激動の飲み会を乗り越えてはや六日。バンシィ・ノルンは今日もまた九鬼家従者部隊の一員としてせっせと働いていた。
働いていると言っても午前中はクラウディオの元で執事としての作法や所作を学び午後は戦闘訓練、津軽と共に盾の研究と新しい仮面製作、川神学園から下校してきた紋様との語らい、そして空いた時間で再び執事スキル向上のための復習。これが大まかな彼の一日のスケジュールだ。
基本的に九鬼家とその従者以外とは顔を合わせていないバンシィ。桐山鯉の言っていた武士道プランの申し子達や紋様が内々的にとある依頼をした西の武士娘とは一度も会ったことがない。どこでバンシィの正体が漏れるかわからない以上仮面が準備できていない今は顔合わせはなるべく避けるようにと努めていた。
それも明日までの話。
ようやく明日仮面が完成するとつい先程津軽から連絡があったのだ。
「いよいよ明日ですね」
「ああ、一体どんな仮面に仕上がっているのか楽しみだ」
「あのオッサンとはほぼ毎日顔合わせてんだろ?ア...バンシィは?」
「いい加減慣れろよステイシー。明日にはこのスケコマシ野郎も表に顔を出すんだぜ?」
「どうにも慣れねぇんだよなぁ〜これ」
「おい、あずみ...いい加減その呼び方はやめてくれ」
「んー?なんならエロ魔人って呼んでやってもいいんだぜ、オイ?」
「.....」
「もういいじゃないですかあずみ。バンシィも困っていますよ?」
「いいや!李はどうにもこいつに甘いからな!むしろもっと困れ!」
「そうそう。新人にはあだ名をつけてやらねぇとな。なあエロ魔人」
「...もうスケコマシ野郎でいいよ」
あの夜以来、あずみはずっとこの呼び方でバンシィを呼んでいる。流石に他の面子がいる前ではちゃんと名前で呼んでくれるが、バンシィを含めたこの四人がこうして集まった際には決まってスケコマシ野郎呼ばわりだ。
バンシィは心の中でひっそりとまたあのバーに行く日もそう遠くないな、と思い至っていた。ちなみに飲み会の翌朝、案の定ステイシーは二日酔いとなりせっかくの休日を苦しんで過ごしたそうだ。
「大丈夫ですかバンシィ?なんだか仏のような顔をしていますが?」
「いや、なんでもない。李は優しいな...こいつらと違って」
「お?なんだなんだぁ?まーたスケコマシ野郎が李を垂らしこんでんのかー?」
「おいコラ!誰が優しくないだ!お前の面倒見てるのは李だけじゃないんぞ!」
「なんだよステイシー、ヤキモチかぁ?」
「バッ!?ち、ちちち違ぇし!別に私はこんな奴にヤキモチなんざ焼いてねえし!」
「露骨に焦って、動揺してんのか〜?んん?」
あずみのからかう相手がステイシーにシフトしたらしい。李はそんなステイシーを見て生暖かい目で微笑ましそうにしていた。そしてバンシィは一時の休息を享受すべく無心の表情を浮かべ、ステイシーを仏のような広い心で見守っていた。
「してねぇし!全ッ然してねぇし!てかそこ!微笑ましそうにすんな!アルてめぇも仏みたいな顔やめろ!」
「アルじゃなくてバンシィですよ?」
「だあぁぁーー!もう!こいつら全然話聞かねぇよファック!!」
そんなやり取りがあと数分は続き、ステイシーがドカドカと自室に帰ったのを皮切りに今日の集まりは解散となった。
そしてバンシィは明日に備え早めに就寝したのだった。
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翌朝の早朝。
「起きてください。朝ですよ」
バンシィを眠りから覚まそうとする凛とした密やかな声が聞こえる。その声はしっかりとバンシィの耳に届き、体を伸ばしいつもの挨拶をする。
「おはよう李。毎度毎度起こしに来なくてもいいんだぞ?」
「いえ私がしたくてやってることですから」
九鬼のビルで寝泊まりするようになってから李は毎朝バンシィを起こしに来てくれていた。正直な話バンシィは朝に弱いわけでもないし決められた時刻には確実に起きれるのだが、この通り李は毎朝確実に顔を出しにくる。
「では、服を脱がせますね」
「いや自分で脱ぐし着替えも一人でできるから」
バンシィは自分で服を脱ぎ始めた。だが、上着を半分脱ぎかけた状態でバンシィの動きは止まった。
「...やっぱり今日も見るんだな」
「はい、これだけは譲れません」
「.......まあ俺は気にしないが」
そう言ってバンシィは服を脱ぐのを再開させた。
そしてバンシィの鍛え抜かれた肉体があらわになる。元傭兵時代に負った無数の生傷が歴戦の猛者だと知らしめるほどあり、細く引き締まったお腹周り、分厚い胸板、彫刻刀で刻まれたかのような彫りの深い背中、太く雄々しい腕と肩、それらを支えるアスリート以上に長く太い下半身を李はまじまじと見ていた。
「いつ見てもあなたの体は逞しいですね」
「そうか?近頃の若い女はこういう体よりもっと細くて綺麗な体の男を好むって聞くが」
「人それぞれですよ。私は好きですよ、あなたの体」
「それ絶対他の奴に言うなよ?」
「いい体と言いたいからだ...フフ」
「...五十点」
「そんな!?渾身の一発ギャグだったのに...」
バンシィの採点を聞いて李がわざとらしくしなだれ落ちた。そんな李を無視してバンシィはそそくさと執事服に袖を通す。ちなみに先程の李のダジャレに対する点数はバンシィの温情も込められてのものだ。
すると李は何かを思い出したらしく、ハッとなりさっきまでのおふざけモードから切り替えて立ち上がった。いや本人からすれば至って
「ちなみに今日のバンシィの予定は午前に津軽様と会い新しい仮面の試着、午後は私と一緒に市街に出てパトロールです」
「鍛錬は無しか?」
「はい、クラウディオ様からそう仰せつかっております」
「わかった。よろしく頼む」
「ええ、こちらこそ...ちなみに午前も私はあなたと一緒です」
「何かあるのか?」
「いえ暇なので」
有能な李が午前中は暇になるとは九鬼の人材の豊富さは恐るべし、とバンシィは内心そう思った。だが実際はこの日に備え李が仕事を繰り上げて終わらせたためで、何故李がそうしたのか理由を知っているのはあずみだけだった。そしてあずみはそんな李を見ながらニヤニヤしていたらしい。
着替え終えたバンシィは李と共に朝食を済ませある程度時間を潰してから津軽海経がいる研究室に向かった。何故時間を潰す必要があったかと言うと、バンシィと李が朝食を済ませた時間帯ではまだ津軽が起きてないかもしれなかったからだ。津軽と会うたびに彼の目の下のクマが酷くなっているのを知っていたバンシィは昨日会った際にちゃんと睡眠をとるようにと注意し、彼もそれに頷いた。そして津軽に少しでも睡眠時間を多く摂って欲しいというバンシィのさりげない気遣いで時間を少し遅らせたのだ。
そうしてバンシィと李は津軽のいる研究室の前にやってきた。
そして扉を数回ノックすると中から津軽の声がした。寝起きなのか聞こえてきた声は掠れていた。
「失礼します」
李が扉を開けながら入室時の挨拶を言葉にした。
そして二人の目に飛び込んできたのはうつ伏せで床に倒れ込んでいる津軽の姿だった。
「なっ!?」
「これは一体!?」
「やぁ〜バンシィくん、それと李さんもおはよぉ」
二人の驚愕した態度とは裏腹に津軽はそのか細い声で呑気に朝の挨拶をしてきた。
「一体何があったんですか!?」
李はこの惨状を見て素早く津軽を抱き起こした。津軽が倒れてる床には散乱した書類に散らかった工具の数々と床と津軽の体に付着した赤い液体、まるで泥棒に入られ襲われたような有様だった。
「津軽、お前...」
バンシィもこの光景を目にして言葉が出なかった。
「はは...やっちゃったよ...申し訳ない二人とも...」
「津軽様、お気を確か!」
「もう...いいかな、楽になっても」
「津軽様!」
「...李、落ち着け」
「ですが!」
「津軽......お前寝てなかったな?」
「へぇ...?」
訳がわからないといった様子の李が素っ頓狂な声を漏らした。そしてそれは静かな研究室に響いた。
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「いやぁ〜本当に面目ない!まさか自分でもここまで没頭しちゃうと」
「反省してください」
「まったくだ」
「...はい、申し訳ありませんでした」
冗談混じりに津軽が申し訳無さそうにしていたが、李とバンシィの真剣な顔つきに流石の津軽もこれはまずいと思ったらしく真剣に反省した。
何故津軽はあの場で倒れていたかと言うと、単に寝不足と空腹で力尽きて倒れただけなのだ。昨日バンシィが津軽の元から去ったあと、彼は食事も睡眠も休憩も忘れてぶっ通しで仮面製作を続けていた。あれもこれもとやっているうちに翌朝となり気づいた時にはあの場で倒れていたのだとか。ちなみに床と彼の体に付着していたのは彼が最近ハマっているトマトジュース。なんとベタなことを。
「でも健康にはいいと思うんだー」
「知らんがな」
呆れ果てるバンシィ。もはやツッコむことすら面倒だと思っていた。とりあえず李が持っていた携帯用あずみ飯とエナジードリンクで一時的に回復した津軽。本当に李は優秀だと腹の底から思った。
「まあそう言わずにさ、ついに君の仮面が完成したんだ!今すぐ着けてくれ!」
そう言って津軽は大きな箱を取り出した。そしてその中から
黒いフルフェイス型の仮面で、顔の部分は金と黒色のフレームで覆われており、額には金色の大きな角を生やしていた。
「邪魔じゃないか、これ?」
「何言ってるんだい!いいかい?これは超広範囲の通信を可能とするブレードアンテナで索敵能力もあるんだ!それに見てくれ、このシルエット!まるで一角獣を思わせる雄々しくも美しい黒と金の黄金比!金色だけにね」
「ハッ!!
「反応しなくていい」
気でも触れたのか津軽がそんなことを言うと李が反応を示す。余計な小ネタを挟むなとバンシィは津軽に呆れた。
「さらに両サイドに備え付けられた超小型バルカン砲!その威力は岩をも砕く!」
「おお!」
「仮面にはいらないと思います」
「そ、そうだな...」
さっきとは真反対に李が冷めた感じで冷静にツッコんで呆れていた。危うくバンシィは我を忘れるところだった。
「そしてなんと言っても君が考案した製鉄方法で君自身の闘気を練り込んだフェイスフレームの変形機構!」
「これは変形するんですか?」
「もちろん!バンシィ君が闘気を高めればそれは発動する!まあ以前見せてもらったデストロイモード時限定だけど」
「なら滅多に見れないですね」
「そう!そこなんだ!滅多に見れないからこそカッコいいのだよ!...どうかなバンシィ君、この仮面は?」
津軽は仮面の出来栄えを聞いてきた。
「いいんじゃないか?特に超小型バルカン砲は気に入った」
「気に入ったんですね...」
「ではさっきも言ったように是非試着してくれ」
バンシィは津軽に言われた通りその仮面を装着した。着け心地は問題ない。頭にぴったりとフィットするしズレる心配は無さそうだ。重さもさほど感じない。実にヘルメットとしては上等なものだと実感できた。
「うん、着け心地もいい。視界も問題ない範囲だ」
「それは良かった!でも...」
「やはり執事服とは合いませんね」
九鬼の執事たる者、まずは見栄えから整っていなければならない。仮面をつけて違和感が目立つのなら尚更だ。
「でも大丈夫だよ!こんなこともあろうかと帝様に執事服のカスタム許可は取ってある!」
『用意周到だな...ん、これは?』
バンシィが声を出すといつもと違う声色が聞こえてきた。
「ボイスチェンジャーさ。正体がバレないようにするなら声も変えた方がいいと思ってね。今の設定は比較的君の元の声に近いものになっている。ちなみに声のバリエーションは二十種類ある」
『無駄に高機能だな...だが助かる』
「それで服の方はどうカスタムされるのですか?」
「あ、それも大丈夫。すでにカスタム済みの服がここにあるから早速着てみてくれ」
「本当に用意周到ですね...」
早速バンシィは渡された執事服に着替えることにした。一度被った仮面を脱ぎそのまま元々着ていた執事服も脱ぎ捨てる。それを李はテキパキと綺麗に畳んだ。そしてカスタム済み執事服に袖を通し再び仮面を被る。
「おお...!」
「似合ってます!」
二人から見た今のバンシィは黒そのものだった。といっても黒一色というわけではなく、中に着たシャツはネイビーブルーで黒に近い色合いを出しているが似合っており、ネクタイは金色。黒のジャケットにうっすらと見える程度に編み込まれた金糸が程よいアクセントになっていて一見全身真っ黒で暗めに見えるが、品位を損なわなずバンシィの体格に合った逞しく雄々しい風格がそこにはあった。
そして津軽に手渡された黒の手袋をはめて完成!新生バンシィ・ノルン執事服バージョンの誕生である。
「うぅ、こんなに立派になって...」
『茶化すな、てかお前は俺の母親か』
涙を拭うような仕草をしながらそんなことを口にした李に冷静なツッコみをした。
「さて、これで私もゆっくり寝られるよ」
『あんたはもっと寝ろ』
心の底からそうツッコんだバンシィ。感謝はしているがもう少し自分の体を労れと強く思った。
そうしてバンシィと李の午前の予定を終え、二人で津軽を部屋まで連行し寝かしつけたのだった。寝かしつけたと言っても子守唄を聴かせたとかそういう穏やかなものではなく、「私はまだ戦える!」と駄々をこねる津軽を李が強引に当て身をして強制的に眠らせたのだが、後にバンシィはこう語った。「あれは恐ろしく早い手刀だった。俺でなければ見逃してしまうな」と、李の当て身を色んな意味で絶賛するのだった。
それからある程度時間が経ち、昼休憩を終えた二人は並んで廊下を歩き一階のフロントを出て外に一歩踏み出した時だった。
目の前からよく知っている顔の小さな女の子が走ってきた。
「フッハハー!九鬼紋白、顕現である!とぉーー!」
紋白が元気よく走ってきてバンシィにダイブした。それを難なくキャッチして抱きかかえたバンシィ。
「さすがバンシィだ。よく我を受け止めた」
『何故俺だと?』
バンシィは不思議に思った。今の彼は仮面をつけ、執事服もかなり変わっている。事前にこの姿を見せてはいないバンシィは何故自分だとわかったのか疑問を浮かべた。
「我がお前を見間違えるはずなかろう。例え姿形が違っても溢れ出るオーラを読み違えるものか。それに九鬼の従者で仮面を被っている者などお前だけだからな」
『流石は紋様、見事な慧眼です』
紋白の洞察力にバンシィは素直に感嘆の言葉を述べた。
「それでバンシィよ!それが新しい仮面か!」
『はい。そうです』
「おお〜!流石津軽だな、お前によく似合っている!声も少し変わっているな。うむ、あやつも気を利かせたのだな。しかし...獅子っぽさはあまりないな?」
『大丈夫です。変形するそうなので』
「おお〜!変形するのか!!男のロマンというやつだな!」
『バルカン砲もついてますよ?』
大興奮の紋白。とくにお気に入りのバルカン砲の説明をバンシィがしようとしたら、横にいた李に頭部を軽く叩かれた。自重しろということなのだろう。う〜む、げせん。
「そうであった!せっかくなのだからバンシィに義経達を紹介しよう!」
紋白との会話に花を咲かせていたバンシィだったが、紋白の後ろについて来ていた二人の少女を指し紋白がそう言った。
「はじめまして。義経の名前は“源義経”と言います」
「ども、一応武蔵坊弁慶を名乗ってます」
『そうか、君達が。私はバンシィ・ノルン。バンシィと呼んでくれ。一週間前からここで世話になっている』
以前より紋白から話は聞いていた例の子供達。初対面ではあるが一方的に彼女達を知っていたバンシィは簡潔に名乗った。そしてひと目見てバンシィは彼女達が強いということを見抜き、内心この歳でこれだけの強さを有していることに感心した。
するとバンシィの
「あの...もしかしてバンシィさん、一週間前に揚羽さんと戦いました?」
「うむ、姉上とバンシィは確かに戦ったぞ。実に見事な試合だった!姉上が負けたのは少し悔しいが、それは我の目に狂いはなかったという証拠さ!」
「あの揚羽さんに勝ったんですか!?」
「まじ...?」
「ええ、バンシィが勝ちました。私も見てましたから」
バンシィが言うまでもなく、紋白と李がそう口にした。それを聞いて未だに信じられないと義経と弁慶は驚いていた。それほど揚羽の強さは隔絶したものだったのだろう。
(やっぱりこの前の物凄い気はこの人のものだったんだ。でも...)
(今はそれが感じられない。いや、隠してるのかな?だとすると相当な手練れだね)
義経と弁慶は心の中でそう結論付けた。すると今度は別のことが気になった様子の弁慶が口を開いた。
「ところでその格好はなんなの?もしかして今日九鬼で仮装パーティーでもするの?」
『ああ、そうだぞ?二人とも仮装の準備をしていないのか?』
「そんな予定はありません」
バンシィのちょっとしたジョークに李がバンシィを小突いた。
「フハハ!バンシィもお茶目な奴だな!」
「ほっ、よかった。義経はてっきり本当に仮装パーティーがあるのかと思って焦ってしまった」
「ふふ、面白いお兄さんだね」
とりあえず掴みはバッチリだったみたいだとさりげなく李にドヤ顔する。表情はわからないがそんなバンシィを察したのか李は溜息をついて呆れていた。
『弁慶の質問に真面目に答えるなら、これは九鬼からの好意だ。私の素顔は表向きにはあまりよろしくないから、こうして素顔を隠している。執事服はオマケだ』
嘘は言っていない。これならいつかこの仮面の下にある素顔を二人に見られてもいくらでも言い訳が立つ。
「そ、そうだったんですね。無遠慮なことを聞いて申し訳ない!」
「へぇ〜、それ聞いたらちょっとどんな顔なのか気になるかも」
「何言ってるだ弁慶。バンシィさんに失礼だろ?」
義経は慌てた様子で頭を下げた。弁慶はさっきより興味を示したがそれを義経が注意している。
どうやら義経と弁慶はバンシィの言葉を聞いて適当な勘違いをしてくれたみたいだ。二人には悪いが今はそれ方がありがたいとバンシィは思った。ちなみに今更だがバンシィは外では一人称を私にしている。正体を隠すためのささやかな抵抗でとして。
「それでバンシィ達はこれからどうするのだ?」
バンシィに抱えられている紋白がそう尋ねて来た。
「私達は今から市街のパトロールに向かいます。それと一緒にバンシィに川神を案内しようかと」
「おお、そうであったか!確かにバンシィはここ一週間あまり外に出ていなかったからな...よし!我もついて行くぞ!どうだ義経、弁慶?二人もついてこないか?」
「え?義経達もついて来てもいいのか?」
「私達は別に暇だからかまいはしないけど...」
「問題ありません。せっかくの機会なんですから、みんなで一緒に行きましょう」
紋白の提案にバンシィと李の仕事の邪魔にならないかと悩んでいた義経と弁慶。だが李は問題ないとあっさり同行を許し、判断しかねていたバンシィもそれに従った。
そうして五人でパトロール兼街の散策へと踏み出したのだった。
暫く歩いて川神の地をパトロールしていた五人は特に問題なく順調に歩みを進めていた。街の散策という点では色々と興味深いものが多いとバンシィは思い、気になったものを見つける度に紋白、李、義経、弁慶から説明してもらっていた。
そして事前に李から聞かされていた問題の多摩大橋、通称変態の橋にやってきた一行。李の話によると、なんでもこの橋では度々色んな変態と出くわすそうでパトロールする九鬼の従者の殆どからその報告が上がっているらしい。
一体どんな変態が出るのかある意味期待していたバンシィだったが、今回は違うらしい。
橋の上には人集りができており、同様に橋の下にも人が集まっていた。そしてその大勢が割れんばかりの歓声をあげていた。
(何かあったのか?)
「あ、百代先輩だ!」
「あらら、また百代先輩に決闘挑んでる人いるわ〜」
バンシィが不思議そうにして橋の下を覗くと、隣で同じく下を覗いていた義経と弁慶がそう言った。
百代先輩。それが誰を指す言葉なのかは考えるまでもない。
彼女達の視線の先をバンシィは追って、それを見た。
そこには今まさに挑戦者を地に伏せた長い黒髪の少女がいた。
「あれが...川神百代」
この町で知らない者などいない彼女の名をバンシィは呟いた。それが聞こえたのか否か定かではないが、彼女の目がバンシィと合った。
獰猛な彼女の瞳と温和な彼の瞳が交錯し、確実にお互いを射抜いた。
いかがだったでしょうか?自分的にはこれからマジ恋らしい小ネタを挟めていけたら幸いです。
ついにバンシィの仮面が完成しました。イメージはバンシィ・ノルン ユニコーンモードを彷彿とさせる感じで仕上げたつもりです。ちょっと今回は文字数多めになりましたが、いい加減百代を出したいなと思い無理矢理そこに持っていきました。
というわけで意見、感想、評価、誤字脱字がありましたらよろしくお願いします。また次回お会いしましょう!では!