美少女剣士“宮本武蔵”の登場で体育館の中は様々な思念で入り混じっていた。
「美少女キターーー(゚∀゚)ーーーーー」
「どこのクラスに入るんだろ?」
「えっろ!武蔵ちゃんえッッろ!」
「美少女が六人も...もうダメだわ、あんなのに勝てるわけないわ」
「諦めたらそこで試合終了よ!有名な監督さんだって言ってるじゃない!」
「彼氏が...欲しいです、先生...」
「誰がぽっちゃりだ!」
「てか、宮本武蔵って
「これはこれは、またこの学園に見目麗しい華がやってきましたね」
「トーマ嬉しそう」
「ええ、学園が賑やかになることはいいことですから。ところで準はどうしたんですか?」
「若、俺はどうやらもう至ってたらしい...理想郷はここにあったんだ...」
「なんかハゲが悟ったような顔してる」
「準にはあの梁山泊から来た小さい子しか見えていないようですね。それで質問なんですが英雄、あの女性剣士さんも武士道プランの一環なんですか?」
「我が友葵冬馬よ、我はあの者を知らぬ。あずみは何か聞いているか?」
「いえ!全く何も聞かされていません!」
「つまり九鬼関係ではないと?」
「うむ、そこのところも是非とも聞かせてもらいたいものだ」
各々が思ったことを口にしていた。そして宮本武蔵と名乗った彼女に対して訝しむような視線を向けるバンシィを除いた九鬼の従者達。ちなみに最初の台詞は百代が発した言葉である。
(あれが武神で、あっちにはヒューム・ヘルシング、ドイツの猟犬に梁山泊か...なかなかカオスだな〜)
武蔵は自身に向けられた視線を辿り、自分に闘気をぶつけて来た相手達を目視した。世界の強者達が集った場というだけあって、向けられた闘気に彼女は身を奮わせていた。
(剣士の血が騒ぎますな!てかあの子は何処だろ?......あ、いたいた。相変わらず隠れるのが上手いな〜)
「とりあえず宮本武蔵よ、壇上に上がってきてくれぬか?」
「おっと、了解です!」
騒ぎ立つ館内の中でも鉄心の声が確かに武蔵に届き、それに対してハッキリと返事をした彼女は颯爽と壇上まで駆け上がった。
その身のこなしで学園の実力者達は一斉に彼女もまた真の強者だと察した。
「クリ、あの人」
「ああ、あの身のこなし...相当できるな」
「それになんだろう、あの人ちょっとお姉様と同じ匂いがするわ」
「モモ先輩とか...京はどう思う?」
「うーん、実力は確かだと思うけど未知数すぎて判断つかないかな」
2-Fの一子とクリス、京も先程武蔵が見せた身のこなしに対してどう思うかと軽く話し合っていた。三人とも武蔵の実力を測りかねた様子で再度壇上に注目する。
一方1-Cの黛由紀恵は彼女が現れて以降というもの奮えが止まらなかった。
「まゆっちどうしたの?なんかすごい震えてるけど?」
「伊予ちゃん、私あの人と戦いたいです」
「まゆっち...?」
「あの人が現れてからというものずっと気持ちが昂っているのです。おそらくあの人の実力は本物、それも私以上に。宮本武蔵という名が本物なら尚更彼女の剣技が気になります」
「おお、珍しくまゆっちが饒舌だ。なるほどなるほど剣士の勘ってやつだね」
「でも...」
「でも?」
「...どうやって話しかければいいのかわかりません」
「まゆっち....」
『だってあの人明らかに陽キャだもんな〜、オイラ達みたいな日陰者には眩しすぎるぜ』
「台無しだよまゆっち」
「うぅ〜...」
由紀恵はクラスメイトであり友人である大和田伊予に情けなくも弱音を吐き、伊予はそんな友人の相変わらずな姿に本心からツッコんだ。
そして壇上に上がった宮本武蔵に全校生徒の注目をかっさわれた梁山泊一行は愚痴にも似た感想を抱いていた。
「すげぇ人気だな。わっちらの登場が霞んじまったぜ」
「それだけ宮本武蔵という名の知名度は日本だと高いということだな」
「それだけじゃないと思うけどね...」
「なんにしろ、我々の任務に支障が出ないことを願うばかりだ...どうした入雲龍、そんなに震えて?」
「そりゃあ震えるって、だってあの宮本武蔵だぞ?私がどれだけ課金しても手に入れられなかったあの宮本武蔵!対魔力なのか?対魔力なんだな!?くっそぉやっぱりランクAは伊達じゃないな」
「...何を言っているのだ?」
「やめとけってブショー、触らぬまさるに祟り無しってやつだ」
「誰が祟り神だパッド」
「あれ〜、そんな奴この中にいたかな〜?」
「耳まで貧相だなんてもはや救いようの無いパッドだ」
「オーケー、聞き間違いじゃないみたいだな...往生しやがれー!」
「
「この口か!この口が言うかー!!」
壇上に上がっている梁山泊の彼女達は彼女達で何やら盛り上がっていた。史進に両頬をぐりぐりと引っ張られる公孫勝は涙目になりながらも口で抵抗を続けており、その都度両頬の痛みが倍増している。そんな彼女達を見ていた全校生徒達は呆気に取られていた。
「嗚呼、なんて可愛らしいんだ。ロリコニアはこんなにも素晴らしい楽園だったのか...」
「やばいよトーマ、ハゲのハゲがよりハゲになってハゲ散らかしてる」
「今にも天に召されそうな恍惚とした顔をしてますね」
ただ一人井上準は頬を引っ張られている小さな女の子を見て涙を流していた。その涙はまるで菩薩が慈愛の心で流す涙のようにとても綺麗で、彼の酷く汚れた心を洗い流すかのようだった。
「ゴホン、もう自己紹介に戻って良いかの?」
「あ、ああ、すまなかった。史進ももうその辺にしてやれ」
鉄心はようやく場の空気を戻そうと梁山泊一行の彼女達に声をかけ、それに対して林冲が応え史進を宥める。「ちっ、今日のところはこれで許してやる」といいながら史進は最後に公孫勝の頬を一捻りしてからその手を退けた。公孫勝はパンパンに赤く膨れた両頬を押さえながら涙目で史進を睨みつけているが、流石にもう観念したのかこれ以上口は開かなかった。
そしてマイクを持った林冲が一歩前に出る。
「私は林冲。天雄星、豹子頭の林冲だ、よろしく」
ちらりと林冲の視線が二方向に向けられた。ひとつは2-Fの方、そしてもう一つは...
(俺か...)
3-F、というより完全にバンシィに向けられていた。まるで相手を見定めるような期待を若干孕んだ視線、何故自分なのかとバンシィは疑問を抱かずにはいられなかった。
(もう一つは2-F、というより直江大和だな...中国の傭兵集団が一体...)
「わっちは史進、九紋龍史進!よろしくな!」
「天暗星の楊志、よろしく〜」
「天傷星武松、よろしく」
「天間星入雲龍の公孫勝。私は天才だからな、仲良くしろよ」
他の四人も簡潔に自己紹介を済ませると林冲と同様に大和とバンシィに視線を配ってきた。2-Fの大和も自分に対して視線が向かっていることに気づいたらしい。
「うむ、ということじゃから皆彼女達と仲良く切磋琢磨していくように。何か質問のある者はおるか?」
「はい学長!」
一区切りついた後に鉄心が全校生徒に対して問うとこれまた2-Fの福本が真っ先に挙手した。
「林冲と武蔵ちゃんのスリーサイズはいくつなんですかー?」
「こら福本、場を弁えんか!この俗物が!」
「あひぃッ!」
欲望(性)丸出しの発言に対し2-F担任の小島梅子が鞭がしなる。小島流鞭術の使い手である彼女の強烈な鞭撃が福本を襲うが程よく手加減されているためか、鞭撃を受けた福本は気持ちよさそうにのたうち回った。
そんな彼を見て面白可笑しく笑う武蔵と質問の意図を理解しきれていない林冲は戸惑っていた。
「ほほほ、わしもそれは気になるな」
「学長...」
福本に便乗する鉄心、ルーは呆れて言葉が出なかった。
「まあそれは今度にしておこう。他に質問したい者はおるかのぉ」
「はい学園長!」
「ほお、また2Fか。好奇心旺盛で大変結構じゃぞ、それで何かの甘粕真与?」
「はい、宮本武蔵さんに質問なんですが宮本武蔵さんも義経ちゃん達と同じクローンなんですか?」
甘粕真与の質問に全校生徒が、それが聞きたかったと同意の視線を武蔵に向けた。
そして武蔵は彼女の質問から一拍置いて、鉄心から受け取ったマイクに声を通した。
「ええ、私もクローンよ」
それを聞いた全校生徒が再び騒めき出した。その中で最も衝撃を受けていたのは九鬼の関係者達だろう。武蔵のクローン発言に英雄、紋白、ヒューム、あずみが僅かに動揺の様子を見せた。
そしてヒュームは襟元に仕込まれた通信機である人物に連絡を取った。
「聞いていたなマープル」
『ああ、嘆かわしいことだね。まさかこんな形で九鬼の技術が漏洩したことがわかるなんて』
今日川神学園に梁山泊の傭兵達が転入してくることを知っていたマープルは興味本位で学園の近場に備え付けられた望遠カメラでその様子を眺めていた。そして唐突に現れた自称宮本武蔵のクローン。
マープルは溜息を吐き、さらに言葉を続けた。
『とりあえず情報の漏洩に関わったであろう者の調査はもうしている。直ぐに犯人もわかるさね。ヒュームはそのままあの娘を観察してな、それと周囲もね。不審な輩がいたらなるべく怪我させないように捕まえておくれ』
「言われなくともわかっている」
そう言ってヒュームは通信を切った。
「マープルか?」
「はい紋様、直に情報漏洩に関わった者が炙り出されるでしょう」
「そうか、ならマープルに任せて問題無さそうだな。しかし宮本武蔵か、是非とも九鬼に欲しい人材だな!」
「!!...はい、もしあの者が正真正銘の宮本武蔵のクローンならその伸び代は計り知れないかと」
いつの間にか懐から名刺を取り出していた紋白は、九鬼が起こした不祥事より目の前の優秀な人材をどう勧誘するかと思考していた。ヒュームはそんな彼女の姿が帝の面影と重なって見えた。目の前の宝に瞳を輝かせる姿は帝そっくりで、内心彼女の成長を喜びつつ主人の考えに同調した。
そして真与に質問されそれに答えた武蔵は言葉を続けた。
「といっても私は九鬼関係じゃないわ。けど、とある組織の研究機関で生まれた正真正銘宮本武蔵のクローンよ。その組織については話せないけどね。と言ってもそんな仰々しい話じゃなくて貴方達と同じように普通に育ったわ、まあ腕にちょっとばかし覚えがある普通の女の子だけど」
そう言いながら武蔵は腰に携えた刀の柄をさすりながら、優しい表情を浮かべ真与に対してニカッと笑って見せた。
すると真与の質問に対して答え終えたタイミングでまた一人大きく手を上げた。
「はいはーい!普通の女の子なら武蔵ちゃんは彼氏とかいますかー?」
島津ガクトが全男子生徒(一部を除いた)の疑問を代弁した。おそらくほとんどの男子生徒が彼女の美しさと快活な姿に一目惚れしたのだろう。男子達が固唾を飲んでその返答を待つ。
「あ〜...いないね」
「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」
男子生徒達の歓喜の雄叫びが上がった。
今のうちに少しでも武蔵に好感を持ってもらおうと男子達が身なりを整えたり、あからさまに髪をかきあげイケメンアピールをしたり、自慢の筋肉を見せつけようと上着を脱ぐ者までいる。そんな男子達を見て女子は「うわぁ...」と軽く引き、武蔵はもう一言付け足した。
「でも私好きな人いるから、ごめんね」
その言葉で男子生徒達は一瞬で崩れ落ちた。まるで一斉に男子生徒達が武蔵に告白しその全てを一瞬で振ったような光景が女子達からすれば痛快だっただろう。そしてほとんどの女子が思った、男ってバカだなぁと。
「ちなみに武蔵ちゃんの言う好きな奴ってどんな奴なんだ?」
「おっ、気になりますか〜武神?それはねぇ〜...そこにいる仮面の人だ!」
その瞬間全校生徒に教師、梁山泊一行の視線がバンシィに向けられた。まあこの学園に仮面をつけてる奴なんて自分以外いないはな、とバンシィは仏のような心持ちでそう悟った。そして視線を向けてきた中の一人であるマルギッテは複雑な表情を浮かべていた。
『はは...』
「久しぶりだねア...じゃなくてバンシィ。私のことは覚えてるかな?」
『ああ、よぉく覚えているよ。相変わらず元気そうで何よりだ』
「君も元気そうで何よりだわ。大怪我をしたって聞いてたけど大丈夫そうね。まあ積もる話は後程語らうとして...そんな睨まないでよ猟犬さん」
猟犬、その言葉が示す相手はこの場ではただ一人。マルギッテが威圧的な視線を武蔵に送っていた。
「宮本武蔵、どうやら貴方は彼のことをよく知っているみたいですね」
「ええ、知ってるわ。もしかしたら猟犬さんよりも知ってるんじゃないかしら?」
「!!...いいでしょう、貴方とは少しお話をしなければならないみたいです。私が川神の流儀で貴方を歓迎してあげることを感謝しなさい」
「決闘ね、じゃあ勝った方が負けた方になんでも好きなこと聞けるってルールはどう?」
「いいでしょう、望むところです」
武蔵の発言がマルギッテの琴線に触れたらしく、マルギッテは武蔵に決闘を申し込んだ。それに対して呆気なく了承した武蔵は追加ルールを設けマルギッテもこれに賛成。
二人の視線がぶつかり合い、武蔵は陽気で不敵な笑みを浮かべマルギッテは鋭く勇ましい表情を浮かべていた。
そんなやり取りをする武蔵を横から見ていた梁山泊一行が口々に思いを言い合っていた。
「面白いことになってきたな!ドイツの猟犬対宮本武蔵、いいなぁ〜わっちも混ぜて欲しいぐらいだよ」
「史進にはもっとやるべきことがあるでしょ」
「だが九紋龍の言う通り、これはなかなかの見ものだぞ」
「日本の歴史に於いて無敗を誇り最強と謳われる剣士のクローン、一体どれほどの腕前なのか興味深い」
「ふあ〜...ぶっちゃけ私達には関係ない決闘でしょ」
「そんなに大きく口を開けてあくびをするのは危ないぞ?」
「あ、移動するみたいだよ。私はゲームしててもいいよね?」
「うぅ〜...公孫勝のためを思って言ったのに...」
「ほらほら泣いてないでリンも行くぞ、まさるもついてこないならそのゲーム機没収するからな!」
「ぐぅぅ...」
マルギッテと武蔵の決闘に傭兵として興味深々な史進、楊志、武松、林冲の四人。しかし公孫勝にとっては任務に影響が出ないことだと割り切り興味の欠片もなく、暇そうにあくびをしていた。そんな公孫勝を見て林冲が彼女の身の安全を思って発言するが見事に無視され若干涙目になっていたので、見かねた史進がフォローする。二人の扱い方を熟知した史進の発言を皮切りに梁山泊一行も決闘の場となるグラウンドへと歩み出した。
そんな中、3-S所属の二人の少女が何やら話し合っていた。と言っても和気藹々としたものではなく、一人の少女がもう一人の少女の様子の変化に心配していた。
「どうしたの清楚、顔色が少し悪いけど?」
「ううん大丈夫だよ旭ちゃん、ちょっと頭がぼーっとするだけだから」
葉桜清楚の様子を心配そうに彼女の背中をさすり声をかけたのは学園評議会の議長“最上旭”。透き通るような白い肌に綺麗に真っ直ぐ伸びた黒髪が映える美少女だ。
どうやら清楚は体育館からグラウンドに移動する途中で足元がフラつき転びそうになったところを最上旭がタイミングよくそれを防いだようで、旭は清楚な顔色を見て心配そうに眉をひそめた。
「大丈夫かね葉桜君、体調が優れないようなら保健室に行ったほうがいいぞ?」
そんな二人の元に艶のある声を放つ着物姿の美少年がやってきた。彼の名は京極彦一。その甘いルックスとボイスで学園の女子から絶大な人気を誇っているが、本人にはそんな意図も興味もないらしく常に優雅に振る舞っている。
「ありがとう京極君、でも本当に心配いらないから、頭はぼーっとするけど逆に体からものすごく力が湧いてくるの」
「そう?けど無理しないでね清楚」
「うん。さ、二人の決闘見に行こ!」
先程がフラつきが嘘のように清楚が軽やかに駆けた。そんな清楚を見て大丈夫そうで何よりだ、と京極は彼女の後を追う。だが旭は駆け出した清楚の背中を見守りながら彼女の内にある何かを確かに感じ取っていた。
闘気とは違う別の何か。
近いもので言えば英雄や紋白、揚羽に似た圧倒的な風格を現すような勇ましいオーラ。
それを感じた旭は確信した。
(やっぱりそうなのね...)
葉桜清楚が一体誰のクローンなのか公には公開されていない。
だが旭の仮説と先程感じた覇気が正しければ、きっとこの学園はさらに面白くなる、と。
(彼女達も来ちゃったし、早く調整を終わらせないと...待っててね義経、アル・シュバルツ)
はやる気持ちを抑えつつも不敵な笑みを零した旭は、軽やかなステップで彼女達の背中を追いかけた
いかがだったでしょうか?日に日に落ちていく投稿ペースに焦りつつもなんとか書き上げた次第です。この土日にもう一話投稿できるように頑張ります!(間に合わなかったら申し訳ありません...)
さて今回も梁山泊があまり目立たない回になってしまいましたが、彼女達の活躍はこの後になると思います。(ちなみに個人的に今一番推せるのは史進ですね。バレてるのに貧乳をひた隠しにする姿とか尊いです、おっとつい本音が、ごめんなさい)
次回はまたまた決闘回。そのうえ葉桜清楚の様子が...!?そして最上旭の狙いとは一体...。今回も意見、感想、評価、誤字脱字などございましたら気兼ねなく申し付けください、では...