この馬鹿らしいエルデ王に祝福を!   作:ポポァ

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書き溜め無しのライブ感執筆ですが気楽に読んでもらえれば幸いです


第1話 馬鹿が宇宙からやってくる

 

〈山賊side〉

 

「おいてめぇ、本当にこっちであってるんだろうな?」

 

 

 人の手の入っていない荒れた森の中、10人程の集団が歩いている。

 その中でも一際装備が整った大男が声を荒げて部下らしき男に問いかける。

 

 

「へえ!間違いないでさぁ!確かに昨夜、こっちの方角に空から光る何かが降ってきたんでぇ!距離はありましたが、落ちた場所が薄っすら光ってたんで覚えてます!」

 

「チッ……ここまで歩かせて間違いだったらただじゃおかねぇからな!最近ツイてねぇ。クソッたれ共が目立ち過ぎて騎士団に目ぇつけられたせいでこんな辺境までくるハメになっちまったんだからな」

 

 

 この大男は騎士の家の長男の生まれであるが、堅苦しい礼儀や規律に嫌気が差し、家から装備と金を盗んで飛び出したのだ。ゴロツキ共を力でまとめ山賊団を結成し、騎士団の巡回から離れた場所で賢く稼いでいたが、調子にのった部下が貴族への税を積んだ馬車を襲ってしまい討伐隊を派遣されてしまったのだ。

 しかしそれをすぐに予測し、わずかな賢い部下と共に財産をまとめ、残る多くの部下たちを囮にし国外まで逃げ切ることに成功したのである。

 

 

「まぁまぁ……もうすぐ見えてくるはずでさぁ。……おっと、あれですぜ!」

 

 

 少し先、木々の間から薄暗い森中を照らす小さな光源があるのが見える。近づいてみると30m程の開けた空間の中心に10m程の小さなクレーターができていて、その底に近い部分に小さな光の柱が立っているのが確認できた。

 

 

「ホントにありやがるとはな。しっかしなんなんだコレは?ただ何もない空間が光ってるだけにしか見えねぇが……」

 

「親分!底の方に何か埋まってますぜ!」

 

「ほう?じゃあそれが空から降ってきた何かか?てめぇら掘り返せ!」

 

 

 部下たちに命じてクレーターの底を軽く掘らせると、全身鎧を着こんだ人間が土の中から現れた。土塗れで汚れてはいるが、空から落下したにもかかわらず破損した様子が無いことから、かなりの堅牢な鎧であることが分かる。

 

 

「ハッ!どこぞの金持ち騎士様が転移のトラップにでも引っかかったのか?有り難く金に換えてやるってもんだぜ!」

 

「ツキが戻ってきたんじゃないですか親分!さっそく剥ぎ取りますかい?」

 

「まぁ待て……先にこれだけはやっとかねぇと……なっ!!」

 

 

 大男はそう言うと、腰に提げられた武骨なナイフを抜き放ち、兜のスリットから中へと強く突き刺した。手に伝わる感触から目を貫き、脳に届いたのが分かる。刺した箇所から血が溢れ、全身鎧の男は数回痙攣した後再び動かなくなる。

 

 

「おーおーまだ生きてやがったか。世の中バケモンみてぇなヤツも居やがるからな。長生きしたきゃ念には念を……ってな!」

 

「おぉ……さすが親分!」

 

「よっし!じゃあ楽しいお宝タイムだ!周りに武器が落ちてないかも探しておけよ!」

 

「へい!」

 

 

 そう言うと大男はナイフを抜いて仕舞おうとし……腕が動かない。

 

 

「あぁ?」

 

 

 見るとナイフを握った手、その手首が、全身鎧の男の手に掴まれて――

 

 

「あ゛あ゛……懐かしいな、この痛みは……」

 

 

 むくりと、上体が起こされる。手首を万力のような力で絞め折られ、ナイフから手を離してしまう。手首を掴んだまま、兜のスリットにナイフの刺さったまま、全身鎧の男はゆっくりと立ち上がった。

 

 

「クソがっ!アンデッドだっ!野郎どもブッ殺せッ!!」

 

「『ザミェルの氷嵐』」

 

 

 大男の号令と同時、即座に練り上げられた魔法が放たれる。小さなクレーターの中が吹き荒ぶ氷嵐に覆われ、部下たちの悲鳴が聞こえてくる。

 

 

「馬鹿な!まさかこいつリッチーか!?」

 

「今馬鹿って言った?馬鹿って言った奴が馬鹿でござる」

 

 

 部下に期待するのを諦め、空いた手で愛用の騎士剣を抜き、なんとか斬り殺そうとするが力ずくで地面に引きずり倒される。

 

 

「がぁっ!!」

 

「装備を見るに貴公が隊長だな?とりあえず他のヤツらは要らんな」

 

 

 片腕で倒れる大男が抑え付られ、空いた手の中に輝く文字列が浮かぶ。その中の一つを握ると手には青い結晶で作られた杖が握られていた。

 

 

「頭を下げておけよ。『アデューラの月の剣』」

 

 

 杖の先から冷たい魔力で作られた大剣を生み出し、ぐるりとクレーターの中を一回り冷気を纏わせて薙ぎ払う。

 部下たちの悲鳴が止まり、氷嵐が収まる。辺りには凍てつき両断された死体が転がっていた。

 

 

「さて、落ち着いたところで色々聞きたいことがあるでござるよ」

 

「畜生!ふざけやがって!てめぇなんぞと話すことなんざねぇよ!!」

 

「安心するでござる!何を隠そう拙者は説得大得意侍ゆえ!」

 

 

 もがく大男の剣を持った腕が踏まれて圧し折れ、顎を掴んで持ち上げられる。蹴りを入れるも意に介さず、スリットに刺さったナイフを抜いた。

 

 

「ナイフで拷問でもする気か?馬鹿にしやがって!死んでもてめぇの思い通りになんざなるかよ!」

 

「拷問なんて酷い真似するはずなかろう?ただ……目を、見ろ」

 

 

 顎を掴んだまま目を覗き込んでくる。スリットの中、ナイフで穿たれた先、血を零す眼孔のさらに奥。世界を、焼き尽くすような、黄色い、灼熱が、見えた。

 

 

「なんだ!!やめろ!!俺の中に入ってくるな!!!!!」

 

「『発狂伝染』。見つめ合うと素直にお喋りできるようになるでござるよ。さぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈エルデの馬鹿side〉

 

「いやーなんとも幸先の良いスタートでござったな!目を覚ましてすぐ色々教えてくれる親切な人と出会えるばかりかお金まで手に入るとは!1回死にかけたしもうこれ半分異世界転生では?テンションあがるなぁ!」

 

 

 情報収集とお宝タイムを終えてにっこにこで街に向かって歩き出す。なんと驚くべきことにこの世界では貨幣経済が成り立っているのだ!狭間の地でもルーンを使って物資のやり取りはできたが、紙幣なんてものが存在できるのは人々が理性的であり信用された国家がある証拠である。これはスゴイ!

 聞いた話をまとめると、この世界は善良な女神によって運営され、宇宙から暗黒生物が降ってくることもなく、世界を燃やし尽くそうとする邪教徒もおらず、ムカデで不老不死になろうとする邪教徒もおらず、ヤバイ水で不老不死になろうとする邪教徒もいないとても清浄な世界らしい。

 

 

「しかも一番近い街が駆け出し冒険者の街だとか。冒険者ギルドまであるとか神かな?いやうちにも神いたわ。狭間の地にも冒険者ギルドがあればなぁ!」

 

 

 この世界にも魔物がいて魔王がいて平和が脅かされたりしてるようだが、それでも狭間の地とは比べものにならない。あっちはそもそも脅かそうにも平和なんてないからだ。昔はあったらしいがここ数百年はない。

 

 

「なんとか冒険者ギルドのシステムを向こうに持ち帰りたいものでござるな。最初は分体でも作って運営させるか?でも拙者の顔だと誰も近づかない気がするでござる」

 

 

 野蛮極まりない狭間の地だが、それでも馬鹿しかいないわけではない。激動の時代に、住民のほぼ全員を殺して回った野蛮界の頂点はみんなに知られているのだ。ナイフべろべろ嘗め回してる追い剥ぎも、棍棒振り回してキーキー叫んでる亜人も、この馬鹿を見かけるとスンッってなり静かに去っていく。

 

 

「拙者が主導すると何もかも上手くいかん気さえしてくるな……まぁとりあえずこの世界をエンジョイする方が先決でござるな!さらにラニ殿へのお土産を用意できれば満点でござる」

 

 

 何事もなく時間は過ぎ(ギルドが楽しみすぎて途中から走った)駆け出し冒険者の街アクセルが近づいてくる。霊馬トレントを使えれば早かったのだが、うっかりネクロマンサー扱いされても困るのでこの世界の霊体の扱いが分かるまで自重しているのだ。

 

 

「入街料とかは無し。ギルド登録は千エリス。親切隊長が三十万エリスもくれたからしばらくは余裕そうでござるな。やはり旅とは人との出会いがあってこそでござる」

 

 

 本人に聞かれたらアンデッド化間違いなしの妄言を吐きつつも街の門をくぐる。想像よりも遥かに規模が大きく、王都ローデイルに匹敵する土地にレンガの建物が並び道を馬車や人々が歩いている。あまりのファンタジー中世文明的光景に眩暈がしてきた。どうしてうちの土地も同じ剣と魔法のファンタジー世界なのにここまで差ができるのか。

 

 

「いかん……底辺から見上げれば高低差が心に響くでござる。現代日ノ本の発展を思い出せ!スマホが無ければセーフだ!」

 

 

 道端で頭を抱えて独り言をつぶやく全身鎧マンに道行く人たちから困惑と警戒が伝わってくる。慌てて気を取り直し、手近なおじさんに冒険者ギルドの場所を聞く。

 

 

「失礼。冒険者登録をしたいのだが、ギルドの場所はどちらでござろうか?」

 

「冒険者登録!?その見た目で!?アンタどっからどう見ても歴戦の勇士じゃん!?それで駆け出し未満なのかい!?この道をまっすぐ行って右に曲がれば看板が見えるよ!?」

 

 

 普通にびっくりされ、周りの人も頷いている。ヘルムにチェインメイルを合わせた頭部に、斬撃痕の残る丁寧な手入れのなされた鎧と籠手。腰には美しい拵えの刀と水晶を削り出したような杖を提げ、狼の毛皮飾りやマントは何度も染み込んだ血を洗った色合いになっている。駆け出す前に冒険終盤感が漂っていた。

 驚きながらも律儀に道を教えてくれたおじさんに礼を言い、ギルドへと歩いていく。

 

 

「鎧を着ているのが日常過ぎてどう見られるのか思いもしなかったでござるな。まぁ侮られるより損は無かろう、たぶん」

 

 

 たどり着いた冒険者ギルドの扉を開き、おいしそうな匂いのする中へ入る。新参に絡む荒くれ冒険者へのイメトレはばっちりだ。

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

 

 ウェイトレスのお姉さんが愛想よく出迎えてくれるが、特に案内などはしてくれないようだ。ギルドのシステムは常識ということだろうか?ギルドの中は薄暗く、奥は酒場になっていて何人もの冒険者と思わしき者たちが飲食と酒を楽しんでいる。そのうち何人かはこちらを見て何かあったのかと警戒をした。なぜ?

 とりあえず登録ならば受付だろうと4人いる受付の一番巨乳の受付嬢の列に並ぶ。他の空いた受付からの視線は無視だ。

 

 

「はい、今日はどのような依頼でしょうか?」

 

「いや、冒険者登録をしにきたでござるよ。」

 

「はい、登録……登録!?し、失礼しました。ではまず手数料の千エリスとお名前をお願いします」

 

 

 名前。なんかこう……数百年ぶりに名前を尋ねられた衝撃に思考が止まる。最初の名は葦名の地を出る際にけじめとして捨て、狭間の地にたどり着いてからはなんと名乗ろうかと考えていたが……思えば誰一人名前を聞いてこなかった。みんな初対面だときっちり自己紹介してくるのに、こちらの名前は全く聞いてこなかったのだ。名前を聞かれないまま王になり、名乗らないまま星で暮らしている。なんなら妻であるラニ殿でさえ拙者の名前知らないのでは?数百年、王とか私の王とかお前としか呼ばれていないことに今さら気づいて愕然とする。

 ……いや、もう、名無しで行こう!ラニ殿に名乗って名前で呼んでもらえなかったら発狂死しそうだし。

とりあえずこの世界で使う名前を決めなくてはならない。○○村の兵士さんみたいな感じにしておけば分かりやすくていいだろう。千エリスを差し出し名を名乗る。

 

 

「はい、〈ハザマエルデオー〉さんでいいですね?」

 

 

 なんかサラブレッドみたいになったでござるな……

 

 

 

 

Tips:新エルデ王への評価

非常に不評(1603件のレビュー)

 

最も参考になったレビュー

 

ぶっちぎりで一番頭おかしい(失地騎士@土地返せバーカ)

 

何もしてないのに突然無言で何百回も殺されて意味不明すぎて文句言ったら「まだ持ってないから防具一式が欲しいでござる」口で言えよ!人類には言葉という文化があるの知らんのか?クッソ野蛮な地から流れ着いた野蛮ニスト。こいつだけはマジで意味分からん理由無くても切りかかってくる。飯食ってたら背中から大剣ブッ刺してくるしんで理由は特にないでござるとかマジ死ねウ○コ食って死ね!

 

3257 人がこのレビューが参考になったと投票しました




遂に名前公開のハザマエルデオーことハザマさん。冒険者ギルドにいきなり初めて見る血なまぐさいフルアーマー戦士が現れたら意識高い人は警戒するよねっていう。ウェイトレスが説明してくれないのも駆け出し感ゼロだからです。
武器は名刀月影に結晶杖(色々使う)防具は戦鬼シリーズ一式。カーリア騎士と迷ったけどロイヤル感皆無の蛮族侍なので戦鬼に。

一周目で狂い火封印してラニ様エンド。周回してないけど何百年も経っててちょくちょく狭間の地うろついてるのでレベルはかなり高い感じ。レベルカンストではないです。

ソウルに比べてルーンの描写が分からなさすぎる。ルーンで取引ってなんだよ…
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