ポケットモンスター 拳 〜超強い俺の嫁とめちゃくちゃに弱い俺の話〜   作:おしゃべりデブ

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連続投稿月間最終日 皆さん、またしばらくお休みの期間に入ります。

長々と続いた連続投稿月間でしたが、いかがでしたでしょうか。
私は、毎週投稿とかしている人間を畏怖し恐れ戦き頭を垂れ傀儡の如き精神で敬意を払います。

今回異常に長いです。気をつけてください。




 

 

「なぁ?お前さ、夢ってあるか?」

 

 

ひとしきり笑いあった後、彼はふとそんなことを言った。

 

そんなこと考えるまでもない。

 

私には誰よりも強くならねばならないという使命がある。

 

「ええ、私にはやらなければならない使命があります。」

 

私は彼の問いにはっきりとした口調で答える。

 

彼はにひっと笑い、抱き抱えていたバディくんを傍に置いて勢い良く立ち上がった。

 

そのまま波の音が響く洞窟の入口まで走って行くと両手を大きく広げて私に向かって振り返った。

 

 

「おれの夢はなぁ!!幸せになったるねん!!おれのことを捨てやがった親も!路地裏で殴りやがった酔っ払いも!ゴミみたいに扱ってきた奴らも!同情するだけ同情して何も助けてくれんかったアイツらも!おれからふつーを奪ったアイツらも!みんなみんな羨ましく思うぐらいにな!!腹いっぱい飯食って、暖かい布団で寝て、可愛い嫁さん貰って、幸せに、この世界でいっっっちばん幸せになったるんや!!」

 

 

彼は今まで見たこともない飛びっきりの笑顔で叫んだ。

 

耳がキンっと痛むほどの大声で、洞窟中に木霊するような。

 

その様子が、私にとってはあまりにも楽しそうで、あまりにもキラキラと輝いて見えて、つい、私は。

 

「......羨ましい。」

 

私はそんな彼の姿を見て、思わず言葉が漏れてしまった。

 

そんな言葉を呟いてしまった自分に自分自身が一番驚いていた。

 

「やろっ?ひひっ!」

 

私がつい呟いてしまったその一言に対して、弾けるような笑顔で笑う彼。

 

彼は暗い深淵のような過去を乗り越えて、今まさに自由を満喫している。

 

.........。

 

それに比べて、私は?

 

自由に笑い、自由に大地を駆け、そして、誰よりも自由を楽しんでいる彼に対して、私は?

 

私は......。

 

「んで、お前は?お前の夢は?」

 

私には......。

 

「......私は強くならなければならない使命があります。私は......ガラル空手道場の師範の娘。師範の娘と産まれたからには、最強でなければならないのです。

誰よりも強くなって、ガラル空手こそが最強であると世界に知らしめなければならないのです。」

 

私には強くならなければならない理由がある。

 

強くならなければならない使命がある。

 

強くならなければ、私に生きる意味も、存在価値も無い。

 

ガラル空手を継承する師範の娘として、強さ以外は私にとって必要の無いものだ。

 

私は彼を真っ直ぐに見つめてそう言った。

 

彼は......。

 

 

 

 

 

「はぁぁ。......しょーもな。」

 

さっきまでの眩しかった笑顔はまるでなく、まるで、哀れむような、期待外れだったかのように落胆したような表情でそう言った。

 

つまらなそうに、めんどくさそうに。

 

「......なんですって?」

 

私は自分の生きる意味を、存在価値を否定するようなそんな一言に我慢がならず、言葉に怒気を込めて吐き出した。

 

彼は私のそんな様子を見て、また、落胆するようにゆっくりとため息をついた。

 

「おれはなぁ?......お前の"夢"を聞いたんや。別にお前のやらなあかんこととか、成すべき義務とか、使命とかいうクソどうでもいいことはこれっぽっちも聞いとらん。」

 

彼はやれやれと首を振りながら気だるそうに言う。

 

そんな彼に、私は。

 

「......訂正しなさい。......っ!私の使命は!!あなたに否定されるようなものではありませんっ!!どうでも良くなんて無いっ!!私はそれを叶えるために!!何もかもを捨ててきたっ!!友人関係も!!甘えも!!感情さえも!!全てを投げ打ってでも手に入れるため努力してきたっ!!それを......っ!それをっ!!何も知らないお前が否定するなっ!!!」

 

自分でも信じられないほどの怒号が洞窟に響き渡る。

 

いつのまにか握りしめていた拳には思っていた以上の力が入っていたようで、爪の食い込む痛みでハッと我に帰った。

 

ここまで激昂したことは私の人生で一度もない。

 

でも、それほどまでに彼の放った言葉が許せなかったのだ。

 

私の今までの人生を、生きる意味を、存在価値をも否定し侮辱するその言葉を。

 

彼は私のそんな様子に頭を掻きながら舌打ちをする。

 

「だぁぁぁかぁぁぁらぁぁあ!!それはお前が勝手に押し付けられとるだけの使命であって、お前の"夢"や無いやろがッ!なんでお前が叶えるその夢の中にお前がおらんねんッ!!」

 

「っ。」

 

彼のその言葉に、言葉が詰まる。

 

核心を突かれたような、私の中で誤魔化し騙し通そうとしていた感情を抉るような言葉だった。

 

彼は言葉に詰まる私を見て、大きな大きなため息をついた。

 

「ほんっっっっっっまにっ!!お前つまらん女やなッ!!なんでお前の夢の話の中にお前が存在してないねんッ!!なんで夢の話する時にそんな苦しそうな顔しとんねんッ!そんなもんがお前の夢のはずが無いやろがアホタレッ!」

 

会心の一撃が心に突き刺さった。

 

ずっと心の底に押し固めていた感情を、誰にも見せないように隠していた弱みを全て掘り返されるような一言。

 

それでも、私はそんなことを悟らせないように吠えた。

 

自分が縋ってきたその綱を守るように、考えないようにしてきたことを考えないままでいられるように。

 

「わ...私はっ!!強くなるために何もかもを犠牲にしてっ!」

 

私がそこまで言った瞬間、彼は私の言葉を遮った。

 

「アホかボケェ!んで?なんや?お前の夢はお前のことを犠牲にせな叶わんようなもんなんか?アホくさ!それが実際叶ったとしても、その夢を受け入れるのは犠牲を払ってなんも残ってないお前しかおらんのやぞ?お前はええんかそれで。」

 

「っ!......。」

 

また、何も言い返せない。

 

......もうやめて。

 

.........私の心を掻き乱さないで下さい。

 

私には使命があるのです。

 

この使命を果たせなければ.......私に生きる資格なんて無いんです。

 

「......師範の娘である私が、弱いなんて許されないんですよ。誰よりも強くならなければ、私には、生きている意味が......。」

 

ずっと信じていた自分の信念を砕く言葉に臆し、さっきまでの威勢はとうに消え果てただただ震える言葉を連ねる。

 

ずっと抱えていた不安や重圧、信念だと、夢だと思い込んでいたそれら全てが砕かれるような真っ直ぐな言葉に恐怖さえ感じてしまう。

 

そんな私の事などお構い無しに彼は......サボは口を開く。

 

「生きてる意味ぃ?アホかお前。そんなもん無いやろたかが人間に。たかが生き物やぞ?飯食わんかったら死ぬし、たらふく食えば肥える。

..........大体なぁ。なんでそんなもん考えなあかんねん。

生きてる意味だの、存在価値だの、成すべき義務だの....洒落臭いわそんなん。そんなもんわざわざほじくり返して考えるから、焦るし困るし腹立つし苦しくなるねん。自分はこうすべきやから!自分はこう見られてるから!アホか、思いあがんなバーカッ!」

 

「......っ。」

 

私が何も言えないでいると、彼はなおも言葉を続けた。

 

「んじゃあ何か?おれが今ここで耳くそほじってパァン飛ばすんもなんか深い意味あんのか?鼻くそほじってここに並べるのもなんか深い意味あんのか?無いやろが!!産まれて、生きて、ほんで死ぬ。たったそれだけや!人生やろうが生きる意味やろうが結局そんなもんやろうが!!......大体なぁ、"意味"やら"目的"やら、そんなもん決めようとするからめんどくさいんやろ。そんなもん決めてもうたら........もう....そう生きざるを得なくなるしな。」

 

彼は遠く、海の向こうを見ながらそう語る。

 

地獄のような過去を乗り越え、私と同じだけの年月の中で何度も修羅場を経験し、いつ死んでしまうかも分からないような生活を生き延びた彼が語る人生。

 

そんな彼の言葉に私は......自分の成すべきことがわからなくなっていた。

 

「......じゃあ、私はどうすればいいのでしょうか。......何を目指せばいいのでしょうか。......私は強くなる以外の生き方を知りません。今まで、それしかしてこなかったから......。」

 

使命を捨てた私はどうなる?ガラル空手の継承者としての生き方知らない私には何が出来る?何をすればいい?

 

私が信じて縋って、ただそれだけを望み生きてきた使命が、私の"夢"ではないとすれば、私は何を目指せばいいの?

 

.....怖い。自分が自分で無くなってしまうような。今まで信じてきた事が全部嘘だったのでは無いかと不安になってしまう。

 

震える声で呟く私を見て、彼はひひっと笑い私の隣に腰掛けた。

 

「アホやなぁお前。......そんなもんなぁ!何してもええんや!」

 

何を......しても......?

 

彼の放った言葉に、呆気に取られている私を見て、彼は鼻の下を擦ってにひひっと笑う。

 

「夢なんてもんはなぁ!楽しいことすりゃええねん!なんでもええ!お前やって思ったことあるやろ?羨ましい〜とかやってみたい〜とか!そんなもんでええんや!さっき言うとったやろ?おれにな!」

 

羨ましいこと、やってみたいこと......。

 

楽しそうだと思ったこと、私もやってみたいと思ったこと........。

 

彼のその言葉を聞き、まるで呼応するかのように、ずっと苦しかった胸から言葉が飛び出した。

 

 

 

「......私......は......っ......私....甘いものが食べてみたいのです...........食べるだけじゃ無くて............その......作るのもやってみたいんです。」

 

「......っにひひ!へへへへへっ!言えるやんけ!やりたいこと!ええやんええやん!一緒にやろうや!!それ!!」

 

1つ目。

 

「......ふふ.........お祭りの花火も見てみたいんです...屋台のご飯も食べてみたくて....」

 

「おっ!ええなあ!そういえばもうじき夏祭りがあんねん!島中の人がぎょーさん集まるやつ!!せっかくやし一緒に行こうや!!な!!」

 

2つ目。

 

「ふふふ......実は........私...イタズラもしてみたいんです。」

 

「おっ!お前もこっち側か〜?へへへへっ!ジジイはすぐ引っかかるからな!やりがいあるぞー!!今度一緒にイタズラ仕掛けてみようや!な!!」

 

3つ目。

 

「川遊びもやってみたいです.......ぐすっ....泥だらけになって鬼ごっこもしてみたいです............ぐすっ...ふふ....森の中を探検してみたいです.......もう一度、木登りに挑戦したいです...外で遊ぶだけじゃ無くて、ゲームで遊んだりもしてみたいです。」

 

「っ!お前っ!泣いて....っ.......おうおう!いっぱいあるやんけやりたいこと!!んじゃ!全部やりきらなあかんなっ!!夢いっぱいやんけ!ええなぁ!へへへっ!」

 

口から出た言葉は、もう止まらない。止められやしない。

 

一つ、また一つと言葉が飛び出ていく度、ぼろぼろと私の心に覆いかぶさっていた殻が砕け落ちるように涙がこぼれていく。

 

私が涙を流していることに気づいた彼は私の背中をそっとさすった。

 

不器用に、ぶっきらぼうに、それでいて優しく。

 

そんな不器用な優しさを与えてくれる彼の前で、私は溢れ出す涙を止めることが出来ない。

 

もう我慢しなくてもいいんだ。

 

もう諦めなくてもいいんだ。

 

もう苦しまなくてもいいんだ。

 

そう思うたびに心が震え、何かが壊れてしまったかのように涙が流れ出る。

 

でも、それでも自分の頬が心地よく痛むほどに笑ってしまっている。

 

泣いて泣いて泣いて泣きながら笑って、そして、笑って。

 

どれだけ頬が痛もうとも、どれだけ嗚咽が苦しくなろうとも、私は"夢"の話を辞められない。辞められやしない。

 

「誰かと一緒に本も読んでみたいです...そして、本の内容のお喋りをしたり....夜更かしをして遅くまで友達とおしゃべりもしてみたいです。」

 

「本か〜、おれは字ぃ読めんからなぁ〜。せや!お前が読んでおれに読み聞かせてくれよ!ほなそれ聞いておれも字ぃ覚えるし!一石にちょーってやつか?な!へへっ!」

 

私が話すどんな些細な"夢"も彼が全力で肯定してくれるから。

 

どんなにくだらないことを言っても、彼は()()()()()やろうとしてくれているから。

 

だから、私は。

 

 

「それから....父上ときちんとお話ししてみたいです。」

 

 

父上には嫌われるかもしれない。

 

甘えるなと一喝されるかもしれない。

 

それでも、私はもう諦めたくないから。

 

無理だと思いたくないから。

 

私には必要無くなんかない。

 

全部全部欲しいから。

 

勇気をだして、父上に全て話すんだ。

 

今までのことを。これからのことを。

 

........父上にもっと褒めてもらいたかったことも全部。

 

「......お前...ひひっ!お前がやりたいんやったらやったらええ。」

 

私のそんな覚悟を感じ取ったのか、彼は私の背中をさすっていた手を離し、その手で私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。

 

父上も母上も、誰も撫でてくれなかった私の頭を優しく撫でる彼の手。

 

同年代とは思えないほどにゴツゴツして、いかめしくて、歪んでいて、それでいて優しくて、温かくて、落ち着く。

 

私は頬が熱くなるのを感じた。

 

なぜ?分からない。今の私には知らないことが多すぎる。

 

頭を優しく撫でる彼の手がそっと離れる。

 

少し名残惜しいような寂しいような。

 

なぜ?分からない。私はこんな気持ちを経験したことがない。知らない。

 

「わうふ!!」

 

「おっ!バディ起きたか!!もうそろそろ起こそうかと思とったんや!ほら!サイトウ!見てみろ!!」

 

彼ははしゃぐバディくんを片手で抱えあげて、洞窟の外を指さす。

 

「こ、これは......。」

 

私は思わずその光景に息を飲んだ。

 

洞窟の中から見えた外の景色。

 

空はたくさんの星々を散らし、丸く光るお月様が暗い暗い夜の空を輝かせる。

 

海は、月明かりに照らされながらキラキラと波を反射させ、まるで海が星々を生み出し空に送っているかのように煌びやかで。

 

風に揺らされ波が起きる度に水面をキラキラと絨毯のようにはためかせる。

 

綺麗な波に見とれていると、海の底から2つ4つと丸い光がふわりふわりと浮かび上がってくる。

 

あれは......チョンチーとランターン?

 

月明かりとランターン達の灯りに照らされ、満天に広がる星空に負けないほどに光り輝き目をチカチカと刺激する。

 

「す、凄いです......。」

 

私が感動に震えていると、彼がにひひっと笑う。

 

「まだまだこっからやぞ!ほら、あそこ!」

 

彼の指さした方向を見ると、洞窟から見えた崖の上から一つまた一つと白く輝く羽衣のようなモノが飛翔した。

 

ふわりふわりと空に羽ばたき、真っ白な羽をはためかせて、月明かりに照らされながら飛んでいく。

 

あれは......。

 

「バタ......フリー......っ!?」

 

「ひひひっ!せや!ちょうど今の時期はトランセルがバタフリーに進化する時期でな!......今日、お前を山に連れてったのはな、いっつもムスッとしてつまらん顔しとるお前に、これを見せたかったんや。世界はこんなにも綺麗で広いんやぞって、お前の考えてる事はしょーもないちっこい事やねんぞってな!......まぁ、多少面倒事にはなったけどな。終わりよければすべてよしっちゅーことやな!ひひひっ!」

 

「ばう!わうふ!!」

 

バディくんが楽しそうにはしゃぎ、彼は鼻の下を擦りながらニヤニヤとした笑みを浮かべる。

 

私はそんな彼らを見て、微笑ましくてつい笑ってしまった。

 

「っぷふ、あははは!なんですかそれ!」

 

彼はニヤリと笑って私の前に立つ。

 

「...ひひっ !せやせや!わろとけわろとけ!お前がこの先どうなるんかとか知ったこっちゃないけどな!お前の人生なのにお前が楽しまんでどうすんねん!」

 

「がう!!」

 

「親父がどうやからこうやからそんなもん知るか!それでええんや!お前の人生なんやからお前のために生きりゃええ!!」

 

私は、私のために、私の人生を歩む。

 

今までは、ガラル空手のために、父の期待のために、威厳の為だけに生きてきた。

 

だけど、私には私のやりたいことがある。

 

全部、叶えるんだ。

 

全部、やりたいんだ。

 

もう、私は妥協なんてしたく無いから。

 

「ふふふ...ねぇ、サボ。」

 

「おう!なんや?」

 

「......"夢"っていいものですね!」

 

私がそう言うと彼......サボはニカッと笑った。

 

「......ひひっ!やっぱりやな!...お前、前々から綺麗な顔してると思っとったけど、笑ってる方が100倍ええわ!」

 

「んなっ!?か、からかわないでください!」

 

また、頬が熱い。

 

サボが変なことを言うからだ。

 

「わっふ!わっふ!」

 

「おっ、バディもそう思うやんな!」

 

「バディくんまで!もう!」

 

「やっぱ、おれはお前のわろてる顔が一番好きや!似合っとるぞ?ひひひっ!」

 

次から次へとこの男はまた......くっ!頬が冷めない。

 

「おっ!流れ星!縁起ええなぁ!」

 

顔の熱を冷まそうと必死になって両手でパタパタと顔を仰いでいると、彼はまた声を上げた。

 

流れ星......ガラルでは頻繁に見ますが、こっちに来てからは初めて見ました。

 

そういえば......。昔、母から聞いた話がある。

 

「知ってますか?サボ。あの空にある星一つ一つに名前がついてるって。『星座』と言って、その星を線で繋ぐと動物や道具に見えるんです。あれがスワンナ座のデネブ、その下に見えるのがウォーグル座のアルタイル、その右上にあるのがこと座のベガ。それぞれの一番明るく光っている星を繋ぐと大きな三角形ができるんです。この三角形のことを『夏の大三角形』と呼ぶんだと母から聞きました。」

 

私が自分の知っている限りの知識を披露するとサボはうぅーん?と首を傾げながらも空を見上げる。

 

「ほーん。あっかん、何もわからへんわこれ。星座..........ねぇ......。お!あっこの星とあの星、繋げたらバディに似てるな!」

 

サボは空を指さして星と星とを繋ぐ。

 

......言われてみれば?

 

「そう言われるとそう見えてきますね......。」

 

「あそこの星とあれとそこの青いやつと、向こうの赤いやつ繋げたらジジイが怒った顔そっくりや!」

 

「ぶっ!あははははは!なんですかそれ!やっぱり、あなたといるといくら我慢しても笑いがこらえきれません!」

 

「おっ!へへっ!せやせや!もっと笑えもっと笑え!人間笑っときゃなんとかなるねん!」

 

彼はニヤリと笑い私の顔を覗き込む。

 

 

 

「こっからお前の人生もっともっとおもろくしたるさかい......覚悟しとけよ?サイトウ!」

 

 

 

どきりと胸が波打ち、熱い血液が全身に駆け巡る。

 

ああ、なるほど。この感情は.........。

 

「っ!ふふふ!はいっ!望むところです!!」

 

「わう!」

 

「っふふ、バディくんもよろしくお願いしますね?」

 

 

 

それから私達は、一晩中語り明かした。

 

今までのこと、将来のこと。

 

これからのこと、父上のこと。

 

いつしか夜は過ぎ、瞼を閉じてしまっていたのだった。

 

 

_____________________________________________________________________

 

 

「くぅぁぁあ......んっ。お、朝か。」

 

おれとサイトウは夜明けまで語り明かし、そして、サイトウが力尽きたことで夜の終わりを迎えた。

 

んぐぐぐっと伸びをして立ち上がる。

 

バディは......まだ寝とるな。

 

サイトウの方を確認すると、すーっすーっと穏やかな寝息を立てている。

 

っへへ、やっぱりべっぴんさんな顔しとるのぉ。

 

昨日、腹を割って話してこいつのことを知った。

 

つまらん顔しとるロボ女やと思っとったけど、こいつは思ってたよりも熱い心を持ったおもろい女やったわけや。

 

「しばらくは、遊び相手にゃ困らなさそうやな!.........こいつの"夢"も全部叶えてやりたいしな.....。つってな!ひひっ!」

 

.........それにしても、こいつの足。

 

...............明らかに昨日やそこらにできた怪我やないな。これ。

 

ずっと隠してた?いや、ジジイは多分気づいとったんやろな。たまにちらっと見るぐらいやったけどこいつの稽古は基本的に上半身の筋肉の使い方を意識した稽古やった。

 

......こいつの親父は知っとったんか?この怪我を。ならなんでこんなになるまで放置した?

 

......知らんかったんか?一日二日おっただけのおれが気づくような怪我を?ずっと一緒に生活しとる家族が気づかんかったんか?

 

............なんやきな臭いな。

 

コイツの言う"使命"もそやけど、この怪我のことと言い、今まで生きてきてまともな娯楽もしてこーへんかったことと言い、嫌な臭いがぷんぷんするわ。

 

...めっちゃ腫れてんな。帰ったら薬屋の爺さんに診てもらわな。

 

《ひでんのくすり》?やったっけ?なんやどえらい凄い効き目のある万病に効く薬持っとるらしいしな。ん?あれってポケモン用の薬やったか?まぁなんでもいいけど。......てか、なんで島の医者がそんな意味わからんもん持っとんのや。

 

おれがサイトウの怪我を見ていると、サイトウがんんっと声を上げゆっくりと目を開ける。

 

「おっ!おはよう!ええ朝やぞ!」

 

「ふわぁあ、はい。おはようごじゃいます。」

 

サイトウは慣れない岩の上で寝たせいか、身体が凝り固まっているようで伸びをする度にピキパキポキと関節が鳴る。

 

初めて自分の身体からなる音にびっくりしたようで、ぽかんと目を丸くしている。

 

っぶはは!やっぱこいつおもろいわ!

 

サイトウはゆっくりと立ち上がろうとするが、足が痛み立ち上がることが出来ない。

 

「そんだけ腫れとんねん無理すんな。」

 

「くっ!......はい、お言葉に甘えます。」

 

「っふひひ!ほんま、お前変わったなぁ!昨日までなら目ぇこんっなに尖らせて『あなたなんかの手は借りません。』とか言うとったのになぁ!」

 

「ふふふ、あなたが変えたんですよ?」

 

「ひひっ!それもそやな!」

 

二人で目を合わせ互いに笑い合う。

 

潮が引き、昨日よりも遥かに遠い場所で波が弾ける音が聞こえた。

 

朝方の少し肌寒い潮風に吹かれながら、二人で海に視線を移した。

 

「ねぇ、サボ。」

 

サイトウが海を見つめながらおれを呼んだ。

 

おれは視線をサイトウに向けて、目だけで返事を返す。

 

「......やっぱり、私はこれからも『最強』を目指します。」

 

「...まだそんなん言うとるんか?」

 

おれがそう聞くと、サイトウはふふっと笑った。

 

 

「確かに......私は、以前まで使命に囚われ自分のやりたいこと、心まで見失っていました。......ですが、誰かさんのせいで、私は欲張りになってしまったんです。.....やりたいことは全部する!我慢もしないし諦めない!そして、全部全部やりきって、それで得た経験も知識も全部全部私の糧にして!世界で一番強くなって!!尊敬する父上のガラル空手を世界中に広める!女の子だって『最強』になれるんだって世界中に伝えるんですっ!!これが、私の"夢"です!」

 

 

どう...ですか?っとサイトウは不安そうな顔で尋ねる。

 

そんなこと考えるまでもない。

 

 

「最っっっっ高やな!!それ!!」

 

 

 

「っっ!!はいっ!!」

 

 

今までの無理に固めた無表情とは違い、飛びっきりの笑顔を向けるサイトウ。

 

その綺麗な笑顔に、おれは思わず見惚れてしまった。

 

今まで見てきた何よりも、昨日見た景色よりもうんと綺麗で......。

 

「サボ?どうしたのですか?」

 

サイトウの声に思わずハッとする。

 

「な、なんでもないわ!!」

 

思わず顔を逸らしてそっぽを向く。

 

「あはは!なんですかそれ。」

 

くっそ、なんやねんこれ。耳が熱い。

 

..........でも、サイトウがここまではっきり夢を語ったんや。

 

昨日まで、自分のやるべき使命に囚われてたサイトウが。

 

ここで『(おとこ)』見せへんのはおもろないよな。

 

おれは、波のさざめく海を見つめて口を開いた。

 

「世界っちゅうんは......おれらが思ってるよりよっぽど広い。そん中におる誰よりも強くなるなんてことは......多分、1人じゃ絶対に出来ん。」

 

おれがそう言うと、サイトウは小さく「そう...ですね」と言いながら頷いた。

 

「でもお前はそれになりたいんやろ?......1人じゃ絶対に出来んことも誰かと一緒なら大抵何とかなる。おれとバディが一緒におるみたいになっ!」

 

いまだに寝息を立てるバディに指差しおれはそう言う。

 

「おれは、腹いっぱい飯食えて毎日楽しく過ごせたら別に強かろうが弱かろうがどーでもいいし、『最強』を目指す気なんざサラサラないけどな。お前なら......サイトウなら出来る。おれはそう思ってる。」

 

「.......なんで....そう思うんですか?」

 

「なんでって......うーん......いや、まぁ直感?こんな怪我してまで自分追い込んで鍛錬してるような奴が夢半場で諦めるような事するわけないと思ってな。」

 

「っ!サボ....いつから......」

 

「怪我の具合見りゃわかる。その怪我が昨日今日のもんやないってことくらいな。..........お前が本気でてっぺん目指すんやったら周りの事頼ってみ?お前は多分、また1人で壊れるまで抱え込み続けるやろうからな。.....少なくともおれは何があってもお前に一生協力(つく)したるわ!ほんで、お前がもしてっぺん獲れたんやったらそんときは....」

 

「そのときは?」

 

 

 

「にひひっ!協力料としておれの"夢"も手伝ってくれやっ!...なんつってな!あははは!」

 

 

 

おれが笑いながらそう言うと、サイトウは何故か顔を真っ赤にして目を見開いている。

 

ん?なんや?なんか思っとった反応とちゃうぞっ!?

 

サイトウはもじもじと真っ赤になった顔を伏せて視線を逸らしながら、自分の灰色の髪にサワサワと触れる。

 

「........サボは....たまにその......ずるいです。」

 

.........いや、何がやっ!?おれ今なんかしたかっ!?

 

おれが反応に困っていると、サイトウがチラチラとこちらの様子を伺うように視線を動かす。

 

なんや?こいつは?おれに何を求めとるんや?

 

てか、なんか変な雰囲気になってないかっ!?今っ!?

 

むずがゆいような恥ずかしいような......。

 

あっかん!この雰囲気おれ知らんっ!!何すりゃええんやっ!?一発ギャグかっ!?ぃい......やるんかっ!?いまっ!?ここでっ!?

 

「......くふぅ......わっふ!!」

 

バディが飛び起きてこちらに向かって駆けてくる。

 

ナイスタイミングや!相棒!!あとで無限ヨシヨシしたるっ!!

 

「っっっしゃ!バディも起きたことやし、ほな帰るか!!」

 

「はいっ!」「わん!!」

 

「ほら、サイトウ!お前はおれが背負ったる。特別やぞ?」

 

「ふふ、はい!では、お言葉に甘えます!........ところで、サボ。」

 

「ん?なんや?」

 

「さっきの返事ですが........その....私は....構いません.....よ?」

 

「....っぷ!はははっ!なんやそれっ!....ひひっ!でもまあ?.....楽しみにしとるわっ!」

 

「わふぅ?」

 

「ひひっ!ほら、バディっ!変な顔してらんと帰るぞ!」

 

 

 

おれ達は潮の引いた浜辺を歩き、帰路についた。

 

朝帰りしたおれ達がジジイの本気ゲンコツを喰らったのは言うまでもない。




めでたしめでたし

んじゃあねぇよ。結局話あんま進んでねぇじゃねぇか。
手持ちポケモンガーディ以外出てきてないし、なんか良い感じで終わっただけやんけ。

また書き溜まって来たら吐き出します。
皆さん私の吐瀉物をね、口を開けてヒナのように待っておいてくださいね。
では、また。
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