやよう分からへんとこに連れていきよった。」

 

「それって...誘拐じゃないですか!」

 

「せやな、誘拐された。ほんで、なんやかんや色々されて気ぃ付いたら知らん街の路地裏で生活してた。」

 

「待ってください!話が掴めません!なんやかんや色々されたってなんですか!?」

 

「それがな〜、おれにもわからんのや。頭にモヤがかかったみたいにあそこでされたことの記憶だけはなんでか思い出せん。でも、ひとつ言えるのは路地裏での生活がいくらしんどくても、あそこに戻るのだけは死んでも嫌やったってことやな。記憶はないのに身体と心が拒絶しとる。」

 

パチパチと弾ける焚き火に、新しい薪をくべながら彼は一呼吸置いてまた続きを話し出す。

 

「おれがこの戦い方を編み出したんもそこでの生活が理由や。」

 

「......理由を聞いても?」

 

「......"弱肉強食"って知っとるか?まんまそれや。弱いやつは食いもんにされて、強いやつが踏みにじる。ただそれだけや。」

 

「......私も、よく知っています。弱い者は淘汰され、強い者だけが残る。勝負の世界では、当たり前のことです。」

 

私のその言葉を聞くと、彼はぽかんとした顔でこっちを見たあと吹き出した。

 

「...ぶっ!あははははははは!!」

 

「何がおかしいのですか!!」

 

思わず問い詰めると、彼は涙を拭いながらにひっと笑う。

 

「いや、まだまだ甘いなって思ってな。」

 

彼はそういうと笑った顔をすっと元に戻して、ゆっくりと語り出した。

 

 

 

 

「ほんまの弱肉強食ってのはな。......死ぬんや。人が。ポケモンが。」

 

 

 

彼がぽつりと呟いたその一言に私は...思わずゾッとした。

 

まるで、彼が本当に息絶えていく人やポケモンを見たことがあるような口振りで話すのだから。

 

「見たくないもんも山ほど見た。食いたくないもんもたらふく食った。それでも、生きるためにはそれしか無かったんや。」

 

彼は内に秘めた感情を抑え込むように、苦い顔をしたまま手に持った薪を固く握り締めて、焚き火の中に乱暴に突っ込んだ。

 

「とにかくなんでもかんでも口に詰め込んだ。がむしゃらに、無我夢中でな。腐ってようが汚れていようが、そうするしか腹を満たすことはできんかったから、そうするしか......生きる道が無かったからな。」

 

震える声で彼はなおも続ける。

 

「飢えて飢えて、親が...大人が憎くて悔しくて、それでもおれを置いて時間は進んで、明日はまた来る。腹は減るし血も流れる。盗んで、奪ってやっとありつけた飯。そうやって手に入れた飯も、おれよりも遥かにデカい大人に奪われる。ほんでまた...腹が減る。」

 

焚き火に乱暴に突っ込んだ薪を握ったまま彼は肩を震わせる。

 

「お前は知らんやろ?鉄パイプで意識が飛ぶまで殴られる痛みも、腐ったもん食って腹がひっくり返るような苦しみも、腹が減って眠ることすら出来ん夜も、雨に凍えて死を悟る瞬間も。」

 

彼の薪を握る手に段々と力が加わっていくのを感じる。

 

「おれよりもデカい大人が、武器を持って、本気で、殺す気でかかってくるねん。そんな中で生きるためには、壊すしか無い。おれよりもデカい大人を。強くならな死ぬんや。人は簡単に。」

 

彼の言葉が震える。

 

「おれは.....運が良かっただけや。たまたま喧嘩の才能があって、たまたま身体が丈夫やって、ホンマに死んでまう前にたまたま助かったんや。そんな幸運が長く続くわけない。だからおれは強くなった。殺されずに壊す戦い方を覚えた。誰にも食われんように、誰よりも生き抜くために。」

 

一つ一つの感情を噛み潰すように、苦しみを憎しみを吐き出すように。

 

「っ!?あなた、手が!?」

 

乱暴に突っ込んだ薪に炎が移り、握り締めた彼の手を炎が炙る。

 

それでも彼は手を離す素振りを見せない。

 

「強くなるしか無かったんや。生きるために。壊し方を覚えるしか無かったんや。生き抜くために。...そら、お前がおれに勝てるわけが無い。生き抜いた環境が違う。食って育ったもんが違う。見てきた世界が違う。...おれの強さはお前が望むような眩しいもんやない。汚らしく生き抜くためのドブネズミが編み出した狩りや。」

 

彼は淡々と呟く。

 

まるで熱さなんか感じてすらいないように。

 

「は、離しなさいっ!!」

 

私は慌てて彼の手から燃え盛る薪を叩き落とす。

 

「っ熱っ!」

 

叩き落とした際に飛び散った火の粉が手にかかり、思わず声が出てしまう。

 

「おいおい大丈夫か?気ぃつけろよ?」

 

彼は軽い口調で私が庇った手に触れる。

 

それよりも!

 

「あなた!手を見せなさい!」

 

私はさっきまで炎に炙られていた彼の手を取る。

 

彼はうおっと驚いた声を上げるが、私に敵意が無いことを感じ取ったのか、されるがままに手を差し出した。

 

私は彼の手をマジマジと見た。

 

驚くことに、炙られていたはずの彼の手には火傷はなかった。

 

「!?良かった。火傷になっていなくて。」

 

「言うたやろ?慣れてるって、向こうで...路地裏に住んでた時にゃ毎日やってたからな。慣れとんねん火の扱いは。」

 

彼はそんなことを言いつつも、私の元から手を引き離す。

 

彼の手には火傷はなかった。

 

でも、ずっと不思議に思っていたことが頭の中で繋がった。

 

それは、私が彼のお風呂に遭遇してしまった時に、彼の手に触れた時に、彼に連れられて山を登った時にも、手合わせの時にも感じていた違和感。

 

全身に残ったおびただしい数の痛々しい傷痕。

 

その小さな身体には似つかわしくない程の硬い硬い筋肉。

 

異常な程にゴツゴツと発達した手のひら。

 

手を握った時に感じた、まるで、岩のように硬質化した皮膚に、折れた骨をそのまま放置し続け歪な形で固まってしまったかのような歪んだ手の骨格。

 

その全ては壮絶な過去を生き抜いた結果、身についてしまったものだったのだ。

 

あぁ、身が竦む感覚とはこんな感じなんだろう。

 

私は...簡単に触れすぎたのだ。

 

想像を絶する程に過酷な、過酷というのもはばかられる暗い暗い深淵。

 

私は...甘かったのだ。

 

こんなにも、全身に傷痕が残り、骨格が歪み、皮膚が岩のように変化するほどの修羅場を乗り越えてきた彼に対して、私はなんと言った?

 

_____________________________________________________________________

 

『っ!!あなたに......あなたなんかには分かりませんよ!!才能に溢れ、努力なぞせずともそれほどの力を持つあなたには!!』

 

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なんて...なんてことを言ってしまったのだろう私は。

 

「......その、ごめんなさい。私、何も知らないのに、あんなことを言ってしまいました。......あなたの事を傷つけてしまいました。」

 

彼は落ち込む私を見かねたのか、頬をポリポリと掻きながらぱっと思い出したかのように、私の膝でいつの間にか眠っていたガーディを抱き抱えた。

 

「でもな!悪いことだけや無かったんやぞ!ほら、こいつ!【バディ】って言うんやけどな!こいつと出会ったのも路地裏やってん!出会った時から火ぃ吐けんかったんやけどな!めっちゃ足速いんやぞ!!食らいついたら絶対離さんしな!な!!バディ!!」

 

「くぬ?...わっふ!!」

 

「......ぷっ、ふふ。」

 

眠そうな顔のままペロッと舌を出して元気に返事をするバディくんが妙に可愛らしくて思わず笑みがこぼれてしまった。

 

はっと自分が笑っていることに気づき彼の方を見ると、バディくんと二人でこちらを見てニヤニヤと腹の立つ笑みを浮かべていた。

 

「な、なんですか!」

 

「いやー、べつにー、なぁ?バディ?」

 

「わっふ!へっへっへっ」

 

「うるさいです!」

 

「なーんも言うとらんのに変なやっちゃやなー?なー?バディ?」

 

「わん!へっへっへっ」

 

「くっ!バカにしないでください!」

 

いまだにニヤニヤとこっちを見てくる二人の視線に恥ずかしさを感じ、睨みつける。

 

くっ、耳まで赤くなってしまっているのを感じます。悔しい。

 

「それで、どうして路地裏で生活していたあなたはここに居るのですか?」

 

強引に話を変えるべく、パタパタと熱くなった顔を仰ぎながら気になった質問を投げかける。

 

「おー、ジジイの言ってたとおりそのまんまや。

いつも通り、路地裏で生活しててなー。いつも通り、旅行客狙って荷物盗んだら運悪くそのオッサンが武術の達人だったみたいでな。

初めはぶっ倒して逃げきれたんやけど、その後なんか張り切っておれらの隠れ家まで追いかけてきてバディと二人で返り討ちにあったんや。

そんで、そのオッサンがなんか知らんけど、おれらを気に入ったみたいでな。暴れて抵抗したんやが、縄でぐるぐる巻きにされて島送りにされたってわけ。ほんで、そんとき喧嘩売ったオッサンがあのクソジジイだったわけや。腹立つことにな。」

 

彼は軽口を叩くようにそう言い放つと、再度火が燻り出した焚き火に薪を放り込む。

 

「お前も入れてみるか?」

 

私が物珍しそうに見ていたのを感じていたのか、彼はそんなことを聞いてきた。

 

「では、お言葉に甘えて。......こうですか?」

 

「薪と薪の間に空気の通り道を作るように入れるんや。あぁ、あかんあかん。それじゃすぐ燃え尽きてまうぞ。こんな木なんかすぐ燃え尽きてまうんやから、燃えすぎんように、でも、火を絶やさんように空気の流れを調整するねん。」

 

「む、難しいですね。......こうですか?」

 

「お、ええやんええやん!やっぱりお嬢様には難しかったか?なんつってな!」

 

「う、うるさいです!」

 

「にひひっ!でもお前、今まで見たことないくらいええ顔しとるぞ?」

 

くっ!また不覚を取ってしまいました。

 

もっと気を引き締めなければ......。

 

彼の嫌に腹の立つ視線を感じながらもしばらく火を眺めていると、彼がぽつりと呟いた。

 

「正直な話。今の生活は最っ高や。ジジイにゃたまにゲンコツ喰らわされるけど、でも、理不尽に理由も無く殴られることもない。雨に打たれて震えることもないし、腹が減って眠れん夜もない。」

 

彼は今まで見た中で一番穏やかな笑顔を浮かべていた。

 

「......正直、あのクソジジイには死ぬほど感謝しとる。死んでも返しきれんような恩もあるしな。」

 

彼はにひひっとまた笑い、抱き抱えていたバディくんを撫で始めた。

 

「でも、そんな恩のあるシジマさんに対して随分な物言いをしてますよね?なぜですか?」

 

私は単純に気になった事を聞いてみると、彼はふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

「.........あのジジイの前でどんな顔すりゃええんかわからんのや。嬉しい時とか楽しい時......それに!あのジジイ癪に障るしな!」

 

「......っぷ、ふふふあはは!」

 

思っていたよりも子供らしい年相応な返事が返ってきたことに安心して堪えきれず笑ってしまった。

 

「なにわろてんねんボケェ!!」

 

「っふふ、ごめんなさい。つい、ふふふあはははっ!」

 

「ったく。いっつもムスッとした鬱陶しい顔しとんのにこういう時だけ笑いよってからに......ひひっ!まぁええわ!わろとけわろとけ!」

 

久々に思いっきり笑ってしまい、頬の筋肉がじんわりと心地よく痛みだす。

 

ひとしきり笑い終わり、私も落ち着いた辺りで、彼はこんなことを言い出した。

 

 

 

「なぁ?お前さ、夢ってあるか?」

 




サボくんの名前の由来......当てられた人はベロチュー一万年の刑に処します
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