この馬鹿らしいエルデ王に祝福を!   作:ポポァ

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感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
読んでくれる人の反応はとても励みになります。

サブタイトルは雰囲気でなんとなくつけてます。

皆さんのお蔭でなんと拙作が日間ランキング入り。嬉しくて忌み笑いの面みたいな顔になりました。


第5話 夜限定でエンカウントするタイプのエネミー

 

 

 言葉の難しさを考えさせられる風呂から上がり、冒険者ギルドへクエスト完了の報告に向かうカズマと別れ、これからどうするかを思案する。

 

 

「さて、これからどうしようか。その辺ぶらぶらと言った以上は適当に彷徨って、何か面白いものでも探してみるか」

 

 

 脱衣所でルーンパワーを使いパパっと装備した戦鬼の鎧一式に、武器は街歩きなので大型ナイフを1本腰に提げるだけにしておく。

 

 まずは大通りから散策を始めてみることにし、歩きながら出店などを覗いて回る。

 日の暮れかかった頃の大通りは、夕食の食材を買い求める婦人や、飲みの店を物色する冒険者たち、家路へと駆ける子供の騒ぎ声などで大いに賑わっている。

 

 

「ああ、なんという素晴らしい光景でござろうか……」

 

 

 こういうのでいいんだよ、こういうので。平和な街の日常に、プラス要素の冒険者たち。剣と魔法のファンタジー世界のあるべき姿がここにある。

 お店の人は目が黄色くぎらついてないし、婦人は血濡れの鎌とか持ってないし、冒険者たちはこちらを見て即増援要請の角笛吹いたりしないし、子供が外を出歩けてる。

 

 

「どうしてうちはこうじゃないんだ……これがデフォルト残機ゼロ世界の力だというのか……?やっぱライフ低い方が平均アライメントがLaw寄りになりやすいんでござろうか……?」

 

 

 やっぱり残機ゼロってのが大きいのかもしれない。殺されたら嫌だからお互いを殺さないようにしようねって感じで損得勘定に持っていけるからだ。

 石鹸3個くれるならギリ死んでもいいかなってレベルで命が軽い世界で、道徳心を育むのは難しいのだろう。あいつら馬鹿ばっかだし。

 ぶつぶつと独り言を言いながら歩き、そっと周りの人が避けていく道なりに進むことしばし。とても美しく立派な大教会が見えてきた。狭間の地のマリカ教会では貴重なアイテムが手に入る、もしくは貴重なアイテム+頭のおかしい殺人鬼のセットだったがこの世界の教会はどうだろうか?大きな扉を開けて中に入ってみる。

 

「お邪魔するでござる。かなり広いな……真ん中に行ったらボスが降ってきそうなくらい広い……」

 

 

 教会の中はとても広々としていて、数多く並んだ長椅子にはちらほらと祈りを捧げる人たちがいる。

 豪華なステンドグラスが落ちかけの夕陽によって鮮やかに室内を彩り、中央奥にあるとても美しく豊満な体を持つ女神像が神々しく照らされている。おそらくあれが親切隊長(第1話)に教えてもらった女神エリスなのだろう。

 壁を背にしてしばらく待機しつつ中を観察し、頭おかしい殺人鬼も天井に張り付いた大型ボスも居ないことを確認し一息つく。すると視線を下げた事で床にこっそりと刻まれたメッセージが目に入ってくる。

 

【エリスの胸はパッド入り】

 

 

「これは……なるほど、そういうことか……」

 

 

 床に書かれた文字を見て、拙者の極めて優れたインテリジェンス侍ブレインがすぐさま正しい答えを導き出す。これはつまり、人々の勝手な思いが女神の正しき姿を歪めてしまったことに反対する、いわばチチリックに対するパイテスタント*1といえる人が書き残した切なる叫びなのだろう。

 胸を、盛るな。と。

 

 

「分かるぞ。拙者にはその思いがよく分かる。神の在るがままの姿を人の都合で改ざんして何が信仰だというのか。なればこそ、その思いには応えてやらねばなるまい……!!」

 

 

 なんとなーく気分的に防具を全く使わないありきたりな物に素早く変更しつつ――

 

 

「偽りの乳では、必ずやがては歪みが生まれるのだ!『回帰性原理』」

 

 

 あらゆる欺瞞を取り払う、万物を変わらぬ姿へ回帰させる力の波が放たれる。薄く光る神秘の力が聖堂内に淡く溶け込み、欲に歪められた女神像があるべきスマートで清楚な姿を取り戻した。

 驚いて祈りを止めた信者たちが、正しきnewな女神像への変化にざわめき始めた。

 

 

「信仰とは心の性癖。また一つ迷える人々を正しく導いてしまったでござるな。できる侍はクールに去るでござる」

 

 

 そっと戦技『暗殺の作法』を使用し、姿と足音を消して速やかに立ち去る。エリス教の聖人認定されても困っちゃうでござるからな!

 そうしてアクシズ教徒の仕業に違いないとざわめく教会から痕跡を消し日の落ちた街に消えるのであった……

 

 

 

 

Tips:正乳律原理主義

 

昔、エルデの王に至った記念に、ラニと二人の肖像画を三人の絵描きに描かせた

 

ありのままを描いた一人には褒章を与えた

胸を盛って描いた一人は縄で縛って海に投げ捨てた

胸を盛って肌を白くして腕を二本にして「こっちのほうがえっちじゃん」とか言った最後の絵描きは鎖で雁字搦めにして塊の重力石を抱かせて腐れ湖に沈めた

 

おっぱいはありのままがいい、信仰と同じように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 素晴らしい善行を成し遂げた後、完全に日が暮れた夜の裏路地を、戦鬼一式に着替えなおして歩いている。

 表通りのような治安は保たれておらず、みすぼらしい姿で路肩に座り込む家無しや、吐瀉物に塗れて地面に転がる身ぐるみ剥がれた酔っ払い、ナイフをちらつかせながらこちらを品定めの目つきで眺めるゴロツキ共など、裏路地の正レギュラーメンバーともいうメンツが揃っている。あとは巨大ネズミなんかがいれば試合にも出れるだろう。

 

 

「こう……あれだな。実家のような安心感……」

 

 

 なんとも悲しいことにこの薄汚い空気に酷く馴染みを覚えてしまった。なんならさっき感動した表通りの街並みよりも良い空気まである。

 このままうっかりレギュラー入りして部長に「お前は裏路地の柱になれ!」とか言われてしまってはたまらない。自分うっかり迷い込んでしまった善良な街人ですけど?みたいな態度をとってゴミ共との心の距離をはっきりしておく。

 そのまま裏路地をキョドりながら進んでいくと、建物の死角にぽっかりと空いた袋小路的スペースがある。……そういえば祝福を更新していない。いかにもな人目につかない場所だしリスポーン場所をこの街にするためにも祝福を設置しよう。そう思い袋小路に入ろうとすると、建物の影から――

 

 

「へへっおい「ルーンパンチ!!」ぐはぁ!!」

 

「説明しよう。ルーンパンチとは毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度曲がり角で角待ち待機して襲い掛かってくるクソゴミウ○コ共への溢れんばかりの憎悪をルーンにして拳に込めた一撃だ。効果は相手を死に体にする」

 

 

 角待ち待機していたゴロツキの顎を光り輝く秘文字(ルーン)を纏った拳で殴りぬく。顎が砕け脳が揺れ、意識を落とし崩れ落ちるゴロツキの喉首を掴んで持ち上げる。

 

 

「……とりあえず反射的に殴り倒したけどコレどうしようか……?山に自生する野良人間なら適当に切って捨てるが、常識あるモラリスト侍としては街中で人間を殺めるのはアカンでござるよなぁ……」

 

 

 ぷらんと揺れるゴロツキを持ち上げたまま思案していると、どうやらリンクしてるタイプのゴロツキだったらしく背後から新たなゴロツキが近づいてきた。

 

 

「テメェなにして「ルーンキック!!」がはぁ!!」

 

「説明しよう。ルーンキックとは毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度曲がり角の敵を警戒していると後ろに沸いて襲い掛かってくるゴミカスウ○コ共への溢れんばかりの憤怒をルーンにして足に込めた一撃だ。効果は相手を吹き飛ばしダウンさせる」

 

 

 後ろから声を掛けてきたゴロツキの腹を光り輝く秘文字(ルーン)を纏った足で蹴り飛ばす。吹き飛んで路地に転がり気絶したゴロツキの胸倉を空いた手で掴んで持ち上げる。

 

 

「……いやいやいやダメでしょ!まずい!ガイアが拙者に裏路地のエースになれと囁きかけてくる!このまま殴り倒していると絶対良くない裏ルートに突入する!」

 

 

 両手のツインゴロツキをそっと地面に降ろす。新たなゴロツキがリンクしてくる前に、大きなズタ袋を二枚取り出しそれぞれしまって隅っこに隠しておく。

 さっさと祝福を設置して立ち去らなければならない。準備として祝福を模した呪物、祝福擬きを袋小路の真ん中に置く。そしてこれを祈りによって本物の祝福に改変するのだ。

 

 

「この作業久しぶりでござるなあ……よし。これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福これは祝福よしできた!!」

 

 

 ピュアな祈りによって祝福擬きを祝福し祝福に変える(?)。もう自分でも祝福って何なのかよく分からなくなってくるが万事上手くいったのでオーケーだ。祝福〔アクセルの街裏路地〕が正しく機能しているのを確認し、リスポーンポイントを更新次第に足早にこの場を立ち去る。

 後に残るのは二つのズタ袋、そして怪しい騎士がゴロツキを殴り倒し袋に詰めて怪しい儀式を行っているのを目撃してしまい、恐怖に慄く浮浪者だけであった……

 

 

 

 

Tips:祝福

 

かつて褪せ人をエルデンリングに導いた祝福は、新たな世紀には存在しない

自らの意志のみで道を決めることになったが、導きは無くとも祝福自体は残っている

これを利用し、己の意志で、己を前と決めた方向へ導くのだ

本来は、祝福無き世で全ての人間が行っていた事である

*1
実在の人物・宗教とは一切関係ありません




こいつ一人でいると狭間の地のネガキャンを呟くか人間に暴力振るうかしかしてねーな?
戦技は長い長い時間をかけて練習し、戦灰無しで使用できるようになっています。武器種制限はそのままですが。
読んで下さりありがとうございました。
話が全然進んでないけど、ちょっとずつ更新していくので気長にお待ちください。
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