真剣で可能性の獣に恋しなさい!(凍結中)   作:つばめ勘九郎

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第一話 猟犬と黒獅子

 

 とある国の山岳地帯に広がる広大な森林や草原。

 

 山を降り草木を抜けた先には太陽光でエメラルドブルーに近い色を発光させる大きな川があり、横幅や深さを考えればとても人が自らの足で渡り切るには不可能なほどで縦の長さなど目測で測ろうと思いたくないぐらいには果てしなかった。

 

 入り組んだ山々の麓を縫うように流れる川の壮大さはまさに絶景の一言に尽きる。

 

 だが、そんな景観を損なう集団がその川の近くで座り込んだりしていた。

 

「くそったれ!なんでこんなところまで()()がいるんだよ!」

 

「国境はとっくに超えてんだ。さすがにもう追ってこないだろう」 

 

「だといいが...」

 

 悪態をつく彼らは俗にいうテロリストだ。

 

 その数は二十人かそこらで、その全員が迷彩服を着込み防弾チョッキに拳銃やライフルといった武装を施していた。

 

 そんな彼らの現状はとても厳しいものだった。

 

 当初計画していた作戦はものの見事に瓦解し、仲間達の大半は捕まり残った彼らは逃走を図り再起を企てていた。

 

 しかし、そんなテロリストを見逃すはずもなく...

 

「Hasen ...」

 

 猟犬はしずやかにその眼光を光らせていた。

 

「...Jagd」

 

 鬱蒼とした林の中を駆け抜け現れたのは赤い髪を靡かせる迷彩服を着た女だった。

 

 その女が現れたと思いきやテロリストの一人を駆け抜け様に蹴り飛ばし、吹き飛んだ男は川の水面を数回跳ねて向こう岸に横たわった。

 

「チクショウ!ここまで追ってきやがった!」

 

「にしても早すぎるだろうが!」

 

 口々にテロリスト達は臨戦体制を取り、装備していた銃を抜きすぐさま応戦する。

 

「我々猟犬部隊から逃げられるわけがないと知りなさい」

 

 赤髪の女はひらりひらりと銃弾を躱しまた一人とその手に持ったトンファーで叩きのめしていく。

 

「たかだか猟犬部隊の一人どうってことはない!」

 

「囲め囲め!相手は一人だ!これ以上好きにされるものかー!」

 

 残り少ない弾薬をこれでもかと浴びせるテロリスト達。だが彼らは一つ誤解していた。

 

 彼女が先程発した言葉。()()と言う言葉にを。

 

「コジマもいるぞー!」

 

 すると戦場には似つかわしくない可愛らしい大きな声が響き渡たり、その直後まるで砲弾が地面に着弾したかのように爆煙を上げ近くにいたテロリスト達を吹き飛ばした。

 

「わっはは!コジマ参上である!隊長をすけだちにまいったぞ!さあ、悪いやつは全員みなごろしだ!」

 

 爆煙が晴れ砲弾が着弾したような跡地に金髪で小柄な少女が立っており、随分と物騒なことを口走っていた。

 

 一体どこから現れたのか。

 

 そんな思考を巡らせていたテロリスト達だったが次なる来訪者によってその真相は明らかになった。

 

「皆殺しをしてどうするコジマよ。一人たりとも逃さず捕獲することこそがこの作戦の肝なのだ......はぁ、怖かった」

 

 親方!空から鎧が!なんて冗談も言いたくなる程に鋼鉄の鎧を全身に纏った巨大な塊が空から降りてきた。

 

 その人形の鉄塊はバックパックから火炎を勢いよく噴出させ着地の衝撃を和らげ着地してみせながらコジマと呼ばれる小さな女の子に渋い声で注意していた。最後の方は小声でなんて言っていたかテロリスト達は聞き取れなかったが。

 

「コジマは楽しかったぞ!今度アルにもう一回やってもらおう!」

 

「...私は二度とごめんだ」

 

「来ましたね、コジマ、テルマ。では作戦通りに」

 

「了解です隊長」

 

「あいあいさー!」

 

 隊長と呼ばれる赤毛の女に小さな女の子と巨大な鎧男?の三人は苛烈を増す戦場を蹂躙していく。

 

 その戦場を木々に隠れ見守っている一人の男がいた。

 

 その男はテロリストの仲間で先行して先の様子を偵察していたが、先程の後方から聞こえた爆音で危機を感じ戻ってきたのだが戦闘に参加せず様子見をして仲間の救出の機会を伺っていた。

 

「...なんて出鱈目な奴らだ。これじゃあ参戦しても焼け石に水だ」

 

「なら今のうちに投降することをオススメするぜ」

 

「なっ...!」

 

 突然背後から聞こえた女の声に驚き振り向き様に拳銃を抜き構えるが、その腕を絡め取られ組み伏せられた。

 

「イッ、いつの間に...!」

 

「当て身!」

 

「ぐはッ」

 

「...フィーネの言う通りテロリストの仲間が潜んでたな」

 

 その銀髪の女は慣れた手つきであっという間に拘束し暴れる男に当て身を喰らわせ気絶させた。

 

「弱いな〜、いや男だから弱いのか...アイツ以外は」

 

 そう言うと銀髪の女は耳につけた無線機を押さえた。

 

「こちらリザ、対象を一人捕獲。向こう岸にマルが蹴飛ばしたテロリストが一人転がってる。人員を手配してくれ」

 

『了解だ。今アルが目視にて確認した。すぐに手配しよう』

 

「それにしても相変わらずの怪力だな。テルのやつ今頃涙目なんじゃないか?砲弾並みの速さであの鎧ごと投げ飛ばすんだから」

 

『それについては同感だが無駄口を叩く余裕があるなら帰投後の書類作業は全てリザに任せても良さそうだな』 

 

「うげ...潜伏しているテロリストがまだいるかも知れないので速やかに任務を続行しやす」

 

 そう言うとリザは後方で待機していた部隊の数人がこちらに向かってきているのを確認し、速やかに周囲の索敵に奔走した。それはもう必死の形相で、山のように積み重なった書類を見たくないがために。

 

 場所が変わって、戦場より遠く離れた山の山頂付近。

 

 簡易テントが張られたその場所に佇む眼鏡を掛けた銀髪の女性がいた。

 

「作戦は順調のようだ。これならあと数分もかからずに作戦は終了する」

 

「コジちゃん達大丈夫ですかね。怪我とかしてませんか?」

 

「アルの様子からすれば問題ないだろう。それに彼女達ならあの程度造作もないことだ」

 

「えとえと、そういうことでなくてですね。その〜...あんな移動方法でしたので...」 

 

「...あー」

 

 そう眼鏡の女性に問いかける長身で金髪の女性。

 

 その問いに思わず質問の意図に納得したような声を漏らす眼鏡の女性だった。

 

 あんな移動方法。というのもかなり大胆かつ豪快な方法なのだ。リザが言っていたように人が人を投げ飛ばしただけなのだから。それもこの山頂付近から麓に向けての長距離投擲。

 

 すると二人が会話しているところに一人の男がやってきた。

 

「どうした二人とも?そんな不安そうな顔をして」

 

「あ!アルくん」

 

「アルか。ジークが二人の怪我の心配をしていたのだ」

 

 アルと呼ばれるその男は長身の女性よりもひと回り背が高く、黒い髪を風で靡かせ鍛え抜かれた肉体は隊服の上からでもわかるほど隆起しており、精悍な顔立ちに黒い肌が印象的であった。

 

「そうか、相変わらず優しいなジークは。心配せずとも二人とも無事だよ。それにあの二人がそう簡単に攻撃を受けて怪我をするわけないだろう」

 

「いや、そう言う意味ではなく...」

 

「ある意味攻撃の一種ではあるけど...」

 

「?」

 

 アルは二人の意味深な言葉に疑問符を浮かべた。

 

「まあ二人が怪我をしていないのは事実だ。それは私の解析でも明らかなのだから心配せずとも大丈夫だ」 

 

「フィーネの言う通りだ。ジークはこの後の事に集中すればいい」

 

「...そうですよね」

 

 そんなやり取りをしていると無線から女性の声が聞こえてきた。

 

『こちらマルギッテ。戦闘終了、後始末を頼みますフィーネ』 

 

『こちらリザ。周辺の索敵にも問題なしっ!帰投しまーす』

 

「了解だ二人とも。こちらも目視による確認と解析の結果異常無し、すぐに捕虜の治療と回収に向かう」 

 

「早速出番だなジーク」 

 

「うん!めっちゃ頑張ってくるよ」

 

 金髪の長身女性ジークは隊の数名を伴い下山して行った。

 

 残った二人と数名の隊員達は彼女達を見送り、器具の片付けに取り掛かっていた。

 

 一応アルは戦場に目を向け異常が起こらないかどうか確認し続けていた。

 

「問題なくジーク達はマルギッテと合流したみたいだな」 

 

「そうか、これでしばらくはひと段落できそうだ」

 

「最近忙しかったからな、特にフィーネは。これを機に溜まっている有給を消化したらどうだ?」

 

「それを言えばアルも同じだろう。...そうだな、たまには旅行にでも行ってみたいものだ」 

 

「なら俺が空の旅をプレゼントしてやろうか?文字通り空を旅する弾丸旅行だが」

 

「遠慮しておこう。そういうのはコジマだけで間に合ってる」

 

 なんて冗談混じりの会話を二人がしていた。

 

 するとそこに一人の女性隊員が手に器を持ってやってきた。

 

「あのアルさん、少し味見をしていただけませんか?」

 

「あぁ、構わないよ」

 

「副隊長も是非」 

 

「いただこう」

 

 アルとフィーネはそういうと手渡された器を受け取り器に入った少量のスープを口に含み味を確かめた。

 

「体に染み渡るいい味だ」 

 

「うん、美味い。また腕を上げたな」

 

「ありがとうございます!みなさん昨日から働き詰めでろくに食事も取れなかったと思いますので簡単なものでもと。よければお二人とも先に食べてください、お注ぎしますので」

 

「なら遠慮なくいただこう。お前達もある程度片付けが済んで者から食事に入るといい」

 

「ありがとうございます、副隊長。それと...アルさん、良ければまた料理教えていただけませんか?」

 

「別に得意というわけではないが、俺で良ければまた付き合うよ」 

 

「!!...ありがとうございます!」

 

 アルの言葉を聞きパァっと顔を輝かせたその女性隊員は深々とお辞儀して、二人を器を受け取って再度スープを注ぎに向かった。

 

「もう新人に慕われているのだな」 

 

「慕われているレベルで言えばマルとフィーネには敵わないさ。まあリザよりは慕われているつもりだが」

 

「おうおう俺より慕われてるってか、この色男」

 

 するとアルの背後から腕を回して抱きつきながら現れたのかのはリザだった。

 

「リザ、抱きつくな」 

 

「いつから聞いていたのだ?」

 

「ついさっきさ、あの新人ちゃんが頬を染めてアルにあつーい視線を向けてる時から」 

 

「だから離れろって」

 

「んなこと言うなよー、こうでもしないと誰かさんが所構わずうちの隊の子を落としちゃうからさー」

 

「落とすも何も俺は料理を少し教えただけだぞ?」

 

「それでも落ちちゃうんだからしょうがない」

 

「...百歩譲って好意を寄せられるのは仕方ないとしよう、だがそれとこれがどう関係するんだ」 

 

「なんだよ言わせたいのか、このこのー」

 

 リザがアルの頬を突っつきながらにやついていた。

 

 なんとなく察しはつくが、あのサバサバしたリザとはあまりに縁遠いことなので摩訶不思議に思ってしまう。

 

「匂いをつけてるんだよ」

 

「答えになってないぞ」

 

「なるほどマーキングか」 

 

「納得したのかフィーネ、てか犬かお前は」

 

「猟犬ですが何か。あ、俺もスープもらってこよーっと」

 

 ひょいっとアルから離れたリザはスープをもらいに駆けていった。

 

 相変わらずのらりくらりとした性分だなとアルは思った。

 

「恋愛についてはよくわからないが、とにかくアルがモテることだけは充分に理解した」

 

「謙遜する気にもなれないのがやるせないのだが」 

 

「そこは男の度量というものだろう受け止めてみせたらどうだ?」

 

「簡単に言ってくれるなー副長殿は」

 

 こればっかりはこの隊で唯一の男性であるアルにしか理解し得ない難問なのだが、そこは追々対処すればいいだけのこと。

 

 好意を寄せられているからと言って別段何かをするわけでもないので今後の自身の気持ち次第だろう。

 

 なんて考えていたアルだったが事態は刻一刻と変化していっている事に彼はまだ気づいていなかったのだった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 テロリストの残党を捕獲し本国へと帰還した猟犬部隊一同は僅かばかりの休息を取っていた。

 

 今回の作戦は随分前から計画されていたものだったらしく、生捕りにした事にも大きな要因が絡んでいるそうだ。

 

 上の意向に逆らわないのが軍の鉄則。余計な詮索をして在らぬ疑いをかけられるより命令に従事している方がよっぽど軍人としては正しいだろう。

 

 特にアルはそれを誰よりも認識していた。

 

「ご苦労だったね二人共、掛けたまえ」 

 

「「ハッ、失礼します」」

 

 呼び出しを受けアルとマルギッテが作戦室にやってくると中にはフランク・フリードリヒ中将が待っていた。二人はフランクに促され対面するように椅子に着席した。

 

「さて、二人を呼び出したのは今回の作戦成功を労うのともう一つ重要な任務を任せるためだ」

 

「重要な任務、ですか」

 

「うむ、君達もすでに知っているとは思うが私の娘クリスが日本に留学する件についてだ。兼ねてよりマルギッテにはクリスと同じく日本の高校に留学してもらう予定だったがアル、君にも同伴してもらいたい」

 

「私にも、ですか」

 

「中将、理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「別に君の能力を疑っているわけではないよ少尉、今回君達が向かう留学先の高校が少々特殊でね。その理由はわかるかねアル」

 

「はい、武都KAWAKAMIに位置する日本屈指の武道推奨の高校川神学園、若き強者達が集うその高校にあの武神がいるためですね」

 

「そうだ、そして武神は常に戦意に満ち溢れ好戦的かつ破格の強さを誇るという。そんな者とマルギッテが出会えばおのずと交戦必至だろう」

 

「申し訳ありません」

 

「別に君を責めているわけではないさ、私としては君の成長の一因となるなら大いに歓迎するところだ、だが上層部はそうもいかない。今では軍の顔とも呼べる彼女が万が一歯止めが効かず負けたとあっては何処の不埒者が調子づくかわからない。ならばストッパー兼武神対策、そして武神の実力を肌で体験し分析することを上は考えた」

 

「それが私が同行する理由、ということですね」

 

「そういうことだ。それに君達は両想いだと聞いている、この際二人で青春を謳歌するのもいいものだろう」

 

「なッ...!」

 

「なんだ、違うのかね?」

 

「そ、それは...」

 

「いえ事実です」

 

「ぉおい!アル!」

 

「ふふ...なるほど、どうやら私の早とちりで野暮なことを聞いてしまったらしい。邪魔者は早々に立ち去るとしよう」

 

 フランクは僅かに笑みをこぼしながら席を立ちそれを見て二人もすぐに立ち上がった。

 

「私からの話は以上だ。それともう一つアル、これを君に渡す。いつもの()()()だ」

 

 するとフランクは懐から黒い封筒を取り出した。受け取ったそれは赤い封蝋を施されたておりアルの表情が厳しくなった。

 

「それではマルギッテ・エーベルバッハ少尉、アル・シュバルツ特尉、作戦まで幾ばくか猶予はあるが任せたぞ」

 

「「ハッ!」」

 

 そうしてフランクは作戦室から退室していった。

 

 フランクが退室したことをしっかりと確認したマルギッテは内側から鍵をかけ誰も入って来られないようにした。

 

「さて、先程の発言の理由聞かせてもらおうか...アル」

 

 おっと、これは怒っている方だな。

 

「理由も何も事実だ」

 

「事実なものですか!私はお前と付き合っている覚えはないぞ!」

 

「だが俺はマルを好いている、そしてマルも俺に好意を抱いている、違うか?」

 

「た、たしかにそう...ですけど」

 

「ならなぜ否定する?」

 

「わ、私は...お前とは不釣り合いだ、仕事にかまけて女性らしいことは何一つしてこなかった...お前にはもっと相応しい女性が、いるはず...なんだ」

 

「じゃあなんであの時お前は俺に抱かれた」

 

 あの時というのは以前マルギッテと二人で酒を飲んでいた時、アルはマルギッテに対する心の内をポロッと言ってしまったのだ。

 

 美人だとか、可愛いとか普段言えない本音をついこぼしてしまったのだ。それを聞いたマルギッテは照れながらも否定するのだが妙に気恥ずかしそうで、アルは自分の正直な気持ちを否定されたことにむきになってしまいマルギッテをありのままの感想と本音を混ぜた熱烈な口説き文句を言ってしまったのだ。

 

 珍しくほろ酔いのマルギッテとアルは酒の勢いというのもあってか、ついに肉体関係を結んでしまったのだ。

 

 翌日の朝を迎え二人して内心「やってしまった...」と昨夜の出来事をバッチリ覚えていたため自責の念に苛まれた。

 

 その後何となく気まずい雰囲気となってしまい色々あってアルはマルギッテにちゃんと告白したのだが、マルギッテからの返事は未だ聞けていなかった。

 

 この際ハッキリと聞いておきたいアルは中将の言葉をこれ幸いとし、便乗することでマルギッテを追い込むことに成功したのだが...

 

「あれは...一時の気の迷いです」

 

「俺はお前の好みには合わなかったか?」

 

「違います!...ただ...どうしたらいいのかわからないのです」

 

 強い否定の後マルギッテは小さくも確実に今の自分の心情を語ってくれた。

 

「...こんなことは初めてで、私自身この気持ちとどう接すればいいのか、あなたとどう向き合えばいいのか...わからないのです。...正直に言えば憧れでした。こんな普通の女の子が抱くような気持ちに胸が高鳴ったのです...でも、あなたが周りの女性と接しているのを見ると私なんかではとてもそれらしく振る舞えるとは思えなかった...そう思うと同時に苦しくて、切なくて...だから」

 

「...そうか」

 

 アルの中で強く決意したものがあった。

 

 そして彼女ほど女性らしくこれほど自分をときめかせてくれる女性がいるだろうか、と確信した。

 

「...マルギッテ、お前の気持ちは充分理解した。だからこそもう一度ハッキリ言おう...俺はお前のことが好きだ、俺と付き合ってくれ」

 

「聞いていなかったのですか!私では...」

 

「そんなものは知らん、ただこれだけはハッキリ言っておく。マルギッテ・エーベルバッハという女ほど可憐で魅力的な女性を俺は知らない!他人と比べるな、お前がどうしたいのか本心を聞かせてくれ」

 

「わ、私は...」

 

 マルギッテは斜め下を向き黙り込んでしまった。

 

 これでもまだ足りないのか。

 

 そう思いかけたがマルギッテが何かを言いたげな表情でうつむいていた顔をあげアルの視線と合わせてきた。

 

 その表情はとても艶やかで熱を帯びていた。

 

「私も...あなたのことが...好きです。だから...お願いします、これ以上私が何か言う前に...私の口を塞いでください」

 

 それを耳にしたアルの行動は早かった。

 

 強引にマルギッテの体を引き寄せ強く抱きしめると彼女のその唇に自身の唇を合わせた。

 

 お互いの唇を貪るように絡め合う舌がさらに激しく動き、マルギッテから漏れ出る艶のある声が至近距離でアルの耳に届く。

 

 身長差のある二人だがマルギッテはアルの首の後ろに腕を回し、そんな彼女を抱き寄せ互いの距離をゼロしていた。

 

 軍服越しでありながら確かにお互いの体温を感じている二人の口づけは止まることを知らず、まるで今までせき止めていたタガが外れ呼吸を忘れてしまうほど熱中していた。

 

 数十秒後ようやく唇を離し荒く口で呼吸するマルギッテとアルの肩が上下に動く。

 

 二人は見つめあったままその余韻に浸っていた。

 

「...んぅッ!」

 

 かと思いきや、またアルがマルギッテの口を塞ぎ驚いたマルギッテ。

 

 そしてまた長いキスがはじまり、鍵のかかった作戦室の中で二人は確実にお互いの気持ちを確認しあった。

 

 

 




今回「真剣で大英雄に恋しなさい!」第一話を読んでくださった方には心より感謝します。 感想や誤字脱字、評価などしてくだされば幸いです。不定期投稿になると思いますが、なるべく心が折れないうちに書きたいことを書ききりたいので頑張って投稿していこうと思います。 それでは
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