森育ちのお嬢様にネットは難しい 作:ワクワクを思い出すんだ!
評価バーが端まで赤くなって大変励みになっています。展開は牛歩ですがお付き合いいただけると幸いです。
早くわくわくうきうきしてェ〜〜〜!!!
時系列的にはアニメ24〜29話くらいです。
LINK VRAINSでの戦いが激しくなる中でも日常は過ぎていく。
遊作も学生である以上は学校には行かざるを得ない。普段からやることはやっていないと、悪目立ちする可能性はある。それは遊作にとっても不本意な話なのだ。
「で、これがGo鬼塚。こっちがブルーエンジェル」
「まあ〜」
一通り授業を終え、草薙のもとへ向かおうとする。
その視界の端に、いつもの二人がひとつのタブレットを覗いている姿が見えた。
また結が何か壊したのか、と恐る恐る声をかけた。
「……何をやってるんだ?」
「オッス、藤木! 鴻上のやつがLINK VRAINSで活躍中のデュエリストを知りたいってな!」
「鴻上が?」
意外な名前が出てきた。
一方的に島が話しているわけではなく、単純に結が説明を頼んできたとのことだ。
いつもなら「変わったお名前ですわね〜」と聞いているのか聞いていないような呑気な反応しか帰ってこないはずだが、結は熱心に頷きながら聞き入っていた。
「で、これが今最もアツいデュエリスト──────Playmakerだ!」
「この方が〜、なるほど〜」
先程の反応よりも少し異なる反応。
元々名前だけは知っていたような反応に、大ファンの島はつい饒舌になる。
「LINK VRAINSで悪さしているハノイの騎士ってやつらを倒して回っている俺達のヒーローさ!」
「騎士様なのに悪い方々なのですか〜?」
「そりゃあもうそうだよ! だって近頃犠牲者が増えている“
「“
「うっせ、悪かったなァ!」
「あなざーじけん?」
また新しい言葉が出てきたと、顎に手を当てる結。
各メディアが大々的にニュースとして取り上げられているにもかかわらず、この少女には初耳だった。
遊作はざっと掻い摘んで説明した。
旧型のデュエルディスクをつけたデュエリストを狙い、LINK VRAINSに強制的にログインされ──────その後に意識が戻らなくなる事件のこと。
さらに、ハノイの騎士とのデュエルに負けるとまたアナザーにされてしまう。この前、首謀者の一人をGo鬼塚が倒すことに成功したが、除去プログラムを手に入れるしか治療方法がなく、未だ解決の糸口が見えていない状況であった。
「意識不明……」
すると、鴻上が目を見開いて驚いていた。
今日一番、いや出会ってから一番の反応だったかもしれない。
「鴻上?」
「お、おい。どうした?」
「い、いえ、その」
話をしていた島がおろおろと慌て始める。
結はひとつ咳払いをして、失礼しましたといつもの朗らかな笑顔に戻った。
「わたくしのお父様と同じような状態で、少し動転してしまいまして〜」
「父親が?」
「ああ、介護しているってやつ?」
遊作は島の方を向くが、島の方は呆れた視線で返す。話をしている最中に帰り始めたのはお前だろこの野郎、と語っていた。
「ですが、お父様の意識が戻らないのは今から何年も前からのこと。あざなーじけんとは関係なそうですわね〜」
「アナザー事件、な!」
「お前もさっき間違えていただろう」
変わらない調子の良さを見せる島。
一方、どこか様子のおかしい結に対して遊作は視線が向く。
「
「はい?」
遊作はこの二文字を口にすると、どこか自分の言葉ではない気がするようになってしまった。
階段状の教室、遊作を見上げる結に対して、つい遊作は目を逸らしてしまう。
「……いや、何か悩みがあったら言ってくれ。力になれるかもしれない」
「ありがとうございます〜。藤木くんはお優しいですわね〜」
手を合わせて笑顔を向けられる。
遊作もいつも通りの表情で返しているのか自身でも心配なのか、無性に鏡を見たくなる気持ちだった。
「あ、であればおひとつだけ」
細くて小さい人差し指がひとつ立ち上がる。
顔は笑顔であったが、その目は間違いなく真剣なものだった。
「今度、
「そうだな。また今度やろう」
鞄を背に遊作は教室を後にした。
運良く、誰も彼が少し足早だったことに気づいた者はいなかったが、注視すると逃げるように見えたのかもしれない。
『結局聞けなかったな』
「何がだ」
校舎を出て、通学路の河川敷を歩く。
既に同じ制服の者もいなくなったのを見計らって、ようやくAiからそんな声が投げかけられた。
『何がって、決まってんだろー。
「確認するだけ無駄だ」
ロスト事件の首謀者である、鴻上聖。
それと同じ苗字を持つ、鴻上結。
知った際は面食らった遊作だが、改めて考えると彼女がロスト事件やハノイの騎士と関わりのある人間とは思えなかった。
理由は三つ。
一つ、結は遊作と年齢が同じだ。10年前に起きたロスト事件に加担することは非現実的だ。
二つ、結は意識不明とはいえ父親と暮らしていると言った。鴻上博士が亡くなっているという、SOLテクノロジーにあった機密データと辻褄が合わない。
三つ、これが最大の理由だ。
「あんな機械音痴がハノイに居るわけない」
『ソダネー』
世界規模のハッカー集団が、触るだけで機械を壊す奇天烈な女を置いておくだろうか。いやない。
このことを話した草薙も納得しており、“要注意”に留める程度で、容疑者からは外すことにしていた。
引っかかることとしては、彼女のデュエリストとしての腕だろうか。
おそらくハノイの騎士でも勝てる人間は限られているはず。それこそ、Playmakerでもなんとか辛勝することができたリボルバーとも、いい勝負ができるかもしれない。
果たしてそのような腕を持つ者が、如何にして生まれたのかは気になるところだ。
それともう一つ気になることと言えば──────
Playmakerの画像を見たとき、ふと遊作を見たのは気のせいだろうか。
「とにかく、あいつは苗字が同じだけだ」
『人間の名前って難しいよなぁ。もっとシンプルにすればいいのによ』
「そうだな。お前の単純さには勝てないな」
『お前がつけたんだろ──!!!』
何度めかわからないやり取りをしながらも遊作の心は晴れない。三つの理由を挙げたのは、決して正当性を証明するためだけではない。彼女に、そんな暗い面があってたまるかという
結局のところ──────単に、彼は安心したかっただけなのだ。
◆◆◆
「デュエル部の活動休止なんてあんまりですわ〜」
「まあ仕方ないよね。部長も皆を危険な目にあわせたくないわけだし」
結もまた、葵と通学路を歩いていた。
暇を見つけて部活動に出てみれば、部長からアナザー事件の収束までデュエル部の活動を休止することを決定したと告げられた。
結は不満はあったが声には出さなかった。別に、LINK VRAINSに入らなくてもデュエルはできるもの。そもそも、彼女にとってデュエルはテーブルで行うものと、デュエルディスクのAR型のソリッドビジョンを使用したものだ。今までの活動のように、デッキの構築を話し合ったりする活動は続けていいのでは、とも思った。
しかし、仮にアナザー事件に巻き込まれて意識を失い、残された家族がどう思うかと考えれば、他人事ではないからだ。
部員の大多数は賛成したが、最後までブー垂れていたのは島である。それも敢え無く撃沈したわけだが。
不本意にも時間ができてしまった二人。
デュエル部の活動ができなくても、他にもできることはある。
「であればカードショップにでも参りましょうか〜。新しい“おともだち”をお迎えにあがりたく〜」
「うん。──────きゃっ」
ふと、横をバイクが横切る。
改造されているために加速力が異常なためか、上昇気流が舞い上がる。
思わずスカートを手で抑える葵と、カードのことしか考えていないノーガードの結。
しかし、結のスカートは全く動かない。不思議な力に守られているためか、針金でも入っているのかと思うほどに不動であった。
葵がバイクの方を睨むと、不意に運転手が降りてきた。
「そこのお二人、いいかしら?」
「貴女は……」
ヘルメットを外すと、彼女らと同じく女性の顔が顕になる。特徴的な長髪と、ライダースーツで更に際立つプロポーション。葵としては初対面の筈だが、どこか面影があった。
「葵ちゃんのお知り合いでしょうか〜? 随分お綺麗な方ですが〜」
「ええ、一応そうなるわね。可愛らしいお嬢さん」
「まあ、褒められてしまいましたわ〜」
「それで、何の用ですか。私、貴女とは初対面だと思うんですけど」
友達がいいようにあしらわれているのも面白くなく、葵はつい強い口調で質問した。
そよ風のように流して、ライダースーツの女性はヘルメットを背負いながら笑顔で否定した。
「そんなことないと思うけど、
この食えない感じ。
ああ──────間違いなくゴーストガールだ。
電脳トレジャーハンターと呼ばれる情報屋。
葵の兄である財前晃とは、SOLテクノロジーを介さない個人的なビジネスパートナー。
Playmakerを罠に嵌めながらも時には助け、それはそれとしてお宝はいただいていく、ちゃっかりとした性格の女性だった。
「ここだと何だし、付き合ってくれないかしら?」
そんな彼女からの呼び出しに、身構えるななんてできるわけがないだろう。
「なんなの、あの人。勝手に説教してきて」
一通り話しを終えると、夕方になりゴーストガールは去っていった。
何か弱みを握られることもなく、ただ煽られただけだった。
ブルーエンジェルは廃業したのかー、お兄様に認められたかっただけだもんねー、とそんなことばかり口にして。
「あの方、一体何を仰りたかったのでしょう〜?」
「わかんない。あと、ごめんね。なんか遊びに行く気分じゃなくなっちゃった」
「構いませんわ〜。またの機会にいたしましょう〜」
虫の居所が悪い中、一緒に行っても楽しめないだろう。気を遣わせてしまって申し訳ないが、葵としてはもう一つ確認しておかないといけないことがあった。
「それと、驚かせちゃったよね」
「? 何がですか?」
「私がブルーエンジェルってこと」
さらっと、ゴーストガールは爆弾を残していった。
葵の気を引くためにはブルーエンジェルの名前を出さないといけなかったのだろうが、何も関係がない結が一緒にいるにもかかわらず口にするのはどうかと思う。
案の定、結の方はキョトンとしていた。
それはそうだろう。葵は冷静に分析した。
いきなり自分がLINK VRAINSでアイドルをやっているなんて信じるわけ──────
「? いえ、元より知っておりましたよ?」
コテン、と首を傾げた。
葵も一瞬、首を傾げた。
「嘘っ!?」
ここ最近で一番の大声が出てしまった。
失礼だが、ネットのネの文字もわからないような友達に、いつの間にか特定されていたなんて誰が思うだろうか。
「い、いつから……?」
「本日、島くんから画像を見せていただいた時からですが〜? 葵ちゃんがとっても可愛らしくて、わたくし胸がきゅんきゅんしましたわ〜」
ついさっきだった。
褒められるのは嬉しいが、自分がキャピキャピしたアイドルをやっていることを知られた恥ずかしさなど様々な感情が渦巻き、顔を手で覆ってしまう。
というか、島直樹の名前が出てきたということは、他の者にも知られているのでは──────?
一瞬思ったが、その可能性はないはずだ。
同級生にカリスマデュエリストがいれば、彼が黙っていないはず。島直樹は明らかに態度を隠せるタイプの人間じゃない。部活でもいつも通りだった以上、その心配はないはずだ。
「ま、待って! つまり、結って画像を見ただけでわかったの!?」
「わたくし、人を見た目だけで見ない性格ですので〜」
いや画像で判断できたということは見た目で判断しているではないか。
そんなツッコミをする余裕もなく、ため息とともに河川敷の柵にもたれ掛かる。
「一応だけど、このことは……」
「もちろん、公言したりなどいたしませんわ〜」
ネットリテラシーの有無はともかく、他人が嫌がることはしないのが結のいいところだった。
良い友人を持ったことに安堵しながら、心を落ち着かせる葵。思わぬ身バレ顔バレされてしまったが、話を戻すことになる。
「葵ちゃんは、ハノイの騎士さんと戦いたくないのですか?」
「それは……そんなことないけど……」
結局、ゴーストガールから言われたのはそういうことだ。
PlaymakerとGo鬼塚がハノイの騎士と戦っている。共闘を持ちかけられたが断ってしまった。自分が何のためにデュエルをするのかわからなくなってしまったから。
確かに、元々は兄に認められたい一心でやっていた。
兄の想いを知った以上、戦う理由なんて──────
「なら、わたくしがハノイの騎士さんと戦いますわ〜!」
「え、ちょっ、結!?」
むん、と両腕で力こぶを作る結。
奇しくもGo鬼塚がよくやるサムズアップだ。
だが悲しいかな、その二の腕はぷにぷにだった。
「わたくしの腕は葵ちゃんもご存知のはず。島くんが言っていたように、りんくゔれいんずの平和はわたくしたちが守るんですの〜!」
「ええぇ……」
まあ確かに、彼女の実力ならハノイの騎士には遅れは取らない。
どいつもこいつもライオンに食べられるか、ロボに全て焼き尽くされるか、パンプアップしてムキムキになったメルフィーたちにタコ殴りにされるだろう。カリスマデュエリストも真っ青な惨状になるに違いない。
「ところで、りんくゔれいんずとは、どこで買えるんでしょうか〜?」
だが残念かな。彼女の知識は年配の人間よりも酷い有様だ。この様子では舞台にあがることはないだろう。
おかしくなって、つい笑ってしまう葵。
さっきまでのムカついた感情もどこかに行ってしまった。こんな何気ないやり取りができるように、戦わなければならないのかもしれない。
「ふふっ、もういいよ、結。色々とありがとう」
「? よくわかりませんが、葵ちゃんが元気になったようで何よりですわ〜」
自分のためにも、友のためにも、どこかで応援してくれる皆のためにも、自分は自分のデュエルをする。葵は少しだけ前向きになることができた。
こうして今宵、LINK VRAINSにブルーエンジェルは再び舞い降りることになる。
◆◆◆
「ということがありましたの〜」
「──────」
夕食時、そんなやり取りを妹から告げられると。了見の手からフォークが落ちる。
幸い、テーブルの上からは落ちなかったが、突き刺していたトマトがシーツを赤く染めた。
「あら、いかがなさいましたかお兄様? もしかして、本日の味付けは好みではありませんでしたでしょうか?」
「そ、そんなことはない。結の料理はいつも美味しいからね」
「まあ、ありがとうございます〜」
えへえへと照れる結を尻目に、了見は目頭を指で摘む。
ハノイの騎士と戦う。
いつか来るとは思っていて身構えていたが、まさかこのタイミングだとは思わなかった。
妹よ。目の前にいる兄こそ、そのリーダーなのだと。
そんなこと果たして言える人間が言えるだろうか。
「それと、ハノイの騎士と関わるのはやめておきなさい」
「どうしてですの〜?」
なぜか、と聞かれれば当然了見はこう答える。
「危険だからさ」
「でゅえるには負けませんが〜?」
確かに、彼女の強さは了見が最も理解していた。
故に、ここは引き下がるわけにはいかない。
「必ずしもハノイの騎士たちはデュエルで戦うとは限らない。中には平気で暴力を振るう輩もいる」
「むぅ、リアルファイトはよくありませんわ……」
自ら言っていて頭が痛くなる了見。
大きな組織である以上は一枚岩ではない。
三騎士の他にも末端の部下はいるが、結局は無法者で構成された烏合の衆。ハノイの騎士の崇高な使命以外にも目的がある者もいるのだ。具体的には、金銭目的のアルバイトとか。
実際、ヒャッハー、と三人がかりで一般人を囲み嬲るのは序の口の部類だ。業腹だが、ボードを衝突させて落下死を誘導させるなど、デュエリストの風上にも置けない輩がいるのも否定できなかった。
「デュエル部の部長も、結たちが心配だからLINK VRAINSをやらないようにと言ってくれているんだ。せっかくの厚意を無駄にするのは良くない」
「それはそうですわね。わかりましたわ〜」
食後のコーヒーを口に含めながら内心ホッとしている了見。昔からこのような言い方をすれば大抵引き下がってくれるのだ。
……実は、手下の強化プログラムとして、結をベースとしたデッキとAIに勝つことができたら、幹部に昇進できるという条件でデュエルさせたことがあった。
結果として、勝者は誰も現れなかった。下っ端はフリーチェーンでやってくる制限無し墓地送り効果にはなす術無くやられてしまう。
『なんでメルフィーの森に機械があんだよ!』
『世界観はどうなってんだ世界観は!』
これは無残に敗北した、偏った思想を持った手下の一人が口にしていた言葉である。幹部含め何人も頷いていた。
実際、結に勝つことができるデュエリストはハノイの騎士の中では了見だけ。三騎士も含め、皆メルフィーによって何度も倒されてしまっている。
もし敵に回ったら、なんて考えるだけでもおぞましい。
「それに、心配することはないさ。もうじきハノイの騎士は無くなるからね」
「そうなのですか〜? お兄さまは何でもご存知なのですね〜」
「仕事柄、どうしてもそういう情報が入ってくるだけだよ」
言っていることは間違っていない。
ハノイの塔が完成すれば、ネットワークそのものが壊れ、忌まわしきイグニスも消え、同時にハノイの騎士も役目を終える。
本当ならこんな手段を取る前に、イグニスを確保したかった。しかし、ハノイの騎士はもう手段を選んでいる余裕はないのだ。
「そうだ。実は結にプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
嘘と屁理屈で固めた顔を隠すように後ろを振り向く。了見は、あらかじめデッキから抜いていた一枚の青いカードを差し出した。
「これは……お兄さまのカードですわ〜!」
「何かあった時はこれを使うといい。きっと結の力になれるはずだ」
わーい、とくるくる回る結を見て、昔のことを思い出していた。
花でも何でも、小さい頃からプレゼントをあげると決まってこのような反応が返ってくる。それをどこか懐かしむ気持ちで眺めていた。
「こうしてはいられませんわ〜。わたくし、自室でデッキを組み直しますの〜」
テーブルを立ち上がり、小走りで自室へと戻っていく。了見も、感傷を振り切るように夕食の席を後にする。
「あ、お兄さま」
「どうした?」
呼び止められた了見は結へと向き合う。
「お兄さまは──────
いつも通りの笑顔で、結は問いかけた。
明日の晩御飯を聞くような何気ない疑問。
しかし、了見は心臓を掴まれたような気がして、必死に動揺を隠す。
「もちろんさ。どこか遠くへ行っても、必ず結のもとへ戻ってくるさ」
「うふふ、約束ですわ〜」
今度こそ、同じ色の髪を翻して部屋へと戻っていく背をただただ見つめる。
姿が見えなくなると同時に、風船のように肺の奥に溜まった空気が抜けきる錯覚を覚えた。
……変わらないと思ったが、聡い子だった。
父の死期を悟っているのか、それとも自分がこれから行う所業の果てを感じ取っているのか。
「許してくれ、結」
了見は目を伏せて謝ることしかできない。
塔はもう、動き出してしまったのだから。
今回は普段少ないデュエル描写が更にないせいでネタも挟めず、あまり動きのない回になってしまいましたね。
次回はかなり時系列が飛びます。
◆◇◆ 以下、解説にもならない雑記 ◆◇◆
※ソリッドビジョンシステムについて
本作ではLINK VRAINSにログインしなくても他の遊戯王シリーズと同様に通常のソリッドビジョンシステムは使える解釈としております。
LINK VRAINS限定だったらブレイヴマックスこと島くんは今までデュエル部で何してきたのかってなるので。しかし、システムの完成度としてはLINK VRAINS内の方が圧倒的に上なので既に形骸化寸前のものとなっています。
主人公は機械音痴の癖にデュエルはできる……妙だな……?
・ハノイの騎士(したっぱ)
某世紀末のように弱者を囲んで棒で叩いたり、完璧な手札だったりするモブのくせにネタに事欠かない連中。リボルバーがしれっと1000人を超える人間が集まったと言っていたが、LINK VRAINS内にそれだけのユーザーがいるとなっていると、実は遊戯王ワールドの中でもクラッシュタウンレベルに治安が悪いのかもしれない。奴らを普通に拘束しろ!
・別所エマ(ゴーストガール)
無限泡影オルターガイストお姉さん。主人公と鴻上博士の関係に何か感づいてもおかしくはなかったが、長年の直感か「とんでもないしっぺ返しが待ってそう」と身を引いた。
なお、もし周辺調査を行っていたらバチクソキレたリボルバーとスペクターにフルボッコされる罠が待っている模様。危険の中にお宝は眠っていることはわかっても、ちゃんと引き際は弁えていた。
・スペクター
描写し切れないので泣く泣くカットしたが、実は葵とのキャッキャウフフにハンカチを噛み締めながら眺めている。おかげでハノイの塔との決戦で4割増しくらいに痛ぶられることになる。
・偏った思想を持った手下の一人
変だよ……。
・了見からのプレゼント
やったねメルフィーのみんな!仲間が増えるよ!
リボルバーに関連していて、メルフィーの決定力不足を補えるモンスターと言えば、自ずと答えが出てくる……かもしれない。